『印』の宿命の件
今日はアイシスとダグラスの過去語り回です。
(相変わらずくどくて長くて、すみませんです・・・)
軽く読み流して頂ければありがたいです。
今日もよろしくお願いします!
・・・えっと・・・?
どういう経緯でシルフィーヌが別れを告げるんだ?
確かに婚約破棄するのは攻略対象者のこの俺がする立場だけどレオリオはヒロインだよね?
悪役令嬢じゃないからシルフィーヌが断罪するはずがないよね?
じゃあ???
「何を呑気に話している。さっさと事を済ませるぞ」
痺れを切らしたソロモン王がアイシスとアーサーの会話に入って来る。
「いいえ、兄様。私達はこれからの子孫の行く末の話をしているのですわ。これが終わるまでは一時休戦ですわ」
「レオリオとシルフィーヌの話ならもう必要ないだろう?そなた達がやり直せばよい事」
え?
ちょっと待ってよ・・・?
只でさえ今軽いショックを受けて頭、整理してるのに何で『そなた達がやり直せ』なんだよ?
なんでアイシスとアーサーに言ってるんだよ?
「どう言う事だ。今の話、どう言うことなんだ?」
あ、兄貴。
痺れを切らしたハルクも3人の会話に入って来る。
そうだよ?兄貴の質問通りどう言う事なんだよ?
「一時休戦は認めよう。だから話してもらおうか?全て」
俺ことシルフィーヌの背後にまわり両肩に手を乗せた一馬のハルクがソロモン王と対峙する。
「勝手に決めるな。僕のする事にお前の許可は要らない。誰の許可も得る必要はないわ!」
「兄様!休戦です!休戦!私が今決めましたから」
「アイシス、僕に逆らうな。アーサー、黙らせろ。お前も待っていたのだろう?この時を」
今度はソロモン王がゆっくりとレオリオの背後にまわるとハルクと睨み合う。
「ソロモン・・・アイシスが望む事がこの私の望みでもある」
そんなソロモンに振り帰りもせずレオリオの中にいるアーサー王が目の前の、今はアイシスが身体の主導権を握っているシルフィーヌを見つめて頷く。
その頷きに無言でアイシスであるシルフィーヌもしっかりと頷いた。
「何を?・・・お前はアイシスを奪われてもいいのか?この僕に」
レオリオより頭一つ分背の高い前世の俺の顔をしたソロモンがレオリオの両肩をガッチリ掴んで威圧をかける。
「だから!だからだ。だからアイシスを共に連れて逝くのだ」
「許さんな?逝きたければ一人で消滅すればよい」
「兄様!」
「このようなこと、お前達と話していても埒があかない。さあ、始めるぞ!」
「待ちなさいよ!ソロモン!!」
ソロモン王の背後からミシュリーナの声がする。
そちらに目を向けるとバルトを抱えたトマとマークス、ダモイが歩いて来るのが見えた。
あッ!バルトッ!
(アイシス様!代わって!一瞬でいいから代わって!お願い!)
(これッ!まだ話の途中だ、リョウ!だが・・・まあ、仕方ないの・・・)
「バルトッ!!」
体の主導権を取り戻した俺は思わずバルトに向かい走り出していた。
「亮ッ!」
「「アイシスッ!!」」
兄貴にソロモン、レオリオの声が呼び止めるが俺はお構いなしでバルトを目指し走る。
なんか皆、俺のなじみの声だからかあまり怖さが感じられなくなっていたせいもあるけど・・・なんか、そう、なんか・・・
ってか、とにかく!バルトが心配なんだよぉ!今の俺は!
「バルトッ!バルト!紗理奈、バルトはッ!」
俺はトマが抱き上げてるバルトに駆け寄ると顔を覗き込む。
随分疲れた顔で目をつむっているが顔色は悪くなく息もしている・・・
「亮、大丈夫よ?疲れて眠ってるだけだから・・・それより!」
そう言って俺の腰に抱きついたミシュリーナの紗理奈を俺も思わず抱き締めた。
「大丈夫だよ?亮君。バルトは寝っているだけだから」
そんな俺達を見てトマも笑顔だ。
「お嬢!お嬢!無事で!!良かった、本当に、本当に!お嬢二人が無事であっしは、あっしは・・・ウウッ!!」
「わぁ!」
「シルフィーヌ様!シルフィーヌ様!本当に!本当に!よくご無事でお戻りに!」
急に俺の腕を掴んで号泣し出したのはダモイだ。
それに足下にはマークスが涙声でひれ伏したからびっくりした。でも・・・
「うん。うん!ダモイもマークスも・・・みんな無事で。うん。うん。良かったよ。みんな」
「亮!亮!もう、もう、私、私!」
「紗理奈、うん。無事で良かった・・・トマ、ありがとう。ミシュリーナ守ってくれて」
「うん?お礼はまだだよね?」
「ああ、まだこれからよ。サリナとやら?話を聞こうか?ソロモンとな?」
(あ、アイシス様!また勝手に!)
(ああ、ついな?返すぞ、リョウ)
「え?亮?」
急に口調が変わった俺の顔を見上げ紗理奈が目をぱちくりさせる。
「あ、紗理奈。今のは俺の中にいるアイシス様」
「え・・・アイシス様?・・・いるの?今、亮の中にアイシス様が・・・?」
「さよう。オールウエイ国王妃、アイシス・ロト・オールウエイである。ああ、初代のな」
(だからッ!アイシス様って!って、ロト・オールウエイ??)
「アイシス・・・ロト・・・?オールウエイ??」
紗理奈も繰り返す。
ロトって!?
いやいやいや、ロトは無かったよ?歴史書で見た時も、王妃教育で教わった初代王妃の名前もアイシス・オールウエイだったはず???
「ロト・・・?ロトって、まさか伝説の勇者様の事ですか!?」
今度は紗理奈の口があんぐりと開いている。
「いかにも。と言いたいがな?ロト・カルマは我が先祖よ。私は髪が黒く瞳も茶色だったのだがな?性格とその狩りの腕前がロトの生まれ変わりだと言われてな?アイシス・ロト・カルマの名を頂いていた」
「ああ、アイシスはロトの生まれ変わりだ。もう一つ言えばバルトもこやつのライバルであった男の生まれ変わりよ」
振り向くとゆっくりと歩いて来たソロモンがアイシスの言葉を続ける。
その後ろをレオリオとハルクもついて来ている。
へ?何だって?
「まさか・・・バルティスとか言う?もう、訳、わかんないよ?ソロモン」
(俺も紗理奈と同じで全くわかんないんですけど?アイシス様)
「また懲りずに邪魔をしに来たな?この戯け。しかしな、お前の機転でアイシスの魂が解き放たれ、結果、隕石をこのアイシスが易々とサンタクラークの『源』へと送ったわ・・・。ああ、ハルクもだな?・・・そうだな?ならばその行いに対し教えてやらねばなるまい?小娘、それにハルク、聞くがよい」
そのソロモンの言葉にシルフィーヌのアイシスが頷くと話し始めた。
「我がカルマの王、ソロモンは『カルマの法』を重んじるいわばこの世界の規律」
「だから支配者ソロモン?と呼ばれるの?」
「いかにも、サリナとやら。そして、規律を乱すものを狩るのもカルマ族」
「伝説のロト様も?本当に悪人を退治していたから正義の勇者様って事ですか?ならアイシス様も?」
「悪人や正義と言うのはその人によって定義が違う。だから私達は因果応報の法に則って判断する。この世界の規律を乱した者には罰としてその者の余生を狩り、逆に規律を守った者には褒美として栄華を与える。カルマ族はどの地にもどの国にも留まらず、しかし、どの国にも迎え入れられた、いわば『神の化身』と言われた一族よ。その国にその対象となる者がいればそれが例え神であっても狩るのが我がカルマの者の宿命よ」
「たとえ、『印』があっても規律を乱せば狩るのですね?では伝説でロトがバルティスを罰したようにアイシス様はダ・・・いえ、」
「ああ、かまわぬよ、サリナ。そうだ。私はダグラス王を狩り損ねたのだ。ロトがバルティスを愛したようにこのダグラスであるアーサーを愛し、アーサーと一緒に兄を、カルマの王である兄を裏切り逃げたのよ。二人で違う時空の世界へとな?」
違う時空の世界・・・?つまりまったく異なる世界・・・?
「ダグラス帝国があった世界とは全く違う時空軸にオールウエイ国は存在していたと言う事ですか?」
「ああ、そうよ。そこに逃げねば、そうせねば兄は私達を罰せねばならない。兄の法から、カルマから逃れるには聖地サンタフォールの力を今回のように借り、次元の間を跳んだのよ。だがな・・・それもこの兄の一計、つまりは兄の知る所。そう、わざと行かせたのよ、この私の為に」
「ちょ、ちょっと待って下さい、アイシス様。凄い話で頭、凄く理解に苦しんでますけどアーサー王はその世界を捨て、新しい世界でアイシス様を手に入れ二人仲睦まじく国を、オールウエイ国を建国したんですよね?・・・なら、今揉めている事態って???」
(そうだよ?紗理奈の言う通り結婚したのなら、何で婚約破棄が出て来るんだよ?アイシス様)
「サリナ、リョウとハルクがソロモンに尋ねたのはアーサーと私が添い遂げたはずなのになぜ婚約破棄した経緯があるのかを聞いておるのよ」
「えッ!!婚約破棄?!」
「ああ。言っていいですわね?あなた」
シルフィーヌがレオリオを振り返る。
「ああ」
レオリオの中にいるアーサーが少し罰が悪そうに視線を逸らした。
「私はもうすぐ15歳という時に偶然、アーサーと出会ったのだ。その時すでに次のターゲットは多くの国の王達の命を奪いその国々を破壊してきたダグラス王と決まっていたのだが、この者は本名を名乗らず、アーサーと偽り素性すら私に隠したまま近づいて来たのだ。そう、私はまだダグラス王の容姿を確認してはいなかったのだ。その頃、私の側には異性でありながらも小さな頃からライバルで親友でもあったバルトに生まれ変わった者のことなのだが、その者と常に行動を共にしていたのだ。その者は私にとって兄のソロモンと同じで大事な家族のような存在だった。だがアーサーが現れるといきなり私に結婚を迫ったのだ。その様子を見たアーサーは私の元に来ると私の気持ちも聞かずにいきなり自分の元に奪い去ったのよ」
「うわぁお!ハーレクイーンロマン〇!」
うおぅ!俺もそう思うよ、紗理奈!白馬の王子様だよ!
「そしてこの者は、アーサーは、私がカルマ一族のロトだと、自分に唯一罰を与える事が出来る者だと初めから知りながら求婚をしたのだ」
「え・・・?『罰を与える事が出来る者』・・・?」
ミシュリーナの紗理奈が首を傾げる。
どう言う事だ・・・?
「私の『印』はアーサーの『印』を唯一、この世から断ち切るモノ。限がなく、無限にループするこの者の『ウロボロス』の繰り返しを受け止め、中和させることが出来るのは私の『印』、『勾玉巴』のみ」
「中和・・・?」
ハルクが呟く。
「そう。アーサーの体内に永遠に循環し続ける莫大な〝気″を勾玉巴の〝隠と陽の気″の流れに逆に取り込み相殺させる、つまり消滅させる事」
お互いの気の相殺による中和だって?それは消滅だって?・・・?つまり、それって・・・
「気の消滅?・・・消滅って、まさか・・・〝死″の事ですか・・・?アイシス様?」
紗理奈が震える声で聞き返した。
「ああ。そうだ。私と結ばれる事はアーサーの生気を私が搾り取ってしまう事」
「だったら、だったら!」
紗理奈が俺の、シルフィーヌの顔を見上げるその瞳が大きく見開く。
「ああ。だから、私はこの者と、アーサーとの婚約を破棄したのよ」
長文読了、お疲れ様でした!
ありがとうございました!




