契約破棄の件
今日もよろしくお願いします!
3ヶ月。
長いようで短く感じたのはバルトとユリア、それとヘルダー辺境伯領のみんながいてくれたからだ。
帰ればレオリオに会える。
それは凄く嬉しいのだ。
でもヘルダー辺境伯領のみんなと別れるのもちょっと辛かった。
結局最後まで兵士達は誰も俺とバルトを負かす事は出来ず今度夏にリベンジの約束で泣く泣くみんな納得して送り出してくれたのだ。その際双子と一緒にダリとゼータを先頭に多くの兵士達が俺達の帰りに涙した。
止めろ!小さいのはわかるがお前らデカイだろ!
後で聞いた話だが何人かは真剣に近衛兵に依願転職できるかシュナイダー伯爵に聞きに来たらしい。
コラッ!俺に言え。その地を守れって迷いなく返してやるわ!
「可愛かったわね?双子ちゃん」
隣に座るユリアが帰りの馬車に揺られながら唇を尖らせる。帰るのが面白くなさそうだ。
「うん。欲しいな、あんな可愛い子供」
俺も寂しい。自分でもびっくりだが俺は子供が好きみたいだ。何か凄く癒された。
「シルフィーヌ、止めなさい。前の人、ソワソワするから」
「俺は今すぐ結婚でもいいぞ。シルフィーヌ」
向かいの席に座るバルトがニヤリと笑い俺に向かって手を広げる。
「お兄様も止めなさい。ほら、シルフィーヌ、男の人なんて作る過程しか考えてないんだから」
「え、何?ユリア、大胆。バルト、そうなの?いやらしい・・・・」
「何でそうなるんだ。何かあったか?ユリア?」
「・・・・別に」
あ、ユリア、ちょっといい感じの人いたからな・・・・
「何?手紙書いていいですか?ってなかったのかしら?」
ユリアの肩を軽くつつく。
「もう!シルフィーヌ!お兄様の前で言わないでよっ!」
「え、聞いて貰いなよ?バルトに味方になって貰おうよ?」
「サバァンだろ」
「えっ!」
ユリア、目が踊ってるよ?
「あら、バレバレ。凄い、バルト。何でわかったの?」
「ふん。これでもお前の兄だぞ俺は。サバァンは兄上が本気か確かめてたよ」
「なっ!!何でそんな勝手な事!」
「兄として当たり前だ。帰りにサバァンに何て言われた?お前に何か言っただろ?」
「・・・・君の気持ちがとても嬉しいって」
「で?」
「でも、もっと君を守れる様になってからって・・・・」
「あら、いいじゃない?」
「違う!シルフィーヌ、私断られたのよ!」
可愛い顔を真っ赤にしてユリアが膨れる。
「ユリア、おいで。違うから。サバァンは本気だ。本当に兄上に認めて貰ってからお前を迎える気だよ」
ユリアが向かいの席に座るバルトに思い切り抱き着いた。
「本当?」
バルトはユリアを大事に胸に抱くと
「ああ。後で兄上に確かめるといい」
と頭を撫でた。
俺達が乗る馬車の前にもう1台、新婚旅行を兼ねて王家に結婚の報告をするユリアスとルナが一緒に王都に向かっているのだ。
この国の大貴族に属するヘルダー辺境伯爵家、シュナイダー伯爵家の婚儀は国をあげての祝い事となるため陛下より祝辞、神官からも神の祝福を貰う一大イベントだ。
もちろん、国民からも祝福を受ける為に近衛兵が二人を警護しながら王族扱いで王都をパレードするのだ。
凄いよね?大貴族。
侯爵のアントワート家もそうだ。
そう、俺とレオリオの結婚式なんかはたぶん一月くらい王都はお祭り騒ぎになるだろう。
結構、俺、責任重大。
「ユリア、良かったわね?」
俺が笑って言うとユリアが今度は俺にピョンと抱き着く。
「上手く行くと思う?シルフィーヌ?」
「何心配してるの?サバァン、信じてあげなよ?いい子だよ?」
「ん~、分かってるけど・・・・ユリアス兄様、凄く厳しいから・・・・サバァン、まだ体小さいし・・」
「大丈夫だ、ユリア。あっと言う間にあいつはデカクなる。剣の筋もいいしな」
「そう?そうかな・・・・」
「まぁ、心配といえば心配よね?サバァン、綺麗だから」
うん。やっぱりユリア面食い。サバァン、男にモテそうな美少年。まぁ、バルトとレクサスといつも一緒だと普通面は目がいかんわな。
「ん、そうなのよね?大丈夫かな・・・・」
そうだよね?よく猛者どもに食われてないよね?
「うーん、ダリに頼んどこうか?」
「ダメよ!シルフィーヌ、ダリ、そっちだから」
「えっ・・?うそッ!!・・・・そうなの!?バルト!」
「みたいだな」
「えっ?えっ?じゃあ、ダリって・・・・えっ?・・・バルト、大丈夫だったの?」
俺の頭にバルトにじゃれてたダリが甦る。
「まぁ、ちゃんと断ったからな」
えっ!えっ!いつの間に?・・・・・・・・
「バルト・・・・お疲れ」
「いや、何もないから。本当に」
「このバイセクシャル」
どうせ通じないから大胆に言い放ってやった。
なんだよ?ルナ姫心配してたらそっちかよ・・・・!
「うわ!お兄様、寄らないで!」
ユリアが俺にさらに抱き着く。
「止めろ、シルフィーヌ!冗談でも止めろ!」
あれ?バイセクシャルは通じるんだ。ふーん。
「シルフィーヌ、お前、絶対勘違いするなよ!」
何?なんでそんなに真剣に否定してるの?バルト?
「え、あ?冗談よ。バルト。何焦ってるの?まさか、経験済みとか?」
俺が笑って言うと
「お兄様!?」
ユリアがいやだぁって小さく言ってバルトを睨む。
「シルフィーヌ止めろ。真剣止めろ。ユリア本気にするから」
「ああ、ごめん、ごめん。ユリア、バルトは男の人無理よ。だってそれだったらレクサスを好きになってるわよ?」
「あ、そうね・・そうよね?でも結構、シュナイダー部隊でも多いからね?だから・・」
「え、そうなの?うわ、誰?ねぇ、誰と誰?」
「あ、ほらシルフィーヌも知ってる第一部隊の」
「止めろ!お前ら!はしたない!そんな生々しい話なんか聞きたくないから!」
「え、何で?凄く興味あるけど?」
俺とユリアは声を揃えてバルトに言った。
シュナイダー領を経由してアントワート領に行き王都に向かうルナ姫とユリアスと一緒に俺達も移動している。別に二人の新婚旅行の邪魔をしている訳ではないが俺もレオリオに会いに行くし、ユリアとバルトもパレード見に行くし。
シュナイダー領でレクサスを拾いアントワート領に向かう。
ユリアはレクサスとルカの事はとっくに割り切っていてレクサスと普通に仲が良かったから凄く安心した。
そして今日、これから王宮に向かう馬車にお父様と乗る俺の心はとても暗い。
昨日の朝早くにもかかわらずアントワート領に着いた俺をアントワート家の皆がお祖母様を先頭にとても喜んで向かえてくれたのが嬉しかった。その際、ルカが帝都に出掛けていてちょっと寂しかったのだ。それもレオリオに着いてだそうだ。
なんだ?
帝国に行くなんて聞いてなかったよ・・・・?
その事は後で私の部屋で話すとお父様に言われた。
夕食の席ではアントワート本館で新婚の二人とバルト、ユリア、レクサスをもてなした。
それにルナ姫とユリアス二人はとても嬉しそうだった。
特にお祖母様はバルトとユリアに俺が世話になったお礼をしていた。
なんかお祖母様、凄くバルト気に入ったみたいだな?
お母様もお祖父様も俺にバルトとはどうなの?って小さな声で聞いてきた。
ん?あれ?ひょっとしてあれ?バルト、試されてた?
・・・・・・・・
まさかね?まさか・・・・
まさかね?!
「お父様?」
明日はいよいよレオリオとルカに会えるかも!と逸る気持ちを抑えながら、お父様の部屋を訪ねるとお父様が無言で俺を胸に抱き寄せた。
「シルフィーヌ」
「?どうしたの?お父様?」
俺はお父様を見上げる。
「シルフィーヌ、明日、王宮には私と行こう。陛下と話を着ける」
「お父様?明日はレオリオ王子が戻られるのでしょう?二人で先に話をさせて貰えませんか?」
「シルフィーヌ、契約は破棄だ。お前は王子とは会わなくていい。陛下にその事を伝えるだけでいいから」
俺は驚いてお父様の胸を押した。
「お父様!?」
「契約は破棄だ。シルフィーヌ」
俺の目を見詰めるお父様の顔はとても悲しそうだ。
何で・・・・何で?どうして・・・・?
「嫌!嫌!嫌!お父様!勝手な事しないで!!」
「もう決まった事だ。レオリオ王子は帝国から姫を迎える」
「えっ!?」
「もう決まったのだ」
急に何も聞こえなくなった。
俺はお父様の胸に倒れこんで気を失ったのだ。
いつも読んで頂き感謝です!




