夫婦喧嘩の件
続きです。
今日もよろしくお願いします!
ああ、どうやら俺は間違えたようだ・・・・
それが証拠にレオリオが俺を抱き込んでさっきから無言のままだ。
ああ、俺はあきれられたんだ・・・・
何て尻軽女なんだって。何てだらしない女なんだって。
じゃあ、どうすれば?どうすれば良かったんだよ?
「・・・・レオ・・・・いいわ。もう、放して」
レオリオの抱き締めている手に余計力が入り放そうとはしない。
「私、バカだから、レオにあきれられたのね・・・・」
「・・・・違う」
「じゃあ、・・・・」
レオリオの顔を見上げた。
「君は僕と会えなくなる方がいいんだよね・・・・?陛下から僕が罰を受ける方がいいんだ」
無表情なレオリオの顔がそこにある。
「違う、違うわ?レオ、私の心の声聞こえなかった?私は聞こえたわ。レオが私を凄く愛してくれているのが。ねぇ?」
思わずレオリオの胸元をつかんで訴えた。
「君はバルトを守る為にわざと僕に体を差し出したんだろう?」
レオリオが瞳をそらす。
「レオ・・・?なんで・・・・?違うわ!!レオしか、私が抱いて欲しいのはレオしかいないからこのやり方しか思い付かなかっただけよ!私の心に嘘があった?レオしかいない。私が抱きたいのはレオだけ!わからなかった?ねぇ?」
「・・・・・・・・」
「わかってもらえなかったの?・・・・ねぇ!?・・・・ああ、そう、そうなのね・・・・」
ダメだ、泣き出しそうだ。
「足りないのね?私の心の中のレオを思う気持ちは・・足りないのね?・・そう、そうなんだ・・・・」
毅然と振る舞うつもりで声を絞り出したのに震えている。
俺は心の中までさらけ出したのに・・・・
なんだよ・・・・
心まで、嘘なんてつけないよ・・・!
けど・・本当にこのままわかってくれないなら俺はどうすればいいんだ・・・・
頬に涙が伝い溢れてきた。
泣くな・・・・シルフィーヌ、自分が悪いんだよ。
「もう、いいわ・・・・ここに置いて帰って」
泣き顔を見られるのが情けなくて、悲しくて、ムキになってる自分の声が聞こえる。
俺は体に無理矢理、力を入れるとレオリオの膝から起き上がろうとする。
しかしそんな俺をレオリオは放そうとしない。
「レオ・・・!一人で考える・・!どうしたら」
「バルトと共鳴したんだろう!?バルトが好きなんだろ!?」
レオリオを見上げる。
「ちがっ!」
「いいよ?構わないよ?構わないから!!僕が君を離してやらないだけだ!いいよ!わかったよ!君の心は・・心はバルトにくれてやるよ!」
泣きそうな顔でレオリオが吐き捨てる。
なっ!何いってんだよ!
「なんで?なんでそんな事言うの?!私はみんな貴方の物よ!貴方しか、私の心にはレオしかいないのに!私は心で嘘なんかつける程、器用じゃないわ!何でそんな事も解らないのよ!」
俺は悔しくって、悲しくって、涙が溢れて止まらない顔を無理矢理レオリオの額に押し付けた。
「それにレオリオとバルトも共鳴するわ!!共鳴は相手の記憶から自分に無い経験の記憶を印が小さな方が読みに行き共有するのよ!私とルカ、レオと陛下の印は同じ血統だからすでにお互いの先祖の記憶を共有しているから共鳴しなかっただけ!私の印は新しいレオの記憶をもらってアイシスの印に変化したじゃない!?今日はレクサスも来てるわ、証明する!レオ、私がレクサスと共鳴する事を見れば解るわ」
レオリオが俺を見つめる。
その瞳には必死で捲し立てる俺の赤い興奮した顔が映っている。
けど・・・・
けど・・・・そのレオリオの瞳は・・・・
「信じてくれないの・・・?」
「・・・・・・・・」
「もう、私が言う事は信じてくれないのね?」
「・・・・・・・・」
「そう・・でも・・・レオ、貴方が思い違いしたままでも結果は同じだから私は構わないわ。貴方の側にいられるのは私なのだから。でも勝手に証明するから・・・・もう、私が貴方に見せる事の出来る誠意はそれしかないから・・それから抱くなり閉じ込めるなり・・・私を捨てるなり・・好きにすればいいわ」
「・・・・違う・・・・」
俺は力任せにレオリオを振り払う。
「!!」
レオリオが驚いて手を離す。
俺は素早く立ち上がろうとした。
「嫌だ、行くな!!シルフィーヌ!!」
また、俺の手を掴むと無理矢理俺を抱き込んだ。
「レオ!!いい加減に放しなさい!」
「嫌だ!!これ以上、他の男が君に触れるなんて!!耐えられない!耐えられないよ?・・・・あんな声、君のあんな姿を他の奴が・・許さないから!!」
・・・・えっ?
そこ?
そこなのか?
怒ってるポイントはそこなのか?
「・・・・レオ?ねぇレオ?レクサスに私があんなに乱れたら殺して?そんな事絶対ないから」
「うるさい!!」
レオリオの綺麗な瞳が真っ直ぐ俺を睨んで揺れている。
今、俺にうるさいって言った?
言ったよね?今?
・・・・・・・
・・・・・・・・ああ、
上等だよ。何だよ!
いいかげんにしろよ!!
ヒステリー女みたいになんだよ!!
人の話聞けって言ってるんだよ!
ああ!もういい!もう!こんな茶番はごめんだ!
俺は無言でレオリオを引き剥がしにかかる。
怒ってる俺に敵うと思うなよ!!
満身の力でレオリオの手を振りほどきにかかる。
ギリギリと胸を押す。
「なっ!やめ・・・・止めろ!シルフィーヌ!」
止めない!もう、いいから!
お互い譲らないで無言で睨み合う。
俺は歯を食い縛り、レオリオの顔は歪み赤くなってきた。
「止めろと言ってるだろ!!」
突然、目の前に衝撃が走った!
次に目の前に火花が散った!!
「なっ!!」
ちょっ!な、何?頭、頭、ガツン!!って!回るよ?なんか気分悪いくらいに・・そんでもって
「やぁ!痛いぃぃっ!!」
「わぁ!!シルフィーヌ!!すまない!!」
「痛い!痛い!わぁ、やぁ、もう!!」
俺は頭を両手で抱えた。
おでこ、おでこ、割れそう!
無茶苦茶痛い!割れてない?ってか、ほんと割れてない!?
「ごめん!シルフィーヌ!ゴメン!つい!!シルフィーヌ、ほんとに!」
頭突きされた!?俺、レオリオに頭突きされたのか!?
レオリオが俺の頭を必死でなで回して必死に謝っている。
「うわぁ、どうしよう、赤くなって!どうしよう・・・・赤いや、どうしよう!」
レオリオがオロオロしている。
うわ、うわぁ・・痛いけど・・・レオリオがオロオロって・・・
うわっ、レオリオの額も凄く赤いし?腫れてきてるよ・・・・
って、思うより先に手が出てレオリオの額を急いで撫でていた。
「シ、シルフィーヌ?・・・・」
「・・・・レオ、痛そう・・レオこそ凄く腫れてる?ホント痛そう・・・・」
「僕は男だから構わないけど・・・・痛いだろ?」
「ん、凄く痛い・・・・・」
お互いまだ痛くてジンジンしてるくせに相手の頭を撫でまわす。
「ごめんね。本当に。手加減出来なかったよ。ああ、腫れて来てる・・」
「レオの方が酷く腫れてるわよ?冷やさなきゃ」
「ああ、そうだ。君は冷やさなきゃ。そうだよ?早く冷やさなきゃ!」
「違うわ、レオが早く冷やさなきゃよ?」
「君が」
二人でお互いの額を撫であってるのが何か可笑しくなって来て
「やだぁ、レオ、撫でたら痛いからフフッ」
「何で笑ってるの?シルフィーヌ、ちょっと僕も可笑しいけど・・それに痛いし」
俺が耐えきれなくて笑うとレオリオも笑った。
「だって、頭突きって!!普通する?それも侯爵令嬢の私に?ああ、ダメだ、痛いけど可笑しい!」
「なんだよ?シルフィーヌがバカみたいに止めないから。フフッ・・けど凄い力だったからびっくりしたよ?」
レオリオが俺の衣服の乱れを直して抱き上げた。
「おでこ痛いだけだから大丈夫よ?歩けますからレオ」
「王宮に帰って早く君をハルマーに見てもらわなければ」
「えっ、それはさすがに恥ずかしいわ・・だって、けんかしてこんななんて・・」
「明日、青くなってしまうよ?いいのかい?」
「えっ?!それはさすがに・・・・」
「ごめんね?本当に」
「私も・・強情だったわ・・・ごめんなさい・・」
俺はレオリオにそっとキスをして謝る。
レオリオも素直に返し、おでこをくっつけたのでお互い痛い!って言ってまた謝った。
王宮の救護室でハルマー先生とレクサスに俺とレオリオは診てもらい今、頭を冷やされている。
「なんでそうなるかな?」
レクサスが俺にあきれ顔だ。
「ん?本当ね?」
「笑ってるし。心配した僕がバカじゃない?それも凄く、凄く心配したんだけど?」
「シルフィーヌは悪くないんだ、レクサス」
同じように隣でハルマー先生に治療を受けていたレオリオがレクサスに話かける。
「レオリオ王子、失礼は承知しておりますが発言させて下さい」
「構わない。だけどレクサス、これは夫婦げんかだから」
「そう、夫婦げんか。フフ。だからもういいの」
「ああ、そう?やっぱり心配した僕がバカなんだね?シルフィーヌ。二人して幸せそうに笑ってるし?」
そんな三人を横目にハルマー子爵だけが渋い顔をして考え込んでいた。
読んで頂きありがとうございました。




