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再びの発動の件

今日もよろしくお願いいたします!

フリードを抱えたセルフィが後ろに立っていた。

その後ろにはルカ、アレン、レクサスもいる。


「お兄様!」

「シルフィーヌ!」

両手を広げたルカの顔が破顔するのを見て俺も思わずうれしくてその胸に飛び込んだ。

 

「お前、本当に・・・シルフィーヌ、本当に良かった・・・」

「うん、うん、心配かけて・・・ごめんなさい。お兄様も無事で・・・」

そんな俺の頭を掴んで怒鳴ったのはアレンだ。

「無茶しやがって!このバカが!」

「アレン!うん!うん・・・ごめん」

「本当だよ、シルフィーヌ!奇跡的に上手く蘇生したから良かったけど、本当に奇跡的なんだからね!もう絶対にこんな無茶しないでよ!本当に!」

同じくアレンの横から聞こえてきたのはレクサスの声で俺は真剣な顔の二人に叱られた。

「うん、うん、レクサスもアレンも、もう、無茶はしないわ、うん」

俺がそう言うとレクサスは泣きそうな顔で笑い、アレンは頷きながら俺の頭を撫でまわした。


「セル、一時休戦だ。フリードの具合はどうだ?」

ハルクもセルフィが抱き上げているフリードの顔を覗き込む。

青い顔で苦し気に目をつむるフリードだが呼吸が安定しているのを見てハルクはホッとする。

「ああ。予断を許さない状況だからサッサとケリを着けたい。さっきの話だがリョウ君」

「あ、はい!セルフィ様」

俺は急いでルカから離れる。

「ミシュリーナも」

「はい。セルフィ様」

俺の横にミシュリーナも並ぶ。


セルフィはアレンの腕にフリードを任せると俺とミシュリーナの顔を見て頷き、さらにその瞳をソロモン王へと移し話を続ける。

ソロモン王もセルフィを注視している。


「結婚をすればその相手の子供を出産するのは女性の喜びだろう?だが、子を()す事は女性にとって命がけの一大イベントだよね?その母体の栄養と血肉を腹の中の子に与えてもう一人の分身をこの世に送り出すのだから当たり前だよね。特にこの『印』を持つ者の子供を授かる女性は、さらに生命力が強い『印』持ちを増殖させる媒体となるのだからその夫であるもとの個体から気力を与えてもらわなければ自分の生命はおろか、子供の命すら危ないんだ」


「なんだって?・・・ならば、アイリーンもそうなるのか?セル」

ハルクがセルフィの言葉に一早く反応する。


「ああ。そうだよ、ハルク。僕を産んでくれた母は未だに床に()せる事が多い。フリードの母親に関しては出産時に他界している。それ程の生気を(そそ)がなければ我々は生まれて来れないんだ。だから、リョウ君。君達が特別ではないんだよ。レオリオとシルフィーヌの『印』である、『ウロボロス』と『勾玉巴』の組み合わせが特に異常ではないんだ。むしろ、理想的だと言えるから〝番″とされる」


「理想的???何でです?」


俺の疑問に今度はソロモンが答える。


「そもそも『印』持ちの能力は基本、相手の生命力を奪えるのだよ。だから、戦闘時は普通の人より生命力が高い『印』持ちが勝つのよ?だが、『印』持ち同士ではこれが奪い合いとなる。だから先に尽きた方が死ぬ」

「なッ・・・男女間の問題だけではないのか!?」

「ああ、違うな。ハルク。お前も私も普通の人とは比べものにならない程の生命力を保持している。つまり寿命が長いのだ。それが我々『印』持ち達の特長よ。特にこの『ウロボロス』はな?『印』持ちの中でも桁違いの寿命を持つのだ。この意味が解るか?オリジナルリョウ?」


「まさか・・・!それなら逆の『勾玉巴』は相手の寿命を奪わなければ、生命力を補給しなければ生き永らえない?」


「ピンポーン!正解だ。さすが、オリジナル。『印』持ちの中でも一番の出来損ないは君って事だよ?リョウ君」

ソロモンがニヤニヤしながら俺を指さす。


「ふ・ぇッ・・!」

俺はシンバルを思いっきり鳴らされたような衝撃を受けその場に頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

またもやなんて酷い現実なんだ・・・!!


そんな俺をミシュリーナが後ろから宥めるように抱き抱えるとソロモンをキッと睨み上げる。


「意地悪ね!ソロモン!理想の〝番”だとセルフィ様は言ったじゃないの!それってつまり、二人の『印』同士が中和出来るから普通の人と同じ寿命で人生を全うするからでしょう?ならそれが普通でなおかつ、互いが必要だって事でセルフィ様の言う通りじゃない!アイシス様とアーサー王に5人も子供がいるのがその証拠じゃない!逆に永遠にこの世を生きなければならない貴方にとってこの二人の関係は、特にシルフィーヌの『勾玉巴』は手に入れたい存在じゃなくて?マスターソロモン。だから、自分の寿命を分かち合えるアイシス様に側にいて欲しかったのよね?あなたは!」


「・・・え・・・?まさか、兄様?そうなのですか?」


(って!アイシス様!また、勝手に俺の身体!・・・まあ・・・いいか・・・すんげぇ、俺、どうしていいかわかんないで泣きそうだから今・・・ぐすん)


「違う!断じて違うぞ!アイシス!おのれ、小娘!いい加減な事を言うな!」


「では、いい加減ではない事を。アイシス様?今はアイシス様ですよね?」

ミシュリーナが腕の中のシルフィーヌにそう言って、立たす。


「ああ、そうよ。サリナ。またリョウは嘆いて隠れたわ。情けないのう?・・・して、なんじゃ?」


「貴女様もさぞかし悩まれた事でしょう?ダグラス王とカルマ族狩人としての貴女様の在り方に」


「なんと!その事か・・・そうだな?確かに苦しんだな・・・」

少し目を伏せるシルフィーヌの顔を見上げて紗理奈は続ける。

「確かに、確かに、ダグラス王が生前行った数々の殺生を『カルマの法』で一個人の人対人(・・・)として裁くなら極刑に値する行いとなるでしょう。しかし、ダグラス王が行った事を個人の利益としてとらえるのではなく、総体的な人の未来に繋がる世造りの基礎に必要であった下準備だと言えばどうでしょう?」


「未来に繋がる世造りにだと・・・?」


「そう、それは新しい国を創る為の必要悪(・・・)だと」


「必要悪・・・?」


「ええ。ダグラス王が潰した数々の国はその後、このダグラス王の弟のセフィード王がダグラス帝国として統一しました。半世紀以上の時を経た現在、ダグラス帝国は軍事力、治安、文明に優れた、いわばこの世界の中枢を担う大国として成長してきました。それは言いかえればその時に潰された国々の民の子孫達が帝国で繁栄し、貢献したから今の帝国があるのだと言えませんか?そう、ダグラス王はこの大陸を弟王に統治させるための(いしずえ)として自ら汚れ役を買ったのではないのでしょうか?身勝手な振る舞いで能力を持たない民達の上に神のようにふんぞり返り、君臨しては私欲を肥やすだけの『印』持ち達を排除し、誰もが安心して暮らせる国作りの為に自らの手で狩る〝神狩り”を強行した。その有無言わせぬ強烈な恐怖(・・)を持ってでしかこの大陸を統一する事は不可能だったのではないのでしょうか?その証拠に弟王は帝国を築いた時、その名をダグラスとした。兄王の偉業を忘れないためにその名を残したのです。新しき善きものを創造して行くには古き無用なものは破壊され淘汰されるでしょう?このことが何時の世にも繰り返し行われるから選り洗練された未来へと進んでいくのです。それが世の(ことわり)ではないのですか?」


「・・・だが、サリナ、その事を『因果応報』を掲げるこの私が認めることは出来ぬ」


「ええ。そうでしょう?〝正義の英雄(ヒーロー)”であるアイシス様が認めてしまえば正義とは何か?と誰にも問う事は出来なくなる。だからソロモン王は法が及ばない別空間へとアイシス様とダグラス王を逃した。長い年月をかけ、ダグラス王が行った行為が実を結ぶのを待ったのです。その悪行が帳消しとなる日、帝国がこの世界の治安国家として君臨する偉業が達せられる日をです。セルフィ様はそのセフィード王の末裔、ダグラス帝国の皇子です。ダグラス王のその想いは今もセルフィ様の中に受け継がれているのです」


「ああ。だから僕とカルロス皇帝はオールウエイ国が生み出したダイナマイトが今後、世界の脅威になり得るだろうと鑑みてその影を落とさせないように救助(セーブ)する意味合いで全てのダイナマイトを帝国が管理する事を提案したのだ」


「我がカルマもそうよ。ダイナマイトはこの世界には不要の産物なのでな」


セルフィのその言葉にソロモン王もそう答え、笑いながら言葉を続ける。


「しかし・・・フフッ、ものは言いようよ、なあ?ダグラス。だがな・・・結果、そうなったのだからそうとしようではないか?なあ?アイシスも」


「・・・確かに・・・その瑠璃色の瞳はダグラスと同じ。懐かしい・・・我が息子と良く似ておる」


今はアイシスであるシルフィーヌがセルフィを見つめ涙声でそう言うと黙って聞いていたダグラス王であるレオリオの瞳からも一筋、涙が流れる。





「では、次にソロモン王」

ミシュリーナが今度はソロモンを見上げる。

「まさに期は熟したのよね?だから貴方はこの時代にその姿で再び生まれ出た。それもオールウエイ国を帝国のあるこの空間へと結びつけてね?」


「フフッ・・・一体、お前は何者なのだ?サリナとやら?」

咎める口調ではなく、感心したような、おどけたような感じでミシュリーナを見つめるソロモン王に、ビシッと指をさすと紗理奈は吼えた。


「否定しないのね?マスターソロモン!ここまでは私も貴方に賛同する。だけどもね?これからのアイシス様とダグラス王、シルフィーヌとレオリオの事については認めないわよ!『器』としてなど、決して!二人は譲らないわ!」


「この時を、長い年月を掛け、この瞬間を待った余が『器』を逃すわけないであろう?」


「亮!亮!出て来て!貴方が守るの!貴方がレオリオを守るのよ!手遅れにならないように!さあッ!」

シルフィーヌの手を掴み紗理奈が揺さぶる。


「では、始めるようか?ダグラス、アイシス、覚悟を」

ソロモン王はそう叫ぶと足下を蹴り唱え始める。


「我が命ずる。今こそ出でよ、そして叶えよ」




(リョウ!早く出ろ!そして、さらばだ)


(え!ってアイシ)

「ス様、さらば!って、え!ええっ!紗理奈!」


「亮、始まるわ!一馬!戦闘開始よ!」



ミシュリーナを見下ろした俺の目にはまた、オレンジ色の光が急激にせり上がって来るのが見えた。












気が付けば読んで下さっている方々が増えている!

とても嬉しいです!

ありがとうございます!

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