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天使のラッパと白い鎌の件

よろしくお願いします!

「トマがいない・・・シルフィーヌ・・・!!」

「えッ!?」

ミシュリーナの言葉にサルトとバルトが動く。


「次の満潮は正子だと聞いている」

フリードが辺りを見渡しながら答える。

もう夕日が沈みかけている。

ルカが胸ポケットから懐中時計を取り出すと同じく懐中時計を取り出したレクサスと一緒に確認する。

「夜中の12時か・・・あと5時間だな?ティッカ嬢、5時間あれば採掘場に抜けられるだろうか?」

「悪いが本当にわからないんだ。ここを抜けた奴は知らないんでね」

するとダモイがハルクに手を差し出す。

「旦那、地図を。ティッカ、勘でいい。採掘場の場所を指でさしてくれ」

「ああ、わかったよ。まず、方向を教えて。そうね・・・?村と川と街の方向」

その言葉にダモイが指をさして教える。

「ああ、なら、今いる場所はここよね?ダモイ?」

「そうだ、あってる。なら?」

「んんっ・・?多分、ここを抜けてここを登りここを超え、またここをさらに登りここの谷を越える。そして、ここ。ここを登る」

「ああ、そうだ。俺もそこだと思うぞ。よくやった、ティッカ。旦那、そう言う事だ」

「成程な。大きな岩が多いこの谷や川の急な流れを避ける為とは言え随分と曲がりくねった山道を上り下りして遠回りをしているよな?地図ではあの巨石から直線上の先にあるのにな・・・って事は多分、レオリオとルカが見つけたあの巨石にある海水を吐き出してる方が入口かもな?」

ハルクはティッカが地図上でさした採掘場の場所と今いる場所を直線でつなぎ、振り返ると背後の巨石を指した。

するとその方向からサルトとカレブと一緒にトマが馬に乗ってこちらにやって来るのが見えた。

ミシュリーナが安堵してホッと息を吐いた。

俺も安堵してハルクの手元の地図を再確認する。

そこで俺は覗き込んだその地図の直線上にある森を何故抜けないのか不思議に思ったのだ。


「ティッカ、ダモイ、なんでそんなに地上の道は迂回するのか理由があるの?この森は抜けられないの?」

「ああ。この森の中に近道はあるんだ。でも、その道も通っちゃダメだ。森に入ると悪臭がして、馬鹿みたいに熱くなってくる。それでも進むとラッパが鳴り響くんだ。すると急に臭いがしなくなる。そしたら空からボタボタと虫や鳥が落ちて来る。みんな死んで落ちて来てるんだ。それを見たら助からない。さらに大きなゴォ―って音がするともう逃げられないらしい。村の言い伝えでは天使が熱い白い鎌を振り下ろして魂の尾を切るらしい」

「なにそれ?ティッカ?またそんな話。天使なんかいないし、鎌を振り下ろすのは死神だし。その死神も戦場にいてもお目にかかった事ないわ」


おやおや、サロメは可愛い顔してこう言う事は全く信じないんだな?


「私も見た事はないさ。でもさ?天使って最後はラッパを吹くんだろ?それも終わりのラッパ。死体を見つけた奴らはその音を聞いて急いで逃げるんだ・・・万が一上手く逃げ帰れても気が狂ってしまった奴がいっぱいいるんだ」

そんなティッカの言葉にダモイも頷きながら話し出す。

「ああ、それはあっしも知ってる。ほんとのことでさぁ、旦那方。実際、あっしの仕事仲間も無茶してあの森を抜けようとして死んだ。それは酷い有様で。まるで皮がひんむかれたみたいに赤黒く脹れて誰か分からないほど無残な成れの果てで。あんなひどいことは人には出来ない・・・」


「天使のラッパ?それに赤黒く脹れた死体だって?血管が浮かび上がってガスで膨れてるのか?」

セルフィが呟くとレクサスが首を捻ねって呟く。

「薬殺?毒殺?どちらにしても中毒死だよね?空から虫や鳥の死体が降って来るなら有毒ガスを吸ってしまった?」

「うーん、だが皮がむかれたようなら・・・?そこは熱い鎌なのだろう?なら、火傷・・・それも重度の」

ハルクも首を捻る。

「天使のラッパ?『ヨハネの黙示録』の予言かい?」

背後から声に振り向くとトマが馬から下りて来た。


「トマ!姿が見えないから凄く心配したのよ!」

「ああ、ミシュリーナ、皆もすまない。あの高い岩の下に裂け目があったのでね?中をね、ちょっと覗いて来たんだ」

そう言ってトマが指さしたのはレオリオ達が確認した巨石の並びに見える一番高い岩だ。

「まず、中には道があるのだが馬は無理だ。まず入口が急な落差で下りれない。それに途中で道が上下に分かれていて狭いんだ。その崖を人が伝って行くのは大丈夫そうだよ?しかし下の道は匂いが凄くてそれに熱くて進めないな・・・」


「あの、さっき言った予言って、大天使が7つ目のラッパを吹くとこの世の終わりってやつかしら?トマ?」

「ああ。そう、ミシュリーナ。天使が吹くのは世界の終わりを告げるラッパだね?」

「ラッパ・・・鳴り響く音だよね?ラッパって・・・響く・・・ん・・?一気に吹くんだよな・・・?」

「あ!シルフィーヌ!きっと、あっちの地下には温泉の源泉があるのかも!だからそのラッパの音って!」

「ああ!そうか!ケトルの笛みたいに源泉の蒸気が地中から噴き出した時に出る音かも!そうか!それにその蒸気と一緒に有毒ガスを吐き出だされてるからだよね?ハルク、〝鳥地獄″だ!!」

「ああ!そうみたいだな。シルフィーヌ、ミシュリーナ。有毒ガスのそれも濃度の高い硫化水素を吐き出してるから意識低下が起こり死に至るんだ。なら、そのトマが調べてくれたその穴は下れないな・・・硫化水素は下に溜まるから大丈夫だと思ったが・・・地上に吹き出す程の場所があるとはな・・・上に行く崖をつたうか・・・」

「じゃあ、『天使が熱い白い鎌を振り下ろす』のは?それがわからなければそいつに出くわすんじゃないか?ハルク?」

バルトがそう指摘すると、セルフィがその場を仕切る。


「時間がない。とにかくトマが探してくれた入口から採掘場に進む。案内役はダモイでいい。ティッカ嬢は馬を村に移動させてくれ。サロメ、カレブとサルトと一緒にティッカ嬢の村で待機しろ。我々が3日後の正午迄に戻らなければエカテリーナ女王にありのまま報告しろ」

「嫌です、お兄様!私も参ります!」

サロメが間髪を入れずに叫ぶ。

「待機しろ」

セルフィがそんなサロメに有無を言わせぬ迫力でそう命令するとサロメは眉を寄せ俺とミシュリーナに抱きついた。

「「ルカ様、我々も!」」

カレブとサルトも声を上げた。

しかし、そんな二人にルカが返す。

「サロメ姫を守ってくれ。王子とシルフィーヌは私とバルトがいる。セルフィ、すまないがレクサスも帰して構わないだろうか?」

「嫌だ、ルカ!一緒にいる!」

今度はレクサスが叫んだ。


「『印』を持つ者としてレクサスも見届けなければならない。レクサスはルカが守れ。シルフィーヌはレオリオとバルトが守る」

そうセルフィがルカに言うとレオリオとバルトが同時に返事を返す。

「「ああ、任せとけ。ルカ」」


「トマ、アレンはハルクと共にミシュリーナを守れ。命に代えても必ずエカテリーナ女王の元に無事帰すんだ」

「「承知」」


「セルフィ様。自分も行きたいのです。ぜひ、お願い致します」

珍しくサルトがセルフィの足下に(ひざまず)き食い下がるとそんなサルトにティッカが叫んだ。


「あんた!ダメだよ!一緒に村に帰ろう!お願いだ!あんたが一番心配だよ!」


えっ・・・?

んんっ?何でここでティッカ!?


「あ、なんならあっしが馬を・・・」

「ダモイ、無事帰れたら倍だ」

フリードがダモイを黙らせる。


アレンが(ひざまず)いたサルトの腕を掴んで立たす。


「なあ?サルト。俺はこいつの事、無事連れて帰れって言われてるんだけどな?こいつの旦那になる俺の兄上にさ。けどついててやれないからさ?俺の代わりに頼むよ?」

とアレンが俺に抱き着き泣きそうになってるサロメを見てそう言う。

だけどそんなアレンをサルトは真剣に見つめて更にセルフィに懇願した。

「お願いでございます!セルフィ様。私は・・・ルカ様に、シルフィーヌ様に着いて行きたいのです。それに皆様のお役にも立ちたいのです!」


「なら、サルト。カレブと共にサロメを(たく)す」

セルフィもサロメの背中を見つめそう言った。











今日もありがとうございました!

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