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いきなり妻ですか?の件

今日もよろしくお願いします!

王宮での練習試合はなぜか盛況に終わり、ラルバ公国公妃を筆頭に色々な方々からルカと俺はお褒めの言葉とお招きを受けた。


大道芸人扱いじゃないよね?


その試合の後にセイラの帰国だったが最後まで俺とルカの手を離さず一緒に連れて帰るとわがままを言って母上と王妃様に叱られ泣く泣く帰って行った。



「お兄様、振られちゃいましたねぇ?」

セイラの乗った馬車を見送りながら同じく手を振るルカに俺は言った。

「そんな嬉しそうな声で言うな」

ルカもククッと笑いながら返す。



試合の後、ルカが俺を抱き着いたセイラごと手を引いて立たせるとセイラがルカに向かって宣言したのだ。


「大勇者様、ごめんなさい。セイラはやっぱりロト様が好き。一生懸命に立ち向かって行くロト様が好きなの!結婚はやっぱりロト様とする!」


やっぱりセイラは面白いわ。


「笑い事じゃあないんだけどね、シルフィーヌ。本当にね」

「?」ん?

「ラルバ公国は優秀であれば公女が女王になれるって知ってた?それに我が国と同じで同性婚も認められている。国同士の力関係もほぼ互角だ」


えっ、マジか?

それじゃぁ俺、セイラのお嫁さん?いや、勇者様だからお婿さん?

いやいや、その前に女同士もありなの?どうやるんだ?ねぇ、どうやるの?


「お前、何考えてる?」


「えっ?・・・いやぁー、後で教えてもらおうかな?・・・えへっ?」


あっ、ルカの目が冷たい・・・・


「何で練習試合なのにあんなに国の主要人達が見に来ていたのだと思う?」

「私達の品定め?」

「そうだ。将来の王妃と宰相のな」

「もしくは国の(かなめ)になれる人物か?」


ルカがコクりと頷いた。

「我々は合格のようだな。まずは他国縁組には使われることはなさそうだ」

「お父様もわかっていて?」

「もちろん。仕組んだのは王だろうけどな。王妃の姪を使ってでの公国の介入を良しとしなかったのだろう。レオリオ王子もお前が掛かっているからいろいろ根回しをしたのではないかな?」


えっ?レオリオもか?


「今、王妃と話し合ってるんじゃないか?どうして二人はセイラ様の見送りを我々に任せて来ないのだと思う?」


確かに試合の後、レオリオが走って来てもよさそうなのにな。


単純な乙女ゲームの世界では説明できないしっかりとした歴史がこの世界にはある。

そしてその基盤を作っていくのはこの瞬間を生きている一人一人の行動だ。

少なくとも今のレオリオは俺と一緒の未来を手に入れる為、今出来る精一杯の事をしてくれている。


信じていいのだろうか?

レオリオを信じてこの国でレオリオの(そば)で彼の妻として王妃として生きていいのだろうか?


「レオリオ王子を信じていいのでしょうか?」

「それをお兄様に聞くのかい?シルフィーヌ?」

「ええ。お兄様は私の指南書なんですから、ね?」


俺はルカを見て微笑んだ。ルカは俺を見ず、


「婚約を決めた時にお前の心は決まっていたのだろう?」


と問い返した。


そうだ。この世界で夫にするのはレオリオだけだ。

レオリオだけ・・・・

他の人など関係ないのだ。




「これから本領に帰る。シルフィーヌ、着替えを済ませて王子に挨拶をして来るといい」


気が付いたらお父様が俺とルカの後ろに立っていた。


「ルカも着替えたら私の部屋に来てくれ」



軽く、汗を流し、ドレスに着替えると待っていてくれたカレブと一緒にレオリオの部屋を訪ねるが不在で俺だけレオリオの部屋に通された。

お茶の接待を受け長椅子に座る。

しばらくお待ち願いますとレオリオの護衛のマークスは頭を下げ出て行った。


まだ、髪が濡れてるし、香水つけてないけど臭くないかな?

ああ、石鹸の匂いわりといいや。ローズ系?大丈夫そうだな。

ん、お茶おいしい。マークスうまいな、お茶入れるの。ミルクも砂糖もたっぷりだし。

部下にも俺の好み徹底させるって。

言ったっけ、俺の好み?

ホント、何でも知ってるな。

あいつ、本当にストーカーだわ。


俺はクスリと笑う。



しばらくするとレオリオがいきなり一人で入って来たので驚いた。


「待たせたね」


「いえ、私の方が突然で申し訳ございません」


俺は立ち上がろうとすると、レオリオが素早く俺の横に座ると俺の両手を握りしめた。


ん?


「二人だから改まらなくていい。今日はセイラがわがままを言って済まなかったね」

「本当にお可愛らしい方ですね、セイラ様は」


俺がクスリと笑うとレオリオも微笑む。


「君とルカを連れて帰ると言った時は少し焦ったよ?」

「私はセイラ様の旦那様?それもルカ付きって!」


あ、ダメだ、女同士ってどうやるの?って思い出した~!


可笑しくてクスクス笑う。

そんな俺をレオリオが覗き込み、

「あり得るからね?それ。だから、もう、僕以外の人を魅了しないでくれるかな?」


と口元は笑っているが・・・・あれ?何か、怒ってる?


「・・・魅了かどうかわかりませんが・・・興味を持たれたみたいですね?でも、私が魅了したいのはレオだけよ?」

首を傾げて微笑む。


なに?何で怒ってるの?


「じゃあ、君を閉じ込めていいかな?この部屋に」


「・・・・・・・・」


サラリと監禁言うな!怖いわ!乙女ゲーム!それ三次元ではときめかんからな!


「やだ・・・レオ・・?冗談・・・?」


ちょっと、怖いんだけど・・まず手から放してくれないか?レオリオ?


「帰したくないんだけど?本当に」


顔、近いよ?

あ、手、放してくれた。

え?片手、背中に回した?


レオリオがもう片方の手を上着のポケットに入れる。

その手にはペンダントが握られている。


今までも貰ったよ?今着けてるのもそうだよ?


俺の首に両手を回しそれを着けようとする。


「な、何?ちょっと待ってレオ?それはあなたからの贈り物なの?」


「・・・・・王家から君に。一日早いけどお誕生日おめでとう」


首に手を回したままだ。


確かに明日はシルフィーヌの11歳の誕生日だが・・・

王家から?・・・王家からって?・・・・・まさか!!


俺は急いでペンダントを掴み見る。


そこにはレオリオの華紋?銀の六角形にエメラルドでバラが作ってある。そのエメラルドの背後にうっすらとアントワート家の紋章が浮かび上がる。


レオリオが小さく溜息を()くとその銀の六角を指で横にずらした。

蓋になっていたそれが開くと中から二匹の竜が絡んで左右に口を開け、中央に十字架の模様の盾がある家紋が現れた。


「こ、これって」

「もう、これは君のものだから」


レオリオがまた首に回した手を動かす。


王家の紋章だよね!?

これって!?

これ、貰うって、王族になる事だよね!?


つまり、結婚?


「ま、待って?レオ、待って!!」


「待たない」


「お願い!説明を!」


「・・・・分かってるくせに・・・」


それでもペンダントを着ける手を止めてはくれた。


・・・・・こいつたまに黒くなるな。


俺がペンダントを掴んでいるのをいいことにレオリオは左手を俺の腰にガッチリ回すと右手で俺の顎を持ち上げ自分に向かせる。


「今すぐ僕と結婚してシルフィーヌ」


やっぱりか。やっぱりそう来るか。


「ええ、もちろん。あなたが18歳になってまだ私を必要としていただけるなら喜んでその時に致します」


レオリオを見つめて頷く。レオリオがニッコリ笑う。


その笑いは嘘くさい。まだ、怒ってるな。


「シルフィーヌ、18歳の僕も今の僕も気持ちは変わらない。君に会った3年前の僕と変わらないように。生涯の妻は君だけだ。だから今これを受け取って?そして僕の妻になって?これは王家が君に誓う約束だ。そして、僕の誓いの証だ。愛しているよ、シルフィーヌ。僕には君だけだ」


「・・・・レオ、とても嬉しいわ。私も愛してます。だけどそれならば結婚式のときに頂くのが通常だと思うの・・・だから」


「分かって言ってるよね?シルフィーヌ。未来永劫、君を誰にも渡したくないから今なんだけど?それに君は今だってそんな濡れた髪でこの部屋まで来てる。どうして無防備に他の男にそんな姿を(さら)すんだい?」 


えっ?・・・・なに?髪濡れてるだけでダメなの?それ、怒ってたの?


「ごめんなさい、レオ。髪、綺麗にしますから」


「違うよ。君の髪はただでも綺麗なんだよ。なのにそんなふうに濡れた髪の君はもっと魅力的で男を誘うんだ。今の君を欲しくない男はいないよ」


「えっ?」


何言ってるんだ?


「分からない?分からないんだ、本当に君は・・・・」 


レオリオが俺をさらに抱き寄せ耳元で囁く。


「君は僕の物だ。誰にも渡さない。他の奴になんかやるものか」


レオリオが俺の耳朶(みみたぶ)にキスをして首に唇を這わせる。


「・・・・レオ・・・なに・・」


うわ、ダメだ・・・・やばいパターンだ、どうしよう・・・・


鎖骨を舐められ胸に顔を埋められる寸前にレオリオの胸を押した。

が、ビクともしない。


「レオ、お願い、止めて・・」


何だ・・・レオリオこんなに力あるのか?俺、けっこう力強い方だぞ・・・?


レオリオがソファに俺を押し倒す。

しかし、押し倒した俺の顔を見てレオリオがハッと我に返った。


俺は怖くて涙ぐんでいたのだ。


「すまない!シルフィーヌ、本当にすまない!」


レオリオが俺を抱き起こし自分の膝に横抱きにし俺の頭を胸に抱き締めた。


怖くて震え続ける俺の背中をレオリオは撫でて謝り続けた。


「もうしない。だから泣かないで?嫌いにならないで?シルフィーヌ。本当に、本当にすまない」

 

レオリオの胸でどうにか落ち着こうとする俺。


そう、別に嫌じゃなかったのだ、本当は・・・

でも怖かったのは本当だ。


このままレオリオを受け入れて捨てられる自分を想像したのだ・・・・やっぱり、無理だ、無理・・・


「・・・もう、もう、大丈夫よ・・・レオ・・」 


それでも必死で謝るレオリオがかわいそうで震えながら声を出した。


「でも、でもね、私・・・」


「もうしないから。結婚式挙げるまでは絶対しないから。だから、だからお願いだ。結婚して欲しい」


レオリオが俺を抱き締めて瞳を覗き込み懇願する。


ちょっと、それ、どうよ?・・・・・


襲っといて、泣かして、結婚しろって・・・・・・


どさくさに紛れてプロポーズ再開ってどうなのよ?


「レオ・・・あのね・・?ダメだから・・そんなの・・・」


「愛してるシルフィーヌ!君だけ。本当に君だけ。大事にするから!」


いや、今、襲ったし・・・


「お願いレオ、落ち着いて・・?今すぐは無理よ?本当に無理だから・・・・貴方が18歳になってからね?わかって下さい」


「君を失いたくないんだ!他の奴に君を奪われるなんて絶対、絶対に許せるものか!だから、シルフィーヌ、(うなず)いて?頷くだけでいいから・・・・!お願いだよ、シルフィーヌ!」


・・・・・・・・・・・・ダメだ、こいつ・・・・

・・・・何でそんなに必死なのかな?・・・・

・・もう、なんかね?頷かなかったら本当に監禁されそうだな・・・・・それ、困るしな・・・・・



俺は半ばあきらめぎみにゆっくりと頷いた。

多分、顔は真っ赤になってるとは思うが。


すると思いっきり抱き締められる。


「ありがとう!シルフィーヌ!嬉しいよ。本当に嬉しいよ!大切にする。本当に君を大切にするから!」


「・・・・・・・・・はい」


・・・・本当にしろよな?捨てるなよな?

って期待して泣き見るの俺、ほんと嫌なんだけどな・・・・・・


「本当に。約束する。このペンダントに誓って」


俺の首にはしっかりペンダントが掛かっていた。


こいつ、いつの間に・・・・・

 

「これで君は今日から僕の妻だ」


レオリオが俺の頭にキスを落とした。


あれ・・・?まさか今日から王宮暮らし!?











王子おあずけです!

読んで頂き感謝です!

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