守ってねの件
よろしくお願いいたします!
丘を下がると部隊の天幕が張ってある。
俺は早速、天幕に入るとリーダー格を集め5日後の城攻めの作戦の算段だ。
地図を広げ解放軍についての現状報告を聞きどう城を攻め落とすかを構成して行く。
ハルクがシルフィーヌを信頼している事もあるのだが歳上の部下達が小娘の俺を疑いもせず素直に言葉が返って来るのがとても有難い。
まぁ?俺も俺なりに部下の信頼を得る為に今日これまでにそれなりに努力した。
厳しいときにはひたすらキツく叱咤激怒したが休みの日には手作りのお菓子を焼いて差し入れをするなど飴と鞭の使い分けで自分なりに部下を可愛がった成果だと自負している。
ただハルクとバルトに言わせれば俺がムチを持って追い込みをかけるだけで部下達にとってはご褒美だそうだ。
それ、違う意味の女王様だよね?俺ってやっぱりそっちの気があるのかな・・・・
あ、いやいや、そんな話じゃなかった。
「じゃあ、まず、城のこことここ、それにここ、囲いますか?そんでもって、ここ、正面から群衆入れてね?ああ、内側から開城する手筈は整ってる?」
「もちろん。城中の貴族、奴隷、兵士はほとんど反乱軍が口説き落としている」
アレンが答えるとダンも頷く。
ハルクが爪を噛みながらニヤける。
兄貴、それ、その癖、本気モード全開だよね?
「じゃあ、指導者のホスを門前で宣言させれば勝手に門は開くから。我々は左右のこの門、群衆が雪崩れ込むのを合図に発破仕込んで爆破。そしたら一斉に馬で双方から奇襲をかける。いいか?我々の任務は群衆を導くのではない。城に残った貴族を保護することにある。ただし、刃向かう奴は切り捨てろ。いらぬ情けはかけるな。いいな。他に何か意見は?」
「いいぞ、それで」
ククッとハルクが笑う。
「じゃ、あとの細かい配置、ダン、よろしく」
ダンと交代するとバルトを連れ天幕を出る。
白々と明け始めた東の空を眺め俺はバルトに話しかける。
「バルト、ごめん。ここカシューダ王国にいる間はハルクとは亮として接する。バルトにとって今の俺は不快だろう?だが今この立場にいる自分が甘い判断を下すのは命取りとなるんだ。部下に守れているだけでは任務は追行できない。わかって欲しい」
「いや・・・ああ、わかっている。お前の亮としての参謀の手腕、見せて貰うのは正直楽しみなんだ。ただ・・この戦場の場にシルフィーヌを連れ出した事が正解なのかと悔やまれる・・・国にいたならお前が戦場で先頭に立つ事は王子をはじめ誰も認めなかっただろう。ハルクがこの場にお前を連れ出した事がやはり俺は・・・」
「俺はバルト、正直に言えばこちらの方があってるよ?王妃の座に座る俺を、シルフィーヌを、正直小さな時から想像できなかったよ。特にお飾りの王妃なんかはね?」
俺はバルトを見て笑う。
逆光だから俺の表情は見えないかもな?
でも俺には弱音を吐かないバルトの顔が歪んでいるのが見える。
ああ、随分、この国に来て俺とハルクの事でバルトには不安ばかり与えているのではないかと思った。
「でもね?バルト。安心してよ?今は違うから。この仕事は経験したかっただけ。バルトと同じ経験を積みたかっただけ。俺は一年この立場を全うしたらちゃんと現実を受け止めるから。俺が守るのはオールウエイ国の皆だ。その想いはバルトと同じだよ。だから絶対死なないで国に帰る。バルトが言っただろう?死に対する潔さは捨てろって。俺がいる事を思い出せって。大丈夫だよ?生きて任務を追行して何が何でもバルトとオールウエイ国に帰るからさ?」
俺がそう言うとバルトの顔がクシャリとさらに歪む。
俺はバルトの側によるとそっとその瞳を見上げ笑った。
「だから守ってね?バルト」
「ああ、もちろん。もちろんだ。シルフィーヌ」
バルトも俺を見て泣きそうな顔で無理矢理笑った。
「二人で盛り上がってるところ悪いんだけどさ?」
「アレン、本当に邪魔だな?」
バルトが後ろから来たアレンに心底迷惑そうな声を出した。
「会議、終わった?アレン?」
「勝手に抜けるなよ。お前今回参謀なんだからな?ほら、用意出来たら立つぞ」
「なんだ?アレンと三人か?」
またバルトがさらに迷惑そうな声だ。
俺達部隊は帝国軍と悟られぬように旅人の様相で2,3人に別れて移動し5日後に現地で落ち合うのだ。
「残念だな?バルト。お前はダンとだ」
「・・・・ハルクと掛け合ってくる」
「大将命令。ほらサッサとしろ、シルフィーヌ」
「なんだ、アレンと二人か」
「なんだとはなんだ、シルフィーヌ?お前、なんでそんなに安心してんだよ?襲うぞ?」
「え~、アレンがある意味一番安全だけどね?あ、いじめちゃ嫌よ?」
アレンが襲うわけないしな。襲うのは他の男供の方が確率絶対高いわ。
「まあ・・・そうかもな・・」
え・・・?・・バルト?お前何考えてたんだよ!!
「アレン、髪、梳いてあげるわ。ほら、来て?」
「いるか!サッサと寝ろ!」
「えー、やだ~ッ!ねぇ、ハルクとダンとアレンの幼い時の話してよ?ほら?アレンは何でハルク好きになったの?あ、案外、顔が好きとか?だってね?人間結局見た目が好みかどうかなんだって。あ、でもさ?アレンの場合はさ?初恋がハルクなの?そう言えばさ、」
小さな宿な上、部屋が一つしか開いてなくてアレンとは相部屋だ。
風呂もないし晩御飯もショボいスープだけ。
お腹すいた・・・まあ、狭いベットが二つあるだけマシか・・・
「うるさいよ、お前。明日早いから寝ろ!」
そう言うとアレンはサッサとランプの火を落とす。
「あ!ひどい!まだ体拭いてないのに!」
「寝ろ」
「くしゅッ!!あ、もう!わかったわよ・・ん~!もう、お腹すいた、アレン!」
「・・・・・・知るか」
「寒い!お腹すいた!寝れない!アレンったら、アレン!」
「アー!!お前!凄くうるさいぞ!襲うぞ!」
「話してくれたら寝る」
「襲うぞ?」
「話、して!して!して!アレン!」
「バカか?・・・・お前」
「バカでいいからして」
「お前なぁ?無意識かもしれんがな?男と二人きりで〝して” は無いんじゃないか?お前侯爵令嬢だろ?止めろ。ダンだとこの次点でお前組敷かれてんぞ・・?あ、レイだともう剥かれてるな?」
「大人怖ッ!」
「何で俺は大丈夫だと思ってるんだ?お前?」
「え?バイセクシャルなの?アレン?」
「・・・普通に女も抱けるが・・・・試すか?」
えっ・・経験済みなの?・・わぁ、アダルトだ、アダルト・・・
「・・・・・・・おやすみなさい」
「いや、試したくなったな?シルフィーヌ?ほら、来い」
「おやすみなさい!」
「遠慮するな?教えてやるぞ?ほらほら?あ、そっちに行こうか?」
「・・・・・・・・」
「寒いんだよなぁ?お前」
「・・すみません」
「いやいや、何?聞こえないなぁ?あ、そっちに行っていい?」
「申し訳ございませんでした!!」
「早く寝ろ!」
アー!!マジ、怖かった・・・・だって、アレン『印』持ちじゃん!
忘れてたわ・・・・
う~ん、何か冷たいぞ?う~ん?
って、これ何?ん?ん?あれ?誰?これ?
あ、れ?
これ・・・・・?
目を開けると俺の背中に誰か張り付いて俺を抱き締めている。
そう、俺は誰かの腕の中だった。
へっ??誰だ?これ?
振り向くとアレンの寝顔のドアップがあった。
へっ?!
今年は今回で更新終了です。
飽きずにお読みいただいた皆様本当にありがとうございました。
また、来年もよろしくお願いいたします。
では、よいお年をお迎えください。




