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約束の件

今日もよろしくお願いします。

「望まれるのならお側に。ただ・・・・」

「ただ?」

「ただ、人の心はわかりません。今は良くてもいつどうなるか」

「僕が心変わりをすると?」


そうだよ!!お前が婚約破棄するんだよ!!


って言いたいけどな・・・・


「私が心変わりするかもです。ですから」


それはない!絶対ないわ!ってシルフィーヌが叫んでるけど俺は構わず畳み掛けようとする。


すると王子が言葉を繋げる。 


「だから、今、君を、シルフィーヌを僕が捕まえておくのだけれど?」


王子がまっすぐ俺の眼を見据えて言った。


・・・・・・

えーと・・・・随分ストレートだな?こいつ。

ルカと一緒でヤンデレか?

・・・まあ、いいか、ちょっと匂わせておこう。


「この国では15歳になれば優秀な民が集団行動を学ぶ学園に通わなければなりませんでしょう?大方の貴族の方はそこで将来の伴侶を見つけるのだとか。この国の良いところは身分より本人同士の相性を重視するところ。身分に関係なくお互いに想い合う気持ちがあれば将来、王になられる貴方にも貴族の私にも他の方が巡り合う可能性があるのでは?」

「今は時期早々だと言うこと?僕が王太子になってからとか?」

「いいえ、貴方の側にいたいのならば私くらいの歳から王妃教育を受けていかなければならないのでしょう?それはお受けいたします。正直に申し上げます。婚約はお互い仮の約束で構わないでしょうか?お互い本当の相手に巡り会った時に問題なく解消できるように」

「君は仮だと思っていても再来月の君の誕生日に僕との婚約披露パーティーを行うよ」


あれ?強行突破ですか?


「僕は誰にも君を渡すつもりはない」


ほほう、今、18歳のレオリオ王子がヒロインに言うセリフを言いましたな。 


たぶん、7年後、ヒロインにも言うんだろう? 


凄く疑心暗鬼な俺は心の中で吐き捨てる。


違うわ!きっとこれが貴女がヒロインだと言う証拠よ?


楽天的なシルフィーヌがここにいる。



「シルフィーヌは女宰相になりたいのかい?」

「えっ?・・・・いいえ、ルカが目指しておりますので」

なんだ?それ?

「ルカは参謀を希望しているそうだ」

「それはアントワート家が望みません」

「いいや。アントワート侯爵家の総意だと聞いているが」

初めて聞きましたが?

「私は聞かされておりません。私が宰相などありえません」

「父上とアントワート侯爵が君が王妃候補から降りるのなら女宰相も良いかと言っていたよ」


だからか?だからさっき王子がプロポーズした時のお父様の態度か?そんな事ルカを差し置いてあり得ない。

こいつ、まさかの腹黒王子発動?

普通、11歳でそう来る?

なんでそんなに必死なのよ?


ちょっと、頭冷やそう。俺は今王妃教育は受けると言った。婚約も構わないとも。ただ将来解消もあり得ると言った。俺はこの国で職に就きたいと思っている。女宰相、理想的だが兄ルカを差し置く気なぞサラサラない。

では、気持ちは?何が不安なんだ?婚約破棄は覚悟しなければならないのは解っていることだ。

例え上手く王妃になったとしても相手は王だ。女なんて選り取り見取りだ。そんなことを不安に思っているのか?シルフィーヌ?

例え側室であれ、愛する夫に他の家庭を作られるのは屈辱かい?シルフィーヌ?




それはとても悲しいわ。




俺の心が叫んだ。


悪役令嬢が婚約破棄された時の泣き顔が浮かんだ。



王子が俺を見つめている。


安全を踏もうか・・・戻れなくなるかもしれないが・・・


「レオリオ王子様、お願いがあります」


「君を手に入れる為なら何なりと」


「・・・・・貴方との未来をここで選ぶなら私だけを愛してくれますか?」


王子が破顔した。それはとても嬉しそうに頬を染めて。

そして喜々とした顔で頷く。


そして俺の声でこう言うのだろう?手を差し出して・・・・


「君しかいらない。永遠(とわ)に僕は君のものだ」


乙女ゲーム『永遠(とわ)の誓いを君に』はこのセリフを攻略相手に言ってもらえばゲームクリアだ。



シルフィーヌ、欲しい言葉はもらったよ?これで満足かい?



俺もニッコリ笑いその王子の手にそっと触れた。




二人の間で約束を誓い合うと王子が急いで立ち上がり、今度は両手を俺に差し出す。俺はヒールを履き直し、その両手を繋ぐと王子は俺を引っ張り上げた。

「さあ、急がないと本当に君の父上がやってきそうだ」

「えっ?待っていたのではないのですか?」

俺のスカートの後ろの裾を軽く王子が払ってくれる。

「ああ、バラを見る前に君と約束を結びたかったんだ」

「迷ってはなかったのですね?」

「不安にさせて悪かった」

「・・・王子様が一緒だったので何も不安ではありませんでした。足もだいぶ楽になりましたし?」


俺のヒールの足を気づかってくれたんだよな?


王子は嬉しそうに微笑んだ。


「シルフィーヌ、レオリオって呼んで」

俺は右手を差し出す。その手を王子が握りしめた。

「レオリオ様、では参りましょうか?」

俺がちょっとおどけて笑顔でそう呼ぶと王子は頬を染めて頷いた。


かわいいな。たぶん俺も赤い顔してにやけているんだろうな。

恥ずかしいわ。


レオリオの後を着いてしばらく歩くと突然目の前が大きく開けた。中央に大きな噴水があり、そこから水路が流れ、その水路の両端に色とりどりのバラが咲き乱れていた。

「うわ~っ!!きれいっ!!」

俺は思わず叫んだ。アントワート家(うち)の庭も素敵だけれどこれは植物園なみだ。それにこれってバラなの?って言うような変わったバラが何種類かある。

「気に入った?」

「はい!とても。見て回ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」レオリオがクスクスと笑いながら答えた。


あんまり、前世では花なんか見る余裕がなかった。

だが、今世で俺の歳では屋敷の外に出る機会が少ないので自然とアントワート家(うち)の庭(森も畑も果樹園も温室もあるよ)に咲いている花や植物を使用人達に聞いたり調べたりしているうちに結構詳しくなってしまった。

案外、この世界は前世日本と変わらない事が多い。時代設定が中世なのにな。

花も日本で見る種類と変わらないものが多いのだがたまに何だこりゃ?ってお遊び設定の植物が出てくるのが楽しいのだ。(某アニメキャラに似た花や果物が結構あったりね)

そうだ!確か、王族は自分の名前が付いたバラがあるはずだ。あ、やっぱり。先祖代々順番にあるな。うーんと、これが3世でああ、これが4世ってことはレオリオはずっとあっちで・・・・


そこにはレオリオがいて小刀を構えていた。


俺はドレスの下の足首に装備しているムチを抜き取りうならせた。

「危ない!!」

ムチの先で器用にレオリオの手から小刀を取り上げ、空中に放り投げ俺は左手でキャッチする。


「何をしてるの!!危ないでしょう!!」


俺は思わず怒鳴っていた。


レオリオが俺の一連の動作を見て唖然としていた。


「・・・・・いや、僕の方が言いたいんだけど?・・・・・7歳のお姫様はムチなんか持たないよね?」


あー、やらかした・・・・・


いきなり婚約解消だな・・・・・こりゃ。



読んで頂きありがとうございます。

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