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『印』を持つ者の宿命について

途中グロ表現のせいで読めなかった皆様遅くなりました。

今回はホメロス王の解説回でもあります。

少し長いですがよろしくお願いいたします!

「アレン、みんなが手伝わしてくれない!」

「ああ、お前はそこに座ってこいつら眺めてろ。お前が見てるだけでこいつらはやる気が出るからな?単純な奴らだ」


バルトとハルクが出て行った後、ダンが部下達みんなが俺を待ってると言ったのでハルクの命令通り、指令室用のテントに行くとみんなが一斉に姫!よくぞご無事で!と口々に叫び俺を取り囲んだ。


無事を喜ぶ者や心配させないで欲しいと怒る者、顔の怪我が気になり大丈夫ですかを連呼する者に俺は無事を報告し、お礼を言った。

そして安心させる為に元気な声を張り上げて指示を出した。

実際は腫れあがった頬が邪魔をして口を開けるのも痛かったが。

すると皆は疲れているのにそれぞれの業務の明日からの準備をテキパキとし始めたのだ。

俺だけのんびり構えている訳には行かないので(明日のバルトの仕事の段取りもしなくちゃな?)手元の報告書だけでも書き上げようとペンを握るとダンに取り上げられ

「姫はここに座ってればいいんです」

って、甘いミルクティーを差し出された。


・・・・まあ?

嬉しいけど・・・みんなに無事を喜ばれて、正直泣き出したいくらい嬉しかったのだ。


「あ、あの、アレン?怪我した人達の所に行ってもいいかな?どんな具合か見たいのよ?」

「ああ。ダン!ここは任せる!シルフィーヌが怪我をした奴ら見舞いたいそうだ!!」


「「了解いたしました!中将殿!姫をよろしくお願いいたします!!」」

ダンが返事をする前に部下達が一斉に叫んだ。


お前らは俺の保護者か?・・・うれしいけど・・・


「何だ、シルフィーヌ?嬉し涙か?」

「えっ・・!か、顔が痛いだけだし!そ、それに、この湿布、目に染みるんだから!!」

「そうか?そうしとくか?ククッ」

前を歩いて救護用のテントに付きあってくれるアレンが振り返ると俺の顔を覗き込み笑う。


うるさいよ、感動しちゃ悪いか!!


「アレン、そう言えばハルクが助けに来るの凄く速かったよね?」

「ああ、ハルクが初めから狙ってたのは最高神官の身柄だけだったからな?ダンがイムホテップ最高神官をサッサと捕まえて来るとすぐ王の居場所を聞き出して俺と馬を走らせたからな?」

「そうなんだ。イムホテップは知ってたんだ・・・霊園墓地に隠し部屋があることやそれをホメロスが利用するだろうって事を。だけどその最高神官はなぜ、先王に恨みを持ってたの?」

「解放軍ホスが本人から聞いた話、帝国軍にホメロス王殺しを依頼するにあたって皇帝にしたためた書状などの内容から判断したことだがな?ホメロス王の母で先王妃はイムホテップの幼馴染で将来を誓い合った仲だったのを無理矢理先王が取り上げたそうだ」

「・・・・・・先王は妃を愛していたのかしら?ホメロスの母を・・・ホメロスの事を」

「それは誰にも分らないな?ただ、先王妃は遺書を残していたそうだ。最愛の息子ホメロスにあてた内容だった。その中には『貴方の愛する父上を裏切った罪を償う』とだけ書いてあったのは俺も確認した」

「裏切った・・・・」

「解放軍ホスにイムホテップがホメロス殺しを依頼した時に『最愛の人を先王に奪われ殺された』と語ったそうだ。実際は自殺に追い込まれた先王妃を殺されたと表現したのだろうが。想像の域だが、ホメロスが先王から奪った義母のアイヤは後のホメロス王の妃になった女だが先王がアイヤの祖国を潰し、戦利品として連れ帰ってからしばらくして先王妃は自害したようだ。その時アイヤはまだ12歳だったのにとても妖艶な美女だったそうだ。国を潰してまで手に入れるくらい価値のある絶世の美女。先王はさぞかし熱を上げた事だろうよ?」

「先王の心が離れて元恋人に慰められた・・・・?」

「さあ?ただ、アイヤを妃にする為には自殺してなくても事故死はしていたかもしれないな?ホメロスの母は」

「イムホテップはそれを恨んで『ホメロスに父が母を殺した』と言ったのね」

「だろうな。だが、ホメロスが父王に手を掛けた理由はそれも半分、アイヤを愛したのも半分じゃないのかと俺は思う。解放軍の一人が神官として潜り込んでいた時に偶然見つけたのだが宮殿内にある祭壇の信託の中にアイヤの日記と先王妃の遺書が隠してあったらしい。多分、イムホテップがどちらも受け取り始末出来なかったのだろうな。最愛の人もアイヤも自殺で真相が隠されたままで闇に葬られた事が不憫でならなかったのだろう。その、アイヤの日記の中にはホメロスに『私の祖国を奪った父王に捌きを与えれば貴方のものになると約束をした』と書かれていた。その後の日記には後悔とホメロスの事しか書かれていない。そして最後のページには神への懺悔と『かたきなのに愛してくれた愛しい人にこの身を持って謝罪を』と綴られていた」

「仇・・・?」

「父王を殺させた事だろうな?だから愛しい人とはホメロス王の事だろう」

「・・・・・・・なんて悲しい」

「・・・・・イムホテップが全てをホメロスから隠した。イムホテップがアイヤの愛を疑ったホメロスに失望し先王への仕返しをも企んだことがこの国の惨劇の始まりだ。間違いを犯したのはイムホテップだ。その日記を母の遺書をホメロスの手に届けていたならアイヤの愛を母の愛を知ったならこのような事態にはならなかった。生贄などと言う犠牲者は出なかった。イムホテップはその地位を利用してまことしやかに『王の中の力には死者を蘇らせる力がある。その方法として聖者の力を取り汲めばよい』とうそぶいたのだろう。ホメロスはアイヤ亡きあと唯一信じていた臣下の言葉にすがらねばならない程、心が病んでいたのだろうな?『印』の力を変える為に生贄の血を飲むなど・・・何の罪もない幼子まで・・・」


「許すわけにはいかない。決して許すわけにはッ!俺の手で成敗を!!」


共鳴した時にバルトが叫んでいた言葉が口から滑り出た。怒りが両手を拳に変える。

俺の強い怒りの言葉に前を歩いていたアレンが振り返る。


興奮する俺を見るアレンの目も夜の帳が落ちた中、凄く光っていた。


「ああ、許せない。俺も同じだ、シルフィーヌ。同じ『印』を持つ者としてホメロスに裁きを。イムホテップに我々の『印』を(けが)れへと(おとし)めた罰を。そう、俺達は同じ宿命(さだめ)を持つ者としてけりを着けなければならない。この事は俺達にしか出来ない事だ」


アレンが俺を見詰め大きく頷くと俺も頷き返した。







ホスが解放軍のテントに集まる幹部達に王の処刑が終わった事を報告する。

ハルクとバルトがそれを見届け、外に出るともう空は白み始めていた。


「バルト」


横を歩くバルトの顔が青く強張るのが見えハルクは声を掛ける。


「ああ、大丈夫だ。ハルクこそお疲れ」

「俺は慣れてるし、やっと始末が出来た。満足だ」

「凄いな?ハルクは・・・」

「シルフィーヌをあいつを守っていくならお前は今日みたいな事をためらわずやり遂げなければならない。自分のやっている事が正しいかなんて悩む暇もないくらい誰かを守る為に敵を排除して潰していかなければならない。いいか?バルト。お前はシルフィーヌを守る剣だけを持てばいい。欲張るなよ?じゃないと潰れる。他の奴に潰される。ホメロスのようにな?覚悟しろ」

「ああ。もとより俺はその気だ・・・シルフィーヌがホメロスの刃にかかった時、俺はホメロスを本気で殺す気だった」

「ああ。そうでなければあいつは守れないからな?今日のお前は合格だ。シルフィーヌを守りもう一人の自分の死を立派に見届けた・・・・・・・・・ああ?」


ハルクは明けて行く空を見上げ顎に手をあて考え込む。


「何だ?どうした?ハルク?」


「いや、俺は間違ったかもしれないな?お前じゃない。心配なのは。レオリオ王子の方なのでは・・?シルフィーヌが好きな王子の方がお前よりホメロス寄りだ・・・ホメロスと戦った時の印象は・・・やはりお前ではなくレオリオ王子か?・・・・どうするかな・・・?厄介だ」


「・・・・・レオリオ王子?」


「ああ、そうだ。あいつはシルフィーヌ以上に化けそうだ・・・」







今日もありがとうございました!

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