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君は君の件

ここは王宮最奥にある陛下の自室だ。

今夜の奇襲を予測して陛下の部屋にもお父様とシュナイダー近衛兵隊長が夜中だが控えていた。

ラルバ公国公妃とセイラは王妃と一緒に王妃の部屋で大勢の近衛兵達に守られている。


レオリオは三人に俺の前世の記憶が有ることには触れず事実今あった事、ラルバ公国の事、これから予測される事を坦々と感情を交えす事務的に報告する。

すると三人の眉が苦しげに歪んだ。



「して、どうしたい?」

レオリオが陛下の問い掛けに先に反応し一歩前に出る。

「陛下、私にもう一度帝国に(おもむ)き話を着ける事をご命令下さい」

「シルフィーヌ、そちはどうしたい?」

「恐れながら陛下、私は帝国の話を飲んで頂きたく」

俺は頭を下げ礼をしたまま顔を伏せ答える。


「・・・・契約破棄をするかと聞いているのだがの?・・・・」


顔を上げると陛下は困った顔だ。

「いえ。陛下、致しません」

今度ははっきり陛下を見て俺は答えた。


「うむ。わかった。ライナス、ロイド、至急、大臣達を集めろ。ラルバ公国の事、早急に動け。レオリオ、そちはこれから行う会議に参加を許す。自分の意見をハッキリと皆に伝えるがよい」

陛下の言葉にお父様とシュナイダー伯爵が大きく頷き立ち上がる。

お父様は足早に部屋を出る前に俺を抱き締め耳許で

「よく言った」

と俺の頭を撫でたが表情は青ざめていた。

「ごめんなさい、お父様」

その俺の言葉に無言でもう一度抱き締めた。



慌ただしく王宮に陛下がお父様、シュナイダー伯爵、近衛兵達を従え移動する。



レオリオも無言で俺の手を引き廊下を歩く。

心配げにバルト、ルカが後に続く。

レオリオが王宮の自分の部屋の前まで来るとルカとバルトに振り返り、

「シルフィーヌと二人で話がしたい。五分で済む。待っていてくれ」

と言ってサッサと俺を部屋に押し込んだ。



部屋に入るなり、俺はレオリオの胸に抱き寄せられた。


「僕に逆らうな。シルフィーヌ」

言葉とは裏腹に優しい声だ。

「ええ、もう逆らわないわ」

「二度と俺と言うな。君はシルフィーヌで僕の妻だ」

「ええ、わかってる」

「・・・・まったく、君は・・・・」


「ねぇ?前世、男って気にならない?」


「関係ない。君は君だ」


「・・・そうなんだ・・・・」


良かった・・・・

良かったよ・・・・?

だって嫌われたかと思ったよ?

だって中身男って・・・キツいよね?俺だったら引いてるよ・・・・

本当に本当に良かった・・・・

凄くホッとした。マジ、気が抜けたよ・・・・本当。


俺はレオリオの胸にもたれかかった。

そんな俺をレオリオがギュッと抱き締める。


「心配するとこってそこなのかい?シルフィーヌ?」


あ、いつものレオリオだ。


「はい。そうよ?だって、だって気持ち悪くない?」


「どっちも君だから。性別なんか関係ない。今は帝国とハルク、こっちの心配だよね?」


ちょっと身体を離すと飽きれ顔で俺の顔を覗き込む。


「・・・・・・・」


「なに?」


「え、いえ、その・・・そんなに簡単に受け入れられるって思わなかったの・・・だって」


「君は君。僕といる君は名前が変わると人格がまったく違う人に成るのかい?違うよね?サエキリョウの記憶の時とは肉体や性別は違うかもしれないけれど今のシルフィーヌと同じ人格だよね?君の心は一つだよね?じゃあ、シルフィーヌは僕の知ってるシルフィーヌだから問題ないよ」


「・・・・」


レオリオが俺の額に額をくっつけ優しく笑った。


「僕がそんな事で嫌いになるわけないから」


そんな事って・・・・一番気にしてた事なんだけど・・な?


「信じられない?」


俺は言葉の変わりに抱き付いてキツく抱き締めた。


「・・ありがとう・・・レオ・・・」 


レオリオの胸に顔を埋めた。

泣き出しそうな感情を必死に抑えたのだ。

嬉しくて・・・・



「さてと、僕にとっては君を獲って食われるわけだから行かせないよ?」

「レオ、心配性ね?あれでもハルクは前世の兄よ。捕って食べたりはしない。ただ、国同士の関係を超えて条件を突き付けられたらこちらも条件をつけて欲しいわ?いい知恵を皆に頂いてね?」

顔を上げて答えると

「ああ、何があっても君は僕の妻だから」

「はい、旦那様」

「ん」

レオリオが優しく口づけた。



ドアを開けるとレオリオが外の二人を部屋に招く。

「ルカ、僕と会議に一緒に出てくれ」

「承知」

「バルト、ここでシルフィーヌを守っていてくれ」

「承知」

ルカが俺を抱き締める。

「仲直りしたか?シルフィーヌ」

「ええ、お兄様。心配させてごめんなさい」

「これからだがな?お前は私の大事な妹だ。帝国になぞやらん」

見上げたその顔が先程のお父様と重なり胸が苦しくなる。

「ありがとう。いつも私を信じてくれて。大好きよ、お兄様」

「当たり前の事言うな」

俺の頭をグリグリ撫でてレオリオと出ていった。


いつの間にか俺の肩に手を添え背後に立つバルトを見上げた。

「ごめんなさい。無茶な事ばかり言って」

「構わない。お前はもう決めたのだろう?行くと」

俺を見下ろす瞳は鋭い。

「・・・・ええ、バルト。大事な人達が傷つくのは嫌だもの」

俺のその言葉に真面目に頷く。

「着いて行くよ。帰る時は一緒だ」

「・・・・バルト・・・・ありがとう。けどその言葉で十分よ。もうすぐ学園も始まるわ?あなたは」

気持ちが溢れる。

「もう決めたから。つべこべ言うな。帝国の事、わかってるか?」

「バルト、貴方は残ってこの国を守って。私の大事な人達を守って」

「父上がいる。陛下も。シルフィーヌの父上もだ。だから国のことはもう心配するな。つべこべ言うなと言っている」

「・・・・・・・・バルト、ねぇ、バルト」

「しつこい。シルフィーヌ」


「前世、男だったのは構わないのか?俺が帝国に行くと言う事はハルクとは佐伯亮として接する。どうだ?」

俺が佐伯亮の声で話すとバルトはちょっと目を見張り

「・・・構わないよ。ただ・・・・俺が愛したのは今のシルフィーヌだ二人の時はいつものシルフィーヌでいて欲しい。なぁ?いつものお前もサエキリョウであってシルフィーヌでもあるのだろう?だったら何も変わらないだろう?」


・・・・・・ああ、

・・・・・・ああ、そうだよ。

だって俺はこの世界で生を受けた時からシルフィーヌなんだからな・・・


「ああ、そう、そうだよ?うん。変わらない。佐伯亮もシルフィーヌも俺だし、私なの・・・・そう、私は私よ?バルト」

シルフィーヌの声が自然と出る。


気持ちが溢れる。 


「じゃあ、何も変わらないだろ?」


バルトが俺の頭を撫でた。


嬉しい気持ちが溢れる。


「凄く・・・安心した。バルトがレオリオが、ルカが佐伯亮でもある私を否定しないか凄く不安だったの・・・」

「バカだな、シルフィーヌは。そんな事、誰も気にしない。お前はお前だよ。シルフィーヌ」

バルトが胸に俺の頭を抱く。


「またバカって言った、もう!」

「ククッ、バカにバカって言って何が悪い」

「フフッ、やっと笑ったわ、バルト」

俺もつられて笑った。





いつも長いのに読んで頂きありがとうございました!


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