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馬の鼻先に人参をぶら下げるの件

今日もよろしくお願いします!

俺とバルトは背中合わせで剣を構えてグラウンドの中央にいる。周りには30人近くの兵士が倒れている。

「もう、終わりかしら!?」

って、聞こえないか?ほとんど気絶してるもんな?


「もう誰もいないのか!!お前達!!」

ユリアスが怒声で廻りの兵士達に叫ぶ。

「いいのかと聞いている!!」


「イエッサー!!」

と一斉に声が上がる。


「終いだ。姫!バルト!良くやった!」

ヘルダー伯がガハハハと笑っている。


「そこで伸びてる奴等を叩き起こせ!!」 

ユリアスの怒声に部下達が一斉に走り出し介抱する。


「こちらに。姫、バルト」

ヘルダー伯に呼ばれるとユリアスとの間に並ばされた。

そしてデカイ声でヘルダー伯ががなった。


「お前達!!次期王妃と将来の近衛兵長殿に忠誠を誓うがいい!!何れこの国を背負って立たれる方々である。今お前達が見た通り、感じた通り、このお二方はこの国を守る守護王でもある!お前達が守るのはこの国の国母となるシルフィーヌ姫だ!」


「オオーッ!!」

と一斉に兵士達が自分の胸に剣を掲げ叫んだ。


えっ!?ちょっ!待ってよ!そんな話してないし!!


「い、いや、ヘルダー総督、ちょっと!」

俺はヘルダー伯の腕を引く。


「覚悟しろ、姫。そなたは我が部隊を背負うのだ」

俺にウィンクをすると大きな声でまたガハハッ!!と笑った。


痛い!だから肩叩くなよ!


「ああ、それから!姫とバルト殿に挑んで負けたお前ら!コラッ!伸びてる奴、蹴り起こせ!!よく聞け。姫はルナの婚儀が終わると王都に戻られる。それまでに姫かバルト殿からお前らの名誉に掛けて一本取り戻せ!!出来れば褒美をやるぞ!ああ、姫からも褒美があるぞ!」


「イエッサー!!」


うわっ、一斉にみんな叫んだよ!?


「ちょっ!ちょっ!待って!!そんな約束!」

「ん?姫からキスでいいか?みんな!!」


「イエッサー!!」


コラッ!外野!何でお前らも叫んでるんだ!!

えっ!?ちょっ!なっ!!


「ちょっ!!勝手に!ヘルダー様!!」

「決まり!!お前ら!せいぜい精進しろ!あー、面白かったぞ!!じゃ、飯行こうか?姫、バルト」

俺とバルトの肩を着いて来いとバンバン叩くとヘルダー伯は方向を変えサッサと城に向かう。


だから!痛いって!


俺は後ろを振り返り、大声で

「みんな!!ありがとう!!楽しかったよ!!」

って手を振ったらみんな一斉に敬礼した。


おっ!!


それから全員ユリアスに朝飯抜きで鍛え上げられた挙げ句、それぞれに膨大な練習量を枷られたそうだ・・ごめん、みんな・・・


翌日から毎朝、練習相手は事欠かない。グラウンドに行けば必ず誰かが手合わせ願いますと声を掛けて来るからだ。

俺が笑顔で喜ぶと皆、凄く緊張して固まってるが。

でも、戦い終わると(誰も勝てないけど。手加減はしてやらないからな)何故か嬉しそうだ。

あ、俺が笑って手を差し伸べて立たすからだってバルトが何かブツブツ言ってたな?いーじゃん、手くらい握ってあげても。

そのせいか、一週間も経たないうちに俺は何処にいても姫、姫と声を掛けられ結構大事に扱われている。

ダリなんか練習場に行くと必ずやって来て俺の後ろに着く。

どうやら俺を守っているらしい。

たまにバルトと笑いあってるからいい奴なんだ。

人間わからないものだ。

ゼータは暇さえあればバルトに挑み勝った暁には俺に結婚してくれと求婚してきてバルトとダリに蹴られている。

まあ、毎回こてんぱんにやられてるからまた頑張れ!って慰めてやるが・・・・・


それと俺と一緒にユリアが見に来るとさらに皆、張り切るから面白い。みんなユリアが応援するとデレデレだ。

ユリアは妹君(シュナイダー兄弟の妹だからな)と呼ばれいつも若い兵士がユリアの気を引こうと必死な努力が涙ぐましい。

まぁ、ユリアスはちょっと面白くなさそうだが。


どうもルナ姫が結婚するのでヘルダー部隊の皆はちょっと士気が下がってたみたいだ。

俺とユリアはそんな奴等のちょっとしたアイドルみたいで(あ、バルトもそうか)本当に馬の鼻先に釣られたニンジンだったようだ。まぁ、俺も楽しいからいいけどな。


それでも夜、レオリオを思い出して落ち込む時はユリアが俺の部屋で一緒に眠ってくれる。

いろいろ朝まで女子トークだ。これはこれで楽しいし。


双子もほとんどの日の午後から俺とユリアにべったりだ。

結婚準備に忙しいルナ姫の代わりに俺とユリアが面倒を見ているのだ。


3人の母親のヘルダー夫人はルナ姫にとても良く似た儚い感じの女性で双子を産んでから体調が悪くベット上での挨拶だったからルナ姫が母親代わりをずっとやっていたようだ。

ルナ姫はユリアスに逢うまでは結婚する気は皆目なかったようだ。


ああ、ヘルダー伯も結婚が遅かったんだって。(俺のお祖母様が忘れられなかったらしい。凄いな一途だったんだ。まぁ、その後30歳も下のヘルダー夫人と大恋愛の末、結婚したらしい。やるな、親父!)


そんなこんなで寒いヘルダー辺境伯領だが俺は楽しく過ごしている。


でも・・手紙も送れないけど・・元気かな・・・?レオリオ・・

 




「リリアナ、可愛いけどドレスのほうが似合うわ。ああ、髪、可愛いリボンで結いあげようね?」

侍女達がせわしくドレスアップをしている俺のドレッサーの鏡に子供が映りこむ。

「何でシルは分かるの?」

「ん?」

「ユリアは僕をリリアナって呼んだよ」

後ろからドレスを来たサングリードが俺に抱き着いて言った。

わざと入れ替わったのか。

確かに顔は一卵性みたいにそっくりだけど雰囲気や気配は全然違うからな。

俺はサングリードの手を引いて

「サングリード、可愛いわ。確かにそれで式に出ても構わないくらい可愛いいわ?今日は女の子で行く?」

「違う!僕、男だし!!」

「ん、そうだね?あ、前髪上げたら、わぁ、凄く男前よ?サングリード。格好よくきめちゃおうか?」

サングリードの髪をかき揚げるとリリアナも抱き着いてきた。

「シル 、可愛いいおリボンつけて!」

「ん。リリアナに似合うのは金色かな?二人共一緒にルナお姉様の所に行こうね」

「うん!!」


今日はルナ姫とユリアスの結婚式だ。

朝から大人達が城中にあふれかえり右往左往しているので双子は退屈で仕方ない。

また、ルナにも会えないのでへそを曲げてるのだ。


「シルフィーヌ様、バルト様が来られました」

俺が立ち上がると侍女達がため息をつきながら最後の仕上げとばかりに俺のドレスの裾を払う。


おお!エロい。何か凄くエロい仕上がりだ。

ワインレッドの裾にプリーツとレースが重なり合ったこのドレスは腰から下が中々のボリュームだ。上からは白の毛皮のストールを纏う。口紅も濃い赤で目元もブラウンと紫のパールが入って凄く妖しい。髪は片側でドレス生地と同じ素材の大輪のバラで纏めふわゆる立てロールで流している。

うーん、こんな化粧も似合うとは・・・・まさに悪役令嬢。


「シル、綺麗なお姫様だ!」

「綺麗!シル!お姫様!お姫様!」

「そう?サングリードもリリアナも格好いいし可愛いいわよ?」

二人に手を引かれバルトが待つ応接室に向かうと青の軍服を着こなしたバルトが頬を染めて俺に手を差し出した。

「ああ、とても美しい。シルフィーヌ姫、お手をどうぞ」

「はい。ありがとうございます。バルト様もとても素敵ですわ」

手を差し出そうとすると双子が俺の手を離さなかった。


今俺をエスコートしてるのはサングリードだ。とても嬉しそうなのでちょっと俺も照れる。

バルトはリリアナにエスコートされている。しかし俺の反対の手をバルトが握り締めてるから何か4人家族みたいだ。若い母親すぎて恥ずかしいんだけど。


城の中にはちゃんと礼拝堂があり粛々と式が進められる。

真っ白な長いレースのウェディングドレスのルナ姫に兵士達は皆涙していた。たぶん、ユリアスに対する悔し涙だろう。見つめ合う二人はとても幸せそうで何かこっちまでドキドキするよ。

横に座るバルトもずっと俺の手を離さないし。


ああ、双子は礼拝堂に向かう途中の廊下でヘルダー夫人が向かえに来て両手を広げると嬉しそうに掛けていった。

やっぱり本当のお母様には敵わないな。ちょっと寂しいぞ。

そう思っていたらバルトが俺の手を引き

「やっと二人きりだ」

と嬉しそうに笑い、抱き寄せようとした。


「ちょっと!お兄様!わたし!私、忘れてない?!」


後ろを振り向くとユリアが思いっきり膨れていた。

その後ろで昨日夜遅く到着したシュナイダー夫妻が笑っていた。

次話はアントワート家に戻り、契約破棄へとなります。その理由は?

今日も読んで頂きありがとうございました。


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