偵察GO!の件
今日もよろしくお願いします!
「うっせーよッ!!そこの奴ら!!今何時だと思ってるんだ!!」
二階の窓から怒鳴り声が響いた。
「あっ!!ハイッ!!ごめんなさい!!」
俺は即座にその窓に叫び返した。そしてアレンを後ろから抱き締めて宥める。
「アレン?アレン?落ち着こうか?とにかく、兄貴も。ね?部屋帰ろう?」
「「姫ッ!?」」
え?
声のする方向を見ると中庭の入口から2人の大男がこちらを覗いている。
「「姫だーッ!!本当に姫だ!!姫ーッ!!」」
その2人が俺に向かって突進して来る。
「えっ!!うわぁーッ!?なんで!なんで!!」
って、俺が両手を広げかけた途端、俺の前にアレンとハルクが一歩出たかと思うと片手で2人を突き飛ばした。
2人は面白いように吹っ飛び、しりもちをついて転がる。
「痛っったいだろうがぁぁぁ!!」
「いきなり何するんだッ!!貴様らぁ!!」
その2人は上半身を起こしながら凄い怒声を張り上げる。
「違う!!違うのッ!!ハルク、アレン、この2人は知り合いなの!!」
俺は急いで二人に駆け寄る。
「ごめん!!大丈夫!?2人とも!ほんと、久しぶり!ダリ!ゼータ!」
そう言って俺はしりもちを着いてる二人に抱き着く。
「「姫!」」
そう、ヘルダー辺境伯領、少尉のダリとゼータだ。
「なに!なに?どうしたの?何でここにいるのよ!すっごく、会えて嬉しい!!」
「それ、こっちのセリフです!姫、よくご無事で!!」
ダリが俺の顔を覗き込みゼータから奪うと抱き込む。
「あッ!!コラッ、ダリ、俺の姫だ!寄こせ!」
ゼータが素早く立ち上がるとダリから俺を掬い上げ奪い取る。
「姫、姫、会いたかった!!本当、ここで会えたのは本当に運命です。姫!!」
そう言ってゼータは俺を下ろすと素早く跪き俺の片手を掴むと真剣に俺を見上げる。
「姫、どうかこの俺と今すぐ、結婚ッ」
そんなゼータの背後からいきなりアレンが思いっきり頭を叩いた。
「ってッ!!」
「なんだ!このバカは!シルフィーヌ!」
「クソッ!!何だ!貴様!さっきから!」
殴られた頭を抱えながらもゼータは素早くアレンに振り替えるといきなりアレンの胸倉を掴んだ。
するとアレンも負けじと怒鳴り返す。
「俺は今、無性に腹が立ってるんだよ!?お前、俺のシルフィーヌに勝手に求婚してんじゃねえよ!この図体ばかりデカいだけのクソ野郎が!!」
「なんだーッ?!てめぇ、姫は俺の姫なんだよ!!俺が去年からずっと求婚してんだよ!勝手に俺のシルフィーヌ呼ばわりするんじゃねえよ!!この、顔だけのオカマ野郎!」
「いや、2人とも違うし!ア、アレン、止めて!ゼータも!!」
なんで、どっちも〝俺の”になってんだよ?
「止めとけよ?放せよ、ゼータ。お前じゃそいつ、無理だ。それに姫も困ってるだろう?」
「っさいよ!!ダリ!こんな野郎にだけは姫は渡すか!!俺の姫だ!」
「アレンも止めとけ。シルフィーヌの知り合いのようだ」
「うるさいよ!ハルク!こんな間抜け野郎、俺は認めないからな!」
「こんな間抜けってなんだよ!?ああん?!」
「あー、なんだよ?てめぇ、いつまで俺の胸倉握ってんだよ?潰すぞ?」
2人は額をつけて睨み合う。
おーい、お前らは、ヤンキーか?不良か?チンピラか?アレンもゼータもお貴族様だろう?
「ダメ!!ゼータ、止めて!アレンもいい加減にして」
「ゼータ、いい加減にしろよ?ここで問題を起こすのはまずい。任務中だろうが」
ダリがアレンの胸倉を掴むゼーターの手を放させる。
ハルクもアレンの後ろからアレンの腰に手を回し持ち上げると自分の肩に軽々と担ぎ上げた。
「!!止めろッ!ハルク!止めろよ!!」
「来い、アレン。俺と部屋でさっきの続きだ。シルフィーヌ先に戻る。ああ、それと」
ハルクはゼータとダリを見ると
「こいつは俺の大事な妹なんだよ?勝手に〝俺の”呼ばわりするな。死にたいなら別だが」
とただでも冷酷そうなその赤い瞳をより一層冷たくしてジロリと睨んだ。
「余計な事言わないでよ!もうっ!ハルクもっ!ああ、ほんと、ごめんね?ゼータ?ダリも」
2人は呆然としてハルクを見送っている。
「姫の・・・兄上でしたか・・・さすが」
「ああ、凄い迫力だな・・・兄上」
ハルクは部屋に入るとアレンをベットに仰向けに落す。
「っ!乱暴だなッ!ハルク!」
文句を言うアレンにお構いなくハルクは隣のベットに腰を下ろすとまだ湿っている髪をタオルで拭きながら話し出す。
「アレン、言う事聞けよ?」
そんなハルクにアレンは背中を向ける。
「うるさい。俺は死ぬまでお前と一緒にいるんだよ!」
「迷惑だ、アレン」
「・・・・・うるさいよ、そんなの百も承知だよ・・・」
「それに俺はお前を抱けない」
「そんなの!そんなの・・・わかってるよ・・・8歳の時からわかってるよ・・」
「それに俺は」
「わかってるって言ってるだろ!ハルクの言いたい事はもう、全部わかってるんだよ!!俺は仕事の相棒でいいんだよっ!」
「お前がついて来るのは足手まといなんだ」
「・・・何だよ?そんなに俺、ハルクの役立たずだったのかよ?重荷だったのかよ?」
「そうだ」
「嘘だね!ハルクは本当に嘘が下手なんだよ!俺が、本当は俺が必要なくせに!本当はダンにも着いて来て欲しかったんだろう!?そうだろう?いつも3人で上手くやって来たもんな?俺達怖い物知らずだもんな」
「・・・・・・アレン」
「けど、ダンは今回は無理だからな?あいつ、強いけどさぁ?普通の人間だから死んじゃうだろ?でもさ、俺なら大丈夫だ。ちょっとやそっとでは死なない。それにシルフィーヌも守らなきゃダメだしな?お前の弟ならさ?俺の弟と一緒だから。だから」
「アレン・・・お前まで失いたくない・・・俺がいなくなった後の帝国を守れるのはお前とダンなんだよ?わかってくれ・・」
「うるさいよ。生きて帰って自分で守れよ。アイリーンを守れよ、お前が!だからそうなるように俺がハルクを絶対死なせない!意地でもなッ!」
「アレン・・・」
「姫は帝国に行かれたと聞いたのですがどうしてここに?それにバルト殿は?」
ダリが真剣な顔で俺に尋ねる。
「そうですよ?姫。本当はこの夏は一緒に過ごす約束でしたよ?」
ゼータもうんうん頷きながらそう言った。
ああ、そうだったな・・・この夏はヘルダー辺境伯領に行く約束だった・・・
仕方がないので俺は今の状況を軽く説明した。
「では、お互い偶然とはいえ、どちらもサルクドール男爵家に用件があると言う事ですね?では、我々も追随致します。姫。そうすれば表から堂々と捜査できそうです」
「そうね?その方が私達も心強いし、この任務は辺境伯のご命令なのね?」
「はい。サルクドール男爵領、パルム宿場にて旅人を装った不審な輩が集結しつつあるとの情報がありました。表向きは他国の大富豪が土地開拓に必要な労働者を募っているとのことですが、どうも集まっている連中が尋常ではないのです。過去、我が国でもグランドマッスルで名を上げた猛者連や犯罪者らしき面々も含まれているらしいのです。そしてその場を提供しているのがサルクドール家なのです」
「なんですって?サルクドール家が?」
「はい。サルクドール家がただ商売として場所だけを提供しているだけならいいのですが犯罪者も含まれるような尋常ではないその者達の集まりに対して国家に何も通報がないと言うのが」
「それはおかしいわね?・・・まさか?繋がってる?」
「分かりません。ですから我々が偵察に参ったわけです」
「でも、その情報は確かなの?」
「サルクドール家はわが部隊、第3小隊長、サバンの実家なのです。サバンが先日実家に帰る道すがら多くの猛者連がパルム宿場に寝泊まりをしているのを見てすぐさま引き返し、我々に助けを求めたのです」
「サバンだって?」
俺は耳を疑った。
サバンって、あのサバンか?まさか・・・ユリアが好きになったあの美少年??
「はい。サバン・サルクドール。サルクドール男爵家次男です」
「え?サルクドール男爵家に男の子いたの?」
「はい?ええ、サバンは次男ですが長男は今他国に留学中だと・・・?」
へ?長男どころか次男もいる?じゃあ、なんでミシュリーナは引き取られたんだ???
ダリとゼータ覚えてくれてましたでしょうか?
2人とも2m越してるガッシリマッチョ。アレンもハルクも2m越してる細マッチョ。
こんな奴らのタイマン話・・・す、すみません、なんかジャンル変わってました・・・
こんな話にお付き合い下さり今日もありがとうございました!




