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地雷踏んじゃったの件

今日もよろしくお願いします!

「お姉様?・・・」


自室の床の絨毯に大きな世界地図を広げ国々の位置や移動距離を再確認し、タマリ国より戻ったサロメ達とシルフィーヌを無事、奪回する方法はないかと模索していたアイリーンの動きが急に止まる。

ふいに(くう)を睨み、その美しい紫の瞳を大きく見開くと胸の前で祈るように手を併せ強く握り締めた。


「顔色が良くないわ、お姉様」

そんな姉の肩にサロメが手を添え顔を覗き込む。

「いえ、大丈夫。ほんの少し・・・胸騒ぎがしただけ。大丈夫よ、サロメ」

そう言って無理に笑顔を作るアイリーンの手はそれでも震えている。



無理もない。

先程、皇帝である兄カルロスが直接『カルマ国に鉄槌を下す』という宣戦布告を間もなく世界の国々に向け発布すると言う報告をレイモンドから受けたのだ。

それは皇帝自らが制裁を実行すべく、軍を率いる事だ。

それに既にこの戦いにはミシュリーナの祖国、北の大国タマリも参戦の意を示している。

シルフィーヌの祖国、東のオールウエイ国、同じくトマ王子の祖国、アスラン国も間違いなく参戦の声明を上げるだろう。

一国の皇太子妃の誘拐がこの世界の国々を巻き込む大戦の幕開けへと向かわせているのだ。



そんなアイリーンの震える手を両手で握ったのはアイリーンの横で同じく地図を覗き込んでいたミシュリーナだ。


「大丈夫です、アイリーン様。ハルク様は無事、シルフィーヌを連れ戻ります。それにハルク様はこの世界最強です。サンタクラークではソロモン王と互角に戦っていましたから」


「ああ。大丈夫だよ?姉姫(あねひめ)さん。ハルク様の光はまだ陰ってない。むしろ強くなってるよ」

そう続いて言ったのは黒猫のケチャを膝に抱き、日当たりのいい窓際の椅子に腰かけているティッカだ。


予知能力があるティッカはタマリ国エカテリーナ女王の命を受け、ミシュリーナと共にコルカ渓谷から帝国にこの戦いの参謀の一人として推薦されたのだ。

その際、黒猫のケチャもサロメがちゃっかり一緒に連れて来たのだ。


「ほら?お姉様、賢明なミシュリーナと未来を見通す眼を持ってるティッカもこう言ってるのだから大丈夫よ」

そう言ってアイリーンの瞳をまっすぐ見つめ大きく頷く三人にアイリーンも頷き返す。

「ええ。ええ・・・そうね。私達(わたくしたち)がしっかりしなくてはね?」

「そうよ?お姉様。私達がお兄様達を、ハルクをレイモンドを皆を支えて行かなきゃ。ああ、ティッカ?アレンは?アレンも心配はないのかしら?」

「うん?アレン様もハルク様と一緒の運命だよ。だからハルク様の光が強く輝き続ける限り引っ張られて行くから大丈夫」

「そう?なら、信じるわ。ティッカがそう言うならね」

「フフッ、サロメ姫さんにそう言われると、ちょっとさ?くすぐったいけどね。でもケチャがそう言ってるから間違いないよ。ね、ケチャ?」

ティッカがそう膝の上のケチャに話しかけるとケチャは日に当たった身体が気持ちいいのかその金と銀の碧眼を細め大きなあくびをした。

そんなケチャを見つめ今度はミシュリーナが質問をする。

「ねぇ・・・ティッカ?レオリオ王子とバルトはもう、『ウロボロス』ではないの・・・?」

「『ウロボロス』と言うものが何なのか・・・?何度も言うけど本当に私には理解できないんだ・・・だがねぇ?言えるのはシルフィーヌ姫さんと(ツイ)になっていた運命からこの二人は弾かれてしまった」

「弾かれるって言う意味が私にはわからないの、ティッカ。弾かれるって誰かが石を弾くように押し出すのかしら・・・?なら、誰が?」

「うーん?神様」

膝の上のケチャの背中を右手でなでながらティッカは当然のように答えた。

その答えにサロメは苛立ち、立ち上がるとツカツカとティッカに詰め寄った。

「またッ!もうッ、ティッカ!!神なんて存在しないッ!そんな曖昧なモノに頼ってはダメなの!」

そう言ってケチャをティッカの膝から奪い取るとギュッとその胸に抱きしめた。



「いや?神は存在するよ?ソロモンはこの世界の神だよ」


「「「え?」」」


さらっとそう返したティッカにミシュリーナ、サロメ、アイリーンが驚く。


「だけどねぇ?ソロモンは全知全能、不死身じゃない。そんなバケモノみたいな神は地上に降りたった時点でこの世界には存在しない」


「え・・・ティッカ・・?」

ミシュリーナが更に驚きの声を上げる。


「なぜなら神はこの世界に下る方法として人の体を器として用意する。それがそもそものこの世界で『印』持ちが現れた始まりだよ」

「『印』持ちが・・・神?・・・なら、『印』がある事自体が神の証拠なの?ティッカ」

「昔はそうだったんだよ。それが神の証とされていたからね?だってこの世界に降り立つためには神は人の体で産まれて来なきゃ無理なのさ。だけど人の体では神の能力なんてのは元から備わって無いモノだからさ?使い方わからないし。使い方がわからなければ発揮もできないし。もうそれって身体にとっては異物扱いだよね?なら、『印』に神であった時の能力を押し込めなきゃ、人の体に生れて来れないわけだ」

「わざわざ人の体に産まれる為にその能力を切り離して持ち込んだって事・・・?それって、『印』はアイテムBOXって事なのかしら・・・?確かにアイシス様は翼を出して空を飛んだわ・・・?」

「アイテムBOX???ミシュリーナ姫さん、アイシス様って方は本当に翼を出したのかい?それに空を飛んだだって?」

「ええ、シルフィーヌの背中に純白の大きな翼を授けて墜落死するのを助けたわ」

「それは・・・すごい。見たかったな・・・。なら、そのアイシス様って方は神の記憶があったんだ。『印』の中の神の能力の引き出し方がわかっていたんだから・・・凄いな・・・」

「神の記憶・・・?なら、『印』持ちは神のアバターって言えるんじゃない・・・?」

化身(アバター)?ん・・・?神が変化(へんげ)してこの地に降り立つならそうだろうけどそれとは違う。『印』持ちはあくまで人なんだよ」

「ん?『印』持ちは人のふりをした神なのよね?ティッカ」

「違うよ、ふりじゃない。正真正銘、人間なんだよ、サロメ姫さん」

「イエス・・・みたいに人から産まれるから人・・・?」

「イエス???なんだいそれは?ミシュリーナ姫さんもさっきからわからない事ばっかりいわないでよ?」

「ああ、ごめん、ごめん。この世界にキリストは存在してないか・・・じゃあ、『印』持ちは神が人になった姿だと言っていい?」

「ああ。それの方が解りやすいか?まあ、今となっては自分を神だったと知らない神様だけどね?」

「神・・・?ハルク様が・・・?お兄様達が・・・お父様も神・・・・?」

アイリーンが唖然としている。

「待って、お姉様。ティッカ、貴女はどうしてそんな事を知ってるの?」


「ん?教えてもらったからさ」


「誰に?」


するとティッカはそう尋ねたサロメを真っ直ぐ指さす。


「「え?サロメに?」」

ミシュリーナ、アイリーンは同時に声をあげる。


「えッ?!知らないわ!いい加減な事、言わないでよ!ティッカ!」


「いいや、サロメ姫さんじゃないよ。姫さんが抱いてるケチャだよ」


「「「え・・・ケチャ!?」」」


皆の視線を浴びたケチャはサロメの胸にもたれうるさそうに目をつむると黒くて長い尻尾を振った。








「見つけたぞッ!ソロモン王!!」


この声はッ・・・!!


「「「ソロモン王!!」」」


この声も・・・・!!


迎えに・・・みんなが・・・


みんなが迎えに来てくれた!!



「レオーッ!バルトッ!ルカッ!レクサスーッ!!」


月明かりに照らされたソロモン王の前にはズラリとレオリオ、バルト、ルカ、レクサスが剣を構え並んだ。そんなみんなの姿を見つけ、俺は抱き締められているディーンの胸の中で思わず絶叫した。


「!、シルフィーヌッ!?シルフィーヌッ!!」


同じく俺を見つけたレオリオが名を呼びながらこちらに走ってこようとする。

しかし、そのレオリオの行く手を両手を広げはばんだのはヘイワーズだ。


そしてソロモン王もその場を動かない。


「アレン!?・・・ハルクッ!!」

その足元に転がるハルクと静止しているアレンを見つけたのだろう、レクサスの声が上がる。


クソッ!!本当にこのままではみんなアレンやハルクみたいにやられてしまう!!

どうすれば・・・?どうすればいいッ?

落ち着け俺、落ち着けシルフィーヌ、

しかし、どうすれば・・・!!

あ・・・そうか!声!声を使えばいいのか!しかし、しかしだ・・・

いや、しかし!

ええいッ・・・!ままよッ!


俺は覚悟を決めてディーンをじっと上目使いで見つめるとシルフィーヌの、それも最上級の色ッぽかわいい声を出した。


「行かせて、ディーン。お願い、ディーン。私に話をさせて?このままでは誰かが犠牲になるわ。そんな事、そんな事、絶対嫌なの。ねぇ・・・お願い、ディーン、お願い!」


お願いポーズも決めこんで再度ディーンに必死で頼み込む。


「・・・・・」


ムリか?ムリなのか?こいつには俺の必殺!お願いポーズは効かないのかッ!?


するとちょっとディーンの頬が赤く染まった。


お・・・!行けそうかッ?行けそうなのかッ?


「・・・そんなしおらしい真似をしたってダメだから亮君・・」


って、しっかり、頬、赤くなってるよね?

よしッ!もう一押しッ!


「お願い!お願い!ディーン、お願いッ!」


するとディーンはちょっと目を逸らして沈黙する。


そして息を吐くと今度は真剣な顔で俺を覗き込んだ。


「僕に約束をするなら・・・シルフィーヌ」


「ええ、する。何でも」

俺はコクコクと大きく頷く。


誰かが犠牲になるくらいなら何だってしてやるよ!!


「じゃあ・・・永遠の誓いをこの僕に。さあ今すぐ僕に、愛しいシルフィーヌ」










お久しぶりです!

この時期は私の仕事、全力本領発揮状態で頭がそっちでパンパンでした!

やっと終わりましたよ~本当に。ほんと、イヤッホーイです!

(だけど・・・話上手くつなげられてるかな・・・)

 

今日もお読みいただきありがとうございました!


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