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ホメロス王の件

今回も怖いよりグロイ表現が出てきます。苦手な人はスルーでお願いします。

読まなくても後で説明回を入れますので。

ソフトグロ程度ならOK!!なそこのあなた、スプラッターは無いのでよろしくお願いします!


狂ってしまった王の悲しい恋の物語――


父王の美しい後妻に恋い焦がれ、挙句の果ては嫉妬に狂い父王を殺してまで愛しい人を妻に迎えるが手に入れたはずのその愛しい人は自分への罰なのか、病であっけなく亡くなってしまう――


どっかの二流作家でも書ける悲劇の王の物語。

歴史を見てもよくある話。

古今東西どの国でも人として他人とかかわる限りどこかで繰り返される愛憎劇――


しかし、しかしだ・・・


この悲劇の王は誰にも罰して貰えない。

誰も彼を死刑と言う名の罰でこの世から解き放なってくれない。


愛しい人の元へと送ってはやれない――


この『王の印』がある限り。

誰も彼を殺せない。


唯一、己を罰せた父は、

この国で自分を唯一理解できたはずの父王は、


己の欲と引き換えに殺した後だった。


唯一、己をこの地獄から解き放つ事の出来た父を。




彼に与えられたのは一人で生きる膨大な時間――


孤独と言う名の虚しい監獄――


血に(まみ)れた自分の手をただただ眺めるだけの時間――





「トト、この国に帝国軍の介入を許したのはこの国の貴族達の最後の情けか?王に対する」

「シルフィーヌ陛下・・・情けなどと・・・そのような生ぬるいものではございません。始末にございます。あれを、あの状態のホメロスをこの国から出すわけには参りません。あれは我らが王にあらず、神にあらず。あれは・・」


「トト。お前達が王を売ったのではないか?自分たちの保身のために」


「なにを!バルト陛下!私共はホメロス亡き後の存続など望んでおりません。だからこの国をこのような状態で終わらせようとしたのです。そう、我々が帝国に依頼したのはこの国の全てと引き換えに変わってしまったホメロス王を始末してもらうことです。『神眼』を持つお方にしか出来ない〝神殺し”をお願いしたのです。それ相当の処分はお受け致す覚悟です。金や命など寄り添う神をなくしたカシューダの民には必要ないのです。いくらもう我々の慕う神でなくなっても今まであれは我々を守って来て下さいました。我々は正しい行いで正しい信心で共に歩んで来たつもりでしたのにこの事態は起こってしまった。だからこれは我々が招いた事でもあるのです。我々もこの身を捧げホメロスと共に贖罪を。せめてあれが望む場所に送ってやるのがシルフィーヌ陛下がおっしゃる情けなのでしょう。しかし、しかし、あのままでは送ることも叶わなかった・・・あれはもうどうにもならない状態だったのですよ、バルト陛下。だからシルフィーヌ陛下を見たとき我々は一縷(いちる)の望みを・・・せめてあれに正気を取り戻させ解き放ちたく・・・」

「どうにもならない状態とはどう言う事だ?」

バルトが歩く足を止め、振り返える。

「・・・・ホメロスは・・・」

バルトの顔を真っ直ぐ見上げたトトの言葉が途切れた。



「ホメロスは血を求めたのではないか?それも人の生き血を」



「シルフィーヌ陛下!!なぜ、それを!!」

「なんだと?どう言うことだ?」


「初めは死者を蘇らせる為に生贄を捧げたのだろう?誰に捧げたのか?・・・誰を蘇らせたかったのか?だがその様な事上手く行く訳がない。そのうち事は段々、取り返しのつかない方向へと転がり始める。その生贄は神に仕える属国の聖職者から始まり、無垢な心を持つ者へと移っていった・・・そう、年端の行かない少年少女達や赤子に・・・それも生きたまま血を絞りとったのではないか?」


この国が、この場所が『セブンズ・ゲート』のゲームの舞台ならラスボスは聖女を求め、血を求めるはず。


そう、ホメロス王こそがラスボス――


吸血鬼王バルティス――



「だが、なぜそのような禁戒を試そうとしたのか・・・なぜそう思い込んだのか・・?」


俺は誰かが仕組んだ事ではないかと(いぶか)しんだ。


ホメロスの側近?・・・いや、もっと前だ。始まったのは・・・?アイヤ様が来られる前後・・では、先王からの側近貴族?


・・・ん?まてよ・・・変化した・・・?ホメロスはどうして変化したんだ?共鳴する様な『印』の持ち主はいなかったはずでは・・・?

俺の中でオールウエイ国で読んだ王家の書物にあった下りが思い出した。


〝互いにより(かな)でる事、門を開き、酌める事、降臨す。閃光に瞬くは事の始まり”


『王の印』についての一文で多分、『王の印』が変化する手段や必要なアイテムの事だと思うのだ。


奏でるは〝共鳴”だ。じゃあ、〝酌める”ってのは液体だから聖水かもって思ってたが・・・まさか・・・血なのか・・・?血で光臨?光臨・・・って、光臨するのは神か仏だよな・・・?


まさか・・・


「その生贄の数は次第に増し・・・昨年よりは我が国の神官や貴族の神が見える高貴な血が最適だろうと年端のいかぬ子息子女達まで」

トトがうつむき自分の口を両手で押えた。

その手は震え顔色は紙のように白くなって行った。


「ホメロスは・・・?まさか、その血を浴びその血を飲むことで己の魂を磨いた・・・?己の神の力を増幅させる為に・・・?」


俺のその独り言のような呟きにトトがその場にへたり込んだ。



「なぁんだァァァァァァッ!?それはァァァァァァッ!!」



突然、バルトが怒涛のような声を張り上げた。


「バルト・・・!?」


うわっ!!びっくりしたよ?なんだ?


「その様な事を!?なぜ、その様な事を許す!?」


バルトはトトに詰め寄ると胸倉を掴みトトの身体を両腕で持ち上げた。

普段は黒曜石のように澄んだ美しい瞳が今は光り輝き、その身体から発せられる気配は周りの空気を一瞬で一変させ張りつめさせた。

急に辺りが陰り始める。

凄い速度で昼間なのに空が薄暗くなってくる。

アッと言う間にバルトの背後に見えている太陽が陰り始め更に不穏な空気が張りつめて行く。


これが・・・これがバルトの覇気の力?まさか・・・な?


部下達も急激な辺りの変化に動けず棒立ちとなっている。

尋常ではない気配を敏感に感じ取ったのか離れた場所にいる馬達の怯えたような(いなな)きが聞こえる。


「なぜだ!!なぜ!その様な惨い仕打ち!許せるものではないだろうが!!」

バルトの喉の奥からは咆哮に似た唸りが叫ばれる。


俺は咄嗟にバルトの腕を強く掴む。


「バルトッ!?どうしたの?バルト!!落ち着いて!?」


それでも怯えるトトを睨んでいる。


こんなバルトは見たことがない。


「お、許しを、へ、いか、どうか・・・」


バルトの瞳が輝きを増すごとに背後の太陽が欠けていく。


ヤバい!!トトが気絶しかけだ!!


「止めて!!バルトッ!!トトを、トトを下ろしなさい!!」


俺は力ずくでトトの胸倉を掴むバルトの手を引き離した。

落とされたトトは咳き込んではいるが意識はあるようだ。


問題はこっちだ。


「バルト!!見ろ!私を!見るんだ!!」


俺は声を張り上げバルトの肩を掴み強く揺さぶる。


太陽は完全にバルトの背後で姿を消しバルトの瞳だけが爛々(らんらん)と光って見える。


その瞳、強く輝いてはいるが正気を失っているかのように正面に立つ俺を見てはいなかった。




まさか・・・自分の怒りに飲まれているのか・・・!?







黒い話ですみません。ホメロス、暗いな・・・

今日も読んで頂きありがとうございました。

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