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自分の中の自分の件

今日も長くてすみません!

よろしくお願いします!

それからほぼまる一日、レオリオは死んだように眠りこけた。


正確には一度だけ夜中に目を覚ましのだが、レオリオのベットの横で俺が寝ているのを確認するととても安心してまた眠ったのだ。

その時に俺は俺の胸の『印』にレオリオの手を触れさせていた。

そうして気がつかないレオリオに俺の気持ちを送っていたのだ。

何があってもずっと側にいる、俺の気持ちは変わらないと言う事を少しでも感じてもらい安心して眠れるようにとーー






あれからルカがバルトとレクサスを連れて来てくれ、俺に話をしてくれた。

ハルクに極めつけの一撃を喰らったレオリオはその場で気を失い、それを見た俺も情けないかな、気を失い、二人共ハルク、ルカに抱き抱えられて宿に戻ったそうだ。

そしてそんな俺達をみんなが介抱してくれ、レクサスがレオリオの傷の手当てをしてくれた。

俺の鼓膜の痛みと眼の眩みは一時的なものだったのだが、レオリオの顔面は酷かった。

顔面の骨折こそ免れたが鼻と口の中は切れ、傷だらけで特に顔の右半分は地面に打ち付けられた為、赤黒く腫れあがっているのだ。

それを見せられ俺は軽く悲鳴をあげた。

本当にショックを受けたのだ。

横で涼しい顔でレオリオの顔を覗き込んで

「軽くすんで良かったな」

と笑った一馬の頭を思わず俺は(はた)いた。

正直、自分のシルフィーヌの顔が腫れ上がった時はまったく何も感じなかったが、今回のこのレオリオへの一馬の仕打ちには殺意が芽生えたのだ。

バルトとレクサスが急いで俺とハルクの掴み合いを止めた。

そんな俺達にルカが落ち着けと言わんばかりに旅に出た経緯を話してくれた。


「王子はお前が国を離れて一週間は普通に過ごしていたのだが、だんだんと食が細くなり、目つきが鋭くなって行った。その様子を見た臣下の者達は心配して色々と世話を焼いたのだがあまり効果がなく、大臣達も自分の娘や息子をシルフィーヌの代わりにと手を上げた。だが両陛下はそれを認めなかった。そんな中、サザーランド侯爵が、レオリオ王子が他の要件で領地を伺った時に自分の娘、シャーロット嬢と会わせたのだ」


サザーランド家は我がオールウエイ国三大子爵家の一つでアントワート家に次ぐ大貴族だし、シャーロット嬢は確か16歳なので妃候補に上がるのは当然の事なのだが・・・


「サザーランド侯爵は娘の前で、アントワート嬢に何かあった時、妃候補として娘を考えてくれればいいとレオリオ王子に言ったそうだ。その場で王子は激昂し、護衛のマークスがその時、身を(てい)にして止めに入らなければ、サザーランド侯爵を一刀両断で斬り殺していたらしい。その時の王子の形相は恐ろしくまるで人が変わったようだったと小さな時からずっと護衛に着いているあのマークスがそう言って私に助けを求めて来たのだ。ちょうどその時、両陛下からも父上に相談があり私とレクサスは王子を旅に連れ出す事を提案したんだ」

横で黙って聞いていたレクサスも静かに頷く。


「身分を隠して私とレクサス、カレブ、サルトと旅をする王子は誰に気がねなく自由に過ごせたことが良かったのか徐々に普段の王子の様子を取り戻していった。初めに訪ねた隣国、アスラン国王子のサラート様、ああ、今はトマだが、そのトマも王子と気があったみたいで一緒に旅に出てくれたのも良かったんだ。だが、深夜、王子の様子を見に行くとひどくうなされている事が多かった。レクサスが寝る前にハーブティーを調合すると素直には飲んでくれるのだがそれでも夜中には目覚めるようなのだ。だからぐっすり眠れるようにと皆が酒をすすめたのだが一口も飲もうとはしなかった」


そんな事が・・・

俺はこんこんと眠るレオリオの頭を撫でた。



「お兄様がレオリオの中にもう一つの人格があるって気づいたのはいつです?」

「帝国に行った時。髪を・・・」

「賊に切られた時?」

「シルフィーヌ!お前、知っていたのか!?」

「その賊が誰か見当はついてますよね?お兄様?」

「ああ、まぁ?」

ルカがハルクをちらりと見るとハルクがそっぽを向いた。

そんなハルクの頭を俺はもう一度(はた)く。

今度はルカが俺を止めた。


「それは、その事についてはもういいんだ、シルフィーヌ。賊が立ち去ってすぐに王子が髪などどうでもいいと言ったからな。だが、その後に・・・彼女のいない国など潰されようがどうなっても構わない。僕に必要なのは彼女だけだ、と続けて言ったのだ。その時の王子はニィと口元を歪め、血走った眼の・・・まるで夜叉のような形相だった・・・正直、その言葉にもその笑顔にも私は一瞬凍り着いてしまった。余りの恐怖に王子は気がふれてしまったのかと思った程だ。しかし、その瞳の奥底に口先だけではない何かを感じた・・・そう、自分が今までそうして来たから構わないと言うような妙な貫禄だ。そしてそれが次期王であるレオリオ王子の本心なのだと改めてわからされたのだ。本当に王子はシルフィーヌだけしか見ていないのだと。それはオールウエイ国の終わりを見る事だと私に覚悟させるには充分な出来事だったんだよ、シルフィーヌ。多分、その時の王子が、サザーランド侯爵に手を掛けようとした時のマークスが見たのと同じ〝者”だったのだと思う」

「ダグラス王?・・・」

俺がそう確認するとルカがゆっくり頷く。

「そうか・・・もう既に出ていたのだな?だから皇帝は心配したわけだ・・・なるほど」

ハルクが俺に叩かれた頭を自分で撫でながらそう呟く。

「一馬!ちょっとは自覚してよ!ダグラス王が出てきた引き金は一馬じゃないの!!」

俺はそう怒鳴ってハルクの頭をまた叩こうとしたのをバルトが羽交い絞めにする。

「落ち着け、シルフィーヌ」

「そうだ、シルフィーヌ」

「だって!バルトッ!お兄様もッ!」

「王子の中には産まれた時からお前達が言うダグラス王がいるんだ。なら、遅かれ早かれ表に出て来たはず。きっかけなどはどうでもいいんだ、シルフィーヌ。お前の中のリョウが目覚めたように、お前がリョウでもあるように王子はダグラス王でもあるんだ。だから余計に私は王子がお前の伴侶となる事が正しいのか悩んでいる」

「お兄様・・・?」

「バルトならと正直思っている。今となってはハルクのもとでバルトと」

「お兄様!今、ご自分で言われたではありませんか?王子には私が必要だと!?オールウエイ国の存続には私が必要だと!」

「お前がこれ以上、国の犠牲になどなる必要はない。それにバルトならお前を安心して任せられる。これは前に婚約破棄を決めた時のアントワート家の総意でもあった」

「待ってくれ、ルカ。俺もシルフィーヌも今まさにみんなが生き残る道を模索しているんだ。今から向かうサンタクラークの件もそうだし、ハルクとミシュリーナも一緒に乗り越える為に知恵と力を貸してくれている。それに・・・何といってもここで俺が無理矢理シルフィーヌを(さら)って逃げても誰も納得しない。特にこいつがな」

バルトが羽交い絞めにしていた俺を放すとそう言って俺の頭を撫でた。


「バルト・・・残念だが王子の中のダグラス王にはそんな事は通じない。ダグラス王にとって先程取った行動が答えなんだ。周りに囚われることなどない、利己主義者(エゴイスト)なのだよ、ダグラス王と言うのは」

ルカがバルトを見つめながらそう断言する。


そんなルカにバルトは首を振り返した。


「ルカ。ダグラス王はアイシス王妃と出会いオールウエイ国の基礎を作った人だ。それは紛れもない事実。そして身分や偏見などに囚われず、愛する人と添い遂げるのが一番幸せだと言うオールウエイ国特有の素晴らしい〝きまり”を作った人でもある。例えそれがアイシス王妃が作り上げた〝きまり”だとしてもそう思った側にはダグラス王がいたはずだ。なら、絶対に王子の中のダグラス王にも訴えられるものが必ずあるはずだ。俺もシルフィーヌもルカだって、オールウエイ国が誇らしいだろう?その国を代々守って来た王の子孫なんだ、レオリオ王子は。そして俺達もそんな王達を支えて来た家臣なんだ。ルカ、お前が考えている事は俺もシルフィーヌも同じだ。俺達が戦う相手は一緒だ。まずは王子の中のダグラス王にアイシス王妃と作り上げたオールウエイ国がどれ程素晴らしい国か、ダグラス王の子孫達、家臣達がどれ程この国を愛しているかわからせてやる」

俺もルカを見つめ大きく力強く頷く。

レクサスもルカの手を引いて大きく頷いた。


ルカが眠っているレオリオを見下ろす。


「ルカ、お前の言いたい事、俺はわかるぞ。俺だって亮の兄だからな。みすみす不幸になる確率のある相手にやるなんて許せないのだろう?だがな?こいつの中ではレオリオ王子もバルトも救う事はもう決まっているんだ。だからこのバカ弟を俺達と一緒に救ってやってくれ。こいつは小さな頃から初めに与えたおもちゃを大事にして離さないんだ。いくら新しい綺麗な性能の良いものを与えても、いくらこちらがいいのだと教えてもいつもかたわらに抱きしめているのは初めに与えたおもちゃなんだよ。要するに融通が利かない頑固で馬鹿なだけなんだが。だが、それを一生愛して大事にするのもこいつなんだよ」



ちょっ、ちょっと待て?一馬、一見、いい話に聞こえるが実際は俺の事、随分な言い方じゃないか!!


「ああ、ハルク。わかってる。私の妹のシルフィーヌは面倒見のいい、貴族とは思えないお人良しなんだ。正直者すぎてアントワート家のような政治一家には全く相応しくない。まして王妃なんて、臣下に厳しく接して規律を教える国母になるなんて本当は無理なんだって私達家族が一番知っているんだ・・・だけどシルフィーヌは我がアントワート家のかけがえのない宝物なんだ。とても素直で可愛い、私が守らなければならない家族なんだ。そして国民や臣下達もこのシルフィーヌの笑顔を愛してやまないんだ。本当に国の大事な宝でもあるんだ。これでも」


お、お兄様・・・?お兄様までシルフィーヌの事、そう思ってたの・・・?

俺、笑顔が可愛いだけのただの馬鹿?

要するに馬鹿な子ほどかわいいと言うあの、ポジション?!


「ああ、わかってるな?ルカ。やっぱり気が合いそうだな?」

「ああ、シルフィーヌの事に関しては同じ意見だな?」


そう言って二人はガッチリお互いの手を握り頷いた。


「おいッ!!黙って聞いてればッ!私の扱い、酷いよッ?!一馬もお兄様もッ!!何!?それって!?私、ただのバカなの!?」


「「改めて言うな」」


あきれた顔で、けど、変に生暖かい目でこちらを見た一馬とルカにハモられた。

バルトとレクサスが俺の肩を掴み凄く納得した顔で頷いている。



お前ら!!そんなとこまで意気投合するな!!









西日本に住んでる私は今回の台風凄かったです。

皆様、大丈夫でしたでしょうか?

更なる災害に結びつかないように祈るのみです。

今日もお読み頂きありがとうございました!

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