レクサスの件
今日もよろしくお願いします。
次のダンスの相手はバルトだ。
今夜のバルトは髪色と同じ赤を基調とした軍服を着ているのだがこれがまた凄く絵になるのだ。
ああ、やっぱり、背景にお花が見えるよ!ため息出ちゃうよ?ほんと、バルト、カッコいい!!
お互い向かい合い挨拶をし、曲に合わせステップを踏む。
バルトもルカと背丈が同じくらいだから躍りやすそうだ。
んー、さっきの曲もそうだが何かさらに上級者向けの密着型のワルツになってないか?
周りあまり人いないぞ?俺達だけになってないか?
うわっ!これ余裕なさすぎだよ!ドレスを捌くので俺、精一杯だよ!
まだバルトがリードしてくれるから何とか踊れてるけど!
「とても綺麗だ。シルフィーヌ」
「ん、えっ、ありがとう。バルトも凄く格好いいよ。あ、ごめん。踊るので一杯一杯なの、今」
んーッ、次って、えっとターンして、えっと、なんだ?やっぱりハードすぎなんですけど?!
「シルフィーヌ、俺にもチャンスをくれないか?」
「えっ、何?あっ、バルト、次、見せ場!」
バルトの手と俺の手をしっかり握り合わせるとバルトはもう片方の手で大きく倒れ込む俺の背中を抱き抱えた。
バルト、グッジョブ!!
見事に決まったね!うーん!爽快!!
俺は成功したのが嬉しくてバルトを見てヘニャリと笑う。
バルトの顔が見る見る赤く染まって行く。
・・・・しまった、俺、またやっちゃった?
次のステップに入りなんとかこのダンス曲の一番の山場は越えたので余裕が出てきた。
「バルト、ごめん、さっき聞き取れなかったの?なに?」
「ああ、明後日、太古の森に連れて行ってやる」
あれ?普通だ。大丈夫そうだな・・・・?
「本当?凄く嬉しい!」
キタキタキターッ!来ましたよ!待ちに待った冒険ですよ!
おらぁ、わくわくすっぞーッ!!
ダメだ、ニヤケ止まらないわ!
「期待していいぞ」
バルトがにっこり笑って俺の背中を抱き寄せる。
いや、こういうダンスだからな。
「うん!とってもうれしい!」
俺も上機嫌だわ。
ああ、バルトは本当に格好いいよな?バックにお花咲き乱れだよ~!
いいな、イケメン、羨ましいよ。
「早く行きたいな!楽しみ!」
「ああ、お前が行きたい所はどこでも連れて行ってやる」
「はい!よろしくお願いいたします」
「ああ」
曲が終わると二人で笑い合った。
その後踊って下さいとダンスの申し込みが殺到したが少し休みたいと言ってユリアを探す。
おお、ルカとバルトはお姉様方に囲まれてるよ、凄いな。
あ、ユリア、気が付いてこっちに来てくれてる。
こっち!こっち!と俺は小さく手を降りながら人混みを掻き分ける。
「シルフィーヌ様、躍りとても素敵でした」
ユリアの満面の笑顔を見て俺も笑い返す。
「ありがとう。ユリア様もとても綺麗ですね」
バルトと同じく赤を基調としたフリルが段々になったドレスを着たユリアは人形のようにかわいい。
ユリアの頬が赤く染まる。
そして俺はと言うとユリアが手をつないで連れて来た相手を見て固まった。
どうして、こんなに早く出会うんだ?
「ご紹介します。我が領きっての薬剤師、バチュラー男爵家次男、レクサスです」
ユリアが嬉しそうに俺の前にそいつを突き出したのだ。
「あ、はい、いや、始めまして。アントワート嬢。レクサス・バチュラーです」
そうだ、レクサス。
将来は王宮きっての宮中医となるレクサス・ハルマーだ。
そしてヒロインの攻略対象者の一人。
確かその腕を買われてハルマー子爵家に引き取られるんだ。
シュナイダー領出身だったのか。
栗色の癖のある髪は肩までで前髪が少し長めで見えにくいがとてもきれいな琥珀色の大きな瞳が印象的な相当の美少年だ。
今は背丈が俺より低い。
ああ、こいつはかわいい系だったからゲームスタート時でもヒロインよりちょっと高めの170cmくらいだったかな。
目の前にいるレクサスはとても華奢でユリアと並ぶと本当に可愛くてお似合いだ。
「初めまして。レクサス様。そのお歳で薬剤師様とはとても優秀なのですね?」
「いや、これでも13歳で貴方より年上なんです」
知ってるよ~!かわいいからからかったんだよ、うぷぷ。
「これは失礼を」
「あ、あの、シルフィーヌ様、以前バルトお兄様がシルフィーヌ様に薬を献上致しましたでしょう?あれはレクサスが調合いたしましたの」
ユリアが自慢気に話す。
「まあ、あのお薬?とてもよく効きました。お陰で傷跡も残りませんでした。ありがとうございました」
俺は頭を下げた。
からかってごめんな。
するとレクサスが慌てて手を振る。
「いや、あれはバルトに持たせたものだったのです。それもユリアにお兄様の為に万能の傷薬を作ってって言われて。バルトは強いから怪我なんてしたことないよって言ったらじゃあ、お守りにって言われて慌てて作ったから・・・そう、上手く効いたんだ。良かったです」
おう!美少年、眩しい笑顔だ!ヒロインもユリアも見惚れちゃうね。
「そうですか。ユリア様がバルト様に贈ったお守りだったのですね。ごめんなさい。大切な物を私が頂いてしまって」
そうか、俺、返さなきゃな。
「いえ、お兄様がシルフィーヌ様を傷つけた事を凄く後悔なされて私に差し上げても良いかと聞かれたのです。私もお兄様もそしてレクサスも少しでもシルフィーヌ様のお役に立てたのがとても嬉しいですわ」
ユリアの横でレクサスも俺を見て頷いた。
「改めてシュナイダー家の方々にお礼を」
俺がドレスを持ち上げ頭を下げようとすると
「いいえ、シルフィーヌ様。私共の方がアントワート家のお取り計らいに感謝をしているのです」
と首を振る。
「私を傷つけた事?それは私が身分を隠していたのだから不問だと」
「やはりご存知なかったのですね?」
「はい?」
「ルカ様がレオリオ王子をお諫め下さったのです。それは、凄い激昂状態だったそうです。父もレオリオ王子に小さな時から剣術を教えているのですがあんな王子を見たのは初めてで手が付けられなかったそうで・・・ルカ様がその場を収めて下さらなければシュナイダー家はどうなっていたかと父に後で教わりました」
レオが・・・ルカも・・・
ユリアが俺の手を握る。
「自分から持ち出しておいて申し訳ございませんがもう、このお話はよしませんか?こうやって、シルフィーヌ様とルカ様が遊びに来て下さったのがとても嬉しいのです」
「良かったら、明日、僕の仕事場を見にいらっしゃいませんか?綺麗なルージュをお二人にプレゼントいたしますよ」
「レクサスの作る化粧品はなかなか手に入らないんですよ。いただきに参りましょう?シルフィーヌ様。あっ、レクサス、シルフィーヌ様に似合う香水もぜひ、調合して欲しいわ」
「まあ、よろしいのですか?」
「レクサス、お願い」
ユリアが可愛く首を傾げる。
「うーん、お姫様二人に頼まれるなんてとても光栄だな。頑張っちゃおうかな?」
二人は顔を見合わせて幸せそうに笑うと俺を見た。
俺も笑って頷いた。
「今晩、シルフィーヌ様のお部屋を訪ねてもよろしいでしょうか?お疲れでなければですが?」
ユリアが小さな声で俺に聞く。
「構わないわ・・・遅くなるから部屋に泊まる?」
「えっ?はい!」
「レクサス様、ユリア様を一晩お借りしますね?」
「えっ?いや、別に僕に断る必要は・・・・」
レクサスが赤くなった。
ハハハ、やっぱり、レクサスとユリアはお互い思い合ってるんだな。
良かったわ~それなら俺、応援しちゃうぞ!
読んで頂きありがとうございました。




