11歳になりましたの件
今日もよろしくお願いします。
「お誕生日おめでとう、そして結婚も。今、お母様は凄く複雑よ?」
今、本領アントワート家本館のお母様の部屋で二人きり。
男どもは無しだ。
そりゃそうだよな?怪我は無事治ったかと喜んで出迎えれば今日11歳になる娘が結婚してきたのだから。
長椅子の俺の横に座ったお母様は俺の首に掛かっているペンダントをさっきから何度も開けたり閉めたりして考え込んでいる。
お父様とルカは他国からの求婚を避ける手段として泣く泣く契約を結んだとはいえ、あの後今夜は王宮に泊まりましょうねと誘う王妃に一族に報告いたしますのでとレオリオから俺を奪回し、二人で両サイドからがっちり抱えて連れ帰った。
まるで連行されてる捕虜気分だ。
俺はそれでもレオリオの顔が見たくて振り返ると笑顔で手を振ってる両陛下とは違いレオリオは待ちぼうけの忠犬ハチ公みたいな顔をしていた。
「またね!レオ!」
俺が叫ぶとレオリオはハッとして無理矢理、笑顔を作った。
ああ、複雑だよな?・・・・俺も切ないよ?レオリオ・・・・
アントワート領に向かう帰りの馬車の中ではルカはずっと俺の右手を離さず、たまに小さな声で「どうしてやろうか?アイツ、どうしてくれようか?」とブツブツ言ってるし、お父様は無言で俺の腰に手を回し自分の右胸に俺の頭を抱え込んで離してくれない。
つまり、馬車の前の席が空いてるからどっちか移動しろよ、バランス悪いだろ。とずっと俺は思っていた。
隣に座るお母様が
「うーん、まあ、考えたって仕方のないことよね?どうせ貴女は誰かに嫁ぐのだし・・・そうね、ちょっと早くてお母様驚いただけよ。そうね、うん、大丈夫」
すごく自分に言い聞かせてるよ?お母様。
そしてお母様は俺の頭を両手で抱えると自分の胸に押し付けた。
「ね?びっくりしたわね?お母様でも泣いちゃうわ?」
って俺の背中をゆっくり撫でた。
何だ俺・・・・
泣いてたのか・・・・
いつから泣いてるんだよ?俺・・・・・
いつも厳しいお母様がやさしいと調子狂うよ。
あれから俺の本領での生活には変わりはなく相変わらずの王妃教育に追われる毎日だ。
ただ、ひと月に3日は王宮に必ず招かれ、両陛下とレオリオと一緒に食事をして過ごす機会が増えた。
その時はレオリオが王宮内を案内してくれ、いろいろ王家の事を教えくれた。
二人きりになる事はあまりなかったがなっても軽くキスをする程度でレオリオも頑張って約束を守ってくれているようだ。
まあ、ちょっとかわいそうかな?
その王宮を訪ねる3日間の午前中はルカと一緒に近衛兵隊に混ざって演習を受けている。
これは俺とルカの試合を見た近衛兵達が士気を上げる為に俺のお父様とシュナイダー近衛隊長に申し出たらしい。
俺とルカにとっては将来の部下の仕事現場を体験出来るとても貴重なものだ。
お互い喜んで了承した。もちろんカレブとサルトも一緒だ。
近衛兵隊は俺とルカにとっては年上男性が中心なのに本当に真摯に剣を向けて来るから楽しくて仕方ない。
皆、俺を姫と呼んでとても可愛がってくれる。
おまけに女性騎士様もいてこれがとてもカッコいいのだ。
ルカは違う意味でもお姉様騎士に可愛がられているみたいだが。
いいな、イケメン。うらやましいぞ。俺も男でサバイバルゲームに転生したかったな。
やっぱり俺、戦闘民族向けなんじゃない?
近衛兵隊と言えばバルトの父上のシュナイダー伯爵はこの間の試合をとても褒めてくれた。
息子をひどい目にあわせた俺達を責めることも嫌うこともせず部下同様、凄く可愛がってくれるんだ。
なんて素敵なおじ様で器の大きな人なんだ!さすが、バルトのお父さんだな!
それから3ヵ月が経ち、シュナイダー伯爵から舞踏会に招かれた。
バルトの手紙も添えてあり、『太古の森』を冒険するのによい季節になった事、妹も会いたがっている事などが書かれていた。
うれしい!うれしい!うれしい!
待ちに待った同い年のそれも女の子の友達ができるかもしれない!
それもシュナイダー領にルカと一緒の二人旅だ。
シュナイダー領は王都から北に馬車で片道一週間くらいかかる山岳地帯にある。
往復14日であちらで10日滞在の合計約一ヵ月位掛かる旅だがお父様もシュナイダー伯爵も王家に許可を取ってくれていた。
心配していたレオリオもあっさり行っていいと言ってくれていたのだか出発前の挨拶に伺った今日、ひょっとしたら気が変わるかもとちょっと心配していたのだがレオリオは笑いながら二人旅だがカレブもサルトもいるし近衛兵達も追従するので心配していない、ゆっくり楽しんでおいでと言ってくれた。
珍しくレオリオの部屋で二人きり長椅子に並んでお茶を飲んでいた時のことだ。
しばらく離れるので侍女たちが気を利かして二人きりにしてくれたようだ。
レオリオの言葉がかなり意外で俺は思わず嬉しくってレオリオに抱きついたらソファに押し倒してしまった。
あ、しまった。これじゃあ、婚姻の契約をした時と逆だな。俺がレオリオ襲ってるわ。
まあ、いいか?誰も見てないし。たまにはレオリオに甘えるのも。
レオリオが最近ずっと紳士だったので俺は図に乗ってしまい、
「レオ、ありがとう。大好きよ」
と笑って押し倒したレオリオの胸に顔を寄せた。
レオリオがぎゅっと抱き締めた。
俺はあのケガの後、初潮を迎え胸やお尻がますます女性らしく丸みを帯び腰も見事にくびれてきた。
間違いなく悪役令嬢の体つきだ。
お母様がそうなのだから無理はないか。
さぞかし抱き心地は良いことだろう。
よく我慢してるなレオリオ?
抱きしめられたので抱き締め返したら、レオリオの手が怪しく動き出した。
あ、やっぱり無理だったかな?まあ、襲ってる俺が悪いし、すごくレオリオの胸は居心地が良かったので好きなようにさせた。触れられてとても気持ちいい自分がいる。
恥ずかしい、気持ちいい、はしたない。
初めは優しく体のラインを撫でていた手がだんだん大胆になって来た。
俺はすごく感じてしまい胸を押し付け唇を押し当てていた。
恥ずかしいがもっと触れて欲しい、もっとレオリオが気持ちよくなって欲しいと思ったのだ。
女でもこんなこと思うんだってちょっと驚きながら。
口づけが激しく変わるとレオリオが身体を入れ替え俺を長椅子に押し付ける形となった。
うわっ、コルセットの上からだけど胸、触られてる、どうしよう、今更止めてって言えないし。
え、ちょっと、それ、ちょっと、早くない?胸、キスしないで。
「レオ、ねぇ?レオ、あの、その、あの恥ずかしいの・・・・だから」
すっごい俺、顔、熱いわ・・・
「・・・・・・・」
レオリオが俺の顔を見て立ち上がった。
あ、良かった、わかってくれた。
と思ったらいきなりお姫様抱っこだ。
えっ?重くない?えっ?どこ連れて行くの?えっ?そっち?そっちレオの寝室だよね?
えっ???
「レオ?レオ?違うの、あの、ごめんなさい。違うの。ごめんなさい。それは許して?」
「シルフィーヌ、愛してるよ」
「ええ、私も愛してるわ。だから」
抱き上げたまま熱烈にキスをされる。
ダメだ、頭がぼーっとしてきた。反撃できない。
「シルフィーヌ。許さないよ。おとなしく僕のモノになって?」
レオリオが寝室のドアに手を掛けた時、俺はヒョイと取り上げられた。
えっ?
「カ、レブ・・・?」
「お嬢様、ご気分が優れないのですね?こんなに赤い顔をして。失礼、レオリオ王子。こちらで介抱いたします。お手を煩わせ申し訳ございません」
レオリオの後ろで俺を抱きかかえカレブがニッコリ笑った。
・・・・カレブ、怒ってるよね。
でもいくら俺の護衛でもこの態度は不敬に当たる。
俺は急いでレオリオに言う。
「レオリオ王子、ごめんなさい。心配をおかけ致しました。後はカレブが連れて帰ってくれますので。あ、しばらく離れますがお手紙書きますので。行って参ります」
俺が言い終わると同時に
「失礼いたします!」
と大きな声でカレブが言うと俺を抱きかかえたままサッサと廊下に出た。
カレブは廊下を急ぎ足で歩きながら俺に言った。
「そんな顔で男を煽ってはいけません。それでなくても貴女は危うい」
「えっ・・・・・?」
「私だから大丈夫ですが大抵の男は貴女にその様な顔をされると箍が外れてしまいます。サルトでも貴女を押し倒すでしょう。わかりますね?この意味。レオリオ王子はただでさえ貴女に夢中だ。もう少しご自分の行動をお考え下さい」
「・・・・・・・」
俺にはそんなに男を惹きつけるものがあるのか?
「・・・・気をつけるわ。ありがとう、カレブ。助けてくれて」
馬車の中で待つルカの膝にカレブはお姫様抱っこのままの俺を預ける。
ルカは俺を抱きかかえ、顔色を伺う。
「気分が優れないのか?シルフィーヌ」
「はい、お兄様・・・・少しこのままでいさせて下さい」
俺はルカの首に手を回し胸に顔を埋めた。
ルカはなにも言わず俺の頭をそっと撫でた。
俺はまさかヒロインなのか?
俺はレオリオだからと思って身をまかせてしまった。
しかし他の攻略対象者に言い寄られたら俺は今みたいな事をレオリオ以外の人と・・・・?
たとえばバルトとも・・・・
王子おあずけ2。
読んで頂きありがとうございます。




