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巨石の谷の件

今日もよろしくお願いします!!

「ダグラスの記憶って、レオリオは見る事は出来るのかい?」

ベットで上半身を起こして組んだ両手に視線を落とすレオリオを見つめセルフィが問う。

「ああ・・・ああ!!嫌な記憶ばかり見せるんだダグラスは!この僕に!人に手を掛け、引き裂き、いろんな国の色んな人々を恐怖に(おとしい)れた・・・ダグラス自身が僕にこの苦しみから解き放てといわんばかりに!」

「そこにアイシスはいないの?」

俺は思わず、レオリオの震える両手に手を重ねる。

「いない。名を呼ぶのに誰も手を差し伸べてくれない。だから・・・だからダグラスの不満や怒りが年々積み重なって膨れて・・・君に会うまでは心が押し潰されそうだった・・・」

俺はレオリオの手をぎゅっと握り締めた。

「レオ、ダグラス王は今、どこにいるの?」

「今は眠ってる。僕の心の片隅でグッスリと・・・こんな事は初めてなんだ・・・僕だけが起きてる(・・・・)事は。正直、その事に驚いてる。ハルクに叱られたのが良かったのか・・・シルフィーヌに正体を知られたのにシルフィーヌが側にいてくれたの良かったのか・・・多分・・・その、多分、両方。僕も嬉しかったんだ・・・僕とダグラスをちゃんと怖がらないで受け入れてくれたから・・・だから、皆にも話して今後、僕の中のダグラスが暴れ出したら遠慮なくハルクのように止めて欲しい。シルフィーヌを優先してくれ。シルフィーヌが危険な目に遭うのは許せない。それが例え僕自身でも」






「ドンピシャだな。シルフィーヌ、ミシュリーナ」


目の前に広がったのは干上がった池の底のようにひび割れた大地だ。

そこには蛇が這ったような跡をつけた巨石がズラリと並んで俺達の行く手を阻んでいた。




あの日の午後、フリードとカレブは岩塩の卸業者からの情報で一人の小柄な中年男を連れて来た。

その男、ダモイがコルカ渓谷の岩塩採取を生業(なりわい)としている村落の者に岩塩の採掘場所を教えてくれるように口利きをしてくれるとの事だ。

目の前でフリードとカレブがその小柄なダモイを両脇で挟んで威圧をかけて無理矢理そう言わせている様に見えるのは俺の気のせいだろうと思っておこう。


そして次の日の朝早くから馬を飛ばし昼過ぎにやっとその村に辿り着いたのだが、(ナウ〇カの風の谷を想像してくれ。案外近いかも)村に入ろうとした俺達を見て村人達は凄く警戒し、各々の家に閉じこもって出て来てくれなくなったのだ。

俺、シルフィーヌをはじめハルク、ミシュリーナ、バルト、セルフィ、フリード、サロメに加えレオリオ、ルカ、トマ、カレブ、サルトとダモイを入れて総勢13人。それもやたらとガタイのいい綺麗な男達が中心なのだから無理はない。

それでも顔見知りのダモイがいたからか、渋々、村長は出て来てくれた。

嫌がる村長にダモイがどうにか上手く話をつけてくれ(やり方はダモイに任せたのでどう取引したかはオブラートだ)俺達はその場所を目指して広い渓谷の中の谷間の谷間、絶壁状の細い道に馬を下らせ今ここに着いたのだ。



「これは・・・ちょっと凄いな・・・死の谷(デスバレー)より岩がデカすぎだし、変に表面がなめらかだな・・・それに岩と岩の間隔が狭い・・・谷底と言うより湖の底が干上がったような感じだし・・・?ダモイ、ここには冬、氷は張るかい?」

そんな俺の質問に顔をしかめてダモイは答える。

「知りませんよ?お嬢。あっしはこの場所に下りるのは初めてで。おっかない。ティッカ、お客人が聞いてるぜ?」

「あ、ああ、誰も近づいてはいけないから私もしらないわ。ただ月に多い時で2回ぐらい?凄い音で地響きって言うの?それが響いてくるのは多分ここからだと思うのよ?それも必ず月がない夜とまんまるの夜」

ティッカと呼ばれたこの大柄な女性はあの村で唯一、俺達を怖がらずにむしろ進んで案内役を買ってくれたのだ。


「ここを抜ける方が近道なのでしょう?なのに通らないなんて。本当にこの巨石がひとりでに動くなんて思ってるのかしら?馬鹿らしい」

サロメが馬で岩の廻りをブラブラ観察しながら鼻で笑う。

「跡があるでしょッ!?動いた跡!見てわかんないの?みんなついてるわ!ほら、これも、それも。ほら、この岩だって滑ったように動いた跡がついてるわよ!これだから役人は!動いてるのは間違いないのよ!・・・あのさ?・・・やっぱり、いつも村人が通る安全な道教えるから。そりゃ時間はかかるよ?でも死ぬよりいいだろ?引き返えそうよ?」

「大丈夫、ティッカ嬢。岩は襲ってなど来ないからね?急いでるんだ、力をかしてくれるかい?」

そんなティッカにセルフィがニッコリ笑いそう言うとティッカは真っ赤になった。

「ま・・・あ、ティッカ嬢だなんて・・・!」

「のぼせてんじゃねぇ!ティッカ。そもそもなんで近づくのも禁止なのかこの旦那方に教えてやんな!」

そんなティッカにダモイがあきれて声を張り上げる。

「なによ!!うるさいわねぇ!ダモイ!私だって女なんだからね!あ・・・いや、その・・・ここに入った人はさらわれるんだ」

「さらわれる?帰って来れないって事?」

俺がティッカに聞き返す。

「岩塩を掘ってる場所に行く近道があるのは本当みたいなんだ。それもこの巨岩の中に穴がぽっかりと開いててそこが入り口みたいだ・・・でもさ?岩が動くだろ?だからどこなのかまずわからない」

「それ早く言え!ティッカ!俺はこんな所でモタモタして岩に襲われるのはごめんだ!すまないが、旦那方、俺は引き返す!こんな右を見ても左を見ても不気味な岩や石ばかりで生き物がいないおっかない所はまっぴらだ!!」

「落ち着け、ダモイ。ティッカ嬢、その穴は人がくぐれるくらいの大きさはあるのかな?」

今度はハルクが尋ねるとティッカはまた真っ赤になった。

「あ、ああ。縦に長いが十分な高さがある大きさだと・・・ただ、谷底のように下に向かって口をパカリと開けてるとか、飲み込まれるとか?そんなのがいくつもあって間違えるとさらわれるって聞いた」

「成る程な・・・ミシュリーナ、どう思う?」

「硫黄の臭い?・・・っていうより生臭い・・・」

「海だな。潮の香がする」

セルフィがミシュリーナの言葉を続ける。


潮・・・潮だって・・・?それに月の満ち欠け・・・まさか・・・さらわれるって!


「巨石が動くと言うより・・・同じ方向に水が流れた感じ?それに、」

馬から下りたレクサスが足下の泥を摘まみ臭いを嗅ぐ。

「ああ、間違いないよ。海水が入り込んで干上がったんだ。塩が混じってる」

「海水?こんな山と山の谷間に海水だって・・・?どこから来るんだ?」

レクサスの言葉にセルフィが首を捻る。それにミシュリーナが答える。

「考えらえるのは潮の満ち引きによる海水の侵入。新月、満月の月の引力の影響を受けてる証拠。ここは海抜より低いのかも。そして地下にも河が流れてる。多分、海水の河。それが地表に現れて川に流れ込んでるからあんなに下流は大河なんだわ」

「成程な?それで15日ごとの地響きか・・・ヤバいな、なまやさしい海水の量ではこの岩達は転がりそうにないな?シルフィーヌ」

「さらわれるってやはり波にさらわれるのか?いや、それなら濁流?」

「ねぇ?今夜、満月じゃないわよね?」

「今夜は満月だよ、ミシュリーナ」

岩を撫でながらセルフィが答える。

「ヤバいぞ・・・シルフィーヌ、ミシュリーナ。大潮が来る。急ごう」


「おーい!!こっちだ!こっち!!こっちに大きな深い穴があるぞ!ハルク!」

アレンの声がする。

皆でそこに集まりその大きくポッカリと空に向かい口を開けている穴を覗き込む。

暗くて深くて見えにくいが中からは轟音が聞こえる。

確かに水が凄い勢いで流れている音に聞こえる。


「岩の引きずった跡をたどるとみんなここに続いてるからな?それにこの岩だけ動いてないんだ。だからここが怪しいよな?」

「「さすが、アレン!!」」

「良くやったな?アレン」

俺とミシュリーナ、ハルクが褒めるとアレンがちょっと嬉しそうに笑う。

「サルトとカレブ、バルトも一緒に探してくれたからな?」

「あちらにも同じものがあるが・・・ここより登ってるから高い位置にあるあの巨石も動いた形跡がないし縦に避けたように亀裂がある」

レオリオが反対の遥か向こうの巨石を指さす。

「え?あの巨石?レオ、見て来てくれたの?」

「ああ、ルカと一緒に。あの岩だけ上の方がごつごつしているんだ。なあ、ルカ?」

「ああ、ある一定の高さまで岩の表面が削られてない。多分、あちらから水を吐き出されてこっちに吸い込まれてるんじゃないか?」

「まさか・・・ここって巨大な一枚岩なんじゃ・・・お盆のように岩がえぐれて出来たすり鉢みたいになってる?ミシュリーナ?」

「じゃあ、大潮の満潮の海水が押し寄せてきたら・・・シルフィーヌ?」


「「巨大洗濯機だわ!!」」


俺とミシュリーナが声を上げるとハルクだけがヤバい!!と叫んだ。










前回、デスバレーの動く岩、大きなもの3トン(!)って書いてしまいました・・トホホ、間違ってます。300キロが最高です・・・すみません。


今日は大丈夫かな・・・

いつもお読みいただきありがとうございます!


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