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残された人類は、外の世界に夢を抱く  作者: Regulus
1章〜王女と7人の戦士〜
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それからのこと

 老人の娘と孫を救出してから、しばらくの時間が経った。

 二人は目を覚ましたのち、容体も回復し、今ではもう日常生活を送れるまでになった。

 一方の三人はというと、いつも通り怪我を負い病院にいた。

「おいまだ退院できないのかよ」

「仕方ないだろ、生身であれ使ってお前腕バキバキになったんだから」

 空の目線の先の海斗は、腕に大げさな包帯を巻きベットに寝ていた。

 戦闘の後、海斗ははめていたガントレットの衝撃で体ごと吹き飛び、腕は使い物にならないほどの怪我を負っていた。

 その後、街に戻り病院へ行ったはいいものの、医者は海斗の腕を見るなり、即手術と診断し今に至ることになった。

「りんご剥いてやるから食っとけ」

「野郎に剥いてもらっても何の得もねーよ、どうせなら綺麗なおねいさんに剥いてもらいたいよ」

「無い物ねだりはやめろよ、俺だって傷つくぞ」

「悪かったよ。はあ、早く退院してーな」

「そんなこと言ったって仕方ないだろ、その怪我じゃあと一週間はかかるらしいじゃないか」

「だけどよ」

 海斗が口を尖らせ、文句を言おうとすると病室の外から機械が歩く音と、少女の歩く音が聞こえてくる。

『ほら、起きたばかりなんですから気をつけてください』

「わんわん優しいんだね」

「こら、待ちなさい病院で走らないの」

 モズが親子を連れて病室に入って来た。

「どうしたんですか?」

「いえ、助けていただいたお礼をと思いまして」

 目の前に立つ綺麗な女性と、幼さが残る少女は紛れもなくあの時救出した二人だった。

「いや、そんなお礼だなんていいんですよ」

「そうは言っても私の気がおさまらないんですよ」

「さいですか、だったらそこのアホの言うこと聞いてやってください」

 アホ呼ばわりされたことには気づいていない海斗。

 少女はそんな海斗の元へ寄ってくる。

「お兄ちゃんその腕どうしたの?」

「ああ、これか、これはな頑張った証拠だぞ」

「お兄ちゃんすっごい頑張ったんだね」

「それはもうすごいくらいにな!」

 大きく輝かしい笑顔を見せる海斗、その笑顔を見てまた少女も笑顔になる。

「娘さんは覚えていないんですか?」

「そうらしいんです。あの時のことを聞いても何も覚えてないって」

「そうなんですか、まあ、それも良かったと思うんですけどね」

「そうですね、子供に怖い記憶が残らない方がいいですもんね」

「そうですとも、では、俺はもう一人のお見舞いに行かなきゃいけないのでここで」

「本当に何から何までありがとうございました」

「いいんですよ、それよりもそこのアホのこと頼みましたよ」

 今度は海斗の耳にアホ呼ばわりされたことが入り海斗が激怒したところを後にし、モズと共にリーチャオの病室へと向かう。


 リーチャオのいる病室までの長い廊下を歩く一人と一匹。

 二人は、ただ廊下を歩くだけでは気まずくなりかねないと思い、話を始める。

「その後リーの様子はどうだ?」

『マスターは、大分疲労が溜まっていたらしくまだ眠ったままです』

「そうか、起きるといいんだがな」

『そうですね、それよりも空殿』

「どうした?」

『いや、私はあくまでもミスト軍にいた身。そんな私が許せなかったりしないんですか?』

「最初は、そんなことも考えてたよ。でもさ、それも仕方のないことなんじゃなかったのかなって思うようになったんだよ」

 空は、照れ隠しのように頭の後ろに手をやり、話を再開する。

「勿論、俺らにとってミスト軍は、敵だ。それはこの先も変わらないだろうと思う、でもあの時お前が助けてくれたことに関して俺はめちゃくちゃ嬉しかったんだ。なんていうか、敵だからっていう先入観が俺の中や海斗の中にあったんだろうけどお前は、なによりもあの二人を助けることを優先にしたからな、その時俺はお前が悪いやつだとは思わなくなった」

『空殿は寛大なお方なんですね』

「そうでもないさ」

 話をしていくなり打ち解けた二人はリーチャオのいる病室までたどり着いた。


 空が病室の扉を開けると、リーチャオは座って本を読んでいた。

「あら、いらっしゃい」

「おいおい、起きて大丈夫なのか?」

「大丈夫!体だってもうこんなに…痛った」

 元気なことをアピールしようとしたのか、腕を上にあげようとすると、リーチャオの体に痛みが走り再びベットに倒れてしまう。

『あまり無理をなさらないでくださいマスター』

「平気平気!全くモズは心配性なんだから」

 痛みを隠しつつも笑顔を見せるリーチャオに空は安心を覚えていた。

「それで、海斗の方は大丈夫なの?」

「あー、まあ、大丈夫だろ。娘さんとお孫さんもついてるんだ、あまり無茶はしないと思う、うん、きっと」

 そんな話をしていると、奥の病室から大きな叫び声が聞こえて来た。

 それは紛れもなく海斗の叫び声だった。

「なになに今の声?」

「多分海斗が何かやらかしたんだろ。とょっと行ってくる。モズ、ここに残ってリーの話し相手になっててくれ」

『勿論、そう思い僕はついて来たんですから』

「そっか、頼んだぞ」

 そう言い残し、空は海斗のいる病室へと急いだ。

『全く騒がしいですね』

「それがあの二人だからね、あれはあのままでいいんだよ」

『そういうものなんですか、人間とは不思議なものですね』

 モズの反応にクスクスと笑い、リーチャオはどこか嬉しい顔をし、再び本を開いた。

 モズはその姿を見ると、少しの間休憩にと眠りについた。


 それからさらに数日が経過し、リーチャオの傷は完治、海斗は腕に少しの後遺症が残ったものの怪我が治り街を出る支度を始めた。

「さあ、出る準備するぞ」

「この街ともお別れか、なんだか楽しい街だったね」

「あのお母さんのご飯美味しかったな」

「なに?お前ご馳走になってたのか」

 バレた、などと思うのをごまかす海斗は、じりじりと近寄る空の顔から目をそらした。

 近寄って来た顔は。何かを思い出したような顔に変わった。

「そうだ、これ使っとけ」

 空は海斗に補助器具のようなものを渡す。

「なんだこれ」

「見ての通り補助器具だ、付けてるだけでも大分変わると思うから付けておけ」

「わかった。ありがとうよ」

「やっぱりあんたなかなか優しいところあるんじゃない」

 リーチャオは、空の腰回りをグイグイと押していると、モズと共に老人がやって来た。

『ここにいましたか、この方がお話があると』

「おー、爺さんどうしたんだ?」

「いえ、大したことじゃないんですが、これを渡そうと思いまして」

 老人から手渡されたのは本の1ページだった。

「これって」

「これは、私の父から渡されたものでして、いずれ渡す時が来ると言われまして、それがいつかと思っていたのですが、どうやら今だったようで」

『なんなんですか?これは』

「これは、俺たちの旅の目的の一つなんだ、この本仮説だがこの先の予言が書かれていて、その本を読み解くのがこの旅の目的の一つってことさ」

『なるほどそういうことだったんですね』

 老人から受け取ったページには、三人の人間と1匹の犬が写っていた。

 それを見た空は、その仮説を確信へと移行した。

「それではお言葉に甘えて、いただいていきます」

「いいんです。私としても受け取ってくれた方が助かりますので」

 老人から本の1ページを受け取った空は車に乗り込み、エンジンをかけた。

 前まではヘンリーが乗っていたその席に今ではモズが座っている、そんな移りゆく光景に思わず笑みがこぼれる空。

 空は老人の方を振り向き手を振る。

「それじゃあな」

「いつでも来てくださいよ」

「おうよ!」

「何でお前が返事するんだよ海斗」

 一行を乗せた賑やかな車は次の街へと出発した。

 それを見送った老人の後ろから親子が走って来る。

「お父さん!もう行ってしまいましたか?」

「ああ」

「そうですか、なんだか不思議な人たちでしたね」

「そうだな、実に賑やかな人たちだったよ」

「わんわんまた会えるかな?」

「ああ、きっと会えるよ。ささ、うちに入ってご飯食べよう」

「うん!」

 その家族は、空たちが見えなくなるのを見届け家の中に入って行った


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