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奪回の件

よろしくお願いします!!

「あ、あいつが・・・クッ!まさかの夜這いとはッ・・・!あ、ダメだ!アハハッ!」


今夜はスーパームーンだ。

目の前に広がるコスモス畑の夜空には大きな満月が煌々と輝いている。

あのままではやっと眠ったディーンを起こしてしまうと思った俺は仕方なく中庭の外れにあるこのコスモス畑にソロモンを連れ出したのだ。


「まさか!んなわけないだろう!ったくっ!誰のせいだと思ってんだよって、くしゅッ!」


ただただ、だだっ広く、宮殿の一角なのに囲いも塀もないこの場所にまばらに咲いたコスモス達は夜風にふかれ気持ち良さげにその茎や葉を波打たせている。

その夜風が俺の頬も優しく撫で上げると思わずその冷たさにくしゃみが出てしまった。

俺のガウンはディーンが抱き締めて寝てしまったために俺は今、薄着なのだ。


クソッ!さみーぞっ!ディーンの奴!ッたく!


すると肩から包むように上着がかけられた。

ソロモンの物だ。


「いいよ。あんたが風邪をひく」


俺は突き返そうとしたがソロモンは笑いながら俺の背後にまわるとそれで優しく俺を包みこんだ。


「あいにく、病気はしたことないんでね?」

「・・・ま、そうだろうな?じゃ、遠慮なく・・・しっかし!あんたら兄弟は!なんで勝手に俺の部屋に入り浸るんだよ?ほんと、いい迷惑だよ!」

「入り浸る?いや?入り浸ってはいないけどリョウ君の時を止める為に毎晩お邪魔はしてる」

「毎晩!?毎晩だって!?毎晩来てたってか・・・?俺の部屋に?なんなんだよ・・・?それ・・・。そんなにこまめに俺の時は止めなきゃなんないのかよ?」

「ああ、そうだね。出来るだけ君の生き永らえる時間をもたせてこの世界で君があがくのを見てみたいと思ったからね?」

「相変わらず憎まれ口だよな?素直に言えばどうだ?俺が必要だと」

「フフッ、それでは我が弟の為にお願いするよ?リョウ君。今しばらくディーンの側にいてやってくれないか?あいつはあれで寂しがり屋なんだよ?」

「あんたさぁ?本当にディーンがシルフィーヌを好きで手籠めにしようとしたとまだ思ってるのか?」


俺の呆れた声に満月を見上げたままソロモンがクスリと笑う。


「今夜は本当に君を口説きにいったのさ、我が弟君は。本当に君を気に入っているんだよ?あいつは。それが証拠に食事の席で僕が君を諦めろと言ったらあいつ、嫌だと答えたのだから・・・あいつが僕に〝否”と答えるなんてね・・・・・それに今夜、僕は君を深い眠りに浸けるつもりだった。だって、君も目覚めたらオールウェイ国の方がいいだろう?・・・だからディーンの奴、余計に焦った訳だ・・ククッ」

「・・・・・ディーンは俺が居なくなるとあんたがさみしいと言ったよ」

「僕が?さみしい・・・?寂しいねぇ?・・・僕が?どうしてさ?」


俺はまだ夜空を仰いでいるソロモンを見上げ答える。


「答えなくてもあんたは全部わかってるんだろう?」


「いや?わからないよ、リョウ君」


ソロモンがそんな俺をまっすぐ見降ろした。

前世の俺の顔に微笑みをたたえて。


「・・・ディーンの口から聞くといい。ああ?それからディーンは『約束を思い出してくれ、兄上』とも言っていた」

「約束?」

「ああ。ディーンとの約束だよ。いや、ダビデとかな?」

「ダビデとの約束?」

「・・・もしくはアイシス様と兄弟3人での約束・・・」

「アイシスとダビデだって?随分昔の話だ・・・」


俺はソロモンと距離を取る為にコスモス畑を背後にしてゆっくりと後退る。


「ああ、コスモスの花畑で・・・こんな月の晩ではなかったかな?」


「何の話だ?」




「そう、(わたくし)とダビデ、そして兄様との約束ですわ」

俺の口からアイシスの声が漏れる。


「・・・・止めろ」


「どうか思い出して兄様・・・・・」


「止めろ、リョウ」


「思い出して。お願い、兄様。私が、ダビデが、カルマの民が敬愛するカルマの若きリーダー、ソロモンよ」


「止めろ、リョウ。そんなアイシスの声で言っても無駄だ。アイシスはもういない。お前はアイシスではない」


「アイシスはここに。兄様。アイシスの想いはこの地のこのコスモス達が覚えておりますわ。あの日、あの時、私達は誓ったではありませんか?兄様」


「なんだと・・・?」


「どうか思い出して・・・」

「アイシスは消滅した。いない。もう、いないのだ」

「このコスモス達が咲き乱れるこんな夜、まだ小さなダビデは母神が身罷(みまか)ったのも解らず(わたくし)の手を引き、兄様の手を引き、母神を探しにここに来た」


「!・・・」


「その時、貴方はダビデに言った『ダビデ、母神は父神との長い長い旅に疲れたのだ。この姉神が用意したこのコスモスの花達の綺麗なベットに眠らせてあげよう』と」




「それでも『母神様はいつもこの僕と一緒にいると約束したから嫌だ』と言って愚図るダビデに私はキツく言い聞かせようとした。そうしなければ父神の怒りに触れダビデまで取り上げられると私は焦った」


「・・・ダビデは・・・」


「ええ。ダビデの母は私達の、兄様と私の実母ではありませんわ。だけど母神様は私達兄妹を実母亡き後、とても可愛がってくださいました。しかしダビデが生まれてから、父神は母神様を恐れだした・・・あの人は、父神は自分の息子である貴方の偉大さを恐れ、私の力を恐れ、小さなダビデの能力にも嫉妬した・・・」



「あやつは・・・どうしようもない臆病者だった。父神の為に良かれとカルマの民に尽くし人望を得た母神にあやつはいつか自分が取って代わられるのではないかと恐れおののき、自らたった一人の自分の味方である母神を(あや)めたのだ」

「ええ。そう・・・全ては父神の老いのせい。私達の母を亡くした後、カルマの民達のあの人に対する信頼は歪み始めた」

「ああ。全てはあの老いぼれじじいのせい・・・なぜならカルマの真の王は我々の母だったのだから」



「私はあの時、あの晩に・・・ダビデの手を引き、貴方の手を引き、逃げ出したかった。・・・何もかも捨てて、貴方とダビデがいればそれでいいと・・・・しかし、それも叶わず、愚図る小さなダビデに怒鳴って黙らせようとした・・・そんな私とダビデに貴方は」


「僕は・・・」


「『僕がすべてを解き放ち、カルマの皆とお前とアイシスが安心してこの地で母神を見守れるようにしよう』」


「だから・・・」


「『だからダビデ。姉神を、アイシスを困らせてはいけないよ』」


「どうして君がそんな事・・・」


「その時の約束、ダビデが言った言葉。それに誓った貴方の言葉」










(・・・マジか・・・・)


「・・・おい、どうなってんだよ?ハルク」



そっと、息を殺しながらソロリソロリと忍び込んだその寝室の中もまたもやもぬけの殻で二人はしばし呆然とした。


(声、デカいぞ!アレン)


「って、どう見たって誰もいないだろうが?ったく!ディーンもいなければソロモンもいない。部屋、間違えてないか?」

「って調べたの、アレン、お前だろうが?」

「・・・・・あ、あっちは上手く行ってるかな?シルフィーヌの救出。そっちが目的だからな?よし!ならこのまま、静かに静かにだ、シルフィーヌだけ連れて帰るぞ!とにかくシルフィーヌの部屋はあっちだからな!よし!」


ようやく、宮殿内の情報を得て、シルフィーヌの無事を確認したハルク一行は今夜、ここ、カルマ国宮殿にシルフィーヌ救出作戦決行の為にまずハルクとアレンがディーンの寝室に奇襲をかけたのだ。

そこでディーンを抑え、人質に取り、その騒ぎに乗じレオリオ、バルト、ルカ、レクサスがシルフィーヌの部屋に向かい救出するつもりだったのだが・・・肝心の人質のディーンが部屋にいない。

仕方ないので先にレオリオ達をシルフィーヌの部屋に向かわせ、次はソロモン王を人質に取る事にしたのだ。

だがまた主人のいない静まった部屋を二人は呆然と見回す羽目となったのだ。






(寝てる・・・)

(寝てるのか?シルフィーヌは?)

(あ、ホントだ。寝てるみたいだね?)

(まず、私が起こしてきますから。王子)

(そうだね?ここはルカが行った方が適任かな?ルカだとシルフィーヌも驚かないよね?)

(いや、僕が)

(王子、気持ちはわかるがいきなり王子だとシルフィーヌは驚く)

(王子、レクサスやバルトが言う通りここは私が)


ここにもソロリソロリと息を殺し、寝室のドアの前まで忍び込んだ4人の人物がドアの隙間から暗い寝室を覗き込みベットで丸くなっている人影を確認してヒソヒソと相談を始めた。



「ん・・・っ・・・」


(あ、起きてしまうよ・・・ここで叫ばれたら大変だから、ルカ、早くって!って、王子!?)

((王子!!))



レクサス、ルカ、バルトが急いで止めようとするのを振り切りレオリオはベットの人影をそっとシーツごと抱き起こす。


(シルフィーヌ、僕だ。迎えに来た)


そう言ってレオリオは腕の中の人物の口を叫ばれないように塞ごうとした。

が、ふと、いつものシルフィーヌとは抱き心地が違う事に気づき顔を覗き込み硬直する。



「え"?」



「・・・んっ・・・?」



寝ぼけたその人物も目をこすりながら目の前の男の顔にしばし呆然とする。


「・・・・って、お前!レオリオ王子か!」


「お前こそ!ディーン王子!!」



「「「ディーン王子だって!?」」」


叫んだ二人の声に合わせてバルト、ルカ、レクサスも叫んでいた。









ひゃぁ~、遅くなりました~(ちょっと正直、スランプ気味ですね・・・ぐすん・・・)


今日もお読みいただきありがとうございました!

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