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アスラ4の件

今日は大丈夫かな・・・?

一応、アレンは痛くないな(むしろ一人で幸せかも・・・)

よろしくお願いします!

ルカを泣かすなんて俺、俺・・・何しちゃったんだ?


「シルフィーヌ・・・本当に、お前なんだな・・・?」

片ひざを地面につけ俺を抱え込んでいたルカが更にその胸にしっかり俺をかかえ直す。

「お兄様・・・?私、何をお兄様に・・・?」

「いい。もう、いいんだよ、シルフィーヌ・・・もう、お前がこうして無事なら。帰ろう、な?お母様のところに。今すぐに」

「お母様・・・」

お母様・・・ああ、お母様・・・元気だろうか?本当に会いたい。お父様にも、お祖母(ばあ)様にも、お祖父(じい)様にも・・・今すぐ会いたいよ!アントワートの皆もだ・・・!凄く、凄く


「会いたい・・・お兄様・・・お母様に会いたい・・・」

そう言ってシルフィーヌの両腕がルカの背中に回るとその胸に甘えるように、すがるように、しっかりとルカを抱き締め返した。

「ああ、ああ、私がお前を連れて帰る、お母様のもとに。約束する」

そう、涙を流して頷くルカをシルフィーヌの両腕が遠慮なく締め上げて行く。

「!シ、シル・・・!?」

そのあまりの怪力にルカは身動き出来ずに息が詰まって行く。


「うれしいぞ。本当に会えるんだな?母じゃにも?」


そう返されたその声がまた男のモノだったが、シルフィーヌの胸の中にグッタリと倒れ込んだルカにはもうその先の言葉は聞こえなかった。








「すぐに二人の結界を解いて下さい!でないと皆やられます!あのハルクとシルフィーヌは尋常ではない!」


そう叫んだレクサスの前には気を失ったヘイワーズとディーンを両脇に抱えたソロモン王が立ちはだかっていた。

そしてそのレクサスの後ろには再び時間を止められ固まってしまったレオリオとバルトが突っ立っている。


このピンチをどう切り抜けるか必死に考えを巡らせているレクサスだが内心はシルフィーヌのもとに向かったルカの事が心配でならず凄く苛立っているのだ。

そんなレクサスの目の前にソロモン王はヘイワーズとディーンの二人を無言で地面に降ろした。


「!」


その二人の状態を見て思わず駆け寄ったレクサスは素早くポケットからハンカチを取り出しディーンの耳から流れる血を抑え止血しながらどす黒く腫れ上がった顔で横に転がるヘイワーズの首に手を伸ばすと脈が触れる事を確認して安堵する。


「ディーン王子の右側頭部の頭蓋骨は陥没しています。こんな事をしている場合ではないです、ソロモン王!これは今直ぐに治療を始めなければ・・・」

「やはり君は医師なのだな?ディーンを助けて貰いたい」

「僕はまだ医師ではありません。だが、ほってはおけない・・・だけど、なら、二人を!バルトとレオリオ王子の時間を今すぐに戻して下さい!今の我々には二人の力が必要なんです!」


「こやつらは我々の敵だ」


黄金に輝く瞳で凄むソロモン王が静止しているレオリオとバルトを忌々し気に睨む。


しかし、琥珀色の大きな瞳を輝かせたレクサスはそんなソロモンに臆する事なく反論する。

「僕も貴方の敵だ!しかし今は敵である貴方の弟を助けたいと僕は思っている!なら貴方も!貴方も僕に協力すべきだ!」

「違うな。こやつらはお前にとっても敵だ。今のハルクとシルフィーヌと同じ(いにしえ)の神なのだ。こやつらにとって君も我々もタダの食料(・・)なのだ」

「・・・なに・・・?古の神?ハルクとシルフィーヌがだって・・・?それに僕らは食料だって?」

「ああ、そうだ。僕の頭の中にはこの世界の全ての情報がある。過去から未来にかけてすべてだ。しかしその中に最古の神と呼ばれる『アスラ』の情報はない。『ウロボロス』と呼ばれたこいつらの情報がなかったのと同じだ。それが意味する事はこいつらも、アスラもこの世界のモノ(・・)ではないと言う事だ」

「この世界のモノではないだって?バルトが?まさか・・・?違う、違います、ソロモン王!バルトは僕の幼なじみなんです!兄弟のように僕はバルトと育って来た。だからバルトの事は何でも!本当に何でも!知っています!そんな」

「今世だけの人格の事ではない。魂に備わっている始まりの部分だ。ハルク、シルフィーヌがアスラとして目覚めた今、そいつらもいつ目覚めるかわからない。君もルカ君がシルフィーヌに喰われたくないだろう?なら僕が助けることを約束する。だから君はディーンを救って欲しい」

「ルカがシルフィーヌに喰われるだって・・・?そんな事・・・!ある訳がッ!」

「言葉では信じられないのは無理はない。だがこれから起こる事、手遅れになるわけには行かない。とにかく僕は今からこのコスモス畑ごと聖地サンタマリスに皆を飛ばす。そして聖地サンタマリスの奇跡を発動させ、アスラ属をそこに封印する。そうしなければルカを救う事は不可能だと思え。そして君は君の力を発揮しろ」

「『アスラぞく』を封印?それは、シルフィーヌとハルクを閉じ込めると言う事ですか?」

「そうしなければ喰われるんだ、我々がな!アレンとか言う奴が今、ハルクに喰われているのがわからないのか?!」

「なッ・・・!?アレン!?」

「時間がない。飛ばすぞッ!!」







何か・・・温かいものが・・・俺の顔を・・・

そうか・・・俺の顔に流れる血を・・・

そうか、流れ落ちる血を・・・舐めとってるのか・・・


不思議とさっきまで感じていた強烈な痛みはもう感じない。


ハハ、そうか。

とうとう俺は死んじまうんだな・・・?

そうか・・・

だが、俺・・・?どうして死んじまうんだったかな・・・?


「口を開けろ」


ん・・・?


「口、開けろよ?アレン」


ハルク・・・?ハルクだよな?


「聞こえてないか?口、こじ開けるぞ?アレン?」


なんだ、やっぱりハルクか。

なんだ、ハルクがさっきから俺を抱き締めてんのか・・・

そうか・・・なら、いいや。


「おい、気がついてるだろう?アレン。く・ち、あ・け・ろ!」

「な・・・んでェ・・・?」

「ああ、気が付いたな?いいから、口開けろよ?お前、俺に喰われたいんだろう?」


うーん・・・こいつ、ハルクだよな・・・?

あ・・・お!目が、見えるぞ。

お!ハルクだな?

だが、目が黒いハルクだな・・・?

俺を喰うってか・・・?

お前、お前まだ言ってんのか?


「ハ・ルク・・・・・アイ・・リー」

「アイリー?なんだ?」

「リーンに・・いい・・つけ・・て・・・やる」

「アイリーン・・・?何だ?聞き覚えがあるような・・・?」

「お・い、おい・・・おま・・・それは・・・ないだろう?」

「?」

「アイリーン・・だよ?アイリーン。お前の・・・嫁」

「よめ?ああ、嫁か?アイリーンって言う奴がか?アイリーン?アイリーンだよな?・・・?俺の嫁か?何時(いつ)のだ?」

「今・・の・・だ」


クソッ!悔しいけどなッ!


「なんだ、今の俺には、このハルクと言うやつには女がいるのか?なんだ・・・そうか?・・・お前にしようかと考えていたのにな?そうか?」


「え"」


ハルクの腕の中でグッタリとしていたアレンが突然ハルクの胸元を掴み跳ね起きた。

「ん?」

「え"、え"、え"?」


「ああ、やっぱりお前、ディーヴァだよな?フフッ。ちょっと、力を注いでやると復活するな?だったら俺に大人しく喰われるか?」


目の前のハルクが黒い瞳をクリクリさせてアレンを見下ろすと口元を歪ませた。


なッ!

何だよ!その黒目クリクリはッ!

それに口元ニヤニヤはッ!


「ハルク!」

また急に顔を突き出したアレンにヴァルナであるハルクは声を上げる。

「や、止めろッ!またお前頭突きか!?」


「違う!違うよ!今、お前、俺の事!俺の事、お前にって、嫁、お前にって!!」

「ん?ああ。お前、俺にタイマン張って勝手に死んじまうバカだがな?・・・そこが変に・・まあ、なんだな?」

「・・・・・・」

「その・・・可愛いような・・・ああ、なんだ?」

ハルクの手がアレンの頬に触れる。

「まだ、痛むのか?どこだ?おかしいな・・・?傷は俺の唾液ですぐに治るのだがな?見せて見ろ」

そう言ってハルクの手が頬にこびり付いた血と一緒に涙を拭った。

「・・・・・・違う」

「ん?じゃあ、どうした?」

「俺・・・そんな事ハルクに言われる日が来るなんて・・・さ?俺、思ってなかったから・・・何か、俺今いっぱいいっぱいで・・・」

「なんだ?熱も出て来たのか?顔、赤いな。ガサツなくせに体はデリケートか?まあ、いい。やっぱりお前は面白いやつだな・・・うん、お前の事は後回しだ。少し眠ってろ」

そう言ってヴァルナがアレンの額に口付けるとアレンの意識は途絶え、体もグッタリとハルクの腕の中に崩れた。





「兄じゃーッ、兄じゃーッ!力を俺に分けてくれッ!」

少し離れたコスモス畑の中からミトラの声がする。

「ああ、忘れてたわ」

ヴァルナは眠ったアレンを肩に担ぎ上げ、声のする方へ移動するとルカの下敷きになりコスモスに埋もれるミトラを見つけた。

「情けないな?ミトラ。お前、そんな奴の下敷きか?サッサとそいつを喰えばいいだろう?」

そう言いながらもヴァルナはアレンを担いだ反対側の手でルカを持ち上げるとポイッと地面に捨てた。

そしてミトラと化したシルフィーヌを地面から引き上げると腕の中に抱きその眉間に軽くキスをした。

するとシルフィーヌの瞳に黄金の輝きが戻って来た。


「ああ、どうにか動けるようになった。すまん、兄じゃ」

「まだ動くな。もう少し力を注ぐ。お前、瞳が青いぞ・・・?」

再び眉間にヴァルナが今度は長い目に口付けるとシルフィーヌの瞳が黒く塗り潰される。

「良し。いいぞ」

「なんだ・・・瞳は青いままが良かったのに。まあ、今の方が力が出るからいいか・・・。助かった、兄じゃ。だが、こいつは今は喰わないんだ。こいつ、俺を『お母様』に逢わせてくれると約束した」

「『お母様』?母じゃか?」

「ああ。母じゃだ」

「そいつは凄いな?俺も逢いたいぞ」

「そうだろう?母じゃだ。凄いだろう?ん?兄じゃこそ、そいつ、喰わんのか?」

「ああ。こいつは可愛がってからだ」

「なんだ?気に入ったのか?ふーん、血だらけだが・・・ふーん、なるほどな。綺麗なディーヴァだ。なるほど兄じゃ好みだな、うんうん」

ミトラが眠るアレンの顎を持ち上げ品定めをする。

「そっちも綺麗だな?」

ヴァルナがルカを指さすとミトラが急いでルカをコスモス畑から抱き上げる。

「止めろよ。これは俺のモンだ。手ェ出したら、兄じゃでも許さねぇ」


と、突然、そんな二人の足下がグラリと大きく揺れると、グラグラと小刻みに震える。

その場に踏ん張り、耐える二人が空に飛び上がろうかと考えた時にピタリとその揺れがおさまった。


「なんだ・・・?今のは?ミトラ?」

「ああ、兄じゃ。どうやらこれは・・・飛ばされたようだな?」


コスモスの花に揺られ大きな満月に照らされた二人の前に大きな白亜の神殿が立っていた。

















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