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残された人類は、外の世界に夢を抱く  作者: Regulus
1章〜王女と7人の戦士〜
20/38

侵入作戦:A

 老人の願いとともにミストの基地へと向かう一行。

 そこに着くにはそう多くの時間はかからなかった。

「ここだな」

 湖に隣接したその基地は、基地と呼ぶには大きく、それはまさに西洋の城を連想させるものであった。

 入り口には二台のタレット。基地の周りを巡回する兵士が4人。

「どうにも入れそうには無いわね」

「兵士はともかくあのタレットをどうにかしなくちゃね。」

「俺にいい考えがある」

 そういい空は背負って来た大きなバックパックから一台の小型の機械をだした。

「何だそれは」

「特に名前はないが、これは落下した周囲20mに微弱な電流を流す手榴弾みたいなものだ」

「それをどうするってんだよ」

「簡単だ。このご時世高性能な機械を作るのに必要な資材なんて無いからな。そこにこれを投げるんだ。回路なんてどうせ何かの使い回しだ、そこに電流なんて流してみろ、一瞬にしてパーだ」

 そういい、空はタレットの中心へとそれを投げた。

 見事に真ん中へと落ちたそれは周囲に居たクローン兵をも巻き込み辺り一帯に電流を流した。

「やるわね、電流は微弱どころではなかったけどね」

「ははは...」

「褒めてないわよ」

 申し訳なさそうに照れる空。その肩を押そうにも自分の手が出ないでいた海斗はその場で自分と葛藤していた。

 そんな海斗を見るに見かねたリーチャオが海斗の背中を強く叩き耳元へと近寄る。

「痛っって!何すんだよ!」

「あんたが辛気臭い顔してたからさ。本当は仲直りしたいんだろ?」

「そうだけど、俺にはそんな資格は....」

「資格なんて関係ないよ。今生きてるこの一瞬に出来る事をしなきゃ。後悔後先に立たずだよ。今あんたがしたい事をしなさい」

 海斗に優しい笑みを向け、リーチャオは海斗の背中を押した。

 最初は決心がついていなかった海斗、自分の中に一つの踏ん切りをつけ空に声をかけようと決心をした。

「な、なかなか良かったじゃないか。それと...ここ最近本当にすまなかった。俺もいい加減頭に血が上りすぎてた」

 その場で深く頭を下げ謝る海斗。

 空はそんな海斗をクスッと笑い手を差し伸べる。

「いい加減頭あげろよ。俺も悪い部分があったすまない。それでも別に怒ってる訳じゃなかったんだ。何て言うんだろ」

「ムキになったんでしょ?」

「ああ、まあそんなとこだ」

 空の手を取り起き上がる海斗。そんな二人を見ていたリーチャオが基地の方を見る。

 今まで笑顔だったその顔は一瞬にして青ざめた。

「ちょっとまずいかも」

「どうしたんだ?」

 リーチャオが指差したその先には基地から出てくる無数の兵士の姿があった。


 基地から出て来た兵士は止めどを知らずに出て来た。

「おいおいおいおい。まだ出てくんのかよ」

「とりあえずそこの草むらに隠れるぞ」

 一行は草むらの中に体を潜めた。


「なあ空、あれもう何個か無いのか?」

「あるにはあるがあと一個しか無い。どうにかして一カ所に集められればいいんだけどな」

「他になにか持って来てないのか?」

「あるにはあるぞ」

 空の鞄から出て来たのは、ガラクタばかりであった。

 唯一使えそうなものと言えば人数分のバケツに、ホース、麻縄に小型のポンプだけであった。

「なんでバケツとポンプなんて入ってるのよ」

「水が無い所に行く前に汲んでおこうと思って、お前達これのおかげで助かったんだからな」

「その節はどうも」

「とりあえずこれで何が出来るか考えましょ」

 三人が考えていると、海斗が何かを思いついたかのように二人の方を見る。

「いい案でも思いついたのか?」

「ああ」

「聞かせてちょうだい?」

「でもな、この考えじゃ誰か一人が危険になるんだよ」

「そうなれば俺が行くから大丈夫だ。」

「あの基地の隣に小さい湖があるだろ?まずはあらかじめそのバケツもしくはポンプで水をくみ上げ、そこに水をまいていてくれ。そうしたらそこに兵士を誘導するんだ。ここから先は何となく分かるだろ?」

 二人はその先の事にだいたいの予想がついていた。

「感電ね」

「やっぱりな。それでこれを投げるんだな?だがそう簡単に行くか?」

「無理だったら、まあ、その時はその時さ」

「まあ、それしか思いつかないんだし、とりあえずやってみましょ?」

 三人は基地の周りに固まっている兵士にバレぬよう湖のほとりまで向かう事にした。


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