王の威厳の件
よろしくお願いいたします!
俺が声を張り上げたのと同時に群衆の声に紛れ遠くで低いが爆音が響き渡たる。
解放軍が雪崩れ込む真正面の門の更に奥の左右にある門の城壁あたりから砂煙が上がるのが見える。
そう、昨夜から解放軍と一緒に城内に忍び込んだ俺の部下達がこのタイミングで仕込んだダイナマイトを爆破させたのだ。
え?この時代背景でダイナマイトがあるのかって?
実は出来立てのホヤホヤで俺が自国から持ち込んだんだ。
そう、作ったのだ。それもオールウエイ国シュナイダー領産!
シュナイダー領でニトログリセリンと類似したものを偶然開発しているのに俺が目をつけ、いくつか助言をしたことによって改良が加わわり完成したのだ。
もちろん、ダイナマイトの原材料に不可欠なチリ硝石(硝酸ナトリウム)や珪藻土なんかはアントワート領産でニトログリセリンの元のグリセリンの材料となるパーム椰子なんかの油脂類もしっかりアントワート家が輸入している物を提供しているので共同開発と言っても過言ではないだろう。(実際、持ち運びと発火に至るまでの導線の構図なんかは俺が指示したから出来た事だしね)
まあ、行く行くはシュナイダー領の中でいくつかの原材料を賄える様に(珪藻土は湖近くの地層でとれそうだし、椰子類は太古の森で育てられそうだ)バルトには伝授していくつもりだ。
だからこの世界、ダイナマイトを使った作戦はこの俺が初!
俺は今回の件が上手く行けば兄貴を通じ帝国にダイナマイトを大々的に売り飛ばしてやろうと思っている。
まあ?こんなに早く日の目を見るとは思ってなかったが・・・
俺、いや、オールウェイ国、武器商人になる日近しだな?
この世界でダイナマイトの可能性は無限大だろうから一人歩きしないよう使い方等もちゃんと教えていかなければいけないけどな・・・結構責任重大!!課題山積み!!
「凄いぞ!亮!マジ、ダイナマイトだよな!?」
横で馬を走らせるハルクが興奮して叫ぶ。
「ああ!上手く行った様だな!では左右に別れ攻め込むぞ!」
「ああ!先に行く!!アレン!ダン!続け!!」
ハルクの馬が先頭に城壁に沿い右へ旋回するとアレン、ダンと次々に部下達がその後を追う。
俺も手綱をしっかり引き寄せるとバルトと残りの部下達を引き連れハルクとは反対側の城壁へと馬を旋回させる。
見事に崩れ落ちた門の前まで来ると城壁の上で一列となって弓を構え、門の外を見下ろしていたカシューダの衛兵達が爆破で崩れ落ちた城壁に飲まれていた。
ちょっとダイナマイトの威力が大きかっただろうか?調整したんだがな?
俺たちは砂煙と瓦礫に気を付け馬を場内に乗り入れると王宮中央部へと真っ直ぐに延びる中央の道を突き進む。
すると解放軍に追われ逃げ場を失った王宮内の貴族や神官クラスの人間が思った通りこちらに向かって来ていた。その転げる様に逃げ惑う人々を部下達は馬を使って取り囲み足止めをかける。
俺は自分の馬の手綱を思いっきり引き後ろ脚で立ち上がらせ一声いななかせると大声で叫んだ。
「我々は帝国軍であるーッ!!刃向かう輩は容赦なく切り捨てる!!大人しくその場に伏せろーッ!!」
「武器を捨てるがいいーッ!!即刻切り捨てるぞ!!」
横で同じようにバルトも叫んだ。
逃げ惑う人々は前後を俺達に取り囲まれ大人しくその場にへたり込んだ。
「刃向かわなければ軍事裁判にかける事を約束しよう!!さあ、大人しくこちらに来い!」
と部下達が座り込んだ人々に声を掛けると皆は素直に従った。
かなりの上級貴族も紛れているが王らしき人物は見当たらない。
そりゃそうだろう、いくら解放軍が正面から雪崩れ込んで逃げ場を失ってもこんなにあっさり、裏道から逃げるわけないよな?どうせ帝国軍が噛んでる事も気付いてるだろうしな?
「王はどこかーッ!?すぐさま答えよ!!」
ダメ元で俺が騎乗から声を張り上げる。
地面に座らされた人々は俺を一斉に真っ直ぐ見上げるが青い顔で怯えている。
そして互いの顔を周りの人々と見合わせると首を項垂れた。
「お前達の王を差し出せ!!出さぬなら即刻その首刎ねるぞ!!」
俺は腰の剣をゆっくり引き抜くと更に追い込みをかけた。
するとその場の皆がこう着した様にひれ伏す。
「よいのかッ!?」
更に怒声で叫ぶと転がるように一人の男が俺の前に飛び出した。
「後生です!!陛下!先に、先にホメロス王は地下道より城外に!!」
学者風のその男は俺の前に跪き震える声を絞り出し答えた。
「案内しろ!!」
俺が剣で促すとバルトがそいつを自分の馬に引っ張り上げた。
「王の首、取れなければこの国の者の命は誰一人として保障しない。覚悟して答えろ」
俺はそいつを睨み上げる。
「あ、案内は致します!案内は致しますからどうか、どうかお鎮まりを陛下」
「では、その地下道とやら教えてもらおうか?」
「私はこの城の設計図を記憶しております。ですからこの城のあらゆる通路も外に抜ける地下道の行く先も把握しております。ただ、陛下、私がホメロス王を最後に見たのは解放軍が攻め込む半時も前です」
「なんだと?」
バルトが唸る。
「それにホメロス王が向かうのは果たして隣国でしょうか?」
「お前なら山を越えるか?海を渡るか?」
俺はそいつの賢そうな面構えと真剣な眼差し、実直そうな話し方につい、試してみたくなった。
「陛下、私ならば奴隷に紛れ、都に身を隠します」
「正解だ。城下に一番近い出口に案内しろ」
バルトと俺が並びそいつの指さす先に馬を走らせる。
10人余りの部下も俺達に続き城から走り出る。
「ここを折れ、南に約一キロ近く走りますと都の中心、ホメロス王の石像の広場があります。地下道の一つはその石像の足元が出口となっております」
「今のホメロス王の顔、お前なら見分けはつくか?」
「変装をしていくら姿を変えてもあの巨体にあの色の白さ、騙し通せる物ではございません」
「では、地下通路を出て一番近くで隠れられそうな家屋は思い当たるか?」
「・・・それは・・・?そうですね・・・自信はございませんが前王妃が作られた霊園が近くにございます。あの霊園の初代王の墓碑の下にはいくつか部屋がございます」
「ほう?当たりっぽいな?シルフィーヌ?」
「ああ、バルト、当たりみたいだ。お前、名は何と言う?」
「トトにございます。陛下。管理官でございます」
両手を胸の前で交差させ上体を綺麗に折る挨拶をバルトの前で馬に揺られながら器用にして見せた。
「なぜ、私を〝陛下”と呼ぶ?」
「貴女様は『神眼』をお持ちでしょう?そして貴方様も」
トトは背後のバルトにも振り向く。
「「シンガン・・・?」」
俺とバルトが同時に尋ねる。
「お怒りになられると瞳の色が変わられる。それを敬意を込めて神の眼と書いて『神眼』と呼びます。この国では王の直系である証拠。それにどちらも覇王色を背負っておられる。特に貴女様は黄金でございます、陛下」
なんだ・・・?『王の印』の事らしいが・・・?覇王色って何だ・・・?
読み返すと誤字が多くて・・・恥ずかしい・・すみませんです(反省です・・ショボン)
そんな話を今日も読んで頂きありがとうございました(感謝です!)




