この気持ちをわかって欲しいとは思わないけど理解はしてほしい件
今日もよろしくお願いします!
またベットだ。
まぁ、アントワート家別宅の俺の部屋だが。
ああ、俺、バルトの胸で寝ちゃったんだな・・・
俺って今何歳なんだ?
前世17歳+今11歳だよな?あわせて、えっ?28歳?ないわ~っ!
14歳、中坊3人に泣かされてバカ呼ばわりで最終慰められてるなんて・・・・
へ、へこむわ!おまけにそんな3人が好きだなんてやっぱりバカだ・・・・
それで?それで、シルフィーヌ、何でこんなにエロいんだ?
ゲームのシルフィーヌは天然お子さま体型であんなかわいい明るい声だからか?
だからあんまりエロく感じなかっただけか?
今の俺は発育良すぎだし、色気たっぷりの声だし、感じ過ぎのやっぱり多情〇ッチなシルフィーヌだわ・・・・
あ~っ!もう、嫌だ!!
シルフィーヌ止めたい!
今すぐみんな捨てて旅に出たい!
何でこの世界にギルドはないんだ!
ああ、この腕一本で賞金稼いで成り上がり下克上ウェルカーム!!
マジ、今から体一つで家出してぇ!
ああ、現実逃避してしまった・・・・
ダメだ、バルトの言う通りじゃあないか・・・・情けない。
言い当てられてバルトに八つ当たりした自分が情けない。
出来ないわ・・・俺。
レオリオとバルトどっちかなんて選べないわ・・・選ぶくらいなら逃げたいよ!
ああ、ダメだ・・ダメだ!ダメだ!腐る!俺、このままじゃ腐る!
もう十分シルフィーヌのバカさかげんは晒しただろう?
いまさら取り繕わなくてもいいや!とにかく、頭を切り替えろ俺。
悩んだ時には先ずやれる事から片付けよう。
もう、自分の気持ちさえしっかりしていれば何言われても平気だ。
そうだよ、シルフィーヌ、お前は俺なんだ。
ゲームのシルフィーヌでもロトでもない。
俺なんだ。
俺が決めればいい。
俺がこの人生、しっかり地に足つけて進めばいいんだ・・・・
俺は顔を両手で勢い良くバチンッ!と叩くとガウンを纏い廊下を急ぐ。
先ずはバルトに謝ろう。
今日はバルトもレクサスもこの別宅に『王の印』について話し合うために泊まっているのだ。
ああ、月が高いな。
侍女達にも会わないな。
ふと窓の外の星空を見上げてもう遅い時間だと気付く。
こんな時間に訪ねるのは良くないな・・・・
俺はバルトの部屋に行くのをあきらめ庭に降りる。
庭には良く手入れされた色とりどりの花が咲き乱れている。
満月とのコントラストは幻想的だ。
ああ、俺、相当疲れてるわ。花見て癒されるなんて。
深紅のバラに顔を近づけるととても綺麗でいい香りだ。
ああ、ユリアの手紙貰わなきゃな・・・ユリア、ちゃんと眠れてるかな・・・
「もう、大丈夫なのか?シルフィーヌ」
背後から声を掛けられて俺は少し焦る。
「は、はい!・・・もう話は終わったの・・・?バルト」
振り向かないで薔薇を見ながら返事をする。
「ああ・・・・月が綺麗だな」
そのバルトの言葉に夜空を見上げる。
「ええ・・・・本当ね」
「あんまりそんな格好で夜中にウロウロするな」
「はい。そうね。部屋に戻ります。ユリアの手紙が欲しかったの。けど、もう遅いからまた明日ね?」
俺はバルトに背を向けたまま手を振りそのまま歩き出した。
「送ろう」
「いいわ。部屋そこだし」
「シルフィーヌ?」
「・・・・今日は八つ当たりをしてごめんなさい。それだけ言いたかったのじゃあね」
歩き出した俺の右手をバルトが後ろから掴む。
「何怒ってるんだ?」
「別に・・怒ってなんかいないわ」
「ああ、そうか?今日バカ呼ばわりしたからか?」
「なっ!何よ・・もう!知らない!・・・・バルトなんて!」
俺はバルトの手を振り払いさっさと歩き出した。
そうだよ、まだちょっと納得してないからさ?いざ、謝るとなると素直になれない・・・・
結局、俺、逃げ出してるじゃないか・・・
「キャッ!」
バルトがいきなり後ろから腰に手を回し抱き寄せた。
驚いた俺は急いで自分の口を自分で塞ぐ。
夜中だ、夜中!大声出したら迷惑だろ!
「待て、逃げるな」
「んっ、もう!びっくりするから!それに逃げてなんか・・・・!」
体を放そうともがく俺をバルトは力づくで正面を向かせ腕の中に閉じ込めた。
俺はバルトの胸に両手をついて俯いた。
どんな顔すればいいんだ。バルトの顔が見れない。
「お願い、放して」
「俺を置いてどこに逃げる気だった?」
「!・・に、逃げないわよ?何言ってるのよ」
「何度言えば解るんだお前は?俺はお前の側に居たいんだ。勝手に決めて勝手に居なくならないでくれ。そんな時は俺に相談しろ」
「止めてよ・・そんな事出来ないわ・・・・だって・・貴方は将来この国の近衛兵隊長なのよ?・・一緒に国を出てなんて言えないわ・・・・」
「お前、やっぱりそんな事考えてたのか?まだそう思ってるのか?」
「いいえ・・今は無理だって解ってるわ。それに黙って国を出たら王子が私を捕まえる。でも逃げ切れる自信もあるの・・・だけど・・そうなったら二度とこの国に戻る気もない・・だから」
「王子から逃げたいのか?俺からもか?」
「違う、違うの、バルト・・・・貴方も王子もみんな、私の周りのみんなは大好きなの・・・・でも、でもね・・凄くこの世界は、今の私はとても窮屈なの・・とても・・・・ごめんなさい・・」
「シルフィーヌ・・・・考えすぎだ、お前」
バルトが俺を抱え上げる。
恥ずかしい・・・情けない・・バルトにそう言ってもらい自分の言ってる事が甘えだと気付く。
そうだな。そんな事をして今世を逃げても来世もこの世界をやり直すことになるのだろう。
それはきっと一生俺がこの輪廻から抜け出せなくなる枷を自分で着けるようなものだ・・・・
「俺がお前をこうして抱き上げるのは嫌か?シルフィーヌ」
バルトの胸に顔を埋めたまま首を振るとバルトは腕に力を入れ抱え直して歩き出した。
「俺もお前が困ることは分かっていたのに早々に求婚したのは悪かった」
「・・・・・そうじゃないの。私、言ってくれなくちゃわからない時があるから・・」
「今すぐ答えを出さなくていい、シルフィーヌ」
バルトは中庭のテラスのベンチに俺をそっと降ろすと横に並んで座る。
「寒くないか?」
俺は俯いたまま頷く。
「お前、俺の印も王子と同じ物だったから分からなくなったんだろう?」
また頷く。
「ククッ、お前、本当に正直だな?」
「だって・・・・それが『番の証』かも?って思っていたもの・・・」
「じゃあ、同じ印なら中身で品定めをして貰おうか?あいにく時間はまだまだあるしな?」
「だからどっちかなんて・・・・無理よ。私、欲張りなんだから二人とも居てくれなくちゃ嫌なの・・・」
言ってバカだな俺ってって突っ込み入れて落ち込んだ。情けなくて両手で顔を隠す。
「俺はお前が王子と結婚しても側にいるから心配するな」
「何、それ?そんなの絶対無理・・・」
「そんな事も承知でお前に求婚しているんだ。だってそうだろう?今、求婚しなければお前は王子にそのまま嫁ぐのだろう?だったら俺が」
「違うの。バルトはきっとそれでいいのよ。悪いのは私なの。王子が好きなくせにバルトも側にいてくれなきゃ嫌な自分が許せないの。きっとこのままズルズルと貴方に甘えてひどい事を言うのよ、私。最低よ。最低な女なのよ・・・!だから、こんなひどい私なんかごめんだ、願い下げだ!って言ってよ!バルト」
自分で言って自分で悲しくて思わずバルトに背を向けた。
ダメだ、まだ泣く気か?シルフィーヌ!甘えんな!
「バカ、泣くな」
優しい声で言われ、また後ろから抱き締められる。
「泣いてなんかないわ・・バカバカ言いすぎよ・・」
頑張って泣き出しそうな気持をこらえるがバルトの体温が心地よくて振り払えない。
「シルフィーヌ、愛してる。だから俺を見てくれ。俺はお前に相応しくないか?」
「・・・・・・」
「俺は頼りにならないか?」
「・・・・・・」
「こんな事を言う俺は嫌いか?」
俺は頭を振る。
「シルフィーヌ、だったら考えるな。頭でなくお前の気持ちが答えを出すから。答えが出たら正直に教えろ。その時は俺に甘えればいいんだ。どんな答えでも俺は受け入れる」
「・・・・私、本当にバカみたい・・・バカのシルフィーヌにはそんなバルトの気持ちが解らないもの。本当に私バカなんだわ・・・・こんな女に固執するバルトが解らないもの・・・!!」
俺はバルトから放れるために立ち上がりまた、距離を取ろうとした。
ダメだ、優しくされるとほだされる。
ダメだ、今ちゃんとしなくては。お互いの為にもちゃんとしなければ。
「バルト、お前なんか嫌いだって言ってよ!」
「お前、頑固だな?」
「そこだけが私の美徳だもの!」
「誉めてない。ククッ!」
「可笑しくない!」
「いい加減にしろ。シルフィーヌ。俺を見て言ってみろ」
俺は思いっきり振り返り、同じく立ち上がって俺を見下ろしているバルトを見上げた。
「バルトなんか!」
「俺なんか?何だ?シルフィーヌ」
バルトは優しく笑っていた。
「バルトなんか・・・・」
「何だ言えよ?言わないのか?」
「バルト・・・・のバカ」
「お前、結局それか・・・・」
いつも読んで頂き感謝です!
次話はバルトとシルフィーヌ共鳴なるか!?です!
楽しんでもらえるかな?




