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アスラの件

今日はちょっとダークですがまだ痛くありませんので。

よろしくお願いします!

「・・・・・・・」


し、しまったぁぁぁーっ!!

地雷集めて、まとめて、両足でドッカーァァァンッ!!じゃん、俺!!


ディーンはさっきから『永遠の誓いを』誓えって何度も言ってるのになんで俺、ワザワザそのチャンス与えるのかなッ!?

あーッ!ほんとにバカバカ俺ッ!

いいか?いいか?落ち着け、落ち着け、俺ッ、落ち着け、落ち着けよぉ?シルフィーヌッ・・・



「もちろん・・・もちろん、貴方が大好きよ」


俺は抱き上げられているディーンの腕の中でディーンの瞳を真っ直ぐ見上げて言った。


よしッ!言った、これでどうだッ!!


「・・・・・・・・リョウ君」

ディーンの眉根がキュッと寄るととても疑わし気な表情を浮かべる。


う・・・!?これだけじゃぁぁ、ダメなのかあーッ!!

し、仕方ないぃっ・・・じゃ、


「ぁ、あ、あ」


頑張れ、俺!


「愛していますとも、もちろん。もちろん本当に。ダビデ」

俺は舌を噛みそうになりながらも必死で口を動かす。


うぉおオオッ!耐えろ、耐えるんだ、俺ッ!


今度はそんな俺を見下ろすディーンの瞳がスッと覚めた。


「リョウ君。それ、アイシス姉様の声だよね?完全に僕を弟として言ってるよね?」


あ・・・・・・・・ヤバい、バレた・・・


「え・・・ッ!いや、別にね?そのぅ、家族とか、姉弟とか、末っ子が可愛いいとかの意味だけじゃなくて、その、本当にね?そのぅ・・・・・・・・あ!じゃ、君を大事に思ってる。ディーン」

今度はディーンにうんうんと頷きながら真剣シリアスな落ち着いた声で名前を呼んだ。

しかしそんな俺にディーンはズイッと顔をそれもおでこがくっつきそうな距離まで近づけると、


「・・・今度はソロモン兄上の声か・・・?」


あ・・・ディーンのこめかみになんか怒りマークが見える・・・


「君は色々な声が出せるんだねぇ、リョウ君?とてもよくわかったよ。だけど、それも間違いなく僕の事、兄弟扱いの〝好き”(・・)もしくは〝愛してる”(・・・・)だよね?それで誓うのはズルいんじゃない?」


あ・・・怒り通り越したみたい?・・・俺、危ない・・・?


「ち、近い、近いッ!ディーン!あ、やッ、まずは、その、ねッ?とにかく落ち着こうか?」

って、俺が落ち着こう!


「仕方ないな」


何がしかたな・・いっ、い・・・って、ん・・・?



ん・・・?



えッ・・・?



なんか顔、さらに近すぎるんですけど?

ディーンさん?

それになんか、

当たってて、生ぬるいんですけど?

唇のあたり。


ディーンさん、なんか、当たってるよ?




「「シルフィーヌッ!!」」


レオリオとバルトが俺の名を呼ぶのが聞こえる。



スッと離れたディーンの顔が俺を見下ろす。

その顔は頬を紅潮させとても嬉しそうだ。


「仕方ないからこれで。話をして来るといい、シルフィーヌ。けど帰って来るんだよ?じゃないと大事なハルクの時間は二度と戻らないからね?」


そう言ってディーンはそっと俺をコスモス畑に下ろしてくれた。




だが・・・


今、俺、

ひょっとして、キスされた・・・?

ディーン、勝手にキスしたの?・・・シルフィーヌに


レオの目の前で?

レオの目の前でかよ?




「って、シルフィーヌ・・・?」


腕から降ろしたシルフィーヌがコスモスの花に突っ立ったままだ。

てっきり急いで駈け出して行くと思っていたのに呆けた顔をして微動だにしないのだ。

周りのコスモス達は夜風にゆられ、ゆらゆらと揺れているのに。


「?・・・どうしたんだい?行かないのかい?」


ディーンは(いぶか)しく思いながら目の前のシルフィーヌの肩に手を掛け、揺すってみる。

すると小さな羽虫のような黒いモノが現れその掴んだ手にからまった。


「何だ?」


ズワァァァァアアアアアアッッ


いきなり不気味な音をたててその黒いモノが増え広がった。


それはシルフィーヌの体から吐き出されるように凄い数で膨れ上がって行く。

シルフィーヌの周りを黒くおおって行くほどに。


「シルフィーヌ!!」

急いでそこから助け出そうとシルフィーヌの細い肩を掴むディーンだが、その手を弾くようにそれはさらに膨れる。


ザァッ!!


さらにそう、大きな音をたてるとそれらは渦を巻きながら星空に立ち昇る。


まるで黒い火柱のようにだ。


「なッ!!」

その勢いがもの凄くてディーンはシルフィーヌの側から弾きとばされた。


そんなディーンには目もくれずシルフィーヌがゆっくりと天を仰ぐ。

その黒い柱を見上げた双眸はまばゆいばかりの輝きを放っている。


「ッぅ!シルフィーヌ?!どうしたんだ!シルフィーヌッ!」

コスモス畑に無様に転がされたディーンはそれでもそう叫びながらシルフィーヌに手を伸ばした。





「?!」


レオリオ王子の剣はヘイワーズの脇腹を突き刺していた。


レオリオ王子、バルトの二人がシルフィーヌの名を叫んだ途端にその両目は異常に輝き出した。

そして一気に二人の周りの空気が恐ろしいほどに膨れ上がるとバルトがヘイワーズの頭上に剣を振り下ろしたのだ。

今のシルフィーヌの状態を理解して欲しくて丸腰で話していたヘイワーズは咄嗟の出来事でそれをかわすのがいっぱいいっぱいだった。だから下から差すように繰り出された次のレオリオ王子の剣はかわすことが出来なかったのだ。


しかし、刺されたはずなのに痛みが来ない。


「・・・?」


思わず目をつぶってしまったヘイワーズが目を開けるとそこには自分の腹をかばってレオリオ王子の剣を握るソロモンの手があった。

血を流しながら握り締めるソロモンの右手が。


「ソッ!ソロモン王!」

「構うな、ヘイワーズ。それより行くぞ」

「おのれェーッ!レオリオ王子!よくも俺の亮にッ!!」

「構うな!ヘイワーズ!来るんだ。ディーンが危ない」

「えッ!?」


ソロモンがその手の血と一緒にレオリオ王子の剣を何事もなかったように振り払うとヘイワーズの腰を抱える。

が、また、異常に興奮したバルトの剣が二人に斬りかかる。

しかし、その剣もソロモンがヘイワーズを抱き抱えながら器用に身体を(ひね)るとギリギリにかわされた。

そしてコスモス畑を背後にして大きく飛び退いたのだ。


「バルトッ!バルトッ!どうしちゃったのさッ!?ヘイワーズの話、聞いただろうッ!?」

「王子!王子もッ!落ち着いて下さいッ!丸腰の相手に剣は不要です!王子ッ!」

それでも剣を振り回し興奮する二人にレクサス、ルカは急いで止めに入る。



ズワァァァァアアアアアアッッ


そんな4人の足下で音がする。


「「!」」


バルトの腰に抱きついたレクサスの背筋に、

レオリオの剣を剣で抑えつけたルカの背筋に、その音は這い上って来るような感触で広がっていく。


そして怒りで我を忘れていた二人にもその音は異様に感じたのか、レオリオとバルトの動きが止まった。



それは倒れたハルクから噴き出していた。

黒い、黒い、煙が星空に向かい真っ直ぐ、凄い量で唸るように噴き出している。

まるで黒く燃える炎のように。


そしてそれはもう一つ。

コスモス畑に佇むシルフィーヌの頭上にも。


「シル・・フィーヌ・・・?」

それを見たルカの口から愛する妹の名がこぼれた。





「なんだと・・・?」

シルフィーヌの頭上の黒い柱を睨みつけたソロモン王は背後でしたその音に振り向く。

そこには同じように真っ直ぐ夜空に立ち昇る黒い柱が出来上がっていく。

そしてその下には信じられない事にハルクが立ち上がっていた。


「まさか・・・バカな?・・・僕の結界を解いただと・・・?」






「兄上ッ!」

自分を呼ぶディーンの声がする。


「ヘイワーズ。僕がシルフィーヌの気を引く。その隙にディーンと一緒に出来るだけシルフィーヌとハルクから離れろ、いいな?」

「しかしッ、しかしそれでは亮が!亮があいつらに連れ去られてしまう!」

「ヘイワーズ、今のシルフィーヌはリョウ君じゃない。ハルクもだ。こんなやつらは僕は知らないんだ(・・・・・・)

「どう言う・・・?」

「いいからッ!走れ!ヘイワーズ!」


言われるままにヘイワーズが掛け出すとソロモン王は目の前のシルフィーヌに語りかける。

「なんだ?貴様は?」

すると黒煙を見上げていたシルフィーヌがゆっくりとソロモンに向き直る。

同じく背後のハルクもこちらに歩いて来る気配がする。

この世界では体験した事がない程の威圧感を放ちながらそれは近づいて来るのだ。


そう質問された目の前のシルフィーヌも同じ気配を放ち始めるとニヤリと口元を歪めた。

そしてその美しかった青い双眸からは溢れんばかりの黄金の光を放っているのにその奥底は真っ黒に塗りつぶされていた。


「なんだ・・・?お前?」


ソロモンは今見ているモノを急いで自分の中の情報と照合する。

それも膨大なデーターのなかで。

だがまったくヒットしない。

こんなシルフィーヌもハルクもこのゲームには存在しないのだ。



「なんだ?お前?」

そんなソロモン王の耳元でそう、囁かれた。


「!!」

振り向いた目の前にはハルクの顔があった。

「バッ!バカな・・・ッ!いつ、気配を消したんだッ?!」


自分を見下ろしニヤリと笑うハルクの赤い双眸の奥も真っ黒だった。











あんまり痛くする予定はありませんが・・・

ちょっとルカ、泣いちゃうかもです。

今日もお読みいただきありがとうございました!

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