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女王の証の件

今日もよろしくお願いします!

「「うわぁお!!」」


俺と紗理奈が馬車の窓からタマリ宮殿敷地内にある大聖堂を見上げ叫んだ。


「玉ねぎだ!紗理奈。先端、玉ねぎ!」

「玉ねぎよね、亮!タージマハル・・・?って事はインド?・・・って言うか、凄く色とりどりなんだけど・・・」

「どっちかって言うとクレムリンの大聖堂と同じだよな・・・?」

「ああ、そうそう、ロシアだ!そうだよ、一馬の言う通りだよ、紗理奈。この色とりどりのオニオンヘッドは赤の広場にあるやつそっくりだ。絶対ここのモチーフってロシアだよね?・・・てか、ここは冬、雪が深いんだな?」

「なんで雪が深いってわかるのよ?リョウ?」

「ああ、サロメ、雪が落ちやすいようにああ言う形なんだって。知ってた?紗理奈」

「知らなかった。そうだったんだ。へぇー、そうか、確かに色もハッキリしている方が雪が深くても遠目から確かに見つけやすいわしね?それに一面の銀世界の中ならもっと素敵よね?亮、スマホが無いのがもどかしいわ!みんなで記念写真撮りたい!」


「タージマハル?インドにクレムリンにロシア?またそれって前世の物なの?ミシュリーナ?」

「スマホ?」

セルフィとサロメが俺達の会話に首を傾げる。


「「おお!その反応、スッゴく楽しい~!!」」

俺とミシュリーナが声を合わせる。


今朝、帝国から10日近くかかって俺達はここタマリ王国の港に着いた。

港からおよそ一時間馬車で揺られ今、やっとタマリ宮殿の門をくぐったのだ。

この馬車には俺ことシルフィーヌ、紗理奈ことミシュリーナ、一馬ことハルク、それにダグラス皇家、セルフィとサロメ兄妹が乗っている。

そして後続の馬車にはアレン、バルト、フリードが乗っている。


今回、このタマリ国へミシュリーナを送り届ける任務は約束通りセルフィが受けた。

すると護衛にフリードが名乗りを上げたのだ。

本来なら近衛兵長のレイモンドが一緒に来るはずだったのだが帝国に戻ったアイリーンの護衛として残った事とフリードが休暇も含めた旅行と称してカルロス皇帝に直訴したらしい。

するとそれにちゃっかりサロメも便乗したのだ。

その際、アイリーンも行きたいと言って一馬を困らせたそうだがハルクが帰るまでに結婚式の準備をしろと皇帝に命令され泣く泣く帝国に残った経緯がある。(ウェディングドレスの採寸、時間かかるもんね)



「モチーフって?どう言う事?ミシュリーナ、教えて」

「ん?セルフィ様、ロシアは前世の私達が住んでた世界の大国でね?その国にある大聖堂、なんて名前だっけ?一馬?」

「正確には赤の広場にある聖ワシリイ大聖堂。映像でしか俺も見たことないがな?ソックリだ。イマイチ大きさがピンとこないがな?」

「兄貴・・・まさかこの先にはエカテリーナ宮殿があるとか・・・・」

「いや、あれはさすがにデカすぎだろう」

「ミシュリーナ、君のお祖母様である女王の名前は確かエカテリーナだそうだよ?」

「え?本当?セルフィ様」

「って事はだな?・・・・」


「「うわぁお!!」」

また、俺と紗理奈が声を上げた。


デカッ!宮殿!!




「タマリ王国、エカテリーナ女王は女帝ではないけれどその政治力、行動力、発言力は優れこの一帯の国々を従えさせる統率力がある。この北の国々の中でも1、2を争う実力者だ。まだ帝国にはなびいてくれないので今回のミシュリーナの件でいい関係が築ければと僕もカルロスも思っている。もちろん、シルフィーヌの国、オールウエイ国からもミシュリーナを預かっているからね?オールウエイ国と3国で同盟が結べればいいと思ってるよ?」


馬車が進む側道脇に凄いオブジェの数々が飾られていて大きな噴水も見える。

いちいちそれに感嘆の声を上げている俺とミシュリーナにセルフィがそう、これから会う目的を話してくれた。

そしてセルフィのその説明にハルクが補足した。


「世界地図で帝国を中心に見ると北にタマリ王国、東にオールウエイ国、南にカザフ大国、そして、西にイスラン連邦が位置し、この5つの国が今、この世界の主導国だと帝国は考えている」

「カルマ王国は西のイスラン連邦に属するんだよな?一馬」

「ああ、そうだ。亮。フリードが探って来た情報だが、今イスラン連邦の主導権はほぼ実状、カルマ国王のソロモン王が握っているのだそうだ」

「ソロモン王・・?カルマ国第2王子であるディーンはこの世界の覇者になるのは自分だと言ったよな?」

「ソロモン王はディーン王子の7つ上の兄で5ヵ月前に急死した王に代わり即位したばかりだそうだ」

「『印』は?ソロモン王の情報はあるかい?」


俺のその言葉にセルフィが答える。

「カルマ国の先祖は移動型民族のジプシーなんだ。だからそのルーツは色んな民族が混ざり合い本当に謎なんだ。ただ、帝国が出来た頃にこの大陸を追われ一旦は西の聖地と呼ばれるサンタマリスで国を築いたのが始まりだと聞いている」

「西の聖地だって・・・?」

「なんて?今、なんて?サンタマリス?」

「ああ、サンタマリスだミシュリーナ。この世界には四大聖地と呼ばれる場所がある。西のサンタマリス、南のサンタクロス、東のサンタフォール、北のサンタクラーク」

「ああ!出て来るよ、創世記にも。この世界が同時に生まれた場所だって。ただ、諸説は色々とあって確か、今聖地と言われている場所が確かではないと書かれていた。そう、場所は定かではないと」

「そう。リョウ君の言う通り。場所は定かではないんだ」

「何故、定かではないの?お兄様」

「『印』の力を持っていなければその聖なる力には共鳴しないから普通に人間にはわからないのさ、〝聖なる力″が何かね。だから場所が特定できない」

「なら、少なくともカルマ国初代王は『印』の持ち主でその〝聖なる力″の恩恵を受けている。しかも場所がわかっている?」

「今のセルの話だとそう考える事が出来るな・・・まことしやかに豪語しているだけの小国だと見過ごしていたが、あのディーン王子の『印』といい、印持ちを見分けるカシューダの民のような力といい・・・なまじ嘘とは思えないな」

ハルクが眉をひそめる。


「四大聖地・・・聖なるマリスは海?それにクロスはサザンクロスと同じで星かしら?あとフォールは素直に滝かな・・クラークは谷?大地のひび割れだから・・・それに『王の印』と共鳴する聖なる力・・・東はサンタフォール・・・滝・・・」

ミシュリーナが下を向いて小さな声で呟き考え込んでいる。


「ミシュリーナ?もう着きそうだよ?」

そんなミシュリーナの頭をセルフィが撫でた。





謁見の間で完璧な淑女の礼をし、堂々と挨拶をしたミシュリーナを王座に腰かけたままのエカテリーナ女王が不遜に見下ろす。

上座に座るエカテリーナ女王は凄い貫禄のおば様だ。まるで外国版、三輪〇宏だ。

その顔はやっと見つかった大事な息子の忘れ形見の孫娘を迎えるおばあちゃんの顔とはとうてい思えぬほど不機嫌だ。


それにここに来る途中までの宮廷の立派な廊下にミシュリーナの父親である亡き皇太子の大きな肖像画が飾られていた。

それを見た俺と紗理奈は思わず叫びそうになった。

そこにはブルネットの栗色の髪に赤い瞳の大変美しい麗人がいた。

それはそれは本当にそっくりだったのだ。

俺の横に立つミシュリーナの容姿に。そう、タレ眼以外を除いては。



思わず、髪飾りいらないんじゃねぇ?って俺が思ったほどだ。



なのにだ。

なのに、ミシュリーナを見たエカテリーナ女王は眉一つ動かさない。

更に証拠の『髪飾り』を差し出してもだ。


そして良く響くその声でこう言った。


「孤児院で育ったと聞きましたが?その立ち振る舞い、その言葉使い、それに先程の受け答え、平民なのに十分すぎる教養があるのはなぜかしら?・・・これまで来た偽物の子供達は私と容姿が似ている者もいれば息子と特徴が同じ者もいた。髪飾りも随分立派な物を持って来たわよ?今日のようにねぇ?でも貴女はその中でも群を抜いて息子とそっくり。それに髪飾りは本物。私が傷つけたひっかき傷があるもの、間違いないわね。だけどもね?こんな物は盗めば持って来れる・・・いくら皇帝や東のオールウエイ国王の信任状付きでも私の眼はごまかせない。さあ、ここに、いらっしゃいな。ミシュリーナとやら」


ミシュリーナは俺達が見守る中、言われた通りに上座の女王の前に立つ。


「いいから。もっと近くに」


上座への階段を上がると玉座にふんぞり返る女王を見下ろす格好となるのでミシュリーナは急いでその場に跪く。


「手を、両手をお見せ!さあ、早く!」



その凛とした声にミシュリーナが恐る恐る両手を差し出す。

するとその両手を女王は素早く掴みじっくりと眺める。


「フン?成程・・・確かに・・・似つかわしくないよく働く小作農達のような節やマメがある手をしている・・・」


今度はその両手をひっくり返すと手の平と、指先を確認する。

すると女王は片手を放し天井を見上げた。そして素早く額の上で十字を切ったかと思うとミシュリーナを思い切り抱き締めたのだ。


「よくぞ・・・よくぞこの国に・・・私の元に戻りました。貴女は間違いなく(わたくし)の孫。このエカテリーナの息子、この国の皇太子ラスの娘!」




タマリ一族は女性にだけ、それも代々王位を継ぐ者だけにある特徴が手相と指紋にあるそうだ。

それがわかるのも代々の女王だけだそうだ。





「良かったよね?紗理奈」

「良かったのかな?亮」

「良かったにきまってるわよ?ミシュリーナ?」


ミシュリーナの為に用意された部屋のベットで俺とサロメ、紗理奈がもう寝るだけの恰好で転がっている。

3人頭を突き合わせてそう言ったのだが。

「えー、亮もサロメ様も他人事だと思って~。何か実感ないわ~。明日から女王様教育って・・・ないわ~、なんか、無理だわ~」


「「他人事だも~ん、ねッ!」」

俺とサロメはお互い相槌を打って笑う。

「やっぱり、オールウエイ国、亮と帰る。やだぁ、何か一人って・・・」

「じゃ、お兄様しばらく置いとく?不思議とミシュリーナの事気に入ってるのよねぇ・・・私は構わないわよ?ミシュリーナならお兄様ずっと一緒にいそうだし」

「え?」

「え?サロメ・・・何それ?いいの?それ?フリードはどうするんだよ?」

「何かね?子供が欲しいみたいなのよね?セル兄様もフリードも。だからミシュリーナなら子供うめるでしょ?どうかな?真剣考えて?」


「「え・・・?マジか・・・」」

思わず紗理奈と俺は口をあんぐりと開け、サロメを見つめた。



ちょうどその頃、セルフィの部屋のドアをフリードがノックしていた。








次回上手くセルフィの想いとフリードの想いが・・・?

ついでに恋バナ突入で行きたいんだけどな・・・

今日もお読みいただきありがとうございました!


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