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愛しい君へ2の件

今日はハルクとアイリーンの恋の行方の続きで。

今日も長くてすみません。

よろしくお願いします!

「アイリーン・・・」

ハルクを見上げたアイリーンの瞳には涙があふれ今にもこぼれそうだ。


「こんな事を言えばハルク様に嫌われるのはわかっていました。だけど貴方は言わなくてもシルフィーヌ様と行ってしまう・・・なら・・なら、どんなに無様でもいい、言って貴方を困らせて少しでもこうして貴方に構ってもらいたかった・・・そして・・・そして私に引導を。ハルク様、お前など嫌いだと。だから俺はお前の目の前から・・・」


アイリーンがうつむき嗚咽が漏れる。

そして声を絞り出した。


「だから!目の前からいなくなるんだってっ!!」


「・・・・・もういい」


言葉とは裏腹にアイリーンはハルクにきつく抱きつき背中に手を回す。

そして再びハルクの胸に顔を埋めて肩を震わせた。


「・・・アイリーン、俺は・・・お前が思ってるより不器用な男なんだ」

「・・・知って・・ます・・」

「・・・だからお前を上手く扱えず、随分、傷つけてきた」

「ええ・・・ええ、凄く傷つきました、いきなりの婚約破棄」

「その事については許してくれとは言わない」

「許しません。そしてシルフィーヌ様を連れ帰ってまた私を傷つけた・・・」

「アイリーン?ではそんな俺にもう愛想が尽きただろう?それに呆れた事だろう?」

「ええ!とっても!それに凄く腹が立っています。貴方の仕打ちにもこの様に打ちのめされてもまだ貴方に・・・まだこの様に無様にすがりつく自分にも!」

アイリーンは抱きついた腕に力を入れハルクを強く抱き締める。


「アイリーン・・・ではお前が俺に引導を渡してくれ。どの様な仕打ちでも構わない。せめてもの詫びだ」

「ひどい!ひどい!ひどい!最後まで貴方は・・・!(わたくし)が欲しいのは詫びじゃない!まして情けや哀れみでも!ご自分で考えて!そして答えて。私に貴方が答えて!」


「・・・・・・・・・言っていいのだろうか?・・・この俺が・・・?」


興奮して胸に顔を擦り付けて泣くアイリーンの頭を思わず撫でている自分に戸惑いを隠せないでいるハルクが自問する。

そしてしばらくアイリーンが泣き止むまで胸にそっと抱えたまま自答自問を心の中で繰り返す。


やっとアイリーンの肩の震えが止まった。


「もう、いいか?アイリーン。では」

「い、嫌!嘘です!そんな答えなど聞きたくない!・・・そんなこと!」


アイリーンはうつむいたまま目をきつくつぶり自分の両耳を両手で押える。


「お願い・・・!言って欲しい言葉はそれではないの・・・お願い、ハルク様、お願い・・・」


ハルクがアイリーンの両手をそっと耳から放す。

そしてその両手を自分の両手で強く握った。

咄嗟にアイリーンは頭をイヤイヤと振る。

その拒絶するアイリーンの耳元にハルクは顔を寄せると囁いた。




「ずっと愛してきた。そしてこれからも愛して行く」



「・・・・・・・・・えっ?」


顔を上げたアイリーンの瞳をハルクが捉えた。


「この件が片付き無事にお前の元に戻れたなら、俺はもう一度お前に求婚するつもりだった」


「えっ?・・・」


「まったく・・・俺って奴は本当にダメな男だよな・・・?いつもいつも先に求婚される。情けない。愛している女を泣かすまでちゃんと言葉に出来ないなんてな?」


「・・・・・・」


「それにまた“無事戻れれば”とか言い訳をして逃げていた自分に気付かされたよ。お前がこうして強く俺を求めてくれる事が、お前のその強い思いが今の俺には必要なのだと言うことも。お前が俺を必要としてくれる気持ちがこの世界での俺の存在意義なのだと」


「・・・・私は・・・・」


「アイリーン、どうかこの俺にこの世界での居場所をくれないか?いつもお前の横に立ちお前の両手をこの様にずっと繋いでいいのはこの俺だけだと言ってくれないか?」


「・・貴方がいなければ私は呼吸の仕方もわからなくなるの・・貴方がいなくなるなんて考えるだけで胸が苦しくって・・・どうしようもなくて・・・・」


「・・・アイリーン」


ハルクがそっとアイリーンの両手を自分の首に回させると腰を強く抱き寄せる。

アイリーンがハルクの頭を抱きかかえる様に首元にしな垂れかかる。


「・・・ハルク様、私の方こそお願い・・・いつもこうして側にいて。それだけで私はちゃんと呼吸が出来る。こうして貴方に触れて貴方が私の名前を呼んでくれるだけで私は生きていけるの。貴方が私を必要としてくれてるなんて・・・とても嬉しい・・・どうかお願い、このままずっと一緒にいて下さい、ハルク様」


「ああ、アイリーン、愛しい君」

「ハルク様、私の最愛のあなた」


ハルクがアイリーンを強く抱き絞めるとアイリーンもハルクの頭をぎゅっと抱き締めその瞳からはとめどなく涙が流れ落ちた。

しかしその口元には微笑が広がっていた。






「俺の大事な妹を泣かすなんて重罪だな?ハルク」


背後からの突然の声にハルクが驚き振り返る。

アイリーンもその方向を確かめる。


そこにはいつの間に入って来たのか扉の内側に持たれて腕を組んでいるカルロス皇帝がいた。


その顔は凄く不機嫌だ。


急いで二人は離れソファから立ち上がる。


「それにアイリーン、宮殿内で男に抱きついて廊下で戯れるなど何と言う振る舞い、前代未聞、言語道断だ」


「いや、カルロス、それは俺が」

「いえ、お兄様、それは勝手に(わたくし)が転んで」


「いいわけなんぞ、俺は聞かん!おまけに部屋に男を連れ込み抱き合ってるなんてなんと嘆かわしい・・・もう、お前は不埒過ぎてどの国にも嫁には出せんな?」


「お兄様!違うのです、お兄様!」

「カルロス、その事についてはだな」


「責任を取れ、ハルク!!アイリーンを今すぐお前の屋敷に連れて行くがいい。そして明日からの任務、アイリーンもハルクに追随(ついずい)し、逐一、状況を俺に報告しろ。わかったな?」


そう言うとカルロスはニヤリと笑う。


「お兄様・・・?」

「なんだ、それ・・・カルロス?」


さらにカルロスはニヤニヤしながら二人に命令口調で続ける。


「あ、それとな?無事に帰れば結婚式は盛大にしてやる。明日からのオールウエイ国入りは決して、決して!婚前旅行ではないからな?いいな?任務だ、任務。ハメを外して子供など先に作るなんてのは任務外だからな?まあ、出来れば仕方がないが・・・ん、以上だ、ハルク。では、サッサと連れて行くがいい。いつまでもイチャイチャと目障りだ。宮殿の皆の規律が乱れるわ!」


カルロス皇帝はそう、言うだけ言うとシッ!シッ!と片手で二人を払うような仕草をしてドアの向こうにサッサと消えた。


「・・・ひどい・・・わ、お兄様・・・私、厄介払いされたみたいですわ・・・ハルク様」

「ああ、子供ってお前もか・・・カルロス・・・それにひどいな・・・凄いこじつけでひどい期待してるよな・・・?これは・・・仕方がないので俺が貰って帰るとしようか・・・アイリーン」

二人はカルロスが出て行った扉を見つめながらほとんど呆然状態だ。


「え?何をです?」

アイリーンが横に立つハルクを見上げる。

「何をって・・・お前だろう・・・?」

ちょっと頬を染めアイリーンを見下ろしハルクが答える。

しばし二人はお互いを見つめる。


「え?私、貰われるのですか?ハルク様に?」

「お前は何を聞いてたんだ?俺はお前を連れ帰り責任を取る。そしてお前は明日から俺と一緒に任務だ。それもオールウエイ国に出かけるやつな?」

「・・・・・そんなっ!急に!!」

「では着替えの用意とか、旅行に必要な物を急いで用意するとしようか?」

「いえ・・・ハルク様、違います・・・その、旅支度の事ではなくてですね?その、準備は準備でも、その・・・あの・・心とか、体とか・・・あ!」

アイリーンは真っ赤な顔で下を向いた。

「・・・お前は別に今まで通りでいいから。ああ?でもな?一つだけ直してくれないか?」

「は、はい?何でしょう・・ハルク様?」

「それ」

「え?」

「様、いらない。ハルクでいい。呼んでみろ」

「・・・・・む、無理、それ、無理です。それ・・・」

「じゃあ、俺も今日からレイモンドみたいに〝姫様″で行くから」

「あっ・・・嫌、それ、嫌です!アイリーンって呼んでハルクさ」

「ハルク」

「・・・・・・・ハルク・・・・・」

「ん、アイリーン」


嬉しそうに笑ったハルクを見てアイリーンはいきなり背中を向けるとその場にしゃがみ込む。

そしてアイリーンは真っ赤になった顔を両手で覆い小さな声で呟いた。


「や、やっぱり、無理!無理ったら無理・・・」


そんなアイリーンを見て

ああ、こいつ、小さい時から俺に対して異常に緊張しっぱなしだったなと思い出して苦笑した一馬だった。






・・・一馬、手強かった・・・

(なんとかまとまっているのだろうか・・・不安だ)

いつもこんな筆力不足な文章で申し訳ございません。

お読み頂き本当にありがとうございます!

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