それを手に入れるのは誰の件 2
今日はフリードが痛い。
それにソロモン亮は残酷UPでお口が悪いUPです。
苦手な方は回避お願いいたします。
大丈夫なそこのあなた!そう、あなたです!
今日もよろしくお願いします!
「グッ!」
フリードの右胸にはディーンの剣が突き刺さっていた。
しかしフリードの両手の剣もディーンのその剣の刃を双方で挟み止めている。
「おや?避けなかったのは賢明だね?君の速さなら十分避けられたはずだものね、フリード?まあ、避ければ後ろのセルフィの首に突き刺さっていたものねぇ?ククッ」
そう笑いながら更にググッと力を加え押し込むディーンの剣にフリードの赤い血が伝い、白い塩の大地にポタリと落ちる。
「クソッ!よくもッ!」
そう叫び剣を振り上げたアレンにヘイワーズが飛びかかる。
「おい!お前の相手は俺なんだよ!よそ見してる暇あんのか?ああッ!?」
「ねぇ?早く助けないと君の恋人死んじゃうよ?」
背後でヘイワーズとアレンが激しく衝突する剣の音を聞きながらセルフィに顎を掴まれ、首に剣を突き付けられているソロモン王はクスクスと笑いを漏らしながらそうセルフィに忠告する。
だが、その瞳は依然、金色に輝いたままで目の前のミシュリーナを睨みつけている。
「今は自分の命の心配をするんだな?ソロモン王」
そう耳許で囁き更に刃をその白い首に押し付けるセルフィにソロモンは続ける。
「いいのかい?今助けないと君の恋人はもう助からないよ?ディーンの剣は彼の肺を斬り裂いた。今、肺の中に血が雪崩れ込んでいる状態だよね?自分の血で溺れ死になんてねぇ・・・苦しいだろうな?それも君を庇ってさ?また?まただよ、セルフィ。また君は彼を犠牲にするのかい?今世もまた?そしてまた最後に彼は君に言うんだよね?『お前に逢えて良かった、お前が無事で』って。一人満足して君を置いて彼は死んでしまうんだ。そして?そして君は?また取り返しが出来なかったこの状況でこの輪廻を繰り返し繰り返し君は一人また生きるんだ。何度も何度も。一番愛しい人の笑顔が冷えた硬い塊と化して朽ちていくのを君はまた自分の肩を虚しく一人抱えて耐えるんだ?ああ、何て寂しい、何て悲しいんだい君の人生は?君の生まれた意味ってなんなのかな?心から同情するよ、セルフィ皇子」
「言いたい事はそれだけか?そのような世迷言、僕には通用しない。マスターソロモンとやら?お前がもう一度今世をやり直す必要があるな?」
「セルフィ!我がカルマ国ソロモン王にそのような無礼千万、その首で償って貰う!!」
フリードから力任せに剣を引き抜いたディーンが二人の頭上にその剣を大きく振りかざすとそう叫ぶ。
「なら、ディーン!」
「!?」
驚いたディーンの目の前にセルフィの瑠璃色の瞳が広がる。
同時に体を入れ替えたフリードがその逞しい腕をソロモン王の白い首に巻き付ける。
「お前がその首で詫びるがいい!リードを傷つけた事をなッ!」
そう言ったセルフィの剣がディーンの体を下から剣ごと弾く。
後ろに大きく飛ばされたディーンに更に凄い勢いのセルフィが剣を打ち込む。
ディーンも後方に下がりながらもその全ての剣を振り払っている。
お互いが繰り出す一太刀一太刀のその尋常でないスピードと威力がまわりの冷たい空気を震え唸らせる。
そしてその剣戟がすさまじいと思えるのはお互いが笑っているからだ。
相手の息の根を止める事に喜びを感じているように高らかに笑うセルフィと青ざめた顔だが狂気に囚われたような不気味な笑いを漏らすディーンの笑い声が対照的なのだ。
「君、苦しいだろう?」
ソロモン王はその腕に力を入れ自分を締め上げているフリードに尋ねる。
「貴方こそ」
「いいのかい?フリード。僕が今、指導しなければあの星が間違いなく皆の頭上に落ちて来る。その意味が君にわからない訳がないよね?『帝国の無双』と言われた君が?」
「ミシュリーナがいるので。ソロモン王、それに」
「アイツは確率のない奇跡とやらに頼る“たわけ”だ」
「“たわけ”は貴方だ、ソロモン王。シルフィーヌ姫を犠牲にすればレオリオ王子の中のダグラス王が貴方のアイリーン様を奪いに来ます」
「何を・・・?ダグラスにそんな力はない」
「やはり何も解っていないのはソロモン王、貴方だ。『ウロボロス』が何か、貴方は解っていない」
フリードはそう言って更にその腕に力を入れソロモンの首を圧迫する。
「止めろーッ!!」
ヘイワーズの叫びが響く。
「ソロモン王にッ!・・・俺の亮に手を出すなーッ!!」
アレンと打ち合い息切れ切れのヘイワーズが肩で息をしながらフリードの背中に叫ぶ。
「お前ッ!・・・お前こそ・・・よそ見してんじゃねぇッ!目の前の俺に集中しろよッ!!」
これまた息切れ切れのアレンがヘイワーズに怒鳴り返すとそんなヘイワーズにまた剣を振り下ろす。
「!?」
フリードの顔が驚きと苦痛に歪む。
ソロモン王が首を締め上げていたフリードの腕をいきなり掴むと急に引き離したのだ。
「足りないな?その程度のパワーではこの僕は落とせないよ?君」
そしてそのフリードの右腕をあり得ない方向にねじ曲げた。
「!!」
「「「!止めろッ!!」」」
俺とハルク、ルカが叫ぶ。
「おやっ?我慢強いね?右腕が砕かれたのに声も漏らさないなんて?フリード、涙ぐましい努力だ。ああ?そんなにセルフィに心配かけたくないんだ?」
そう言ってソロモンは苦痛と出血で顔面を蒼白にしているフリードが自分の腰を押さえつける左腕を振り払いフリードの傷ついた右胸に肘鉄を喰らわせる。
その行為にフリードが胸を押さえ地面に前のめりに倒れこむ。
そしてそんなフリードの背にソロモンは片足を上げると、力を入れ踏みつけたのだ。
「形勢逆転だね?さぁ、お遊びはお終いだ」
そのソロモン王にハルクとルカが駆け出していた。
「おっと!!」
飛びかかったハルクの剣を素早く腰の剣を引き抜き、真正面から受けたソロモン王はハルクの馬鹿力に押さえ込まれる。
だが、ソロモン王は笑いながらフリードから素早く足を降ろし踏ん張ると左手を右手に重ね剣を握り直しそのハルクの剣を力任せに弾き返す。
すると今度は下から横腹を目掛け切り込んだルカの剣も切っ先を地面に突き立てた剣で受け止めたかと思うと目にもとまらぬ速さで引き抜きバットのように力任せに振り回しルカの体ごとぶっ飛ばしたのだ。
「「ルカッ!!」」
フリードを助ける為に駆け出した俺とレクサスが叫ぶ。
な!なんだとッ!ハルクとルカを弾き返しただとッ!?
なんと言う馬鹿力、それになんて速い剣捌き!!
すぐさま体勢を立て直したハルクがソロモン王に真横から斬りかかる。
そんなハルクの動きを見切ったようにくるりと身体を反転させたソロモン王も剣をハルクに振り下ろす。
お互いの剣が激しい音をたててぶつかると火花が散った。
そして双方ガッチリと剣を交え睨み合っている。
「たかだか機械の分際で人の人生全てわかったような立派な口ぶりじゃないか?ソロモン」
「君こそハルク?僕が支配するこの世界では所詮、君も前世の記憶を付加されただけのプログラム。佐伯一馬だった君もこの世界では僕の操り人形さ?」
「本当にそうか?本当に?お前、ここに来て焦ってるだろう?」
「ああ?隕石の落下時間の事?間に合わなければ仕方ない。そうだな・・・?ああ、タマリの宮殿にでも落とすか?あの“たわけ”の大事なお婆様とやらがいるだろう?あのババァも生意気だ。素直に孫娘を差し出して我が国の傘下に入ればいいものを宣戦布告しやがった」
「ほう?エカテリーナ女王らしいな。だがお前がミシュリーナに脅威を感じているのはその事とは違うだろう?それに『ウロボロス』が二匹いたこともお前は意外だっただろう?この世界が『バウンダリー』と俺達が知っていたことも想定外だったのだろう?なぁ?ソロモン?」
「だから?だからなんなんだ?」
「ほう?認めるのか?」
「そのような事、これから始まるステージには何の役にも立たないからな?無用の長物とやらだよ?なぜならこのステージの必須アイテムは『鍵』と『ウロボロス』と『器』だけだ。僕とウロボロスのバルトがいればミシュリーナもお前達も必要ないからね?」
「だが時間が迫っているのにまだ準備が出来ていない。焦ってるだろうお前?更にこうして邪魔をする俺達をお前は先読みする事が出来なかっただろう?」
「お望みなら今すぐ片付けるさ。なら、まずはお前、ハルク」
「まだわからないのか?お前は?俺を普通のハルクだと?お前の世界のハルクだとなぜ言い切れる?」
「何が言いたい?お前は僕のデーターの中のハルクに決まっているだろう?」
「いいや、違うな?俺は」
ハルクが凄い覇気を放つ。
「・・・お前、色が・・・・ハルク?まさか」
「そう、俺も違うな?」
自分と同じ声で突然、耳許に囁かれたソロモンが振り返る。
「!?シ、シルフィーヌ!?いつの間に?」
背中に剣を突きつけて背後を陣取る俺を見てソロモンが驚いている。
「気配を消して近づいただと・・・?バカな、まったく気配を感じさせないなど小娘のお前に出来るはずが・・・なんだ・・・?それにお前もか?お前もなんでそんなに真っ黒なんだ?それがディーンが言っていたお前達の力なのか?・・・」
「「ソロモン王」」
俺と兄貴の声がまったく同じ声でリンクする。
兄貴が怯んだソロモン王の剣を弾くのを合図に俺達は剣をソロモン王の頭上に大きく振り上げる。
「「お終いだ」」
そう言った俺と兄貴の剣は真っ直ぐソロモン王に降り下ろされた。
大丈夫でしたでしょうか?
けど次回はシルフィーヌ亮が痛いな・・・
すみません、痛い展開ばかりで。
最終はミシュリーナが頑張ってHAPPYに導きますので。
今日も読んで頂きありがとうございました。




