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呑み込むものの件

今日もよろしくお願いします!

!!! 


ッそう!ソロモンの奴め!ためらいがないな・・・!


一馬が口から泡ぶくを吐きながら海底へと一気に沈んで行く。

自分の動きがすべてソロモンの結界で封じ込まれたのだ。


ダメだ・・・

もう、固まる・・・

俺ってまさかフラグ立ってたか・・・?


固まり行く思考が、動きを止めた腕が、自分へと警告音を発する。


沈む・・・

沈む・・・このままじゃ、俺は・・・


最後まで(つむ)るまいと必死に見開いた両目には海面にむかって昇って行く泡ぶくと一緒に夜空に輝く星がまだ見えている。


アイリーン・・・


『一馬!』


アイリーンの笑い声と笑顔が自分を呼ぶ。


アイリーン・・・・・


しかし視界は徐々に狭まっていく。


と、唐突に


『兄貴ッ!!』



亮の声が頭に響いた。

そしてさっきのソロモンの笑い声と笑顔が前世の亮と重なる。


さらに目の前の視界の端には徐々に近づいて来る何かが見える。

それは上から真っ逆さまに凄いスピードで落ちて来る何かだ。


!!


最後にその両目が捕えたのは人の、それも金髪の人の頭だった。 



亮ッ!?








ルカが叫びにならない声を上げながら落下するシルフィーヌに向かい手を伸ばす。

アレンも行く手を阻むソロモンの胸倉を押す。

だがその行動は間に合わず、シルフィーヌの体は真っ直ぐ下の海面に叩きつけられる


と、同時に閃光が瞬く。


「「「ッう!!」」


それは真っ白にその場の何もかもを染め上げる。


そしてその光はルカ、アレン、ソロモンの目にも容赦なく飛び込む。



発動を始めた目の前の水球――――サンタマリスが強い光を放ったのだ。



「シルフィーヌッ!シルフィーヌッ!」

「ッそう!シルフィーヌッ!ハルクッ!」

「ッう!ヴァルナめ!早くしろッ!」

三人は両腕で顔を覆いながらも現状を把握しようと必死にチカチカして見えにくい目を凝らす。



ウォォォォォオオオオオオンンンン・・・・・・


「「「!?」」」


それは唐突に三人の耳に押し寄せた空気の唸りだ。


次に凄い風圧と高波が三人を襲う。


と、一瞬で背後の神殿の壁に三人の体は打ち付けられた。


「「「いッ!」」」


咄嗟にソロモンは弟のディーンをその胸に抱きしめ、

ルカもヘイワーズを放さない。

だがアレンは足下に置いたバルトとレオリオを掴むことすら出来なかった。


「くぅうううッ!バルトッ!レオリオッ!」

背中を強打し、アレンが唸り声と共に叫ぶ。


目の前の輝きが一瞬で(しぼ)むように引いていくのを感じながら、ルカはその声を上げたアレンを探し、その両手に誰もいないのを確認してアレンの叫びの意味を知った。


「ああッ?王子ッ?!バルトッ!?」

視界がはっきりとしてきたルカは急いでレオリオとバルトを探す。

しかし波にさらわれたのかその姿は一向に見当たらない。

だがその視線の先に同じように神殿の壁にもたれかかるソロモンを見つけ、急いで呼びかける。

「ソロモン!ソロモン王!」

しかし、返事がない。

「まさか・・・!」

急いでその場にヘイワーズを降ろし、ソロモンに駆け寄るルカ。

ソロモンは頭から血を流し、気を失っていたのだ。

見ると胸の中には大事にディーンを抱えている。

(そうか、ディーンを庇って・・・これはまともに神殿の壁に頭を打ち付けてるな・・・)

ルカは急いで自分の着ているシャツの袖の一部を破るとソロモンの頭に強く巻きつける。

そしてソロモンの耳元に口を寄せると、話しかける。

「ソロモン、ソロモン王。お願いだ、目を、目を覚ましてくれ、ソロモン王」

「・・・ッウッ!・・ル・・・カか?」

どうにかソロモンの瞳がゆっくりと開かれた。

そしてその瞳がしっかりとルカを見上げた。

「ああ、良かった、ソロモン王。ですが、早くバルトと王子の結界を解いて欲しいのです!」

「なん・・・だって・・・?」

「二人共さっきの波にさらわれたんだ!このままでは海底に沈んでしまうッ!お願いだ!結界を、結界を解いてくれッ!ソロモン王ッ!」

凄い風の唸りと共にアレンの苛立ちに似た叫びが聞こえる。


急いでソロモンは自分の額に人差し指を当てるが

「クッ・・・?!なんてことだ・・・・!」

そんな苦し気な声を上げ、自分の胸に抱いているディーンを確認する。

「ソロモン王?」

「どうしたッ?!、ソロモン!」

今度は苦痛に顔を歪ませながらも側に来たアレンが抱えて来たヘイワーズの顔をソロモンは急いで撫でた。

そして間違いなく自分の結界がこの二人には張られている事を確認する。


「どうして・・・まさか?まさか、またやられたのかッ!!」


ウォーーーーオンンンンッッッッ!



先程から耳にも身体にもこの重低音の響きと重い風が三人にのしかかっていたがその唸りがソロモンの叫びと重なった。

急いでディーンをその場に下ろし立ち上がるソロモン。

そのソロモンが睨む海上の先にはこの音と風をあげて月光を放つサンタマリスが見える。


ウワァォーーーーオンンンンッッッッ!


それは巨大な機械の軋みのように似つかわしくない唸りをあげ、ゆっくりと斜め左下さがりに自転を始めていたのだ。

その時点の動きが周りの冷気を巻き込み、揺るがし、振動させて、唸っているように聞こえているのだ。

そしてその下にある海の水はその動きに合わせ、いくつもの小さな竜巻を作って巻き上げられていく。


「「す、凄いッ・・・!」」

ソロモンが睨む先を同じように目で追ったアレンとルカがその存在感にあらためて息を呑む。


そして、

「ァああっ?!レクサスッ!」

ルカが叫んだ。

「ん!?あッ・・・?!アイリーンッ!」

続けてアレンも苦し気な声で叫ぶ。


二人は巨大な水の渦を巻くボールの表面近くにポッカリと浮かぶヤガーを見つけたのだ。


もはやサンタマリスは意志を持ったサイクロンのようにその重厚な存在感を空間いっぱいに放っている。

その回転速度をグングンと増して。

だがヤガーはそんなサンタマリスの目前にいるのにまったく影響も受けずに太陽の黒点のように微動だもせずに浮かんでいるのだ。


「落ち着け、二人とも。ヤガーはサンタマリスが放出するエネルギーを体内の魔核に捉え、蓄えるのだ。その魔核の容量は膨大だ。だからヤガーがサンタマリスに呑みこまれる事は決して無いのだ。いわばヤガーの背の上が今、この場で一番安全な場所だと言っていい。それよりだ」


「ま・・かく?まかくって?」

アレンが呆けたような声で聞き返す。

「ああ、そうか。わからないか?とにかくサンタマリスはヤガーがあそこに浮かんでいる間はああやって回り続け、力を放出する。それをヤガーが吸い込んでいる間はまだ大丈夫だ。それよりレオリオとバルトだ」

「そうだよ!あいつら!」

アレンがそう、叫ぶと同時に、



バチッ!


急に水面が光る。


「ん?」


すると海水から閃光花火が飛び散った。



バチバチバチバチバチバチバチッ!!



「つ、次はなんだッ!?」

アレンがまた強い閃光を喰らうのかと思い両腕で顔を覆いながら叫ぶ。


しかし、予想に反してそれ以上、強い光は発せずそれはそんな音を響かせてヌッと海面に姿を現した。


丸くて黒い、球だ。


「・・・今度は黒か?・・・」

ルカが少し疲れたような声を上げる。


「いや、闇だ」

「「闇?」」

「ああ、闇の塊だ・・・!!ヴァルナ―――――ッ!!」


ソロモンが急にそれに向かって大声をあげた。


「「!?、ヴァルナだって・・・?」」


アレン、ルカがそう返した時――――――




闇は一瞬で辺りに霧散した。


そしてその闇の中から


シルフィーヌを抱えたハルクが現れた。


それも黒い大きな翼を広げたハルクだ――――――




自分が目にしているものが信じられなくてしばらく唖然としていたアレンとルカだったが、

「ハッ」

「シッ」

その姿を確認するように勝手に口が動いていた。


「名を、名を呼ぶな!あやつらはアスラよ。よく見ろッ!!」


振り返り、大声でそう叫んだソロモンは両目を黄金に輝かせ二人を睨む。


「!、し、しかし、」

「そうだよ!あいつら生きてる!なら!」


「よく見ろ!!二人の姿を!!」


再度怒鳴られてしっかり目を凝らすアレンとルカの目に抱き上げられているシルフィーヌの背からダラリと垂れ下がっている白い翼が飛び込んで来た。

「むぅ・・・」

確かにソロモンが言う通りだとルカが苦虫を潰したような顔で唸る。

「ま、またなのか・・・」

アレンも嘆きに似た声を上げる。


「大丈夫。想定内だよ、二人共。今はヴァルナとミトラの力が必要なのだ」


「「・・・え?」」

意外なソロモンの言葉に今度は二人そろって間抜けな声を漏らした。




バチッ!

バチバチバチバチバチバチバチッ!!


「「エッ?」」


バチッ!

バチバチバチバチバチバチバチッ!!


「「エエッ!?」」


ソロモンの背後からその音はまた聞こえて来た。

アレンとルカのその驚愕の表情とその声にソロモンは嫌な予感がした。

したが確かめない訳には行かないのでゆっくりと振り返る。


思ったとおり、海面にはもう二つ、闇球が浮かび上がっていた。


「・・・・・」


それは水面に浮かぶハルクの広げた黑い翼の左右の先に場所を陣取って浮かんでいる。


「ま、まさかな?ルカ・・・」

「あ・・・ああ。まさかな・・・?アレン」


嫌な感じが三人の背中に這い上がる。

出来れば中には何もない事を咄嗟に祈ってしまった三人だが、

そんな三人の祈りも虚しく、その左右の球の闇は一瞬で霧散した。



「「「・・・・・」」」



そこには思った通り、レオリオとバルトが水面に垂直に立っていた。



「・・ルカ、俺はあいつらが生きてて嬉しいと思うぞ、本当にな・・・けどな?」

「ああ、アレン。私もだ。とりあえず生きててくれた事は喜ばしい・・・だがな?」


「「どうしてあの!二人の背中にも翼があるんだッ?!ソロモン王!!」」


二人が指さすレオリオとバルトの背には間違いなくハルクと同じ黒くて立派な翼が広がっていた。



「二人がアスラになる事は想定内だったが、僕の結界が勝手に破られて今、ああなってしまった事は想定外だ」


ソロモン王のその言葉に気が遠くなりそうな二人だった。



「「う、嘘だろッ?!」」
















この場を借りて。

今回の台風被害に遭われた皆様が一日も早く普段の生活に戻れます様に、切に祈っております。

(昨年度のちょうどこの時期、西日本にいる私も周りの知り合いも被害に遭い、生活に支障をきたし本当に大変でしたので・・・けど、みんなで力を併せてどうにか元の生活、頑張ってますからね!月並みですが、明けない夜明けはありませんよ!)


そして今日も読んでいただいた皆様、ありがとうございました!


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