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残された人類は、外の世界に夢を抱く  作者: Regulus
1章〜王女と7人の戦士〜
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旅商人

 女が襲撃して来た森での一件から1日が経った。

 激しくも無情な敗北を期したはじめての戦闘は彼らの心身を共に痛めつけていた。

 一行は傷が癒えないうちに森から出発していた。

「なあ、まだ着かないのかよ」

 後部座席にいる重傷の海斗は五分に一度そう言い前部座席の椅子を蹴る。

 その度に悲痛な叫びをあげていた。

 しかし、空の耳に海斗の叫び入っていないかった。

 空は襲って来た女について一人考えていた。

「あいつは一体何者だったんだ?」

 思わず口から言葉が漏れていた。

「まだ考えていたのか?」

「いや、まあ、うん。そうなんだ」

 あの女は一体何者だったのか、なぜあの扉は消えたのか、扉の中にあったあの光景は何だったのか。

 空が時間をかけ考えを重ねる度に謎は謎を呼び新たな謎となり一行に大きな重圧となっていた。

「なあ、海斗。お前はなにか知らないか?」

 海斗はいつの間にか眠りについていた。

 

 しばらくの間寝ていた海斗が目を覚ます。

「おー、やっと起きたか。さっき聞こうと思ってたことがあるんだ」

「ん?なんだ?」

「あの女についてなにか知らないか?」

 空は昨日襲って来た女について未だに考えがまとまらずもやもやしていた。

「俺が知ってる情報だと、あいつはおそらく戦闘型だな」

「戦闘型?」

「俺も風の噂に聞いた程度だが、クローンの奴らにも二つのタイプがあるらしい。そのうち普段俺たちと変わらない暮らしをしてるのが『日常型』。これが見分けがつかない方。そしてもう一つが『戦闘型』。おそらくあの女がこのタイプだろう、一見して変わりはないように見えるがよく見ると首の裏にバーコードがあるらしい」

「と言う事はあの女の、首元に」

「俺も倒れる寸前だったからな、良くは見え無かったがアレはまぎれも無くバーコードだった」

 海斗の話を聞いたヘンリーは道中に車を止める。その顔は動揺していた。

「おい、どうしたんだ?」

「そんなはずはない」

そうつぶやいた。

「どういう事だ?」

「以前俺があの研究所にいた事は話したよな」

二人は思い出し頷く。

「俺があそこにいたときにはそんな物無かったんだ。俺の知っている男が作っていたのは、生活や運動にしか適していない、海斗の言うところの『日常型』だったんだ」

「だが俺たちが戦ったのはそれでは無かった」

「そうなんだ。『日常型』は基本的には人間の骨と同じ素材同じ形で作られているんだ。しかしあの女の動きといい、あれじゃあまるでロボットないしアンドロイドの類いになる」

「だったら、なんでそんな物が作られたんだ?」

「さあ、だがクローンは俺たちと同じく学習し知恵をつける。作ったって不思議じゃない」

 ヘンリーは再び車のエンジンをかけ直し車を動かす。

「まあ、まだ手がかりも少ないんだ、考えるより早く次の目的地にいこうぜ」

「そうだな、目的地まであと少しだ考えるのはもう少しあとでもいいかもな」

三人を乗せた車は次の目的地へとたどり着いた。


 三人を乗せた車がたどり着いたのは一つの街だった。

 その街は決して裕福とまではいかないが空と海斗がいた街よりかは賑わいを見せていた。

「どうやらここは旅商人や吟遊詩人、情報屋などいろいろな職種の人々が集まる街らしい」

「さすが空、情報が早いな」

「全く感心するよ」

 空が褒められ照れているとフードをかぶった一人の少女が話しかけてくる。

「あら、旅の人?」

「そうだが?」

 三人が旅人だと言う事を伝えると、少女は安心しフードを取った。

「じゃあ、あなた達ね森で奴らと戦ったってのは。私の名前はリーチャオ。旅商人兼武闘家をしている者よ」

 リーチャオと名乗るその少女は長い黒髪をなびかせ彼らの目を虜にした。

「と、ところでリーチャオ殿」

「呼び捨てでいいわ」

 珍しく緊張している空を物珍しそうに見る二人。

 空は一度二人を睨み再び話を再開する。

「では、リーチャオ。なぜ俺たちに話をかけて来たんだ?」

「単刀直入に言わせてもらうわ。私も旅の仲間に入れてくれないかしら」

「なんで俺たちといっしょに?」

「ここでは話せないわ。それに其処の彼も怪我をしてるようだしね」

「気遣い痛み入る。俺は空。其処のおっさんがヘンリー、そして其処の怪我人が海斗だ。よろしく」

「こちらこそよろしく。病院はこっちにあるわ着いて来て」

 

 三人はリーチャオに導かれるまま病院へと向かった。

キャラクター紹介は次回します。

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