そして夫婦喧嘩勃発の件
ひゃあー!遅くなりました!
今日もよろしくお願いします!
足下に異変を感じた一馬がソロモン王の腕にしっかり抱き込まれているシルフィーヌの俺に手を伸ばす。
「返せ、ソロモンッ!亮を返せッ!」
しかし、ソロモン王の足下から夜空に向かい閃光が放たれる。
ま、眩しッ!いよいよか?!いよいよなのかッ!?
その閃光は円を描き湖面一面に一瞬で広がった。
湖面にいる皆の目にもその光が容赦なく飛び込み、ハルクも目を塞がずにはいられない。
「くッ!、亮ッ・・・亮!」
兄貴ッ?!どこ!?レオは!?バルトは!?ルカは!!皆はどこなんだよ!!
早く逃げないと、早く皆を逃がさないと!
(アイシス様!止めさせてくれッ!ソロモンを、もう一人の俺を止めてくれ!!)
「兄様、お許しを!」
シルフィーヌの体の主導権を握っているアイシスがそう叫び、ソロモン王の胸を突き飛ばす。
「アイシスッ!?」
そして銀色に光り輝く湖面に飛び降りると湖面に溜った水中に右手を突っ込み叫ぶ。
「我の命が先よ!沈まれ!!今しばし、そこに留まれ!」
だが、そのアイシスと俺の目の前には輝いた湖面の奥底から地響きを轟かせ、オレンジ色の巨大な火の球がせり上がって来るのが見える。
それも凄い勢いでだ。
ッそそそおうゥゥゥゥッ!!
「留まれ!!留まれッ!!留まれぇーい!!」
(留まれ!!留まれッ!!留まれって言ってるだろうがッ!!)
死んでたまるかッ!皆を死なせてたまるかよッ!!
アイシスと俺は必死で叫ぶ。
しかしブーツ越しで感じる足下の雨水がだんだん熱くなってきた。
もう、目の前一杯に膨れて近づいた火球が太陽のように見える。
熱い、熱い、熱い!!
手をつけた地面が熱い!手をつけた水も茹って来た。
「ええーいぃッ!!留まらぬかッ!!」
それでもアイシスは火球を睨みつけ、シルフィーヌの声で怒鳴る。
するとふいにシルフィーヌの体が包み込まれるように背後からグッと抱き込まれる。
お湯の中で赤く染まっているシルフィーヌの手にも大きな手が重ねられる。
そしてシルフィーヌの左手が持ち上げられるとその背後の人の頭に触れさせられた。
体の主導権がアイシスから俺に変わる。
一瞬で共鳴が始まった。
レ、レオッ!?
ああ、シルフィーヌ!
「君と共に」
そう背後から耳元に囁かれたのは間違いなく俺の声、レオリオの声だ。
ええ、ええ、
「貴方と共に」
俺の身体にレオリオの気持ちが雪崩れ込むのと同時にそれは俺の眉間に凄い勢いで集中する。
「なッ、お前達にその様な力が・・・」
ソロモン王が驚きの声を上げる。
足下に屈むシルフィーヌの眉間から蔦のような金糸の光が次々と放出されると二人の身体に纏わりついていく。
そしてその金糸の黄金の輝きが二人を包むと
「「消えろッ!!」」
シルフィーヌとレオリオの大声が響き渡る。
「戻れ!!『源』へと!!」
しかし、同時にソロモン王もそう怒鳴っていた。
すると地響きがピタリと止まった。
湖面の隕石も一瞬で消えた。
まるでテレビの画面を切り変えたように熱湯となった水溜まりを残し湖面は嘘のように静まり返った。
「ふぅ、間に合った・・・危ない危ない、消されるところだったわ」
頭上から聞こえるソロモンの声がそう言った。
なっ!!隕石、隕石、どこに行ったんだョッ!!
・・・元の場所に戻ったようだね?シルフィーヌ・・・
え?元の場所?元の場所って?レオ?
ああ、元の場所・・・・・・・
「遅いぞ、アーサー」
またソロモン王の声だ。
「遅い。あなた」
シルフィーヌの声。
ん?
シルフィーヌの声?
ああッ!また、アイシス様!!俺の身体、勝手に乗っ取らないでよッ!!
って、『あなた』だって!?
それにアーサーだって?
「ああ、すまない。アイシス」
えっ?レオ?
何言ってるの?
「許しません」
アイシス様?
それ、レオなんだけど?顔、見てよ、アイシス様?
レオも返事してよ!なんで黙ってるの!レオリオ!!
「すまない、アイシス。遅れてしまった」
一層強く後ろから抱き込まれる。
その力の強さにレオリオの顔が見えない俺は焦る。
共鳴しているはずのレオリオが答えてくれないし俺をアイシスと呼ぶからだ。
不安になった俺はアイシス様から身体の主導権を取り戻そうとするのだが、一向にアイシス様は譲ってくれない。
アイシス様!アイシス様!お願い。せめて振り返ってよ?顔、見て!レオリオの顔!見てよ!お願いだ!
しかしそんな俺の言葉が聞こえていないかのように二人の会話は交わされる。
「遅い!遅い!遅い!」
足下を見つめたままでアイシスのシルフィーヌはイヤイヤと首を振るようにそう、言葉をぶつける。
「ああ、ああ、ああ!本当に、本当に・・・アイシスを随分と待たせてしまった・・・随分と。すまなかった。許して欲しい、アイシス」
「私を、私を本当にアイシスとわかっているのですか?あなたは?」
「もちろん!もちろんだとも」
「嘘、おっしゃい!」
「アイシス?」
するとシルフィーヌは後ろから抱き締めているレオリオの身体を振り払って立ち上がる。
「アイシス・・・?」
(アイシス様!アイシス様!お願い!振り返ってよ!顔、見て!顔!レオリオの顔!お願いだ!)
(見たければ勝手に見ればよいわ・・・裏切り者の顔など私は見たくもないわ!)
「え゛・・・」
いきなり体の主導権がまた俺に代わる。
あ、ヒリヒリする・・・右手、右手、真っ赤じゃん!火傷してる・・・痛いよ。
俺はその痛みに左手を添えて冷やす。
「アイシス、大丈夫か?」
いきなり後ろからその手をひかれハンカチを巻かれる。
その行為に驚いて顔を上げると目の前には手を介抱するレオリオの真剣な顔があった。
「あ、レオだ・・・」
俺の口からは間抜けなシルフィーヌの声が響く。
手当の終わった手をそっと握り直し、レオリオがシルフィーヌの顔をまじまじと覗き込むと口を開いた。
「・・そなたはシルフィーヌだな?余のアイシスを呼んでくれぬか?」
「・・・あなたは・・・アーサー王?」
「いかにも」
「いかにもって、それ、レオリオの体なんですけど?レオリオ、呼んでくれますか?」
「今は余の心の片隅で眠っておるわ」
眠ってる?眠ってるって・・・?
「ああ。随分『ウロボロス』を使ったからな?かなりの体力の消耗よ」
俺はその言葉を理解した。もちろん、そうだろうと思う。
だが、俺はレオリオの手を払うと身体を離しグッと目の前のアーサー王を睨みつける。
やっぱり気持ちが納得しない。話さなきゃな?
「起してくれませんか?シルフィーヌの俺が話をしたいんです」
「余の話が先だ。アイシスを先に」
「俺が先です」
「余が先だ」
「俺です」
「余だ」
「俺です。俺」
「ええいッ!アイシス!出て来ぬか!」
「いいかげんにしろよ!俺はシルフィーヌなの!!お前のアイシスじゃないからな!この身体もシルフィーヌの俺のなんだから!だいたい、あんたがさぁ?この俺とアイシス間違えるのが悪いんだろッ!だからアイシス様、拗ねてんの!」
(これ!リョウ)
「間違えた?この余がそなたとアイシスを間違えるだと?生娘のそなたと?その様な事、決して」
「ないって言い切れんのかよ?あんた。シルフィーヌの俺に誓ったじゃないか?『永遠に僕は君のものだ』って。あれ、このシルフィーヌにアーサー王のあんたが誓ったんだよね?」
「違う。あれはこの者だ。我が子孫のレオリオが申した事よ」
「そのレオリオが俺に言った事だけどな?シルフィーヌとレオリオが会ってる時あんたはレオリオ自信と同化してるって。それってあんたもレオリオと同じ意見って事だろう?なら、あんたもシルフィーヌがアイシスの生まれ変わりだと信じてるからそうレオリオに言わせたのだろう?」
「レオリオがシルフィーヌのそなたに会ってる時、余は関与しないようにしていた」
(・・・関与していない?)
「プライベートな時間はいくら同じ身体にいてもそこは控えていたって事?」
「ああ。余の子孫とはいえ、そこは違う人格。傍観していた・・・ただ・・・」
「傍観って、見てんじゃん!?それにただって?」
「ああ、只な・・・?」
なに下向いてんだよ!反省してるつもりかよ!レオリオの顔でそんな顔するなよ!
ちょっと、俺も攻撃の手が緩むだろ・・・!って、
「只、だから何なのですの!」
(うおぅ!アイシス様!急に代わらないで下さい!まだ話の途中!)
「ああ。こやつ・・・レオリオは我に似てな・・・肝心なところで意気地がない・・・そなたを、シルフィーヌを他の者に取られたらどうしようとずっと怯えておるのに肝心なところはそなたに言い負かされる弱虫よ」
「それは・・・弱虫ではございませんでしょう?このシルフィーヌの事を大事に思っての事ですわ」
「いいや。それでは後悔する事となる。手遅れとなる。なぜならこやつは選ばれる側だからな?」
(ん・・・?ああ、やっぱり、誓わなければならないのはシルフィーヌの俺なのか?やっぱりヒロインはレオリオなんだな)
「ああ、確かにそうでしたわね?15歳までのシルフィーヌを捕まえないと」
「ああ、そうよ。15歳までのシルフィーヌを余のアイシスのように捕まえないと」
「「シルフィーヌが婚約破棄をする」」
シルフィーヌの声とレオリオの声のアイシス様とアーサー王が二人同時にハモった。
・・・・・・
・・・・・・・ハァ!?
今、婚約破棄って言ったか?
それも、俺がってか?
シルフィーヌの俺がするんだってかッ!?
ちょっと不幸ごとがありまして亮や一馬ががなかなかしゃべってくれませんでした・・・
ちゃんと話が繋がってるかな?(不安だ・・・)
今日もこんな話ですがお読みいただきありがとうございました!




