『ウロボロス』と呼ばれた男の件
『ウロボロス』と呼ばれた男ーー
そう、彼は帝国創設王であるセフィード王の兄だ。
初代王は『ウロボロス』である兄のダグラス王を殺しダグラス帝国を築く。
帝国の前身だったダラス国の王であった兄のダグラスは破壊と殺戮にしか興味がなく自分と同じ『印』を持つ王達を見つけると『印』の形を確認する為とはいえ片っ端からその者達に手を掛け皮を剥ぎ収集する事だけを目的とし後に残されたその国の民などには興味がなくその国を破壊して行ったのだ。一方それを見かねた弟のセフィードは統治者を無くし途方に暮れたその国の民達に生きる知恵を与え、援助し、教育して治安を築きその人々の信頼を徐々に得て救世主と崇められて行ったのだ。
そう、兄ダグラス王は恐怖でこの大陸を破壊したが、弟セフィードはその知恵でいくつもの国を統治して行き今の帝国を築いたのだ。
セルフィが俺とバルトに皇帝一族だけが知りえる過去話として語ってくれた事だがここで俺達は疑問にぶち当たる。
帝国の名前がその『ウロボロス』である兄、ダグラス王の名前であることだ。
そして姓をわざわざダグラスにした皇帝一族。
自分の手で殺した兄の名前をこれから治めなければならない国に名付けるのだろうか?
まして自分達は『ウロボロス』の一族であると声高々に宣言するのだろうか?
その行為は弟セフィード王が兄ダグラスを何かの形で残したいと言う思いが伺える。
兄ダグラスは弟のセフィードには信頼を置いていたはずだ。
なぜなら彼も『印』持ちなのに兄ダグラスは弟のセフィードを殺してはいない。
そして弟のセフィードもだ。
兄の仕打ちに苦言を申すなら帝国を統治できるほどの人物だ、早急に手は打っていたはずだ。
それに過去のふたりの関係と性格は今のカルロス皇帝とセルフィとダブらないだろうか。
ダグラスはセルフィ、セフィードはカルロス。
俺と兄貴、バルトは以上の事から仮説を立てた。
ダグラスは王としての資質が自分にはない事に気づき弟に自分の国を託したのではないか。
後腐れが無いように縁を断ち切る為に"殺された"と偽り、消えたのではないのか。
自分の行いが今から始まる弟の国の歴史に汚点を残さぬようにーー
そして
そしてだ
その後の『ウロボロス』はどうなったのだろう?
『ウロボロス』を持つダグラス王はーー
オールウエイ国初代王アーサーは『ウロボロス』であった。
それに時代が見事に符合するのだ。
そう、帝国とオールウエイ国は創設時期がほぼ変わらないのだ。
ここから導かれる答えは一つ。
オールウエイ国初代王アーサーはダグラス王であると言う事。
彼は死出の旅の途中で〝救いの印″である『勾玉巴』を見つけたのだ。
そう、初代王妃アイシスをーー
兄貴が懸念した心配事はこの仮説から導かれる。
そう、オールウエイ国時期王であるレオリオ王子がアーサー王であるダグラス王と同じ『ウロボロス』であることだ。
先祖返りなのだ。レオリオの『印』は。
「紗理奈、やっぱりレオリオ王子にはシルフィーヌの『印』が必要だと思う。それじゃなきゃ『殺戮者』であるダグラス王になるかもしれない」
「亮、私が言いたいのは帝国が出来上がる為には『破壊と創生』と言う過程があったわけよね?」
「『シヴァ神』の方?じゃあ、俺と兄貴がかかわる方が危ない?」
「違うの、亮。ほら、捕らわれてる。私達が住んでいた前世の世界でも同じような歴史の繰り返しじゃない?古い国は潰れるから新しい国が生まれる。年寄りが死ぬから次の世代の子供達がその知恵のより良い部分を受け継いで行くのと同じ。古い物は新しい物に淘汰されていく。そこに『印』が存在したからなんて理屈は関係ない。なくても歴史は動く。いい方に解釈するか、悪い方に解釈するかはその時代に生きた人々が自分たちの都合で解釈した事実に過ぎないって事が言いたいのよ」
「『印』がある人物がかかわるから歴史が動いたんじゃなくてたまたまそれをした人物にその『印』があった?」
「そう。だからたった一つの過去の事例をこれから起こる未来に当てはめて全てだと解釈するのはおかしいと思わない?だから『ウロボロス』」
「可能性は『無限大』のウロボロス?」
「そう、私はレオリオ王子とバルトの『印』は可能・不可能を含め全ての無限を含んでいると思うのよ?」
「それって・・・紗理奈、どう解釈するの?」
「AIのパターン化されたプログラミングでは到底予測できない奇跡が起こせる。それも双子ちゃんウロボロスで効果倍増!!」
「・・・・・・案外、楽観主義者なんだね?・・・紗理奈」
「ここはどこなのかな?亮。私達がこの足を踏ん張って立ってるここは?」
「『パウンダリー』?」
「そうよ。トラウマを乗り越えて希望の未来を手に入れるゲームの世界。そして私は誰?プロゲーマー!!攻略してやろうじゃないの?『ウロボロス』を使ってね?」
「ハハハ・・・力強いよ、紗理奈・・・」
「あ!あんまり期待してないな?まあ?力技は一馬と亮に任せる。けどね?ハルクのゲームの題名、なんだった?」
「Do as Infinity・・・無限に広がる・・・?」
「そうだよ。ハルクのゲームはゲームの中ではプレーヤーの夢や希望、可能性が無限に広がるって意味からその題なんだよ?あのね?一馬はこの『パウンダリー』はお兄ちゃんからの私へのレクイエムだと言ったわよねぇ?」
「うん。俺もそう思うよ?紗理奈」
「なら、余計にそうよ。お兄ちゃんは自分のゲームを途中で投げ出したりはしない。まして私へのレクイエムならきっと主人公が必ず最後は幸福になるのよ?だって私はハッピーエンドになるならいいゲームね?ってお兄ちゃんに提示しているわ?そう、このゲームの最終はハッピーエンドなのよ?亮」
「希望を持っていいって事?」
「もちろん。私達、兄妹を信じなさい?佐伯兄弟、私達は信じてるんだからね?どうするの?亮?」
「フフッ、そう言うの、俺、スッゴイ好きだわ。信じるよ、紗理奈と田代監督」
「なに、信じるんだ?」
俺と紗理奈は後ろから頭を撫でられて振り向くとバルトが立っていた。
「ああ、バルト。この先に待ち受けている未来の事よ?バルトはどう思ってるの?これからの未来?」
「あ、聞きたい、バルト、私も聞きたいな?」
ミシュリーナが背の高いバルトを見上げてそう尋ねた。
「うん?俺はお前らが無事に過ごせる未来だけを信じる。そう言う未来になるならいくらでも力を貸す。まあ、その為には俺が率先して周りにいる多くの人達に信じて貰えるようにならなければいけないけどな」
「バルト!!屈んで!!」
「ん?こうか?ミシュリーナ?」
ミシュリーナの前にバルトが屈むとミシュリーナはバルトの頭を撫で返した。
「偉い!!ほんと、偉い!!もう、どうしよう!!ってくらい、バルトは偉い!!」
「え?なんだ?わからないけど、ユリアに褒めてもらってるみたいで嬉しいけどな?ククッ」
「なにやってるんだ?お前ら?」
今度はアレンがやって来た。
「ああ、アレン?ここ、ここ座って」
俺は隣に置いてある空いている椅子を勧める。
「いや、もうケガ人扱いは無用だ、シルフィーヌ。この通り、俺様、復活!!」
そう言ってアレンは俺とミシュリーナの頭を撫でるとついでにバルトの頭も撫でた。
「ねぇ?アレン様はなんで私の頭撫でるんですか?」
「うん?可愛いからに決まってるだろうが?ミシュリーナ」
「じゃあ、何で私も撫でるの?」
俺が尋ねる。
「ついでだ」
「俺は?」
バルトも尋ねる。
「ついでのついでだ」
「「・・・解せん」」
俺とバルトが同時に呟いた。
「次の港でブランチだ!!ミシュリーナ!!」
今度はセルフィが走って来た。
あ、ミシュリーナ撫でまわして抱き上げたと思ったら、あ、俺の頭も撫でるんだ。
で、バルトはと言うとラリアートだ・・・そんなバルトを俺とアレンが助ける。
「セルフィ様?どうして私の頭を撫でるのですか?」
セルフィに抱き上げられたミシュリーナが尋ねる。
「ミシュリーナがとっても可愛いいからに決まってるじゃないか!」
「じゃあ、何で私も撫でるんですか?セルフィ様?」
「もちろん、シルフィーヌも可愛いいからだよ!」
「じゃあ、俺は何なんです!!セルフィ様!」
「・・・リードが・・・バルトが可愛いって言ったから僕もかわいがろうとするとそうなるんだよ?僕の愛情表現?」
それ・・・焼きもちだよ・・・セルフィ
「ミシュリーナ、シルフィーヌ、シフォンケーキ食べに行くぞ」
あ、今度は兄貴とアイリーンだ。
あ、兄貴、俺とミシュリーナの頭を同時に撫でると今度はアレンの頭を撫でた。
「ハルク様も私の頭を撫でるのですね?」
「うん?撫でたか?ミシュリーナ?」
「私も撫でたわよ?」
「そうか?亮、無意識だ」
「俺も撫でてるぞ?」
アレンも尋ねる。
「・・・ついでだ」
そう呟いたと同時に兄貴は横に立つアイリーンの頭を撫でまわした。
「「なんだよ?それ・・・?解せん」」
俺とアレンが同時に首を傾げたらミシュリーナとバルトが吹き出し、笑いだした。
セルフィもアイリーンの幸せそうな顔を見て笑った。
本日も長文、おつきあい下さりありがとうございました!!




