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秘密暴露の件

今日もよろしくお願いします。

巨木から降りるのはやっぱり足からバンジーだった。

けど、俺が笑い転げて喜んだのでバルトも満足げだった。

下で見ていたカレブの方が青い顔で気分悪そうにしていた。


俺達が城に着いたのは夕方でユリア達は先に戻っていた。

ルカもレクサスに色々森の中の事を教えてもらったみたいで楽しかったようだ。

バルトと俺だけで行動していた事も特には心配していないみたいだ。


随分、信用されてるな?バルト。まあ、名が通っている貴族なら今の俺に手を出す馬鹿はいないだろうけどな?


その日の夕食の席でシュナイダー伯爵が明日王都に戻ると聞いたのでレオリオへの手紙を預ける事にした。

ちょうど今書き終わったので、部屋を訪ねようか。


「遅くに失礼いたします」


シュナイダー伯爵の部屋に通されるとご夫婦そろっていた。


あ、そうか、お邪魔だわな。


「申し訳ございません。先程お願い致しました手紙です。レオリオ王子にお願いいたします。では」

俺は手紙を夫人に預け頭を下げ、出て行こうとした。


「いや、シルフィーヌ様、こちらに」

「どうぞ、こちらにお座りになって下さいまし」

夫婦で呼び止められた。


ん?なんだ?邪魔だろ?


「・・・・・えっと?はい。では」

テーブルを挟んで夫婦二人と向き合う。



「当家の先祖に会ったのですか?」


伯爵が俺に尋ねる。


「はい。バルト様に尋ねますとそうおっしゃいました。女性なのにとてもバルト様そっくりでした。ああ、深緑のビロードのドレスを着て、素敵な涙型のクリスタルのペンダントとイヤリングをしておりましたね」


「そんなにハッキリと・・・・」

夫人が驚いている。


「そうなのか?マリー?」

「ええ、間違いありませんわ。旦那様。サリヤ姫ですわ」


「?」なんだ?


「これはこれは・・・・・」

伯爵が思わず微笑む。


うおっ!笑うと凄い色男だな。さすがバルトの父上。


「何て嬉しいことかしら・・」

夫人も俺の横に来て俺の両手を握り締めた。


「???あの?なんでしょう?」


「我が先祖のサリヤ姫は何故か代々このシュナイダー家の当主の嫁になる女性にしか見えないのです」

伯爵が嬉しそうに言った。


「・・・・・・・・はあ!?」なんですと!?今何と?


「か、からかってますよね?」

「いや、本当」

夫婦で同時に頷く。


「いや、いや、いや!私レオリオ王子の嫁ですから。ご期待に応えられず申し訳ございません。ではこれで」

手と頭をブンブン振って否定し、急いで立ち上がるとドアに向かう。


冗談はよしてくれ!何だよ?それ!


後ろからムンずと手首を掴まれる。


「逃しませんわよ?シルフィーヌ様、契約妻などお辞めになって早く私たちの娘になって下さいませ。バルト、良い夫に仕上げて差し上げましてよ?」


うわっ、怖いよ、マリー様、レディースの総長みたいな迫力だよ!それに何で契約妻だと知ってる?


「えーと、ですねぇ・・・その・・」


「まあ、待てマリー。相手は王家だ。契約内容を確かめて正々堂々とシュナイダー家(うち)の嫁に頂こうではないか。なあ?」


うへぇ、さすがバルトの父ちゃん、言う事息子と一緒だわ。


「ええ、承知しましたわ、旦那様。シルフィーヌ様、バルトの事は嫌いではありませんわね?」


「いえ、そう言う事ではなくてですね・・その・・・・・申し訳ありませんでした!」


俺は頭を思い切り下げた。夫婦顔を見合わせる。


「お嫌いなのですか?」


「いえ、私は去年のグランドマッスルの際、一つ間違えていればバルト様を(くび)り殺していました。そんな私にその様な資格などございません。本当に申し訳ございませんでした!」

俺は深く頭を下げた。


すると夫人が俺の肩に手をかけ頭を上げさせる。


「まあ、旦那様?シルフィーヌ様にちゃんと言って差し上げなかったのですね?良いですか、シルフィーヌ様。バルトはあの時貴女(あなた)様に追い込まれて無様な醜態を晒すところでした。将来、このシュナイダー家を背負って立つ男が貴女様にケガまで負わせて。貴女様があの時(ひざ)を着かれたこと、シュナイダー家の者は皆とても感謝しております。もちろん、貴女様はとても悔しい思いをされたのですが。シルフィーヌ様?私共は貴女様に謝っていただくことなど何もございませんわ?まして怨むことなど。あの時、無様に負けていたくらいならいっそ縊り殺される方がましですわ」


夫人の言葉に伯爵も頷いた。


・・・・・・

・・・そんな訳ないだろう?自分達の息子だろ?そんな訳ないや・・・


「・・・・・・申し訳ございません。その様にお気遣い頂き感謝致します。しかし、私にとってバルト様は一生一緒にいたい大事な友人なのです」


「まあ!まあ!まあ!聞きまして?旦那様!一生一緒にいたいそうですわ!」


「ああ、脈はあるな?よしよし、じゃあ、進めような?」

シュナイダー伯爵が俺の頭を撫でた。


えっ!?何で、そうなる!


「えっ?いや、友達としてですね?あの、友達として」

「まず、私がアントワート侯爵夫人にご挨拶に伺いますわね?旦那様?」

「ああ、早い方がいいな。私も宰相に話しておくよ」


「あの!あの!友達です!バルトは友達!」

「ん、分かった。分かった。友達からな?」

「そうそう、初めは友達からね?まあ、バルトはその気ですけど」


「いや、だから、話聞いて?一生友達だから!」


恐ろしや、シュナイダー家。バルトといい、この夫婦といい、何で人の話を聞かない!?聞けよ?本当に!


結局、俺の友達宣言は無視され、夫婦上機嫌で娘扱いされたわ。

う~頭痛いわ!ルカに相談しよ。




それから一週間、シュナイダー領を遊び倒しましたよ!

森探検、城探検、街探検、湖探検に未知の生物捕獲探検!!

なんて充実した日々!俺とバルトのテンションに着いて行けないとユリアには引かれたが・・・


以外だったのがルカとレクサスが凄く仲が良かった事だ。

お互い知識をぶつけ合って凄い議論をしていて俺とバルトは興味津々と聞いていたがユリアはこっちも着いて行けないと半泣きだったわ。


こんなユリアも俺に女の子の気持ちとか女の子がする遊びとかいろいろ教えてくれた。

凄いな、女の子。耳年増になったわ。ユリアも俺と二人の時は嬉しいのかべったりだった。


本当に充実した旅行だったわ。

そうそう、カレブは見事、リタに結婚の申し込みをし、リタがその場で承諾したのでこの旅行中はバルトが俺についててくれたこともあってなるべく二人きりにしてやった。


そして今日、今度はバルト、ユリア、レクサスをアントワート領に招待する約束をして、帰りの馬車に俺とルカは乗り込んだ。


「あ~あ、楽しいことはアッと言う間ね」


ユリアに泣きそうな顔で手を振られちょっとセンチメンタルな俺。

馬車の窓枠にもたれいつまでも離れていく城を見つめながら泣きそうになるのを大きな声を出してわざと誤魔化した。そして窓を閉めるとルカの隣に窓の外を見たまま座り直す。


「ああ、また、お前は王妃教育で私は宰相教育に追われる日々だな」


おや?ルカもちょっと寂しいのかな?いつもは大人なルカが意外だな・・・


「お兄様、バルトに告白されたんですけど?」

「ああ、知ってる」

「やっぱり。お兄様なのね。王家の契約の話をしたのは」

「ああ、そうだ。バルトは信頼できる奴だからな。レオリオ王子が先手を打たなければ私はお前にバルトを薦める気だった」

「・・・・・私がレオリオ王子好きなのはみんな無視なのね」

俺が不機嫌そうな声で答えれば、

「お前がレオリオ王子とは破談になる可能性があるって言ったからだろう?兄としてそれは見過ごせない。それにお前はレオリオ王子がお前意外に好きな相手を望んだらサッサと契約解消する気だろう?」


「うわっ!今それ言うの?だって無理よ、お兄様。心変わりして他の方の事考えてる人に執着出来ます?うわ・・・言葉にするとキツイな。これ・・・・・」

なんか、凄くへこたれるんですけど。


「なあ?どうしてレオリオ王子が心変わりする事前提なんだ?」

「バルトのご先祖様の話聞きました?」

「ああ、バルトの嫁にしか見えないサリヤ姫、お前が見たやつか?」


「そう、それ。お兄様、信じてとは言いませんがそれと同じものを私は見たのです。5歳の時、あの山賊に襲われて熱を出した時、私の未来を走馬灯のように・・・・私は王子と8歳で婚約して一目惚れで、王子が18歳の時に私と同じ学年の清楚なご令嬢と運命の恋をして私は嫉妬に狂ってそのご令嬢をいじめてお兄様やバルトやレクサスに断罪されて16歳で王子に捨てられるの。そして隣国のアスラン王国の王様の第7夫人に追いやられるの」

俺は馬車の外を眺めながら淡々と語った。


「何だ・・・・?それは!」


「あーあ、何か言ったらスッキリしたわ。ごめんなさい、お兄様。冗談よ、冗談!」

俺はルカに振り返り笑って見せた。


「お前!何でもっと早く言わないんだ?それから今までその通りだったか?違うだろ?レオリオ王子はお前に夢中だし今の契約では王子から一方的に捨てられる事はない。まして隣国に嫁がせることなど出来ないことはお前だってわかるだろう?」


「じゃあ、邪魔になったら事故に見せかけて排除されるのかしら?最悪ね?」


「何を!そんな事ある訳がない!」


「レオリオもお兄様もバルトもレクサスも一緒だったわ。夢で見たのと同じ、同じ声に同じ姿よ!未来を変えたくて王子との婚約は避けたかったのに・・・私、やっぱり、一目惚れしてしまって・・・もう、王子と勝手に別れることも出来ない形まで追い込まれて。今の私ではレオリオに好きな相手が出来たら本当に何かしてしまいそうなの。毎日そうなったらどうしよう、どうしようってそんな事ばかり考えて・・・!」


ダメだ。悪役令嬢の本心が出て来ている。


「何をバカな・・・・!シルフィーヌ、お前がそんな事をするはずがない」

「ごめんなさい。お兄様、そうならない様に気持ちの整理をつけるわ。少なくともお兄様とバルトには嫌われたくないの。側にずっと居たいの。だから・・だからレオリオ王子が好きな方が出来たらその運命の方と幸せになれる様に笑ってレオリオと離婚しますから・・」

「何でそうなるんだ?お前がレオリオ王子を守って行くんだろ?そう言ってただろう?その王子の運命の相手って奴、名前分かっているのだろう?教えろ」

「ダメ、教えない」

「調べるだけだ」

「教えない。調べたら会いたくなる。会ったら・・・私、何をするかわからないわ。だから、お兄様、時が来て私がレオリオを諦めるのが一番なの。大丈夫よ。まだ5年もあるわ。ちゃんと気持ちの整理を着けるから。わかって?お兄様」

ルカが俺を抱き寄せる。


「・・・・・・お前が妹でなければ一人の男として愛してやれたのに」


「いいえ、妹で良かったわ。兄妹だからお兄様に断罪されてもお兄様を信じてる。誰が何を言っても私の大切なお兄様よ・・大好きよお兄様、こんな馬鹿な話信じてくれてありがとう」








読んで頂きありがとうございました。

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