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既成事実の件

いきなり婚約解消か・・・・

きついな・・・・

俺は青くなって固まった。



レオリオがクスッと笑う。


「大丈夫。バラを僕のバラを君にあげたかったんだ。剣は君の兄上には及ばないかもしれないけど扱えるから心配しないで?ああ、そのムチでこのバラのこの枝、この辺りから切り落とせる?」

レオリオが手元の変わったバラの枝を持ち上げ指でその場所を示す。俺は言われるままその場所からバラを切り落とす。


「へえ~っ!本当に凄いね。じゃあ、次はここね?」

同じようにバラを切り落とすと枝の棘を丁寧に取り、手に持って青い顔で突っ立っている俺の方に歩いてくる。


「危ないから剣返してね?」


俺は素直に差し出す。王子は片手で器用に腰の鞘に戻す。

俺もムチを自分の足首のホルダーに(なお)し、さあ、帰ろうか・・・・と考えた。


俺が立ち上がると王子は俺の両耳の上でねじって後ろでバレッタで止めている髪に切り取ったバラの枝を器用にかんざしのように両方の耳の上に刺した。

俺は黙ってされるがままにまかせた。


レオリオは満足げに頷くと俺の手を引いて噴水の水が溜まって水鏡のようになっているところに俺の顔が見えるように(かが)ませた。


青い空が映りこむ水鏡にシルフィーヌとレオリオの顔が見える。

フリージアの花のように五つ枝に近いほど小降りなエメラルド色のバラの花がシルフィーヌのちょうど両耳の縁をかたどる様に咲いていた。

俺は顔を左右に振って確認する。


とても綺麗だ。


自画自賛してしまった。

思わず嬉しくてレオリオに

「ありがとう」

とお礼を言った。

そしてさっきの自分を思い出してまた下を向いてしまった。


恥ずかしい。


そんな俺をレオリオは立たせ、俺の両肩にそっと手を乗せ自分の正面に向かせる。


「思った通りとても良く似合っているよ?とても可愛いよ、僕のお姫様」

顔を近づけ凄く嬉しそうに俺の色っぽい声で耳元に囁いた。


うわ~っ!!やめて!鼻血出そう!

ダメだ・・・今、顔、凄く熱いよ?絶対真っ赤だよ・・!!


「・・・・うそっ、だって、だって、呆れたでしょ?なんて乱暴なんだって・・・」


あ、ダメだ。

7歳のシルフィーヌの感情が崩壊だ・・・泣きそうだ俺。


「ムチの事?知ってたよ。ただ、君が扱っているところは見たことがなかったのでちょっと驚いたのと格好いいので見惚れてしまった自分が悔しかったんだ」


「・・・・は・・ぁっ?知っていた・・・・?」


上目遣いで絶対涙目になってる俺。


「うん、君の事は何でも知ってるよ?」

「何でも・・・って?」

「何でも」

「・・・・・・・じゃあ、私の好きな食べ物とか?」

「焼きトウモロコシ」

へっ!?なんだ?何でだ?何で知ってる?


「うそっ!・・・・じゃあ、じゃあ、落ち込んだ時の気分転換の方法なんかわかる?」

「湯船に浸かって大声で歌う。歌は熊と追いかけっこするやつ。ある日~森の中~熊さんに~ってやつね」


はぁっ!?

なんで!なんで!なんで!?その歌はこの世界には存在しない!どうして!?どうしてなんだ!?どうして知ってるんだ?

俺のストレス解消法!

それも前世の!


顔、俺、赤通り越して青くなってるよね・・・・


「ね?当たったよね?」

にっこり笑うレオリオ。


「君の事は何でも知ってる。本当はお転婆なのに可憐なお嬢様って勘違いされてうんざりしてたり、将来、ルカの仕事の補佐をするため猛勉強してることも。そして僕との婚約話は僕が言い出すずっと以前から父上に断るようお願いしていたことも。今日も断る気で来たのだよね?・・・・僕はそんな君が全部好きだよ?全部だ、シルフィーヌ」


「・・・・・・・いじわる・・・なのね・・」

俺はレオリオに震える声で言った。


「そうだよ、僕を勝手に振ろうとしたんだから。こんなに僕は君が好きなのにね」

レオリオが俺の両肩に置いた手に力が入る。


「だって・・・」

あ、まずい、ダメだ俺、泣くなシルフィーヌ!


「だから責任とって」


レオリオの顔が俺に迫る。


ん?何?近いよ?


え!?


しっかり、唇を重ねられた。


え、え、え、何?何?何?ムニュって!ムニュって!


ん!ちょ、ちょ、くるしいんだけど?


息!息!どうするの!?これッ!?


これ!俺、まさか、手がついたとか言う状態?

もう、ひょっとして、王子以外にはお嫁に行けない状態?


目、目、俺ばっちり開けたままだし!息、苦しいって!!


すると王子はゆっくり唇を離すと半泣きで窒息しそうな俺に


「んッ、可愛いい!食べてしまいたいよ」


と囁いた。




食べたよね?今、俺の事、食べたよねッ!?


何!こいつ!何してくれてるの!?


俺はとりあえず信じられず口でパクパク息をしながらも呆然としてしまっている。


「ん」

そんな俺に今度は抱き締めて額にキスする。


デ、デコチュウだと~ッ!!


「これでもう僕が責任とって君と結婚するからね、可愛い、シルフィーヌ」


嬉しそうに俺を覗き込んで笑うレオリオ。

ダメだ、腰が砕けて力が入らない。

ゆ、油断した。こんなに手が早いなんて!

まさか7歳でファーストキス!?


早い、早すぎるわ!

いやいや、落ち着け俺、たかだか、キスじゃないか?前世でキスなんて外人なんか挨拶代わりじゃないか?そうだ、そうだよ、シルフィーヌ、大丈夫。落ち着こう俺。


そうだよ、そうなんだ俺、前世でそんな経験なぁーんにもございません。モテてた割には奥手でしたので。


ダメだ。どうしても男同士で初キス!って感じがして相当ショックだよ・・・・ああ、すごい脱力感・・・

王子の腕の中で俺ぐったりだよ。


「もうしないよ、ごめんね?シルフィーヌ」

「・・・・・・・・」

「今度はちゃんと君の許可を取るから?ね?」

「・・・・・・・・」

ちょっと瞬きをして焦点を合わすとレオリオの心配そうな顔が目の前にあってまた顔に血が昇る。


「や、ごめんなさい、離して」

両手でレオリオの胸を押した。

「いきなりしないで。お願い」

そうだよ、いきなりは心の準備が・・・ってそう言う問題ではない!


「嫌だった?」

ちょっと眉を寄せレオリオが聞く。


止めろ!切ない顔するな!抗議出来ないだろ!

「えっ?い、嫌じゃないわ・・・だけどいきなりは・・・」


何?何言ってるの?シルフィーヌ?何赤くなってるの?安い女に見られるだろう!?そんなんじゃ、婚約破棄される頃は乙女じゃないよ?


「大切にする」


レオリオが俺の瞳を見つめて嬉しそうに微笑む。


うん、そうだよ!

軽い女じゃないんだからな、シルフィーヌは!

って、あれ?でも、俺、もしかしたらヒロイン?だったら5股?

あれ?俺、ヒロインだったら攻略相手に会う度、こんなんなの?

・・・・・・・・

そういやルカも兄なのにベタベタだよな?兄だからと思っていたけど・・・・・ひょっとしてレオリオみたいなのがまだ3人もいる?俺、もしかして男にたらい回しにされるかも?

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・えっと、うん。

やっぱり、レオリオ王子と婚約しておこう・・・


うん。そうだ。こいつは最強の虫よけだ。それにまだ好みだから耐えられそうだし。婚約破棄後も融通を効かせてもらう為にもだな、ここで手を打っておこう。安泰老後生活確保のためだ。うん。惚れた腫れたなんて若いうちだけだからな。


「シルフィーヌ?」

「あ、はい、よろしくお願い致します?」

小首をかしげる俺をレオリオは抱き寄せる。

「可愛い。キスしていい?」

「や、無理です」

調子乗んなよ。

「じゃあ、これで我慢するね?」

「えっ?」

自分の額を俺の額にそっとくっつけて笑う。

その笑顔がとても可愛くて俺は見惚れた。


「大切にするよ、シルフィーヌ」


ああ、よろしく頼むわ。


「はい。私もレオリオ様を大切にします」


思わず俺もつられて笑っていた。






「わしとアントワート夫人の勝ち。王妃、諦めるんだな?」

「旦那様も諦めてくださいませ」

勝ち誇った二人は悔しそうにするお互いの伴侶に無情に言い放った。

「ええ、よくわかりましたわ。ですからもう、連れ戻してよろしいかしら?まったく、我が息子ながら誰に似たのかしら?あんなに手が早いなんて。アントワート嬢の貞操が」


カラン、と遠眼鏡が床に転がる音が聞こえた。


遠眼鏡を覗いたままの王、王妃、アントワート夫人は音がしたアントワート侯爵の方を一斉に見たが脱兎のごとくドアの向こうに消えた後だった。


「陛下、レオリオ王子危ないかもです」


夫の娘への溺愛ぶりをよく理解しているアントワート夫人は遠眼鏡を覗き込んだまま忠告する。


「衛兵!衛兵!急いで宰相を止めなさい!急いで!」

王妃様の絶叫が廊下にこだました。



王宮の一角から自分達の両親(おや)が噴水広場の様子を遠眼鏡で覗いていたなんて夢にも思っていなかった俺とレオリオだった。














キッコー〇ン!焼きトウモロコシに必需品ですね!この世界存在します。

読んで頂きありがとうございました。

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