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略奪の件

うっ、今日も長い・・・

そして・・・今日はシルフィーヌが・・・

「か、帰って来たわッ!!フリードッ!!お兄様ッ!!」


そう言って丘を駆け下りたのはサロメだ。

その方向に目を向けたカレブも馬に跨って先頭で道案内をするフリードを確認する。

その馬の後にはセルフィとミシュリーナとトマが続くが肝心のルカとシルフィーヌが見えない。


「カ、カレブ・・・!」

その事に気づいたサルトがこちらを見て口ごもる。

サルトに頷き返しながらもシルフィーヌとルカの安否を確認する為にカレブの身体はその場を既に駈け出していた。




「ミシュリーナ様、無事のお帰り安堵いたしました。しかし」

「ミシュリーナ様、我が(あるじ)、ルカ様、シルフィーヌお嬢様はどちらに!?」

馬から下りたミシュリーナを駆け付けたカレブとサルトが問い詰める。


「待って。サルト、カレブ。君達の気持ちはわかるけどミシュリーナが一番、今回の事で動揺してるんだ。私が代わりに答えるから」

ミシュリーナの前で手をかざしそんな二人を止めたのはトマだ。


「まず、シルフィーヌもルカも無事だ。それに怪我もしていない」


「カ、カレブ!!」

「ああ、サルト!・・・本当に・・・本当に良かった・・・しかしお二人のお姿が見えぬのですがトマ様?・・・ああ、遅れているのですね?」

トマのその言葉に二人は安堵して胸を撫で下ろすと皆が帰って来た方向を振り返り目を凝らす。

辺りはもう日が沈みかけて薄暗くなって来ているのだ。


「あの・・・あのね?カレブ・・・サルト・・・あの・・・」


そんな二人にミシュリーナは急いで声を掛けるが隣で同じようにセルフィに質問攻めのサロメの声にかき消される。


「お兄様!ハルクもアレンもいないわ!?オールウエイ国の皆もよ?全員、どこで寄り道をしているの?リョウ!リョウ!どこに隠れてるのよ!早く出てきなさいよ!」


声を張り上げながらカレブとサルトの横に並ぶと眼を必死で凝らすサロメに落ち着けと言わんばかりに後ろから手を引いたのはセルフィだ。


「サロメ、それにカレブ、サルトも。こっちに来てくれ。すまないがティッカ嬢、リードを先にベッドで休ませてやってくれないか?話はその後だ」

セルフィのその言葉に三人は振り返った。







「シルフィーヌはカルマ王国、ディーン王子にさらわれた」



「「「なっ!!」」」


ティッカの家のテーブルで夕食を前にしてそう言ったセルフィの言葉にサロメとサルト、カレブの驚きの声が上がった。


「だから、レオリオ王子とバルトが救出に向かった。もちろんハルク、ルカ、アレン、レクサスも。ああ、マークスとやらも一緒だ」


「カ、カルマ国だって?どうしてカルマがシルフィーヌ様を!?」

「ど、どういう事なんです!セルフィ様!どうしてカルマ国なんて!」

セルフィの言葉に頭を抱えたカレブとサルトが同時に声をあげた。


「ああ、話せば長いのだが?」

「私が話す。セルが話すと言葉尻が少々きつくなるからな」

フリードがそう口を挟むとその横に座るサロメがフリードの肩を押えて止める。

「ダメよ、フリード。まだ、折れた右手や傷を負った右胸にも違和感があるのでしょう?早く食べて横になりましょう?」

「大丈夫だ、サロメ。もうほとんど元の通りかわりない。本当にセルが大げさなだけなんだ」

「リード。僕が応急処置をしなければ本当に死んでたんだからな?」

「ああ。セルには感謝してるさ」

ジト目で抗議するセルフィの頭をそう言ってフリードが優しく撫でるとセルフィは大人しく目の前のスープにとりかかった。


「どう言う経緯(いきさつ)で私はこの傷を負ったのか?また死にかけだった私がどうして死なずに済んだのか?サロメもティッカ嬢も不思議に思っているだろう?サンタクラーク、それは何だったのか?それにどうしてカルマ国のディーン王子が出て来るのか?くわしく知りたいだろう?カレブもサルトも」


フリードのその言葉に四人は大きく頷いた。






「では、初めからカルマ国は聖地、サンタクラークで起こる『奇跡』の力が必要だった訳ですね?だから『奇跡』が起こるその日を予測して我々が向かった塩の採掘場でその時を待っていた。そこがサンタクラークだと知っていたから。いや・・・まさか、あの晩が半世紀に一度起こる奇跡の夜だとカルマのソロモン王は承知していたのか・・・?」

フリードの話を聞いてサルトが呟く。


「セルフィ様はカルマ国が既に塩湖で待っている事は予測しておりましたか?」


カレブが少しキツイ口調でセルフィに質問をする。

「ああ。エカテリーナ女王がサンタクラークに行くにはミシュリーナの髪飾りが必要だと言った。以前、カルマ国がシルフィーヌの国に来てまでミシュリーナの髪飾りを奪おうとしたからね」


「カルマ国、ディーン王子がシルフィーヌ様に執着していることも御存じで?」


「ああ。事の成り行きはハルクから聞かされていた」

「なら・・・!この事態も予測出来たはずではございませんか!」

向かいで大人しくスープを口に運ぶセルフィにカレブが立ち上がり叫ぶ。

「そうです!セルフィ様!」

カレブの隣のサルトまで立ち上がりセルフィを睨む。

その二人の剣幕に急いでミシュリーナが立ち上がり二人の腕を引く。


「落ち着いて。お願い、二人とも。セルフィ様は悪くないでしょう?カルマ国が待っている事がわかっていたとしてもシルフィーヌは絶対に行くと言ったわ?それを誰も止めることなんて出来なかったわ?」

「っ・・・しかし、こんな・・こんな事態になるのなら私が、私が死んでもシルフィーヌ様をお止めするのだった・・・!」

テーブルに着いた両手を握り締め、その手を睨みつけながらカレブが苦し気に声を絞り出す。

「いいえ、カレブ。シルフィーヌは全て予測していたわ。シルフィーヌを止めるなんて誰も出来ないのよ?ルカ様でもハルクでも止める事なんて出来なかった。そんな事、あなたが一番わかっている事でしょう?カレブ・・・それにセルフィ様が今ここにいるのは帝国軍としてシルフィーヌを救出する為に一度国に帰る為なのよ」

「え・・・?帝国軍がですか?」

サルトのその声にセルフィが反応する。


「ああ、そうだ。シルフィーヌは我が帝国軍第一部隊中将だからな?我が軍部の人間をさらってどうなるか。骨の髄までわからせてやる」

「我が国の大事な客人であるオールウエイ国、シルフィーヌ皇太子妃をさらったのだからな?カルマ国にはそれ相当の対価を支払って貰う。そうしなければカルロス皇帝がこの事態を許すわけがない。だから早急にハルクとアレンも動いているのだ」

そう、さらりと答えたセルフィとフリードにカレブとサルトが目をみはる。


「カレブ、サルト。シルフィーヌは帝国の威信にかけて必ず無事に奪い返す。安心しろ」

二人に向かいその言葉を掛けたセルフィはとても威厳に満ち溢れていた。

続いてミシュリーナも二人の掴んだ腕を思いっきり引っ張ると

「私も!早く帰ってエカテリーナ女王に許可を貰い、みんなと一緒にシルフィーヌの救出に向かう!」

「もちろん。僕も手を貸すよ?」

そんなミシュリーナの言葉にトマも声を上げた。


「サロメ、明日は早いぞ。それにしばらくは馬を飛ばす。覚悟しろ」

「承知しました。お兄様!シルフィーヌを助ける為なら私だって!」


その皆の言葉にカレブとサルトは大きく頷いた。







・・・・・・・・・・・ふぅん・・・・


・・・・・・・・・・ううーんっ・・・・?

????・・・・・ん?・・・・・・何か・・・ん、何か凄くよい香りなんだけど・・・?

甘い・・いちご?ううーん?っていや、イチゴミルク?ん、とにかく何か甘い匂いだな?ん?・・・・???


「ああ、目覚めたようだな?シルフィーヌ?いや、リョウ君かな?」


ん・・・?俺の声・・・、俺の声だな・・・俺の声・・・って俺の声!!


「ソロモン王?!」

「ピンポーン!!」


目の前には人差し指を立ててにこやかに笑う前世の俺がいた。

いや、正確にはもう少し大人になった俺バージョンのソロモン王だ。

このゲーム世界、『パウンダリー』のマスターコンピュータであるソロモンが俺が寝ているベットの横でそれもりっばな椅子で長い足を組んで俺を見つめていた。


「へぇ・・・?なんでソロモン・・・俺、やっぱり、()ぜちゃったの?」


ここ天国?

凄くスプリングの効いたベッドで何かすぐにでも飛び起きたいのに身体が言う事効かないや・・・


「大丈夫。シルフィーヌはしっかり生きてるからね?」


今度は右隣から声がするのでそちらを見上げると・・・

あ、やっぱり、ディーンだ。

こいつはベットの脇に立って俺を見下ろしている。


「お前も・・・生きてる?」


「ああ。サンタクラークでの事は上手く行ったからね?安心していいよ?僕のシルフィーヌ」

「お前・・・いや、亮が上手くやったからな?皆、無事だぞ」

そう言って俺の頭を撫でたのはヘイワーズだ。

ニッコリ笑うディーンの横に立っているから俺の頭を撫でるのは簡単だ・・・しかし




なんだ?これ?




「えっと・・・?ヘイワーズ?怪我してたんじゃぁ・・・?大丈夫なのか?」

「あ?ああ、心配してくれてたのか?ああ、お前が、亮が、半世紀に一度しか放出しないサンタクラークの奇跡の生命力を見事に俺に注ぎこんでくれたから命拾いしたさ。お前には礼を言うよ」

「何言ってるんだ。全ては僕のおかげだろうが?ヘイワーズ」


サンタクラークの奇跡の生命力・・・

それでケガが・・・

ケガ・・・あ!

「フリードは!」

俺はガバリと起き上がった。

「ああ、フリード君もサンタクラークのおかげで助かったよ。それより、まだ時を止めた結界の中から解き放ったところだからね?無理をしてはダメだよ。リョウ君」

「そうだぞ?まだ寝とけ」

ソロモン王のその言葉にヘイワーズが俺の肩を優しく掴むとベッドに押し返えされた。

「助かった?本当に?」

「ああ。皆、無事だ」


・・・ああ、良かったよ、フリード


って、

何でだ・・・?

どうして?

俺はこいつらと仲良く笑ってるんだ??


ここは?


レオリオは・・・?

どこ・・?

バルトも・・・いない?


俺はキョロキョロ周りを見回す。

「ああ、シルフィーヌ。安心して。君に危害は加えないから」


ディーンがそう俺に話しかける声が聞こえる。


ルカは?

一馬は?

アレンにレクサス、マークスは?

ミシュリーナ!紗理奈!どこ!?トマも!


・・・ってここ・・・どこ?


ここって、まさか?


俺・・・まさか・・・


「まさか、ここ、カルマ国とか・・・言う・・?」



「「「ピンポーン!」」」

三人が声を揃えて答えた。










という事でとうとうカルマ国に話が及んでしまった・・・(それもよくあるさらわれ話・・・)

すみません。サラッと、出来るだけサラッと終わらせたい・・・!

(本当に切に願うのは作者の私なのです!)


今日もお読みいただきありがとうございました!

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