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フラグを折られましたの件

今日もよろしくお願いします!

「あの、あの、今日から一緒に住むなんてないですよ・・・・ね?」

出来るだけ可愛く言って、お願いを聞いてもらおうか?

とにかく放してもらいたい。さっきから苦しいし。


根負けして頷いてしまったが・・・・・まさか、ないよね?いきなり王宮暮らしとか・・・・その、いきなりの結婚式とか、その後の事とか・・・・その・・・初夜とか・・・・・・


うわぁ、無理!無理!無理!心の準備も身体の準備もまだだから!

てか、本当に無理だから!身体がデカいだけでまだ明日でやっと11歳だし、その・・・まだ初潮もきてないから! 


ってレオリオには言えないし、誰に言えばいいんだよ!


「ん?安心して?それはないから。僕が18歳になって結婚式を挙げてからね。残念だけど」


「あ、そうなのですね・・」


あー良かった!!セーフだよ!!帰れるよ!!

よし!安心したわ。じゃ、レオリオが機嫌の良いうちに無かったことにして退散だ。よし!


「では、そろそろお(いとま)を・・」


「じゃあ、父上に報告に行こうか?」


「えっ!」


マジか!?・・・・マジ現実?マジ結婚なのか?・・・・うわ、現実逃避したいんですけど?


「君も気になるだろ?今後について両家での決め事があるからね?」


両家って・・・お父様、知ってるのか・・・?


うつむく俺をようやく放してくれたと思ったら今度は俺の手をしっかり握り締めレオリオが俺を引っ張って部屋を出る。


「母上、説得するのに苦労したんだ」


レオリオが前を歩きながら話しかける。


そりゃ、そうだろう。たった一人のかわいい息子だもんな。時間かけていい嫁探ししたいよな。


「あなたのお母様ですもの。当たり前だわ。あなたにとって何が最良か、すごく考えていらっしゃるのよ」


「だといいけど」


「そうよ、私だってあなたの事考えない日はないわ」


婚約破棄される未来は一日だって頭を離れませんですよ。ハイ。


レオリオが振り返ると俺を捕まえ唇にチュッといきなりキスした。


「!!」

おい!人前でするなよ!


「嬉しいことを言うから」


何だよ、何でそんなに嬉しそうなんだよ?悩んでる俺がバカみたいじゃないか・・・



着いた部屋は王宮の来賓室だ。

両陛下とお父様、ルカもテーブルを挟んで腰かけていた。


「お待たせいたしました」

レオリオが陛下に声を掛ける。


俺の手を繋いだまま陛下の横にレオリオが座る。自然と俺も王族側になるので戸惑うと


「よい、掛けよ」


と陛下から声が掛かる。


しぶしぶルカと対面する形で腰を下ろすと目の前のルカは能面のような顔で俺の首から下げたペンダントを見つめていた。お父様は俺とレオリオの繋いだ手を見ていた。レオリオはそれでも俺の手をがっちり繋いで離さないのだ。


「突然の事で戸惑ったであろう?シルフィーヌ。わしのわがままじゃ。聞き入れよ」


陛下がレオリオ越しに俺の顔を見て微笑む。


「ライナスにもずいぶんとごねられたわ」

とお父様を見て苦笑する。そう、お父様の名前がライナスだ。


「この婚儀について色々アントワート家からも注文があったのでな。ここに両家で契約を交わす事とする」


王家の家宰が両家の間に立ち朗々と契約書の内容を読み上げる。



契約内容を要約すると俺ことシルフィーヌはこの契約後、王子の契約上の伴侶となるが実際に嫁ぐかどうかはレオリオ王子が成人した時(18歳の誕生日)にシルフィーヌが選択できるとの事だった。

その時に別の人を選んだ場合は王家の籍も返すこととなる。


じゃあ、婚約者で良くない?


って思うけど婚約だけだと王家以外の求婚者が出た場合、シルフィーヌの意志だけでその相手を選ぶ事が出来る。

そう、相手がレオリオ王子でもシルフィーヌの意思だけで婚約解消は出来るのだ。

それがこの国の特徴で恋愛関係に身分は存在しない。

好きな相手は愛で奪い取れ!なんですね。

さすが根本乙女ゲーム。


しかし、これはさすがに他国には通じなくて例えば今日のセイラの件のように他国と国同士で条約等を交わす時は力の弱い国が人質よろしくその国の身分のある人を嫁がせることとなる。

まあ、こちらが前世の俺の歴史知識では当たり前だよね。


そう、シルフィーヌが王家に入ると言うことは国内でシルフィーヌに求婚した場合、アントワート家・王家双方の許しをもらわなければならない。

それも王子が成人するそのタイミングだけ。


そして他国からの求婚には既に皇太子妃であることを理由に断ることが出来るのだ。

これはレオリオ王子の場合も他国からの縁組の申し出をはねのける理由になる。


ああ、それと今回みたいに成人前の婚姻は家同士の合意があれば成立するそうだが、この国では珍しいらしい。

さすが、恋愛ゲーム、政略結婚がほとんどないなんてなんて素晴らしいんだ。


あと、シルフィーヌは王子と結婚式を挙げるまではアントワート家にいていいとの事。

ただ、王家との契約は成立しているので王家に嫁ぐ条件の純潔は守らなければならない。


今のところレオリオの側にいるのが一番危ないのだが。

レオリオに言い聞かせてくれ陛下、お願いだ。


また、このことは国民には公布をしない。


シルフィーヌが籍を王家に帰した時に王子ともにバツ1にならないためだ。

いわゆる貴族だけが知ってる公然の秘密として扱われる。


さてさて、このことにアントワート家は何のメリットがあるかだって?

間違いなくあるよね?娘がすでに王族だからね?

他貴族を完全に出し抜いた事となる。既に次期王妃と同じ扱いなのだから。


しかしお父様とルカは能面のような顔でさっきから殺気を押し殺している。

スッゲー理性で押えてるけど、ダダ漏れだ・・・・


そして俺はどうかと言うと他国輿入れ・レオリオからの一方的な婚約破棄は無くなったことになる。

だって結婚したのと同じだからね?これってどうよ?

上手くフラグ壊滅?バンザーイ!!てか?


正直、すごく複雑だ・・・

前世の俺の記憶が邪魔してるのは解ってるけどやっぱりついていけない感たっぷりだ。


分かってる。

俺はレオリオほど覚悟がないんだ・・・

自分が傷つかない回避方法ばかりを考えていたんだ・・

レオリオに嫌われた時の逃げ道ばかり探してたのに今、回りから固められた訳だ。


どうする?どうするんだ?俺。本当のヒロインにレオリオが会って恋に落ちた時、俺の存在って・・・・?自ら身を引く離婚妻なのか?・・・


うわっ!無理!絶対、耐えられないや!


じゃあ、どうすれば?


何を望んでも無い物ねだりだ・・・・


永久(とわ)の愛なんて誓っても守れるのか?


ダメだ、ダメだ、マイナス思考スパイラル。



お父様が無言でサインをし、調印を行う。

アントワート家立会人としてのルカも終始無言だ。


俺も頭で理解させて泣き出しそうなシルフィーヌの感情を抑え込む。


不意に小刻みに震えていた俺の手をレオリオが両手で包み込んだ。


そして指先でトントンとあやす。



自分の事で精一杯だった俺はそのレオリオの手も震えているのにやっと気が付いた。


俺だけじゃあない。


ここにいるすべての人が知恵を絞って今、最良の選択をしているだけで心はそれぞれ不安を抱えているのだろう・・・


俺もギュッとレオリオの手を握り返す。


俺だってすごく不安なんだからな!って。


「シルフィーヌ、今日からわしの娘じゃ。お父様でいいからな?」


王家の家宰が契約成立のサインを出すと陛下がレオリオを押し退け俺の頭を撫でる。


「あ、ズルい!私もお母様よ、シルフィーヌ。とても嬉しいわ。勇者様が自分の娘だなんて。でも王家に入ったらグランドマッスル出れなくなるじゃない?レオリオは怪我の事すごく気にするし。男のくせにね?真剣に戦っているのだから怪我の一つや二つ仕方ないのにね?怪我をしてもシルフィーヌはシルフィーヌなんだから。来年頑張りましょうね?ロトとして出場するのは王家も黙認よね?ねぇ?そうですわね?陛下。そう言う約束で今回は(わたくし)もこんなに早い婚姻を許したのですからね?レオリオも黙ってなさいよ?」


王妃様はレオリオを下敷きにした陛下に押し乗り二人にまくし立てた。 


「チッ!」


両陛下に下敷きにされたレオリオが舌打ちをした。



「・・・・・・・・・」


そんな事を必死で話し合ってたのか・・・?王妃様もレオリオも。


王妃様、ごねてた理由はそれなのか?


何か一気に力抜けたわ。




改めて両陛下が微笑んで俺に握手を求める。


「よろしくな。シルフィーヌ。わが娘よ」

「よろしくね?シルフィーヌ。私達の娘」


「はい。よろしくお願いいたします。お義父(とう)様、お義母(かあ)様」


俺が両手でその手を握り返そうとしたらレオリオが俺の手を繋いだまま離そうとしなかった。


両陛下の下敷きになっているレオリオのささやかな抵抗みたいだ。





王子にフラグ折られてんじゃん!!

ってことで王子はシルフィーヌをフライングゲットです!!

今日も読んで頂きありがとうございました。

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