第2話〜10年後〜
「行こうぜ、アイン!」
大盾、片手剣を持ち全身を見事な鎧で包んだガイアスが俺に叫んだ。いくぞと言っているが、いったそばからゴブリンの群れめがけて走り出している。
待つ気ないのか?こいつは…。
「待てよ!俺を置いてくなって…」
俺たちがいるのは、俺の家、エルドラージ公爵家領内にある、高ランクの魔物が生息する死の森だ。なぜこんなとこに居るのかというと…
その説明をするには、時間を数時間巻き戻さないとならない。
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エルドラージ公爵家にて…
「…ちゃん!アインちゃんはどこにいるのですか?」
俺の母親、メアリが侍女たちを従えながら屋敷を巡り歩いている。説明をする必要もなく、俺を探しているのだ。
あの時、部活で戦力外通告を受けて、幼馴染にも見放され、事故にあった後この世界に転生した、
あの時から早10年俺は、母親から宣言通りに徹底的に甘やかされて育った。母親の前では、甘えん坊な次男坊アインを演じ続けた。だが、見えないところでは、剣術、魔法だけでなく、体力に魔力、筋力等様々に鍛えていた。死の森へ行き始めたのも2年前からだ。高ランクが生息していると言っても、それは奥地の話で、他には定番のゴブリンやコボルト、オークなどが生息しており、低ランクの冒険者によって討伐されていた。
徹底的に甘やかす母親とは対象的に父親は俺には冷たかった。侍女達によれば、兄上がたいそう優秀で、
彼に付きっきりなのだそうだ。それも相まって、俺は父親どころか、兄にもあったことがない。
余計なことを話してしまった。話を戻そう。
俺は、8歳から死の森にいっては、低ランクの魔物を討伐し、ランクを上げてきた。
俺が手に入れたスキルの経験値に関する2つは、簡単に言えば、通常手に入る経験値を1万倍にすること。
それによって俺のレベル(この世界では格と呼ぶ)は、
みるみるうちに上昇し、とんでもないものになってしまった。
一応今のステータスを記しておこう
アイン-フォン-エルドラージ 公爵家次男 10歳
格:50
HP:5,000
MP:10,000
称号:剣聖候補?
スキル:獲得経験値100倍、必要経験値1/100、
創造魔法
⇒炎魔法、召喚魔法、闇魔法、回復魔法
無属性魔法、雷魔法、風魔法、隠蔽魔法
となっている。格が低いように思えるのは、母親の目を盗むのは容易ではないからだ。その上、目を盗む対象は、母親だけではない。公爵家お抱えの騎士団の目もあるのだ。そこで、ガイアスの出番だ。
彼の名は、ガイアス-フォン-イシリス。
イシリス男爵家の次男坊であり、この世界における
俺の幼馴染だ。将来的には、俺の騎士になる予定だが、今は俺が唯一気軽に話せるやつで、お抱え騎士団騎士団長の息子だ。
彼と遊ぶという名目で家を抜け出したは、死の森で特訓している。
ここからは、時間軸を元に戻すとしよう。
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俺を置いて、飛び出したガイアスを追って俺は、刀を召喚した。ガイアスが大剣を使うのに対して、俺は、刀を使っている。それもただの刀ではない。俺独自の召喚魔法によって生み出した刀だ。
既にゴブリンと殺り合っているガイアスを見ながら、華麗に唱えた…
「散れ、千本桜」
某漫画に出てくるあの斬魄刀のように俺の刀は、花吹雪のように崩れていく。俺は、ガイアスの周りの
ゴブリン達を凪払っていく。この刀は、某漫画のすべての能力を扱うことができる。大ファンであった俺にとって戦闘中は、至極の時間だった。
10分後…
「ふ〜。終わったか…?」
「あぁ…。お前、俺を待つ気無いだろ。」
互いに満身創痍になりながらも10歳の少年2人で
ゴブリンの群れ100体を全滅させた。ガイアスも
中々のチートっぷりだ。なにせ、候補の俺と違って
聖騎士の称号と武器に愛されしもの、肉体強化魔法
を得ている。聖騎士には、世界で100人しか選ばれることがなく、武器愛されしものは、どんな武器でも
達人級に扱うことができるというものだ。そこに肉体強化魔法が加われば、物理戦でなら負けることは、
皆無だろう。騎士団と教練を行っても彼に勝てる騎士は、父親を含め誰もいない。
死の森からの帰宅中。俺たちは、これからについて話していた。俺は、甘いこの環境下から早急に抜け出し
騎士学校で研鑽を重ねる必要があると前々から感じていた。ガイアスも同じ気持ちみたいだったが、コイツの父親は騎士団に入れるつもりなのだった。
「ガイアス…」
「何?」
「お前、今後どうすんの?」
「どうするって何が?めんどくせーやつだな!ハッキリ言えよ。」
「騎士学校行くのかよ…前に聞いたら行かないって言っただろ…。」
「お前はどうすんだよ。騎士学校言っても卒業しても家は継げねぇんだろ?」
「俺は、冒険者になる。冒険者になって、親父や兄貴が俺を認めざる負えない存在に成り上がってやる。」
向こうの世界では、成し遂げられなかった。努力は報われるとは限らない。それが、世界の通りだ。
俺のステータスもスキルに依存したものだ。だが、剣術は違う。俺だけのものだ。剣聖になるには、剣術で世界一にならないといけない。努力が報われることをこの世界で証明してやる!
「なら、俺も冒険者になる!」
「は?」
「お前何言ってんの?」
「俺は、お前の騎士になると決めてる。お前が進む道が俺の進む道だ。お前が冒険者になるってんなら、
俺もなる。一緒にやろうぜ!な!」
「お前…ホントに馬鹿だよな(笑)」
「なんでだよ!?」
「ククク…」
「アハハハ!」
だが、俺には最大の難関が差し迫っていた。そのことを思い出したときには、もう遅かった。
「アインちゃん?一体、こんな時間までどこに行っていたのですか?」
「ガイアス?騎士団との教練をサボって一体どこで遊んでたんだ?」
俺とガイアスは、そこから小一時間正座をさせられた上で説教を受けることになり、1ヶ月間の外出禁止が
言い渡されることになった。
お読みいただきありがとうございます。読者の方からコメントをいただきました。私の作品は、夢の主人公目線で書いているため、少々現実味の無いものになることはございますが、その点はご了承いただきますようによろしくお願いいたします。