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押してダメなら押し通すの件

今日もよろしくお願いします!

「あの、その、今日は本当に・・・その・・・」

今、俺の横でアイリーンがもう、寝るだけの恰好でモジモジ状態だ。

「その、本当に・・シルフィーヌ様には失礼を・・・ごめんなさい!」

ワズナー邸宅の俺の部屋の俺のベットの上でそう言ってアイリーンは正座をした状態で俺に頭を下げる。


俺とバルトがワズナー邸に戻るとアンナ様とワズナー伯爵は俺達の無事の帰還を待ちわびていたのか凄く喜んで迎えてくれた。

そしてしばらくすると皇帝からの書状を(たずさ)えた早馬が来た。

それの内容に二人は血相を変え凄い勢いで家の者達に指示を与え出すとすぐにアイリーンを連れたハルクが帰って来たのだ。

もうワズナー邸は上を下への大騒ぎだった。

それも嬉しい悲鳴を上げたアンナ様とワズナー伯爵の!!

そんな両親の顔を見てハルクは驚きながらもアイリーンを妻に向かえることを俺とバルトを含め家の者に報告すると皆が一斉に歓喜の声を上げた。

その声にハルクとアイリーンは照れながら見つめ合うと凄く嬉しそうに笑ったのだ。



そして一段落したその日のもう遅くになるのだが


「え?なにが?」

俺は頭を下げるアイリーンの横でうつ伏せに寝っ転がったまま、ニヤニヤ笑いアイリーンの顔を見て答えた。

「い、意地悪なのですね・・・シルフィーヌ様も・・・」


唇を尖らせ赤い顔で俺に拗ねても知らないよ~っ!!そんな顔はハルクにしなよ?


「何の事かしら?それにどうして私のベットで寝るのかしらぁ?アイリーン様は?二人じゃ狭いからハルクの部屋に行って下さらない?」


ちょっとサロメの真似をして悪役令嬢ぶってみる。


おお!結構、楽しいぞ!これ!

ヒロインいたぶる悪役令嬢の気持ち、わからなくはないぞ!!


「意地悪・・・シルフィーヌ様・・・わかっててそんな事・・・!」

「え~?何を言ってるのかしら?早く、行って下さらない?ハルク待ってるでしょうし?」


ああ、ダメだ、真っ赤な顔で照れながら拗ねるアイリーンが可愛くて虐めてしまう!!

だからその顔はハルクにしなよって?


「ハルク様は『明日は早いから今日はシルフィーヌの部屋で休め』って言われたのです」

うつむいて視線をそらし更に唇を尖らせモジモジするアイリーン。

俺に拗ねるな、そう言って部屋に入れないハルクを責めろ!


「え~?私、聞いてませんよ?そんなの。ハルクの照れ隠しに決まってるじゃないですか?ほら、今日ハルクのベットに潜り込まないとまたハルク、踏ん切りつかないで迷っちゃうかも~?いいのかな?いいのかな?」

ふんふん、鼻歌を歌って、足をバタバタさせ俺はそうとぼけてやる。


「え!?そうなのですか?シルフィーヌ様!!」

いきなりガバリと俺の肩を掴み俺に顔を寄せるアイリーン。


「え!?あ・・・ハルクの性格じゃ、それ、あり得るわよ?」


「・・・・・ほ、本当・・・?シルフィーヌ様・・・」


あ、泣きそうだ・・・どんだけ兄貴、アイリーン不安にさせてんだよ?


「ああ、もう!邪魔くさいな?ハルクといい、アイリーン様といい。好きなら明日どうのとか言わずにサッサと胸に飛び込む!!」

俺はバカらしくなって身体を起こすとアイリーンの両肩を掴むとクルリと身体をひっくり返し、背中を押し出す。

「だって、だって、今日の事だって、絶対呆れてるわ・・・ハルク様。ひょっとして、やっぱり、今、シルフィーヌ様が言ったみたいに迷って・・・?」


あ、また、下向いた。ああ!めんどくさ!


「ちょ!マジ、勘弁!それ、勘弁!それにハルクは一度言った事、そんなに簡単には・・・あ、でも、あ・・・女の事は・・・あ~」


ん~兄貴、恋愛は優柔不断のとこあるからな・・・


「な・・・なんなんです!?シルフィーヌ様!?女の事って!!」

アイリーンは素早く振り返ると俺の胸倉をつかむ。


あ、そこは食らいつくんだ。


「え・・・あ、いやぁ?その~」

「ま、まさか・・・他に好きな方が?!あ、何か、さっき『俺はいつも先に求婚される』って言ってた・・・だれ?・・・」

「え・・・?そんな事言ったの?ハルク?」


一馬、あいつ、バカか・・・?それ、絶対、なぎねぇの事だよね?前世の話だよね?


「誰に!誰に求婚されたのです!シルフィーヌ様!私、やっぱり、私、やっぱり!」


わぁあああ、紫水晶の瞳がこぼれそうだよ!泣くな!泣かないでくれ!!


「ああ、泣かない!泣かない!兄貴、信用してあげて!大丈夫だから!今日、ハルク言った事は本当に本当だから!心から愛してるのはアイリーン様だけだから!!」


「あにき・・・?」

お、涙、引っ込んだ。セーフ!!


「あ・・・そうか・・・そこからか・・・ったく!!バカハルク!バカ兄貴!!」

「・・・へぇ・・・??」

あ、その、間抜け顔、サロメとよく似てる・・・くっそっ、かわいい・・・!!





「え!!・・・シルフィーヌ様とハルク様は兄弟・・・?それも・・・前世・・・???」

「まあ、信じられないだろうけどね?でも、もう、サロメとセルフィ様は知ってるし、いずれハルクにも聞くだろうからね?それにシルフィーヌとハルクの関係、ちゃんと知っとく方が安心だろ?アイリーン様も」

「・・・で、前世での恋人からの求婚??さっきハルク様が言ったのは・・・?」

「そう。だから今世じゃないから。今世もモテるようだけど兄貴、今世はアイリーン様だけだから」

「・・・・・・その方は?その前世の方・・・結婚したの?ハルク様と?」

「してない。ハルクが、いや、兄貴が振られた。その人が振ったの、兄貴の事を」

「どうして?」

「どうしてって・・・・・・『私は一番じゃなかった』って・・・その振られた人が言ってたよ」

「・・・シルフィーヌ様は知ってるのね・・・その人を・・・」

「ああ、弟だったからね?兄貴であったハルクと一緒に住んで一緒に働いてたからね?だから知ってるよ?色々ね?」

「・・・・・だから・・・シルフィーヌ様・・・だから」

「ああ、そりゃ、同じ世界から来たし、もと家族じゃん?それに何て言っても弟!!凄く仲が良かったしね?」

「ハルク様は・・・私より前世のシルフィーヌ様が良かったのね・・・」

「ああ、違う、違う!『印』だよ。ハルクにも聞いたらいいよ?ほら、ハルクと同じ『印』がシルフィーヌである俺にもあるだろう?だから心配してるんだよ、ハルクは。それに今までアイリーン様に告白できなった理由もそれだよ」

「え・・・?」

「ダグラス家の『印』の事は解ってるかい?」

「ええ、カルロス兄様のもセル兄様のもお父様、先祖の『印』まで全て理解しております。だって・・・ハルク様の『印』を理解したかったのです。でも・・・ハルク様の『印』の事を兄達に尋ねれば、カルロス兄様は『必要になればハルクが言う。心配せず待て』と言い、セル兄様も『何も知る必要はないよ?アイリーンが信じて愛して待てばハルクは必ず戻って来るから』って・・・」

「そう。なら、俺の口から聞くのは公平(フェア)じゃあないよな?今からハルクに聞けばいい」

「・・・聞いていいのでしょうか・・・?」

「結婚するんだろう?なら、知る権利がある。堂々と聞きなよ?それに」

俺がニヤリと笑う。

「な、なんです?その笑い・・・シルフィーヌ様・・・凄く、セル兄様みたいなんですけど・・・」


「知らなきゃもっと明日が辛いよね~?ほらほら、サッサとハルクの部屋に行っていろいろハルクに聞く!聞く!あ、そうだ!!」

俺はベットから飛び降りるとさっき整理した衣裳部屋(クローゼット)に走って行く。


「あの、あの、シルフィーヌ様・・・?だんだんお顔が・・・その・・なんか・・企んでます・・・・?」


戻った俺は戸惑うアイリーンにそれ(・・)を押し付けて着替えさせるとついでに『おまじないだ。必ずハルクに言え』とある言葉を教えるとハルクの部屋の前までアイリーンを引っ張って行った。



俺はハルクの部屋のドアを「兄貴!入るよ!」って怒鳴って突然バタンッ!と開け、また閉じた。

アイリーンを部屋の中に押し込みドアを閉めたのだ。


「何だ?こんな夜中に、亮・・・?」


寝室から顔を覗かせたハルクは薄暗い部屋の入口に立つアイリーンを俺だと思い近づき、顔を覗き驚く。


「アイリーン・・・それになんて格好だ・・・」

「あ、これは、シルフィーヌ様が・・・」

ハルクは自分の肩に引っかけたガウンを脱ぐと急いでアイリーンを包む。


役にたったかな?サロメから貰った、スケスケネグリジェ?だって、あれ、アイリーンの方が似合うよね?

絶対!!フフン!!

俺は上機嫌で久しぶりに熊さんの歌をハミングしながら自分の部屋に戻った。


「あの、バカ弟!」

ハルクが怒りながらもアイリーンを大事に抱き上げる。

そしてアイリーンの顔を覗き込むと

「で?他には何てアイリーンに言ったんだ?あのバカ弟は?」

「ばっちこい!!」

「は?」

「ばっちこい!ハルク!!ですわ!!」


「・・・・・・」


「ばっちこい!!」


「いい。もう、言わなくていい。いや、二度と言うな。忘れろ、その言葉は」


「・・・ダメなのですか?だってシルフィーヌ様がハルク様に言ったら叶うおまじないだって」


「・・・・・何のおまじないだって?あいつ、ほんとに・・・」

「・・・こうしてハルク様が私を部屋に入れてくれるおまじない。ならもっと」

「いい!わかった、もういいから!今夜は俺の横でバカ弟の話でも聞いてくれ。ほら、あっちに行くぞ」

「え?そっち?そっちって・・・あ、あの・・」

「・・・・・・アイリーン」

「あ・・・ハルク様・・・」

「また、様付いてる。ハルク」

「あ・・・はい、ハルク・・・」

「ん、上出来」

そう言うとハルクは抱き上げたアイリーンの唇を自分の口で塞いだ。






ああ、甘くて砂糖吐きそうだ・・・(胸やけしたらすみません)

今日も読んで頂きありがとうございます!


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