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お告げの件

今日も長くてすみません!!

よろしくお願いいたします!!

トマが見つけた巨石の正面には大きな亀裂が有り、そこをくぐると足元には穴があった。

それも凄く巨大なたて穴だ。

覗くと下の方はデコボコの大きな岩が突き出して見えない深い闇だ。

だが、大量の水が流れている轟音が響いてくる。

今までいた岩の外はもう夕日が沈み、星空と一緒にまん丸の月が昇って来ている。

やはり今夜は満月で大潮なんだ・・・だから地下を流れる海水の川も水かさが増してきているのだろう。

しかしこんな暗い中、初めに入ったトマはよくこの穴に落っこちなかったものだと変に感心している俺の目の前でそのトマがミシュリーナを軽々とその背中に背負う。


「ミシュリーナ、しっかりと捕まってるんだよ?絶対、離さないでよ?」

頷いたミシュリーナを確認するとトマは崖つたいに岩を掴みながら器用に下りて行く。

どうにか足を乗せる幅ギリギリの足場はあるが実際は岩の出っ張りを掴み横歩きで崖伝いに下る。

そんなトマが下りて行く先にあるのはぽっかりと空いた横穴だ。


本当によくこんなもの、見つけたものだ・・・


ハルクとセルフィは嫌がるダモイを連れてこの横穴に先に下りている。

そしてアレンがトマの後に続き、その後をルカの腰にロープをつけて自分と繋いだレクサスが自力でゆっくりと下りて行く。


「シルフィーヌ、おいで」

レオリオが俺に背を向けて屈んだ。


ん?おぶってくれるの?レオ?


「あ・・・ありがとう、レオ。けど、大丈夫よ?これくらいは。ちゃんとレオの後に着いて気をつけて下りますから。心配しないで」

「後ろからは俺も着く。心配するな」

俺とバルトがそう言って笑うとレオリオはちょっと戸惑うような、納得しかねるような顔をした。

「えっと?本当に。本当にこれくらいは大丈夫ですから。レオ」

更に俺が笑って言うとそれでも腑に落ちない顔でだがやっと返事をする。

「・・・ああ・・・そう?じゃ、シルフィーヌ、バルト、先に行くから」






「カナリヤを連れて来るんだったな・・・くそっ!」


「カナリヤ?鳥のカナリヤ?どうして?ダモイ」


先頭でロウソクランタンを持って進むダモイがそうぼやくとハルク、セルフィと続きその後ろをトマと手を繋いで歩くミシュリーナがそうたずねた。

「おやおや?お嬢は物知りなのにあっしに聞くんですかい?カナリヤって鳥は匂いに敏感なんでさぁ。カナリヤは一日中うるさく鳴いてますでしょう?けど、鳴かなくなったら要注意だ。人間にもわからない毒ガスを嗅ぎ分けるんでさぁ」

「ガス警報器?そうね?確かに炭鉱で見たような・・・?」

そんなミシュリーナとトマの後ろで同じくロウソクランタンを片手に持って進むアレンの後ろのルカが答える。

「ああ、そうだミシュリーナ。アントワート領の炭鉱には必ずカナリヤが3羽入った鳥籠を炭鉱夫に持って行かせる。そしてカナリヤが鳴かなくなったらすぐその場から退避しろと。さもなければ命を落とすと教えているな」

俺も答える。

「メタンや一酸化炭素、窒素ガスを感知するらしいよ?カナリヤは。かわいそうだけど人の命には代えられないからね」

するとハルクが話を続ける。

「少なくとも今のところはロウソクの火に引火していない時点で空気より軽いメタンや窒素、一酸化炭素はこの横穴には充満していなさそうだよな?ただ、今かすかに臭う硫化水素は足下に溜まるからダモイ、ランタンを落とさないように気をつけろ。あっと言う間に火の海かもな」

「旦那!いきなり脅さねぇでくだせぇ!手が滑っちまいまさぁ!ほんとに!それに難しい事ばかり言うからわからねぇがとにかくいきなりドッカーンッ!はないでいいですかね!?旦那!」

「ハルク!俺も緊張するだろうが!」

アレンも叫んだ。

「まぁ、今のところはな?だがやはりコウモリすらいないのが気になるな・・・?満潮時はここも海水が雪崩れ込むという事だろうな?」

「ああ、間違いなく流されるな」

セルフィがダモイに圧力をかけるように速足でせっつく。

「旦那!勘弁してくれ!足がもつれてこけたらどうするんで!!まったく!なんで俺がこんな目にッ!」

「ダモイ、2倍だ」

最後尾のフリードがブツブツ文句を言うダモイに大きな声を張り上げるがダモイは更に泣きそうな声でかえす。

「金なんて命あっての物種でさぁ!あっしは帰りてぇです!今すぐ!!」

「もう少し行けば道が分かれる。左の穴は下って行くほど匂いが凄いからダメだ。だから右の穴に進もう。大丈夫だ、皆で帰ろうな?ダモイ」

嘆くダモイにトマも爽やかにそう声を掛ける。

ここにいる連中は誰一人としてダモイの願いを聞き入れそうな雰囲気はない。


「ああ!もうッ!誰も聞いてくれねぇぇ!!無事着いた暁には褒美は3倍ダァア!!絶対ッにィイイイ!!」


あ・・・ダモイ、切れた・・・




そうだ・・・!

みんなに今聞いとかなきゃ気になってこれからの事に集中出来ない事あったんだ!


まずはレクサスと前を歩くルカだ。

「あのぉ、お兄様?」

「なんだ?シルフィーヌ」

「お兄様の髪は何で短くなったの?レオとは理由が違いますよね?」

「なんだ急に・・・?どうして今それを聞く?」

「いやぁ?その・・・ずっと気になってて・・・サロメもいない事だし聞きたいなって」

「ルカが髪を切った理由は僕に合わせたのさ。王子の僕の方が髪が短いのは臣下として示しがつかないからだろう?」

前を見ながらレオリオが代わりに答える。

するとルカは横を歩くレクサスをチラリと見下ろす。

「ああ。もちろんそれもあったが・・・正直、予防?」

「やっぱり。お兄様、サロメが銀髪好きなの知ってたのね?」

「「そうなのか?ルカ?」」

俺の前後でレオリオとバルトが同時に聞き返す。

その声にレクサスもルカの顔を見上げる。

「いや?銀髪が好きなのか?そうか・・・?それは初めて聞く。ただ、見合いの条件で王子の綺麗な髪が気に入ったと聞いたのでそれで・・・まぁ」

「まぁ?なに?ルカ?聞きたいな」

あ、レクサス入って来た。

「・・・王子がとても似合ってたので自分はどうだろうかと」

「つまり!ルカは王子と一緒にちょっと気分を変えたかったんだ?異国の地でさぁ?さぞかし帝国には綺麗な人がたくさんいたんだろうね?だってサロメもセルフィもみんな綺麗だもんね?帝国のみんなは!」

「おいレクサス、なに怒ってるんだ?ルカは予防って言っただろうが?」

「別に!怒ってなんかないよバルト!なんで僕が怒るのさ?」

「ああ、ごめん、ごめん、レクサス。焼かないで?サロメはハルクの銀髪が好きだったの。だからお兄様の銀髪も素敵だって言ってたけど今はちゃんと婚約してるし、ルカはレクサスにモテたかっただけだし」

「おいッ!シルフィーヌ!」

「おいッ!俺を巻き込むな、亮!」

「え?どっちも本当の事だし。それにハルクがハッキリしなかったのが全ての元凶だろ?ちょっとは反省しろ」

「うっ・・・うるさいぞッ・・・亮!」

「「「そうだ、反省しろ、ハルク!」」」

そんなハルクにセルフィ、アレン、フリードが注意した。

いつの間にかルカの右手はレクサスの左手にしっかりと握られていた。



「あのぉ?トマッ!」

「おや?今度は私?シルフィーヌ」

「はい!凄く気になるんだけど?その、トマって暗がりでも見えるのかな?暗視が出来るの?だって先にここに入ったんだよね?それも一人で。凄くフットワークが、あ、行動ね?王子様にしたら軽いし手慣れてない?」

「ああ、よく言われるね。んー、どうしてか?ミシュリーナは解ってる?フフッ」

「え?はい。言っていいの?トマ?」

「うん、いいよ?どこの国にだってあるじゃないか?そう言うの。それにミシュリーナはどんな僕でも受け入れてくれるよね?」

「もちろん。シルフィーヌ、トマは自国の暗部(あんぶ)部隊の長なの。だから探る事はお手のもの。特に謎解き的なものは大好きよね?トマ」

「うん。ほとんど趣味。けど、ミシュリーナの中では私はもう長なの?まだ叔父上健在なんだけどね?」

「あ、ラマリャ様!!わぁ、怒られちゃう!」

「そうか・・・?ラマリャ叔父も知ってるのか?・・・そうか。フフッ」


「暗部部隊って忍者みたいなあれ?隠密裏(おんみつり)に工作するって言うやつかな?ミシュリーナ。まさかニンニンで」

「水の上は走らないからね?シルフィーヌ。ニンニンって・・・ハッ〇リ君?わかる私も凄いけど。けどそうやって綺麗ごとだけでは解決できないことを密かに遂行して国に仕えている人達がいるから平和に暮らせる訳でしょ?」

「まぁ・・そりゃ、そうだよね?」

「そうだ、シルフィーヌ。どの国にも必要な組織だよ」

俺の手を掴んで歩くレオリオがそう言うと俺の後ろのバルトとフリードもそうだといった。


「トマは洞察力に優れていて身体能力も高い。それにとても判断が速いからラマリャ様が後継者に選んだって仰ってたわ」

「ふーん・・・まあ『印』のおかげか、体力と運はあるみたいだよね?今回だって君に会えてこんな滅多にないチャンスに恵まれている」

「チャンス?」

ミシュリーナがトマを見上げる。

「そう。チャンス」


チャンス・・・?


「ほう?チャンスだと・・・トマの、君の探している物は見つかりそうかい?」

前を歩くセルフィは振り向かずにそんなトマに訊ねる。

「ええ。多分この先に。まあ?誰が手に入れるのかはわからないのですが。案外、セルフィ、貴方が一番近いのではないのかな?探求心が人一倍強い貴方が」

「なに・・・?トマ?サンタクラークが何か知ってるの?」

「いや?残念ながら想像の域だよ、ミシュリーナ。だが、昔から興味のあることだからね?それに・・・『印』を持つ我々ならもう感じ始めているだろう?そしてミシュリーナ、君にもわかるはずだ」


「なんだ・・・?俺の傷口にゆっくりと何かが浸透してくるこの感じは・・?」

ランタンを持つアレンが急に立ち止まり左胸を抑えその場にうずくまる。

「アレン・・・?まさか・・今頃、傷口が開いたの!?痛いのッ!?アレンッ!」

「アレンッ・・・!?」

俺とその俺の声を聞いたハルクが急いでアレンに駆け寄り支えようとする。


「ああ・・・僕も顔が強烈に熱い」

「えッ!!レオッ!?」

振り向くとレオリオもその場で立ち止まりまだ完治していない顔の右半分を抑え屈みこんだ。






「ティッカ!!なんでサルトは行ってはダメなのッ!?」

馬達に綱を着け自分の馬に繋いで先頭で帰る道を誘導するティッカに不貞腐れたサロメが後ろから叫ぶ。

「えッ!ああ。うーん、その・・・なんだ」

「何!?聞こえない!何でサルトだけ心配なのよ!?まさか、サルトが気に入ったの!?」

「サ、サロメ様!!」

サロメの馬の後ろに着くサルトが焦って声を上げた。

「ち、違うよ!!確かにサルトは優しそうだし、カッコいいけどさ?いや、あの、あのさぁ!?信じろって言わないけどさ!?あんたの死に顔を見たんだよね!?夢で!!さっきサルトを立たせた綺麗な人をかばって死んでいくサルトの血の気の引いた顔をさ!!」

「アレンをかばって!?それも夢でって!?またまた!どうせ!ってって、えっ・・・?夢って今日初めてあったのよね!?サルトとッ!?」

「ああ!私は一応あの村では占い師なんだよ!!たまにフッと白昼夢のようなものをお告げのように夢で見るんだ!まあッ!?信じろとは言わないよ!それに!もう一人!」

「もう一人だって!?ティッカ嬢、誰なんだ!?」

最後尾のカレブが叫ぶ。

「セルフィ様がリードって呼んでた人!!」


「えっ・・・?」


振り返ったティッカはサロメの顔を見て眉をひそめた。






お読みいただきありがとうございました!!

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