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愛しい君への件

今日はちょっと前の一馬と亮の会話に戻ります。

よろしくお願いします!

「兄貴、この間さ、アイリーンは俺なんかいなくても大丈夫的な事言わなかったかな・・・?」


時は帝国へ帰還する為に帝国の貿易船に俺、兄貴、バルトが乗り込んだ晩にさかのぼる。


各自小さくても個室をあてがってもらった俺達は夕食を済ませ、俺はハルクの部屋を一人で訪ねた。


「ああ」

「みんなさ、このカシューダ王国の件が済んだらハルクはアイリーン姫を褒美に貰うと思ってる訳だろ?なんでそうしないんだ?」

「・・・・お前、俺になんでって聞くんだな?相変わらずお前は」

「残酷だ、か?兄貴は今の俺が兄貴の側に居たいと言えば、本当に俺を抱いて子供を産ませる気なのかよ?」

船室なので狭くベットに横並びで座る。


「お前、ストレートすぎるぞ。ムードもなにもないな?」

「兄貴相手になんで盛り上げなきゃなんないんだよ?言ってるだろ?こんな状況でも安心してハルクと二人きりなのはハルクは一馬で俺の兄貴だから。俺は一馬が兄貴だから安心出来るし家族だから好きなんだ。何度も言わせるなよ?今、ベットに押し倒されてもそんな事絶対しないし出来ないからな?」


「・・・俺は亮、前世で〝なぎさ″が一番好きだった」

「ああ、なぎねぇ!俺もなぎねぇが一番だったよ!兄貴はなぎねぇなら上手くやって行けるかもって思ってたな。なぎねぇ、懐かしい!」

「なぎさに俺は亮ちゃんも一緒でいいから一緒に住まないかって言われたんだ」

「えっ?それ、別れる前?なぎねぇは二回付き合ったよね?ああ、思い出したよ。初めは『一馬がめんどくさい』って俺に言って、2度目の時は俺が『なぎねぇ、めんどくさかったんじゃないの?』って聞いたら『うーん、他の奴と付き合っても一馬といつも比べてるのね?そんなに良かったのかな?一馬って?って思ったらもう一度試してみようかななんてね?思ったわけ。動機、不純過ぎる?』って笑って返されたよ。なぎねぇ、性格男だったよね?」

「あいつらしいな。そんななぎさに俺は亮が一緒ならいいかって簡単に考えて、でもなぎさが俺の腕の中で亮ちゃんみたいな子供が欲しいなって言ったんだ・・・解ってる、俺も意識してたし、結婚するならなぎさが一番かもなって思ってたよ。けどな、その時先に思ったのは俺がなぎさと家族をもてばお前とはいずれ離れるんだって事だった」

「そんなの俺がなぎねぇと兄貴が所帯持つ時点で俺用のマンション借りるさ。それくらいは働いてたつもりだけどな?俺」

「だからだ。なぎさと住むより俺は亮が居なくなるのが嫌だった訳だ」

「何だよ、それ?・・・俺が好きな彼女作ってある日突然出て行く設定無しかよ?それに兄貴とは事務所一緒だから毎日嫌でも会うだろうが?」

「お前が弟である限り俺とお前の接点はそこだけなんだなって思った・・・それにそれ以上望めばお前を一生失うと解ったんだ。俺は」

「・・・なぎねぇより俺と暮らす方が楽だったからだろ?」

「亮、俺がお前にキスをしたの、覚えてるか?」

「・・・止めろよ、その話。思い出して辟易(へきえき)した。不可抗力だよ。それに兄貴も酔ってたじゃないか」

「あの時のお前、俺はお前にとって兄以上でも以下でも無いんだなって解ったよ」

「なんだよ?酔ってなかったのか・・・?マジ、俺の反応確かめたのかよ?最低だな。一馬」

「ああ、最低だ。それくらい俺はお前が欲しかった。なぎさではなく亮を選択した・・・けどな、俺はあの時のお前の顔を見てこれ以上はお前を失うと思い常識の範囲内にとどまった訳だ。お前と一生一緒にいる方法は兄弟としてだけだとな」

「・・・ああ、それでこそ兄貴だよ。今世もそう願いたいよ」

「・・・それにな、なぎさが子供が欲しいと言った後、俺が即答出来なかったのを見てなぎさは『やっぱり、一馬は亮ちゃん一番なんだ。かなわないな?』って笑ったよ」

「・・・兄貴がなぎねぇと別れたって知る前の晩になぎねぇいきなりやって来て自宅で婆ちゃんが送ってくれたかりんのジュース、俺と二人で飲んでたんだ。兄貴待ちながら。なぎねぇは酎ハイにしてたからだけどえらく速く酔っっちゃって初めて泣いたんだ。『私は一馬の一番じゃないの。解ってた。それでいいと思ってやり直したのにねぇ?一馬は気付いてくれないの。やっぱり、あいつ、めんどくさい』って泣き笑い」

「・・・俺は、アイリーンをなぎさの二の舞にはしたくなかった。だからアイリーンを初めて見た時に俺は前世を、お前を思い出し愕然とした。そしてどうしょうもなくハルクがアイリーンに惹かれていくのが許せなかった」

「だから俺を探した?」

「・・・ただ単にお前に会いたかった。会ってお前が無事で幸せならいいと一度は割り切ろうとしたんだ。だがそんなに単純な事ではないとシルフィーヌのお前に会って思い知らされた。お前に『印』があると解り余計にお前をこの世界に一人で置くわけにはいかないと強く思った」

「『印』が俺の『印』が兄貴と同じになったからか?」

「ああ、俺がシルフィーヌの運命を狂わせた」

「違うよ、兄貴。この顔に産まれた時からこの『印』が生まれつきある時点で俺はこの世界で今、この場面を迎えているのは必然だったんだ。だから兄貴のせいじゃない。だけどな、俺はこの世界に生まれて来て良かった事もたくさんある。前世で声優で兄貴と一緒で平和な日本の平凡な家族だったけどその日常が凄く恋しくもあるけど、けど俺はレオリオ王子に出会って初めてほっとけないって思ったんだ。凄くわがままで強引なんだけどさ、凄く俺を愛してくれてるんだ。ちょっと、ストーカーじみてるし、ヤンデレなんだけどね?」

「・・・お前、そんな奴のどこがいいんだ?俺とアイリーンみたいにゲーム補正じゃないのか?」

「ハハッ、本当、俺も初めはそう思ってたんだ。きっと一目惚れはゲーム補正のせいだってね?けどさ、始まりはそうだったかもしれない。でもさ、この世界で俺は泣いて笑って文句を言って、喧嘩して、間違いなく自分の意思で考えて判断してここまで生きて来た。それはAIにも誰にも選択させられた訳じゃない。そしてその傍らにはレオリオがいた。あいつだって俺と同じで必死に考えてあがいて俺と一緒に生きていく道を模索してやっとここまで来たんだ。あいつはプログラムで作り上げた感情の無いデーターなんかじゃない。感情をむき出しにして俺と渡り合ってきた。俺はレオリオと出会えて良かったよ。そしてこれからもあいつと一緒に俺は俺が大事にしている人たちがいるオールウエイ国を守って行くつもりだ。あいつと切磋琢磨してさ」

「・・・・・もう決めてるのだな」

「ああ、だからレオリオがどんなものになっても俺が最後まで一緒にいる。俺が『セクメト』になってもあいつなら俺を受け入れる」

「・・・お前には俺は必要ないのだな?」

「あるよ。もちろん、ある。俺とレオリオが人の道を外れた時、ためらいなく殺せるのは兄貴だけだからな。そして、兄貴が『シヴァ』になった時俺がこの手で始末をつける。どうだい?いい案だろ?」

「・・・俺もお前もやはり『破壊』の神なのだな・・・」

「違う。『創造』の方さ。新しいこの世界を創造して行くのは俺達だ。兄貴がこうして俺を探して俺に色々教えてくれて一緒に考えてくれたから前途が見えて来たんだ。前世から家族の兄貴だから出来ることだよ?大事な兄貴だけ。大好きだよ、兄貴。俺はずっと、兄貴の弟だよ?」

俺は横に座るハルクの肩に手を掛ける。ハルクが顔を上げ俺を見つめる。

「やっと、他人で女になったお前を手に入れたと思ったのだがな・・・また弟か・・・俺はまた」

「ハルクにはアイリーンがいる。アイリーンもプログラムされた感情のないデーターではないだろ?兄貴の見て来たアイリーンがゲーム通りのヒロインではないように、一人の人間として兄貴の兄貴であるハルクをアイリーンは見て来ているはずなんだ。ゲームのハルクじゃない。兄貴のハルクだよ。間違えるなよ?兄貴」

「・・・解らない。俺はお前のように感情むき出しであいつとやりあった事はない。いつもあいつを傷つけないように接して来たつもりだった。だが、婚約破棄をした時のあいつの顔は一生忘れない。そして今更それを覆す気もない。それ程、俺はあいつを傷つけたんだ。なぎさで学んだはずだったのにな?上手くやれない。俺は根っからそう言う男なんだろう」

兄貴は視線をそらすと大きく溜息をつき本当に頭を抱えた。

「なに、色男ぶってるんだよ?ったく!兄貴は本当にモテる割には恋愛下手(ベタ)だよな?いっつも思うんだけどさ、素直になったら?ハルクがアイリーンに惹かれるのはさ、兄貴が、一馬が気にしてるんだよ?アイリーンの事を。例えばそれが今は保護者的なものかもしれない。けど、ずっと、心のどっかで引っ掛かってるのは、どんな形であれ将来に渡って側で見守りたい証拠じゃないのかな?今の俺みたいにさ?」

「・・・・・違う」

「わけないだろ!ほんと、頑固なんだから!バカ兄貴!じゃなきゃ、5歳の時、アイリーンほっとけば良かったじゃないか?」

俺は思わずハルクの頭を(はた)いた。

「てッ!叩くな!亮!俺は可愛い女の子はほっとけないんだ」

「言ってわからない奴はどつく!!そんでレイモンドみたいな気障(キザ)な事を言う野郎はもっとどつく!!」

「その、関西人特有のノリツッコミ、誰に教えてもらったんだ、ったく!」

「なぎねぇ」

「・・・ああ、あいつ大阪人だった・・・」

あ、兄貴、余計頭抱えた。


「なあ、バルトの『ウロボロス』を救いたい。兄貴、力、貸してくれるよな?」

「ああ、その事はもちろんだ。俺達の将来に関わる事でもあるからな」


バタンッ!!


と急にドアが勢いよく開いた。


「シルフィーヌ!!20分経った!!」


バルトがドアを蹴破るように入って来たのだ。


「びっくりするだろうがっ!?バルト!!」


ハルクが本当に驚いたようだ。


「あ・・・済まない、ハルク。シルフィーヌがその・・・心配で」

「ああ、私が半時たったら部屋に戻ってるか確認してって言ったから。ね?バルト。でもまだ20分だし、ハルクの部屋のドアいきなりは開けない」

俺が人差し指をバルトに立てて注意する。


「バルト、まさか俺がシルフィーヌを手籠めにすると思ったんじゃあないよな?お前?ん?」

あ、なんかハルク、目が光ってないか・・・?

「いや、その、別に俺は・・・」

「それに亮、お前も俺が本当に襲うと思ったからバルトにそう言ったんだよな?」

あ、こっち見た。凄く、光ってるよね?


「ま、まさか?やだなぁ・・・保険、保険。兄貴、馬鹿力だからさ?じゃ、おやすみ!さ、行くぞ、バルト」

俺はサッサとバルトの手を握って部屋を後にしようとした。


「待て、お前ら。二人揃ったら言いたい事が山程あったんだ。特に亮、謹慎の件だがな?罰則でもいいんだぞ?」


あ、前世の仕事に厳しい一馬になってるよ・・・なんか、ルカと似てるよ?その背景どす黒いところ・・・サロメ、やっぱり二人は似てるかもな・・・黒くなるところ。



俺達は次の日から貿易船のだだッ広い甲板拭きの仕事を帝国に着くまでみっちりやらされた。


暑い!!甲板!!鬼!兄貴!









只今、一馬、説得中。

お読みいただきありがとうございました。


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