この国の空の下での件
明けましておめでとうございます!今年も長い話から始まりです。
どうぞよろしくお願い致します!
「うわァアアアアア!!」
な、な、なんで!?
「ん?・・・ああ・・うるさいぞ、まだ寝てろよ」
「離せよッ!!」
俺が急いで起き上がろうとするとアレンが俺の腰をガッチリ抱き込んでいた。
「だから何もしないからもう少し寝てろよ、うるさいよ、お前」
「いやぁッ!!離しなさいよ!」
俺はアレンが腰に回した手をほどきにかかる。
「寒いんだよ・・だからちょっと大人しくしてくれ・・・それに眠い・・・」
余計に抱き込まれる。
凄い力だぞ!?こいつ!・・・レオリオと互角じゃないのか!?
「なんで私のベットにアレンがいるのよっ!!離しなさいよ!」
服、服、着てる?!あ、大丈夫、着てるし、乱れてなさそうだが。
「何もしない。だから、寒いんだって。ちょっと大人しくしろよ」
「そんな事知らないわよ!!離せ!この野郎!」
「ああ!!昨日からお前目当てに、何人この部屋に間男が来たと思ってるんだ!?」
「はぁぁぁぁ!?」
ま、ま、間男?間男って?それ、まさか夜這い?!
「後で廊下見て来いよ。それより俺は寝ずの番で身体が冷え切ってるんだ。ちょっとは役に立てよな」
へ?寝ずの番?まさか俺の事、守っててくれたのか?
それで・・・?体、冷えたから俺、湯たんぽかわり?
「・・・ほんと?・・・ほんとに?・・・寒い・・だけ?」
「ああ、俺の身体、冷たいだろうが?」
ああ、確かに冷たいがな?
俺がホッカ〇ロならお前は冷えピ〇だな?
「・・襲わない・・・?」
「襲って欲しいのか?」
俺は頭をブンブン振る。
「じゃあ、少しじっとしてろよ」
「・・・・あんまり抱き締めないでよ・・・苦しいから」
「・・・わかった・・・」
首も疲れたので前を向く。出来るだけ体を密着させないように丸めたいが狭いから無理っぽいしな。
仕方がないので大人しくそのままじっとした。
何?
どう言うことだよ?
俺が昨日グッスリ眠りこけてた間、この安普請なこの宿の連中がオレを夜這いだと?ああ、人さらいって可能性もあるな?
そいつらをアレンが一晩中撃退してくれてたからベットで眠れなかったてか?
それで身体が冷えたってか?何だ・・・よ、それ?
あ、何か、寝息聞こえてきた・・・
あ、ちょっと腕、緩まった。
やれやれ・・・って。
もう、びっくりだよ?
寒いとはいえまさか、アレンが俺を抱き枕代わりにするとは。
いやいや、暖を取ってるから人間カイロだな・・・本当に冷たいな、身体。
アレンが俺守ってくれるなんてな・・・
嫌いなんだよね?俺の事?変な奴だよな・・・・?
ああ、それにやっぱりアレンも『印』持ちなんだな・・・当たり前だが凄い力だったな・・・う~ん、抵抗出来なかったよな?俺・・・ヤバいな、二人きりの時はアレンに優しくしよう・・・
そうだ!
アレンの『印』はどこにあるんだ?
ちょっと、今、アレン、むきたいな・・・
案外、お尻とかにあったりしてな?んふふっ!
いや、意外に内股とか・・・あ、いや、その先はダメだぞ?確認できないしな?
って、俺は痴女か?!・・・バカだな?やっぱり、俺。
しかしだな・・・うーん、あ、ヨイショッと。
お、上手くひっくり返れたな。
お、よく寝てるよ?アレン。
まつ毛長っが!!鼻高っか!!唇、綺麗なピンク色だよ!って、うわぁ、ほっぺ、スベスベだ。スーベスベ!何か気持ちいいから指先でクリクリしてやる、ほらほら、クリクリの刑だ!
「おい・・・・何してる?くすぐったいだろうが?」
目を閉じたままアレンがしゃべった。
あ、起きちゃったよ。
「ん?ほっぺ、撫でてるだけ。アレン美肌なんだもん」
「・・・・・バカか?お前」
「あ、寝れないわね?もうしない。もうちょっと寝てなよ?」
「・・・・・何で安心してる?」
「んっ?だって寒いだけなのよね?じゃあ、身体温まったら放して?」
「・・・・・・変なやつ・・」
「え、アレンの方が変な奴だよ?嫌いな奴抱き枕って普通するかなぁ?」
「・・もう、いいから。あっち行けよ、お前」
「え?これ私のベットだよ?って・・まあ、仕方ないな・・・」
俺が起き上がろうとすると
「うわっ!アレン!」
また俺を抱き寄せた。
「ああ、もう、いい。ここにいろ。まだ、寒いしな・・」
「だから抱き締めんなよ!」
「寒いんだよ!うるさい、お前うるさい、寝ろよ」
「なんだよ!もう!」
何かエンドレスだよ!お前こそ寝ろよ!アレン!
「朝ごはんだ~っ!って、げぇッ!?」
張り切って部屋のドアを開けると廊下には気絶した間男だらけだった・・・・なんだよ!これ!
ああん?!こいつ、あ、こいつらこの宿の主人や従業員じゃないか!!クソッ!なんだよ!この宿!クソッ!俺がギタギタにしてやれば良かったよ!・・・・って・・
それじゃ、朝ごはん誰が作ってるんだ?・・・ここに伸びてる奴、昨日料理作ってたやつだよねっ!?
まさか、朝ごはんナシとか・・・・!?えーっ!!
「お腹すいた~!アレンったらアレン!」
「知るか!」
ああ・・・エンドレス・・・
5日後、俺達帝国軍は城下を見下ろせる丘で落ち合った。
目の前見えるのはリーダーホスを先頭に唸りを上げる巨大な群衆と化した解放軍だ。
エジプトの神殿と見紛えるカシューダの宮殿を幾重にも取り囲んでいる。
男ジャンヌダルクだな?
いくらホスにカリスマ性があるとは言えここまでの群衆をこの場に集めたのはやはり、周到なハルクの計画
があったからでもあるが現王、ホメロスの施策に対する国民の不満と怒りが事の発端だ。
征服国の民達も含まれてはいるが自国の貧しい民に対しても強いられている奴隷制度、ギリギリの生活しか出来ない様に搾取される作物や税金、不当に取り上げられる家族や財産、そのやり方はこの国の貴族達にも課せられていた。
その搾取された全てはホメロス王の信仰の対象である〝神″を崇める為の資金へと投与されたのだ。
そしてこの5年余りのホメロス王の信仰心の篤さは度を超し、狂気を逸していたのだ。
これには側近である上級貴族たちも危機感を感じホメロスの首と引き換えに帝国にこの国を売ったのだ。
勿論、貴族達の命と財産の保証付きで。
しかし、ハルクの目的は完全なこの国の階級制度と多信仰の壊滅にある。
後から上手くホメロスの後釜に座ろうとする輩を今日どさくさに紛れサッサと一掃するのがハルクの考えだ。
その中にはその貴族達と神官達も含まれる。
一方、俺が今日保護するよう部下に指示したのはこの国の有識者と軍事裁判を受ける事を了承した神官と貴族のみだ。
その事をハルクに掛け合い納得させたから今回参謀に選ばれた。
まあ?兄貴に言わせりゃ、俺のやり方、お手並み拝見なんだろうな?
だって怖いよ、兄貴?
マジで皆殺しなんだから!
相変わらず、要らないと判断すると平気で排除にかかるから参るよ。
「ククッ、亮、お前の甘さ、今日裏目に出なければいいがな?」
馬に乗り俺の横で群衆を見下ろすハルクの顔はもう陥落寸前の城を見てしたり顔だ。
「兄貴の残酷さには本当、震え上がるよ?いくらゲームの世界でも目の前で剣を奮うのは生きてる人間だ。良識ってもんがあるだろうが?」
「結果が全てだ。良識など呑気に生きてる人間が言うことさ。それにそんなモノ、後からどうにでもなる。大事なのは後腐れなく始末をつける事だ」
「・・・・ああ、そうかもな。ゲームならな?」
「違うな、亮。現実だからこそその一瞬にかけるのさ。まあ、今日はお前の初陣だ、せいぜい、もがいてみろ」
「・・・ああ、王の首は必ず取る。『印』持ちなんだよな?ホメロスって王は?」
「ああ、一人では追うなよ?バルト、シルフィーヌを頼むぞ」
兄貴はそう言うと後ろにアレン、ダンと控えるバルトに声を掛ける。
「ああ、言われるまでもない」
バルトの後ろで馬に乗った部下達もハルクの言葉に頷いているのが見える。
ホスが宮殿の真正面の門前で赤い旗を掲げると巨大な門が内側から開く。
それを合図に一層大きな唸り声が人々の口から発せられると一斉に城内へと群衆が雪崩れ込んだ。
「始まったな」
兄貴がニヤける。
「ああ」
俺は自分の馬を引き部下達と向き合うと声を張り上げた。
「今から帝国軍は解放軍を支援し、ホメロス王の捕縛にかかる!!刃向かう輩は排除しろ!行くぞ!!」
今年も楽しく読んでもらえると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました!




