レクイエムの件
今日もよろしくお願いします!
「うそうそ!マジマジ!?信じられなーい!!キャー!!一馬様!!」
「紗理奈?一馬の事もファンだったの?」
約1年近くぶりで再開したミシュリーナはサルクドール男爵夫人と仲良く俺達を迎えてくれた。
俺は身分を隠さずミシュリーナの友人として用があると言う名目でダリとゼータを含む4人も俺のお付きだと説明しサルクドール男爵夫人に今夜の宿の申し入れをしたのだ。
夫人はその場でかしこまり、快くいつまでも御滞在下さいと腰を折った。
サルクドール男爵家は田舎とはいえ、十分なたたずまいの館を持ち、使用人の数も多い。
なるほど、ミシュリーナ一人、引き取ったところで別に何も問題はなさそうな裕福さだが・・・・
そして通された応接室も立派で、俺、ミシュリーナ、ハルクの3人だけで話せるように夫人はお茶を用意すると会釈をして出て行った。
だから俺は日本語で一馬を紗理奈に紹介したのだ。
「もちもち!!ろんろん!!佐伯兄弟ファン!!それもハルク様に転生って!もう、もう、ヤバすぎ!どうしよう、亮!」
俺の対面に座る紗理奈は上半身を乗り出してこれまた俺の横に座るハルクを見つめてうっとりだ。
「よろしく、田代さん。様はいらないんだけどな?」
そんな、ハルクが日本語でしゃべるのが俺もゲームではそうだったのになぜか馴染めない。
「ぜひ!その声で紗理奈と呼んで下さい!一馬様!」
「じゃあ、紗理奈、俺の事は一馬で」
「く~ッ!しびれちゃう。ハイ、一馬。って、いやん、ハズイ、それにカッコイイ~!!ハルク様!どうしよう!亮!」
「わかったから、紗理奈。どうもしないから。落ち着こうか?それで本題に入るけどさ?」
ダリとゼータ、それとアレンは先程、パルム宿場に引き返し偵察に向かった。
みんな目立つのでバラバラで顔隠して行かないと絶対スカウトされるし、俺なんか行くと絶対絡まれるからって先にサルクドール男爵家に俺を送ってくれたのだ。
「紗理奈と夫人は別に怖い目とかにあってないの?」
「ああ?亮もそう感じた?そうね、領地の中にたくさん怖い人達が行き来してるものね?」
「男爵、やっぱり脅されてるのか?紗理奈でも気が付いてる訳だろう?何で通報しないの?」
「うーん、ちょっとヤバいかもしれない。サルクドール男爵家」
「絡んでるほうなの?男爵って。紗理奈はミシュリーナとして引き取られた理由は察しが付いてる?」
「うーん、まぁね。まさか、お兄さん二人も出来るなんて私も思わなかったし。ゲームでは跡取りとなる為だったもんね?だからね?私がタマリ王国の王位継承者だから引き取ったって考えるのはどう?」
「じゃ?狙ってるのはミシュリーナ自身なのかな?」
「うーん、本当はヒロインのシルフィーヌだったのよね?それか・・・アイテムだけかもね?」
「ああ、髪飾り?」
「髪飾りって?亮?」
「そう、髪飾り。一馬、知ってます?『永遠の誓いを君に』の隠しキャラ、学園の数学教師」
「ああ、えっとだな・・・ヘイワーズ?ヘイワーズ・ボルガー」
「「ピンポーン!!」」
俺と紗理奈が声を合わせる。
「アイツがいるのよねぇ?何故か。パルム宿場で労働者募集を募ってる雇用所の面接官に」
「マジか?それ!」
「どう言うことなんだ?」
「二週間前に男爵がヘイワーズに私を会わせたの。すっごく、びっくりしてた。そしてつぶやいたの『なんだ・・・本当に悪役令嬢とは・・・』だって」
「「転生者!」」
今度は俺と兄貴がハモる。
「ピンポーン!!でね?私に生れた時から身につけてるものはなかったか?って聞かれたわ。それってタマリ王国の王位継承者の証である女王の髪飾りの事よね?」
「で?どうしたんだ?それで」
「全然わからないフリしときました~!フフッ。だって私もやっと手に入れたのよ?渡すわけないわ」
「じゃあ、まだミシュリーナも転生者って解ってないんだ?ヘイワーズは」
「ええ。わかってたら多分、アイテムだけ奪われて私殺されてるわよねぇ?だって、ヘイワーズ、お前?シルフィーヌ、知らないか?って。そうだ、あいつが持ってるのかな?って」
「ヤバいぞ、亮」
「ああ、今晩、いや、男爵と一緒に帰って来そうだよな?」
「紗理奈?ヘイワーズ、『王の印』ある?」
「あるわ。私にないかって右肩見せたの。ちょうどハルクの拳くらいの大きさよ?私が何ですか?それ?ってとぼけたら、ああ、女だから無いかって笑って言ったの」
「ヤバいじゃ~ん!激ヤバじゃ~ん!」
「それに亮の言うように男爵は脅されてると思うのよ?サルクドール男爵家は基本、領地思いの良い家族なのよ?けど、どうもカルマ王国に留学している長男のセスからの手紙が来なくなって、それからヘイワーズを含む変な輩がこの領で人集めを始めた。それって、セス、そいつらに人質に取られてる可能性大だと思わない?だから亮が来てくれて正直、凄くヤバいと思ってるのよね?今の私」
「うお~ッ!!更にヤバいじゃ~ん!スッゴク、マジヤバじゃ~ん!俺!なぁ?兄貴」
「やっぱり絡んでくるな?第2王子の野郎」
「第2王子・・・?まさか・・・カルマ王国、ディーン王子の事?」
「『王の印』を持っててね?多分『永久の誓いを君に』の中では一番強いかもしれないのよ?ディーン君」
「え!マジ?うそっ?スッゴク、モブ近よ?ディーン王子。ちょっと我がままで横柄だけど攻略すればツンデレキャラなのよ?」
「ああ、そうだ!!紗理奈、この世界、どうも田代監督のゲームのキャラが入り乱れてるみたいなんだ。それも最新版のゲームの中っぽい」
「お兄ちゃんの?」
「ああ、やっぱり。紗理奈は田代監督の妹さんだったのだな?」
「そうです!一馬。亮には言ってなかったっけ?最新ゲーム?ここが?じゃ、最後のやつかな?私が死ぬ間際に作ってたやつ・・・」
「『パウンダリー』?」
「ん?そんな題なの?そんな名前だったかなぁ?・・・でも、確か過去キャラでそれぞれのトラウマを乗り越えるゲームなんてあったらどうかな?って相談された・・・そうだ、そう。うん、それでハッピーエンドになるならいいゲームだね?って・・・ああ、そうだ!ミシュリーナのトラウマって、母親が死ななかったら変わってたかもしれないよね?って言われて、違うわ、顔がヒロインならOKじゃん。だって、レオリオ王子は顔が好きなだけなのよ?シルフィーヌの顔だけ。最悪よねって・・・私、笑って・・・?って、私・・・え?」
「他には?何て?紗理奈。監督に何て言ったかな?思い出してくれ」
「ハルクと一緒のセルフィ、好きなの私。そして、フリードも。バルティスとロトみたいな男の友情に目覚めるの凄く良くない?だって、二人は幼馴染でとってもわかり合ってるのだもの、結ばれたらいいなって言ったかも・・・まさか・・・何か、迷惑掛けました?ハルクのゲームの方にも?まさか・・・原因・・・私?まさか、お兄ちゃん・・・私の要望みんな入れた・・・??」
「紗理奈、田代監督はこの世界の基盤となるそのゲームを紗理奈に捧げたんじゃないかな?小さな頃から病弱な妹が難病を乗り越え奇跡を起こして来た。その弱い身体に宿る強い生命力で。でもその人生が見て来たのは狭い病室の中だけの世界。だから妹が、ミシュリーナになったならきっとゲームのキャラ以上の奇跡を見せるんじゃないか?きっとレオリオ王子を跪かせるくらいの悪役令嬢を演じるんじゃないかってね?だからこれはこのゲームは愛しい妹への監督からのせめてのレクイエムじゃないのか?」
「ん~ッ・・・・!まあ、無くはないかも。お前ならどう乗り越えるって良く聞かれたから。でも何で私のミシュリーナは乗り越えられなかったんだろう?お兄ちゃんの考えつく事は結構わかってたんだけどな?だって私、プロゲーマーなのよ?これでも」
「「プロゲーマー!?」」
兄貴と俺は心底驚いた。
「マジ?本業ゲーマーなの?」
「一応、お兄ちゃんの会社に所属してるし、お給料も貰ってた。だから、病院の個室でいつもゲーム三昧!それに一番にプレイするのはいつも私!バグ検査はいつも私!」
「なんてことだ・・・そんな紗理奈を田代優弥は失ったんだ・・・だからか?だから、AI 」
「AI?AIって、人工知能の事?」
「そう、田代優弥は紗理奈を失い途中でこのゲームを投げ出したんだ。悲しすぎてAIに全てを託したんだ・・・」
するといきなりドアが乱暴にノックされたかと思うと二人の男が顔を出した。
「やあ、こんなに早く会えるなんてね?シルフィーヌ姫、これは運命だよね?」
お前もゼータと一緒か・・・?ディーン!!
前回、サバン→サヴァンて書いてました・・・ご、ごめんなさいです!
今日も大丈夫だったかな・・・?
読んで頂きありがとうございます。




