すべてを粉砕する男
最後です。
和虎ののたまった言葉を正確に理解できた人間が、そのとき一体どれだけいただろう。
食堂の、時が止まった。
テーブルをたたき割った時と同じくらい、その言葉には破壊力があった。
誰も何も、返す言葉が、ない。
それをいいことに、和虎は続ける。
「暴言を吐かれるのを分かってて近寄ってくるってことは、罵られたいってことだろ。それがドMじゃなくて一体なんだってんだ?
ドMの変態って目で見られたくなきゃもう二度と俺に近寄るな。…ああ、生憎俺はSM趣味なんてないからな、ドMの変態でも近寄らないでくれ。
ああそうだ、ついでに親衛隊にも言っておく。
これから俺に対してイヤガラセなんてやってみやがれ。
俺はもう、お前らの顔面凹ませたい衝動を我慢しねえぞ?」
テーブルを破壊したあとなので、脅し文句としてはこの上ないものになっている。
現に、和虎の正面にいる生徒会長の親衛隊長は、今にも白目をむきそうで、美少年フェイスが台無しになってる。
「ちなみにな、俺がこんなとこ来る羽目になったのは、中学時代に色々やりすぎた所為でな。
ヒョロもやしの素人共に手ぇあげる気はさらさらなかったが、あんまりうざってえから次からは遠慮なくやり返す。正当防衛だしな。
この場にいないお仲間にもきっちり伝えておけよ?こちとら大嫌いな腐れカス共に近づかれてるってだけで十分罰ゲームなんだからな。」
ストレス発散のためにやりすぎちまうかもなあ、と告げる和虎の目は、全く笑っていない。
昔ストレス発散のためにぼこぼこにされた経験のあるヤンキーも、当時を思い出したのかぷるぷる震えていた。
「というわけだから、もう二度とこの俺を下らねえ茶番に巻き込むんじゃねえぞ腐れホモ共。
やるんなら俺の視界に入らない遠い彼方でやってくれ。
――ああ、安心しろ。寮の部屋はこの後すぐに替わってやる。
この騒ぎだ。部屋替えを了承しない無能なんてどこにもいないはずだからな。」
そこまで言い切って、あー清々したと和虎は踵を返した。
それを止める人間も、罵る人間も、どこにもいない。
…いや。
「おーい、終わったかんじー?」
腐男子が、ひらひらと手を振った。
注目が一気にこちらに集まる。
俺も優等生もヤンキーも、苦笑しながらそれでも和虎に手を振る。
「おう」
和虎が、笑って手を上げる。
そのまま俺たちのいるテーブルに駆け寄り、そして。
「てめえざけんなよ自分だけさっさと逃げ腐りやがって俺の苦しみを思い知りやがれぇぇぇ……!!!!」
華麗すぎる飛び蹴りが、腐男子の顔面に炸裂した。
【いまさらな登場人物紹介】
▼笹生和虎
見た目はごく普通の男子高生。
中学時代にやんちゃをしすぎてこの学園に放り込まれた。
短気でキレやすい俺様だが、面倒見はいい。
母子家庭だが、最強の母親が君臨する金持ちの家。
▼真島敦
若干やる気にかけるが普通の男子高生。
和虎とは小学校時代からの親友。和虎に頼まれて一緒に学園に来た。
和虎の母に気に入られている。
▼水見高都
腐男子。若干チャラい。
和虎とは小学校時代からの仲。
中学から学園に入り、腐男子として目覚める。
▼夏木零
クール優等生。
和虎とは中学のヤンチャ仲間。
中学からの学園生。
▼斯波安治
いかついヤンキー。
和虎とは中学のヤンチャ仲間。
▼高岡亘
爽やかイケメン。本編には地の文でのみ参加。
見目麗しいが中身は普通の男子高生。
親衛隊とかドン引きしてたら転入生がきた。
普通の友人が欲しかっただけなので間違ったなあと思ってる。
和虎のことは心配だったが一般人だったからどうにもできなった、ごめん。
このあと、5人に爽やかくんが合流し、全力で男子高生の青春を堪能することになる(予定)。
お読みいただき、ありがとうございました。