最愛の貴方への件
今日は先にアイリーンとハルクの恋の行方を。
よろしくお願いします。
あれから一週間後、ハルクと俺とバルトが先に帝国へと帰還した。
後の皆はカシューダ王国に残りまだ国の整備に力を貸している。
アレン、サロメは最後までハルクとフリードに詰め寄っていたがその度にフリードに仕事で追い込みをかけられていた。ご愁傷様です。アレン、サロメ。
「よく戻った。そして大義であった、ハルク。報告はフリードから受けている。後の事は任せて十分休むがいい。して、何を望む?」
謁見の間で大臣達が見守る中、カルロス皇帝が今回のカシューダ王国での働きについて総指揮官であったハルクを労う。
「そのお言葉で十分かと」
下座のハルクは皇帝と向き合いそう答える。
そんなハルクにカルロス皇帝はニヤリと笑い、
「お前がその様な殊勝な態度に出るときは何か望むことがある証拠であるな?遠慮なく申せ。申せば我が許そう。どのような願いでもな?」
「・・・では一つ、この二人の言葉に耳を傾けては下さいませんか?」
「構わぬ、申せ。そちらもこの戦いに大いに貢献したとの報告があった。褒美を取らす」
その言葉に俺はハルクの横に並び出ると会釈をしてからカルロス皇帝を見上げて言葉を発する。
「恐れながら皇帝陛下、2ヶ月の休暇と我が祖国への一時帰国の許可を頂きたく」
「ふ~ん?して、シュナイダー中将の方は?」
「皇帝陛下、私もオールウエイ中将と同じにございます。2ヶ月の休暇と我が祖国への一時帰国の許可を頂きたくお願い申し上げます」
「ならぬな?この国に留まる約束は1年である。この後もハルクについて仕事に励むがよい。他には?」
「「ございません」」
俺とバルトは同時に答える。
「では、ハルクは?」
「ございません。ではこの後も急ぎの任務がございます。引き続き部下としてこの二人を起用致しますが連れて行っても宜しいでしょうか?」
「ああ、よい。フフッ、では下がれ」
俺達3人は大人しく頭を下げ踵を返し、謁見の間を後にした。
「兄貴、失敗」
「ハルク、失敗」
俺とバルトが前を黙々と速足で歩くハルクに同時に言った。
するとハルクが急に立ち止まる。
「うわっ!急に止まるなよ?兄貴、ぶつかるだろ?」
俺が文句を言うとハルクの肩が小刻みに揺れる。
なに?笑ってんのか・・・?兄貴?
するとクルリと振り返ったハルクは笑いながら俺達の肩を叩く。
「やったぞ!亮、バルト。明日にでも発つぞ!」
「「え?」」
「明日からお前達と俺は新しい任務としてオールウエイ国に入って調査だ。ダイナマイトのな?」
「兄貴?今、皇帝はならぬと?いいのか?」
「そうだ、ハルク。皇帝はならぬと言った」
「ああ、休暇として祖国への一時帰国は認めないと言ったのだ。仕事なら別だ。この後も俺に着いて仕事に励めと皇帝は言っただろう?」
俺とバルトは横に立つお互いの顔を見合わせる。
「バルト!」
「ああ、シルフィーヌ!」
「「やったぁー!!」」
二人で同時に叫び嬉しくてバルトと一緒にハルクに飛びついた。
「こらっ!人前で止めろ!お前ら!ククッ!」
そんな俺達を宮殿の回廊を行き交う人々が足を止めて見ていた。
「ハルク様!!」
ん?この声・・
「ん?アイリーン?」
ハルクがそう言って後ろを振り向くとアイリーンが廊下の奥から急ぎ足でこちらに向かって来る。
ん?急ぎ足って言うか、走ってるよね?それもドレスで。
ん?
えっ?
「キャッ!」
アイリーンがハルクにもう少しって所で見事に躓いたのだ。
と同時に俺をハルクはバルトに押し付ける。
そして素早くジャンプするとアイリーンを抱き留めたが見事にアイリーンを抱きかかえたまま廊下に転がった。
「あっ!!」
ハルクはアイリーンの下敷きだ。
アイリーンが目の前のハルクに真っ赤になった。
「大丈夫か?アイリーン?怪我はないか?」
それでもハルクは笑いながらアイリーンを見上げそう声を掛ける。
「だ、大丈夫・・・」
「ん、ならいい」
「・・・じゃ、ないっ!!」
って、アイリーンは叫ぶとハルクの胸に思いっきり顔を押し付けしがみついたのだ。
「アイリーン?」
わぁ・・二人で廊下で倒れ込みって・・・
こ、これって・・・・
あ、レイモンド来た。あ、周りのギャラリーを止まるな、見るな、サッサと進めと蹴散らしてる。
「・・・・・」
ハルクは上着を掴んで離れないアイリーンをそのまま軽々抱いて起き上がるとお姫様抱っこに抱き直し、アイリーンの顔を覗き込む。
「アイリーン?足でもくじいたか?」
「・・・・・・」
それには答えずまたハルクの胸に顔を埋めるアイリーン。
「アイリーン?」
「嫌です。また、帰ってすぐ、また行かれるのですか?また任務に」
「ああ、急ぎだからな?足をくじいたのなら部屋に送ろう、アイリーン」
「嫌です!また行かれるなんて・・・」
「どうした?本当に。そんな事を言うなんて?お前らしくない」
「・・・・このまま送って下さい。私の部屋まで」
「・・・・ああ。すまない、シルフィーヌ、バルト」
「先に帰ってます。ハルク様」
「ああ、先に帰るよハルク」
「いや、待っててくれ。すぐに」
「先に帰るから、ハルク。ゆっくりアイリーン様に報告してよ?今回の事。いいでしょーう?レイモンド様ー!」
野次馬達を交通整理しているレイモンドが手を振るのが見える。
「ではアイリーン様。失礼いたします」
俺とバルトはサッサと二人を後にした。
アイリーン、凄いな・・・ヒロインって、凄い。
見かけによらず激しいタイプなのかな?
俺、レオリオやバルトを盗られそうになったらああやればいいんだな。
うんうん、見習わなきゃな。
「レイモンドって奴、大丈夫か?シルフィーヌ?」
あ・・・・
まあ、あんまり関わりたくないしな?あいつにも。
「いいよ。帰ろう、バルト。アンナ様が首を長くして待ってるよ」
それに俺のせいじゃないもんな?
「どうしたんだ?アイリーン。お前らしくない」
アイリーンの部屋に着いたハルクとアイリーンを見るとアイリーンの侍女達は一斉に部屋から出て行く。
仕方がないので抱き抱えたアイリーンをハルクがソファに下ろし足の具合を見ようとした。
「・・・・嫌です。下ろさないで。ハルク様」
ハルクの首に手を回ししがみつくアイリーンを抱き抱えたままハルクはソファに腰を下ろした。
「こんなワガママは初めてだな?アイリーン?ん?」
アイリーンの顎を持ち上げ顔を覗き見る。
アイリーンは真っ赤になりながら視線を逸らす。
「・・・・」
「いつまでこうしてれば気がすむんだ?足を見せて貰うぞ?」
「・・・・」
「二人きりでこのような事をして皆に誤解されて困るのはお前だろう?アイリーン」
「嫌・・・」
「何が嫌なんだ?」
「物分かりのいい私はもう嫌」
「・・・・アイリーン?」
「いつも待ってる私ももう嫌・・」
「・・・・」
「ハルク様に嫌われるのが怖くて本当の事が話せない臆病な私はもっと嫌・・!」
「アイリーン、もういい。話すな。それ以上は聞かない」
アイリーンがハルクの胸を掴み視線を上げる。
「嫌よ!何も言わずに何も聞けずにシルフィーヌ様にハルク様を盗られるなんて!絶対、嫌!だから!」
「アイリーン・・・」
「貴方はいつも私をはぐらかしてばかり。私の心の内はわかっているのにいつも、いつも、いつも!!」
「・・・・アイリーン、もう俺は」
「私は貴方を、ハルク様を愛しています。初めて貴方を見た時から。5歳の時からずっと貴方だけ」
「俺は」
「お願い、ハルク様、お願い、黙って聞いて?お願い」
「いや、すまない、アイリーン。俺はお前には相応しくない。そう言ったはずだ。お前との婚約を取り止めた時に」
「私が側に居たいの。ハルク様の側に。相応しいかなんて関係ない。さっきみたいに名前を呼んで笑ってくれればそれでいいの」
「・・・アイリーン」
「ハルク様・・・」
「俺はお前の好きなハルクではないんだ・・・俺は英雄ハルクなんかじゃない。俺は普通のどこにでもいるつまらない人間なんだ。お前のように何でもそつなくこなせるお姫様が恋い焦がれる立派な英雄なんかじゃない。本当の俺を知ればお前はきっと俺に失望する。そして俺はお前を」
そんなハルクの口を両手でそっと押えてアイリーンは続ける。
「私の英雄は間違いなく貴方。5歳の時、ドレスを汚され怒った私が取った行動を皆が奇異の目で見たのに笑って私のドレスを拭いてくれたのは貴方。そして12歳の時にカルロスお兄様の身代わりとなった私を皆が見捨てたのに一人で助けに来てくれたのも貴方。嬉しかった。とても・・・皇族と言うだけで周りの者達には毅然と対処しなければならない私を貴方はいつも普通に接してくれた。あなたの存在にどんなに私の心が救われたか。どんなに貴方が側にいて私を見ていてくれた事に勇気づけられたか・・・貴方にはわからない。5歳の時から私の英雄は貴方だけ。だから、だからお願い、ずっとハルク様の側に私を置いて下さい」
ありゃりゃ、アイリーンがプロポーズしちゃいましたね?
上手くまとめられるかな・・・一馬、結構、頑固なんです。
読んで頂きありがとうございました!




