酔っ払いはお断りの件
今日もよろしくお願いします!
「姫も今度は私とですよ!」
ダンも俺に手を差し出す。
俺とバルトが同時に驚いている間にサロメがバルトの腕にサッサと絡みつくとダンが俺の手を掴む。
二人はホールの中央へと俺達を引きずって行く。
「えっ!ダン!待って、ねぇ!?アレン、助けて!」
そんな俺達を横目にアレンはワインを飲みながら軽く手を振りニッコリ笑う。
うわーん!!アレンの人でなし!覚えてろよ!!
仕方ないのでダンに寄り添うと横でサロメもバルトにしっかり体を密着させている。
なんか、ちょっと、腹立つんだけど?
あ、なんだ?その笑い?その、私に勝てるかしら?みたいな分かりやすい挑発?
あ、必要以上にバルトに胸押し付けるなよ?それでなくてもお前、エロいんだからさぁ?
オイオイ、それでまた何で、こんな激しい曲なんだ!!
え?今ホール中央にいるのって俺達だけ・・・・?
俺、ひょっとしてサロメに嵌められた?
もう、これ、終わったら帰るからな!!絶対、帰るからな!
って、バルト!!お前、今、サロメの胸チラ見しただろ?見てんじゃねえよ!!
「姫!集中!」
「あ!はいッ!ダン!」
怒られたよ・・・・
あ、でも、ダン、踊りやすい。凄く上手い!わあ、この曲、ほんとに難しいのに。
あ、でも、ほんとにダン、メチャ、リード上手。
うん、楽しいかも!
「ダン!上手い!凄く楽しい!」
「はい、姫もとても上手ですよ」
「本当?嬉しい!」
「ハイ、じゃ、次、サロメ様とタップステップですよ!ハイ!」
えっ?!
俺とサロメが並んでドレスを膝上まで目繰り上げ速いタップを踏む。
このタップは力強さに華麗さ、そしてなによりリズム感が良く無ければ足がもつれる。
えっ?何で、何で二人のオンステージになってるの?
凄い速さでステップを踏む俺にサロメもちゃんと着いてくる。
凄いな、サロメ?これ、出来るのオールウェイ国でも俺とルカぐらいだぞ?
汗をかきながら必死に俺に合わせるサロメが何か可愛く見えてきた。
何か、楽しいや。ルカと踊ってるみたいだ。
最後のステップを踏み終えると今度はパートナーが入れ替わりバルトが俺の腰を抱いた。
バルトが帰ってきて俺もホッとして力が抜けた。
曲が終わるとなぜかサロメが俺の手を取り大きく揚げた。
すると割れんばかりの大喝采を浴びる。
えっ?何で?
するとサロメが俺にギュッと一度抱き付いた。
ん?何だ?これ?
キョトンとする俺に視線も合わせずサロメはダンの腕を掴むとサッサと歩いていった。
「姫~っ!!」
あ、サロメ、ダン置いていって!!
アレン待ってるからさって、あ、行っちゃたよ・・・
許せ・・ダン・・・・しがない上官で・・・・
「勝手に目立つな」
ハルクがシャンパンを飲みながら俺を肘で小突く。
笑いながらだが。
「何だよ?ハルクはアイリーンとイチャイチャしときなよ」
マスカットジュースを飲みながら俺はハルクの胸に軽くチョップだ。
「そうだ、お前レイモンドと踊ってただろ?変な事言われなかったか?」
アレンは今、ダンをサロメから奪回しに行っている。
一緒に行くと言ったらややこしいから来るな、それにバルトを連れて先に帰れと凄く邪魔くさそうに言われた。
悪かったな?でも俺のせいじゃないだろ?って俺のせいかもな?
「亮?」
「ああ、レイモンドな?アレンの兄だって言うし、アイリーンの護衛だろ?凄く真面目な奴かなって思ったんだよ!何なんだ、あいつ?アイリーン手出されてないか?」
「誰だ?それ?」
バルトが俺の右手を捕まえる。
ちょっと、バルト、さっきからずっと俺のどこかつかんでない?
「ああ、上官に手を出す程レイモンドは馬鹿じゃないしアイリーンも部下として信頼してるからな。それにレイモンドはアレンと良く似ていて何をやらせても優秀だし、あの容姿だ、勝手に女が言い寄って来る。まあ?まだ落ち着く気がないみたいだから侯爵家長男なのに家督を継いでないのがアレンの悩みの種だ。それに無いとは思うがお前に本気になったら厄介だとアレンがボヤいでたぞ」
バルトがワインをグィッとあおる。
ちょっと、バルト?何杯目?それ?
「どいつだ?どこにいる?」
「え・・・?バルト・・・?」
「シルフィーヌ、何もほんとにされなかったのか?」
俺を抱き寄せる。
ん?何?オイオイ、酔ってるんじゃないかい?バルトさん?
「何もないって・・・それよりさぁ?もう飲まないでよ、バルト?帰りましょうよ?ね?ハルクももう帰ろうよ?」
二人とも顔色変わらないし坦々と飲むから分からないよ?
「シルフィーヌ、ハッキリそいつに言って来るから」
「いい、いい、言わなくていいし。ハルク、バルト酔ってるわ。普段、こんな事言わないから。バルトもう帰ろう?」
「酔ってない」
「ああ、バルト、お前、酔ってるな?帰るか?」
兄貴、お前もどうなんだ?
「シルフィーヌ様そろそろ帰りましょうか?」
後ろから声を掛けられたので振り向くとにアンナ様とワズナー伯爵が立っていた。
「ああ、今そちらに行こうと思ってました。帰ります。ハルク様、バルトもさぁ、帰りましょ?ハイ、手を繋いで?」
「大丈夫だ、シルフィーヌ。酔ってなんかないから」
いや、お前、完全酔ってるし!!
帰りはワズナー家の馬車二台に別れて乗り込む。
俺はハルクもバルトも普通にキビキビと軍人らしく挨拶を交わしてしっかりした足取りだったのでちょっと酔いが冷めたのか思い二人と同じ馬車に乗り込んだ。
しかし俺が甘かった。
乗り込んでドアが閉まった途端に俺の頭と右半身が重くなる。
バルトが俺の腰を抱き締めたまま右横に座り、俺の頭にもたれ掛かってきたのだ。
「ちょっと、バルト?重いから・・・バルト?離れてくれる?」
「バルト、寝てるぞ?」
向かいに腰掛けたハルクが眠そうに欠伸をしながら言う。
「え?マジ?バルト!?やっぱり、酔ってるんじゃない!!バルト、起きて!バルト!ああ、もう!兄貴、バルト重いからちょっとどけてくれ!」
「ん?ああ、わかった。バルト、おい?バルト?亮が重いってさ?ん・・・ん?ああ、ダメだな?完全に寝てるな?ん、じゃ、俺も・・・」
え?えっ?なに?何してるんだよ?兄貴?
「おい!コラッ!兄貴!お前まで何やってるんだよ!!ちょっ!止めろ!」
俺が動けない事をいいことに俺の前の馬車の床に兄貴はストンとへたり込むと俺の膝に頭を乗せ俺の両足をドレスごと抱え込んだ。
なっ!!なんだとっ!?無理矢理、膝枕だと~ッ?!
「うわぁぁ!!何するんだ!放せ!!こら、放せ!ったら放せ!一馬!!止めろ!!一馬!!」
俺は太ももに顔を擦り寄せる兄貴の頭を両手で思いっきり、押すがガッチリ膝から下を抱き込まれたうえに右半身にはバルトが乘っ掛かっているので左に倒れそうな体を俺の細い腰で支えるのに必死だ。
「お前、バルトにはやさしい・・んだ亮・・・・お兄様にも優しくしろって・・・・」
「兄貴?おいって!マジ?お前まで酔ってたのかよ?まさか、一馬?ホントに酔ってるのかよ!!」
「・・失礼だな・・・酔ってな・・・・・・・スゥ・・・・」
え・・・・、嘘だろ・・・・?スゥって?
あ?・・・・寝た?まさか、マジ寝たとか言う?嘘、二人共?寝ちゃったとか・・・・うそだろっ!?
ありがとうございました!




