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ルカの嫁入りの件

ちょっとキツそうだが綺麗な紫アメジストの瞳にバラ色の唇、蜂蜜色の癖のある髪がふわふわでとても可愛らしい。

この少々尖り気味な耳は見たことがある。

セイラと呼ばれた幼女は俺とルカを交互に見上げるとニッコリ笑った。


「まあ、なんてお可愛らしい!」

俺はその場に(かが)みこみ顔を覗き込んだ。


「ごきげんよう!勇者様!」


えっ!?なんと!?


「ごきげんよう。セイラ様?」


すると今度はルカを見上げ、


「ごきげんよう!大勇者様!」


と笑いかける。ルカも屈みこみ、


「はじめまして、セイラ姫」

とニッコリ笑った。


セイラは嬉しいらしくお尻に透明なしっぽが生えてきそうな勢いでまた「キャウ!」と言った。


王妃様がこちらに歩みよって来た。


「私の祖国ラルバ公国第一公女のセイラです。先日のグランドマッスルの貴方達の試合を見てからあなた達のファンなのです」


ああ、なるほど。そう言うこと。

俺が勇者なら魔王に勝ったルカは大勇者ってことか。

あ、以前レオリオが言ってた許嫁候補のいとこだよね?

だから耳似てるんだ。なるほどなるほど。



「大勇者様!勇者様はレオリオと結婚するので大勇者様がセイラと結婚ね!」


ルカに抱きついてセイラが言った。

その言葉にルカは目をちょっと見開く。しかしセイラを見るとニッコリ笑いかけ、


「それはとても光栄でございます、セイラ姫。しかし、私めはまだまだ、勇者に変わりこの世界の悪者を倒さなければなりません。あと何十年いや、何百年かかるかもしれません」


「セイラ待ってるから大丈夫だよ?」


ルカの首に巻き付きセイラが嬉しそうに答える。



お、面白いぞ!セイラ!


俺は吹き出しそうだ。


「それではセイラ姫がヨボヨボのおばあちゃんになってしまいます。さすがにそれはこの大勇者、心が痛みます。どうかご勘弁を」


ルカは抱き着いたセイラをそっと身体から離し、片膝を着いたまま自分の胸の前に握り拳を掲げ、左拳を床に着ける謝罪のポーズを取りセイラにそう言い切った。


「大勇者様待ってたらセイラ、ヨボヨボ?心痛くなる?」


「かわいいセイラ姫をおばあちゃんになるまで放っておかなければならないこの大勇者の心が痛くなるのです」


ルカはセイラを見つめ真面目に答えた。


「・・・・・・・待ってちゃダメなの?」


「はい。どうかお許しを」


ニッコリとルカが笑いかけた。


「・・・・・・・どうすればいいか考える」


セイラは両手を握りしめその場に踏ん張り唇を尖らせる。


おっと、粘った。ほほう?なかなか、どうしてどうして。


しかし俺もルカをラルバ公国に嫁がせる訳にはいかないので援護射撃開始。


「セイラ姫、大勇者様は次の戦いに備えてまだまだこのロトと練習練習の毎日でございます。よろしければ大勇者様とロトの練習をご覧になりませんか?」


「えっ!見る!見たい!見たい!」


ルカと俺の服の袖を掴みセイラがキャウキャウ叫ぶ。

透明なしっぽがブンブン回ってるぞ!セイラ。


「わ、(わたくし)も」


王妃が頬を染めて小さく右手を上げていた。

その背後で玉座の陛下も手を振っていた。




その日の午後、王宮の近衛兵専用の屋外練習グランドでムチを両手に向き合う俺とルカの姿を王宮内の多くの者が所狭しと詰め掛け見ていた。

上座には両陛下、セイラとお忍びで来ていたセイラの母親のラルバ公国公妃、その横にレオリオも腰かけている。その左右の席にはこの国の大臣ら要人が顔を連ねている。


あ、あの人、バルトに似ている!シュナイダー伯爵?

あ、やっぱり、あの家紋間違いないわ。

あ、近衛隊長だし間違いないな。


しっかし、暇か?暇なのか?王宮の人達って?何でたかだか練習試合見に来てるの?なんかイベントと化してるんですけど?


「負けないでーっ!私の勇者様!勝ってーっ!私の大勇者様!」


セイラが透明なしっぽを回しキャウキャウ叫んでいる。

セイラそれは難しいぞ。

それにその呼び方はやめよう、シュナイダー伯爵が見てるからな。


急な話だったのでルカはお父様の着衣を借り俺もレオリオの物を借りているがムチはいつでもお互い携帯なので愛着の物だ。

白のワイシャツに濃紺色の革のベスト、茶色のツータックパンツに黒の膝までブーツのルカはビシッときまっていてすごくカッコいい!!俺は黒の七分袖のハイネックに白色革ベスト、白地に金の刺繡が入った腰巻にぴったりの黒タイツ、足首までの黒ブーツ。頭はレオリオのリボンをもらって長い金髪(ブロンド)を三つ編みだ。背が高いから似合うかもな。


一緒に来たカレブがいつものように審判だ。あくまで練習試合。ひさびさの俺はちょっと緊張。

肩はもう大丈夫アピールの為にムチを唸らせウォーミングアップだ。

その度になぜかどよめき。ギャラリー本当多いわ!


「双方、構え。一本勝負・・・・はじめっ!!」


カレブが右手を振り上げると同時に俺はルカに向かって走り出す。

右手からアンダースロー送球スタイルでムチを繰り出す。ルカもムチを素早く振り下ろし軽々と撥ね退ける。すかさず俺は身体を一回転させ左ムチを同じように繰り出す。ルカも同じスタイルで撃ちこんで来て俺のムチ先を絡み取り体重をかけグイグイと引き寄せる。

負けじと俺も腰を落とし体重をかけ引っ張る。するとルカは簡単にムチ先を離しその反動を利用してバク転で間合いを取ったと思ったらもう一方のムチを下から唸らせ俺の腰目がけ打ち込んで来た。

速い!速い!

俺も急いでバク転で間合いを取って避け、ルカに打ち込もうと体勢を立て直すが、すでにルカは飛び上がり双方のムチを俺の頭を狙って振り下ろす瞬間だった。


ヤバイって!


俺は腰を落とし双方のムチをルカの振り下ろすムチ目がけ、腰を思いきり捻ってぶん回す。


どうにか直撃回避!!

と言うか、ルカが引っ込めた。


ギリギリだわ!!くそっ!!ってもう、右横から来るし!!


俺は片手を地面に着きまたバク転でかわすが着地と同時にルカに向かい走り出す。

今度は俺がルカの首目がけて双方のムチを繰り出す。ルカは態勢を低くしかわすと同時に俺の足首に打ち込む。


俺も咄嗟にジャンプしてかわす。


双方睨み合い、動きが止まる。


さすがルカ。全然容赦ない。ブランクも傷も気にしてくれない。まあ、そうじゃなきゃ、面白くないわ。


俺がニヤリと笑うとルカもニヤリと笑う。


この瞬間が幸せだ。

この世界は乙女ゲームだけどルカに巡り逢えたことを感謝する。


今度はルカが右手を上に持ち上げ大きくムチを旋回させ、左手のムチは身体の前で8の字に旋回させる。

すごい速度で旋回させるので攻め込むことができない。

俺は上体を前屈みにしてをゆっくりルカの周りを移動し、出方を伺いながらルカの足下を狙うしかない。

ルカは俺にジリジリ間合いを詰めながら右手のムチを振り下ろすタイミングを見計らっている。

俺はわざと誘い込むようにムチを無防備に構える。合わせたようにルカの右手のムチが飛んでくる。

そのムチ先にわざと己のムチを絡めさせ、もう一方のムチをルカの左ふくらはぎに絡める。


取った!!


と思った途端、俺の首がグイッっと後ろに引っ張られた。


やばい!三つ編みか!


と思った途端、俺の金髪(ブロンド)が風になびいた。


「一本!それまで!」


カレブの手がルカに上がる。


ルカの左手のムチの先端には緑色のリボンが絡まっていた。



一斉に歓声が沸く。両陛下が立ち上がるとギャラリーも立ち上がり今度は拍手に変わった。


両陛下にお辞儀をし、お互い礼をすると俺は肩で息をしていて汗だくなのに気づく。


珍しくルカも片手を膝に着けていた。



「ロト様ーっ!ロト様ーっ!」


なぜかセイラが勝ったルカではなく、俺の方に駆けて来る。


「???」


セイラが俺に飛びつく。その拍子に俺はしりもちをついたがセイラをしっかり抱き抱える。


俺、汗臭いよ?負けたし?


「やっぱり素敵!勇者様!私の勇者様はロト様よ!やっぱり私、ロト様と結婚する!!」


目をキラキラさせ、透明なしっぽをブンブンぶん回してセイラが言った。


えっ!?何で?何でそうなるの!?






調子に乗って2話投稿長くなってごめんなさい。

今日も読んで下さりありがとうございました。

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