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残された人類は、外の世界に夢を抱く  作者: Regulus
1章〜王女と7人の戦士〜
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侵入作戦:B

 湖のほとりに着いた海斗とリーチャオ。

「なかなか疲れるな」

「誰よバケツで水をまこうなんて言ったのは」

 海斗はリーチャオからの冷たい視線から目をそらす。

「そ、それより、空のやつ何してんだ?」

 海斗の目線の先でなにかの機械をいじる空。

「面白そうね。ちょっと見てくる」

「見てくるって、お前!行っちゃった」

 リーチャオが空の元へ近寄り、海斗は独りで水を撒くこととなってしまった。


「何作ってるの?」

「別に大した物じゃないけど、昔作ってたものを作り上げようかなって思って」

 空が作っていたのは人間の手がちょうど良く収まる鉄で出来たグローブのようなものだった。

「毎回思うけど、そんなのどこから素材持ってくるの?」

「だいたいはガラクタの山からかな。運が良ければかなり良い物も落ちてて、それこそリーにあげたそのグローブもそうだよ。原型は元々落ちてた未完成品だったんだ」

「それを作り上げたって事?」

「そう言う事。まあ、今作ってるこれは昔から作ってたものだったんだがなかなか素材が集まらなくてね、この間情報を集めてたときに欲しかったパーツが安く買えてね」

「それで今これを作ってるって訳ね。で、それは何が出来るの?」

「それは出来てからのお楽しみだよ。そうだ、この紙に書いてある台詞をこのマイクに吹き込んでくれないか?」

 二人の会話の裏でせっせと水をまく海斗の姿は徐々に悲哀に満ちて来た。

 後ろからの負のオーラに気づいた二人があわてて海斗の元へと駆け寄る。

 海斗は今にも泣きそうな顔になっていた。

「うぐっ。もう忘れられたと思って悲しかった」

「ごめんって、大の大人がそうなくなって、ちゃんと手伝ってやるからさ」

「私も向こうに行っててごめん」

 三人になったとたん作業効率は良くなりあっという間に一面水たまりが出来るほど水が撒かれた。

「疲れた」

「疲れたわね」

「疲れたな」

 三人はグッタリしその場にしゃがみ込んだ。


 それから数分経ち各々が戦闘の準備を始めた。

「おい空、それ」

 海斗は、空がいつしか着けたスーツに似た物を着用しようとしてる所を目撃してしまった。

「これな、あのあと改良に改良を加えてな、デザインも変えて、性能も.....」

「それ着けるなって言われたよな!」

「確かに言われたが、あれはあれこれはこれだ。」

「何言ってんだ、それを着たらまたお前の体は」

「大丈夫。今回のはきちんと実験済みだ」

 またもめてる事に気がつきリーチャオも近寄って来た。

「何もめてんのよ、ってそれ!」

「だから。大丈夫なやつなんだって、何たってあの遺跡の前からずっと着てたからな」

 空は満面のドヤ顔で二人を見つめていた。

「何ドヤ顔してんのよ。で、体に異常は?」

「今の所は無いかな、全然ピンピンしてるよ」

 そう言い二人の目の前でジャンプしたり走ってみせる空。ジャンプ力や走る速度など、全てにおいて少しずつ性能は落ちているようだが、安定性は増しているようにも見られた。

「まあ、くれぐれも無茶だけはするなよ?」

「わかってるって」

 三人は作戦開始前にも関わらず大分落ち着いた様子だった。

 全員の準備が終わる頃を見込んで空は兵士達の誘導を開始した。


「おーい、そこの間抜けども!俺はこっちだ、捕まえたくばこっちまでくるんだな!」

「総員あの不届きものを捕まえろ!」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 何十人もの兵士が一斉に空の元へ襲いかかってくる。空はその攻撃をかわしつつ所定のポイントまで誘導していく。

「くそっ!あいつ本当に人間なのか?」

「あの動き一体なんなんだ?」

「喋ってないで追いかけろ!」

「追いかけるって言ったってだんだん地面がぬかるんで進みにくくなって来てるんだよ!」

 追いかけていくたびに兵士達の足が取られていく。

 思惑通りに兵士達をポイントまで誘導出来た事を確認した空が爆弾にスイッチを入れその場に転がした。

「おいなんなんだこれは」

「それですよ!あのタレットを壊したのは!」

「何だと?総員撤収!撤収!」

「ダメです小隊長!地面がぬかるんで動けません!」

 逃げようとする兵士達の足下に転がった爆弾が爆発し、辺り一帯に居る兵士の体に電流が流れた。

 兵士達の脳まで電流が届き体中から黒い煙が立ち上っていた。

 その場の様子を確認しに海斗とリーチャオが寄って来た。

「成功したのか?」

「なんとかな」

「海斗の作戦なかなか良かったってこと?」

「もうほとんど爆弾の電流が強かっただけだが。まあ、地面がぬかるんで兵士達を止める事が出来たからな、目的こそ変わったが、作戦勝ちってことでいいんじゃないか?」

「素直に褒めたらどうなの」

「柄に会わないから良いさ」

 一行は基地の前まで足を急がせた。


 基地の扉は堅く閉ざされていた。

「これどうやって開けるんだ?」

「確かに、うんともすんとも言わなわね」

 その中空は自分の左手に数時間前に作っていたガントレットを手にはめた。

「ちょっとどいてろ」

「なんだよいきなり、つーかその手にはめてるのなんだよ」

「説明はあとだ、どかないと吹っ飛ぶぞ?」

 二人が下がったのを確認すると空は拳を堅く握りしめた。

 空の手についている機械から聞き覚えのある声が流れ始めた。

『チャージ開始。20%..50%..80%..100%チャージ完了です』

「はあ.....ふんっっ!」

 空の力の入る声とともに繰り出されたその拳は爆音とともに基地の大きな扉を吹き飛ばした。

「うまくいったな」

「何なんだよそれ、それにあの声」

「これは、殴った物体に大きな衝撃波を流して破壊する仕組みのガントレットだよ、もちろん声はリーに頼んだ」

「今度俺にも貸してくれよ」

「いいが、下手するとお前の腕が吹っ飛ぶぞ?」

「マジか.......」

 一行はやはり他愛も無い会話をしつつ基地の中へと進んでいった。

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