アレンの願いの件
今日も長くて申し訳ないです。
よろしくお願いします!!
「・・・・・」
「ん?何?アレン?」
真剣なアレンの瞳を真っ直ぐ俺は見上げた。
「・・・俺は今、只でさえ落ち込んでんだよ?いいかげんさぁ、自分らの気持ちだけ俺に押し付けないでちょっとは俺を慰めろよ?・・・ハルクもお前もさぁ」
アレンはそう言うと瞳をそらしてちょっと頬を染めた。
「あ・・・ああ、そうだったよね?うん。そうだよね?そうだよ、へこんじゃうよね?あれは。じゃ、」
俺はアレンから離れると逆にアレンの頭を胸に抱いた。
「うん。へこんじゃうよ?アレン」
「何だよ。へこんじゃうって・・・」
そう言いながらも素直にアレンは俺の胸に頭を預ける。
おお、意外だな?アレンから俺にこんな事言うなんてな?
まあ、そうだよな・・・?アレンは今、手酷い失恋中だった・・・
それも小さな時からハルク一途だったから余計だよな・・・?それに何かそれってさ・・・・
「私もね?アレン、へこんじゃう事ばっかりだよ?まだ12年しかこの世界で生きてないのにね?今、契約してるレオリオ王子との結婚だってそう。王子とは8歳になる前に初めて会ったんだけどね?知り合う前から婚約破棄されるのを知ってたの。なのにお見合いをして一目惚れ。5歳の時から絶対、王子にだけは惚れるもんかー!って思ってたのにね?」
「なんだよ、それ?」
「う~ん、その、信じてもらえないでしょうけど、5歳の時に私、山賊に襲われて高熱出して寝込んじゃったのよね?それでその時に前世の記憶がよみがえって自分の未来もその時に知ったの。ひどい、未来よ?だって私は15歳で王子から一方的に婚約破棄されて隣国の王様の第7夫人になるのよ?だからそんな未来に進まないように王子とは接点のない仕事に進む方向を5歳の私は模索したのよね?」
「そんなの無理だ。俺も侯爵家だからな?双子の姉妹が皇家に生まれたと聞いた途端に俺の両親はレイモンドと俺を宮殿に連れて行って挨拶させたらしい。俺はまったく覚えてないがレイモンドはアイリーンとサロメを初めて見た時の事をよく覚えてるんだ」
「さすが三大侯爵家・・・・」
す、すげぇ、レイモンド・・・マジ、サロメをそんな時からじゃないよな?
「ああ、うん、そうね?アレンの言う通り、やっぱり無理でした。じゃあ、どうせ婚約しても破棄されるんだしどうせ捨てられるんだからせめて上手く別れよう、せめて好きにならないようにしようと努力したわけよね?」
「一目惚れしたんだろう?無理だ。俺もハルクに一目惚れだからわかる」
「ハハッ、おっしゃる通り。それも無理でした。それからの私はずっとあきらめなきゃ、あきらめなきゃ、って思って生きて来たのよね?」
「そんなのはも一つ無理だ。俺はハルクを知れば知るほど好きになっていったからな」
「はい。それもおっしゃる通り。私もも一つも二つも無理でした」
「なぁ?そんな事、今の王子からは考えられないだろう?」
「うーん?わかんない。婚約破棄される理由は王子が運命の人と出会って、私はその人に嫉妬して、いじめるからなのね?だから、ないって言い切れない。王子は離婚なんてありえないって言ってくれてるけれど8歳で本当に婚約したし、王子もバルトも見た未来と同じ容姿だし・・・まぁ?違う所もたくさんあるけれど・・・その・・・人の心ってわからないじゃない?恋って突然してしまうものでしょう?だから、この先の事なんて誰にもわからないじゃない?だから私本当はとても不安なのね?・・・私も王子が好きなのに王子も私を愛してくれてるのに婚約破棄される未来がずっと頭の片隅から離れない・・・ずっと。怯えているのよ?私は・・・ずっと」
「・・・お前らしくないな?シルフィーヌ」
「私らしいって何かしら?私はこの世界に産まれて前世を思い出して自分の未来を知って5歳で絶望したの。でも、今の兄のルカが私のそんな心に寄り添ってくれた。いつも守ってくれたからここまでこれたの。だからせめて王子に嫌われないようにとこの世界を生きてるだけ。私らしいって?アレン?私は幸せに見えたのかしら?」
「ああ。少なくとも俺はお前が羨ましいよ。なぜならお前はハルクに愛されている」
「・・・・・ごめん、アレン。無い物ねだりだね?・・・私の欲しいのはハルクじゃない。レオなの。私が愛しているのはレオリオ王子なの。だから・・・」
「なんだよ?それ・・・それって王子がどうであれしっかりお前が王子を愛していけばいいだけじゃないか?それにお前、レオリオ王子が帝国に来た時の事、ハルクに聞かなかったのか?」
「え・・・?ああ、サロメからは少し聞いたわ・・・」
・・・ちょっと、アレンに言うのも恥ずかしい事、言ったみたいだよな・・・レオリオ。
「何だよ・・ハルクの奴、お前に言ってないのかよ?・・・・・ったく!俺の口から言っていいのかよ?」
ん?何だ・・・?アレン、声、小さいぞ?
「・・・アレン?」
アレンは俺の胸から頭を上げると俺の両肩に手をかけて俺の瞳を覗き込んで話し出した。
「ハルクはレオリオ王子を試したんだ」
「え・・・?」
「レオリオ王子が帝国に来てサロメと会う前の晩、ハルクと俺はレオリオ王子の寝室に潜り込んだ。そしてベットから飛び起きたレオリオ王子の首に剣を押し当てて脅したんだよ」
「なっ・・・」
何だそれ?聞いてない、聞いてないぞ?!そんな事!!
「前からは俺の、後ろからはハルクの剣の刃がレオリオ王子の首にあたった状態でハルクは言ったんだ、『国を潰されるか、シルフィーヌ姫を差し出すか、選べ』ってな?」
「なんだ・・・それッ!」
「するとレオリオ王子は眉一つ動かさず、『潰せるものなら潰してみろ、シルフィーヌは僕の妻だ。何があっても渡さない』と即答した。そんな王子にハルクは自分の剣を素早く振り下ろしたんだ。それも首の皮一枚のギリギリのところに。王子の髪はその場にバッサリと切り落とされた。しかし、それでもレオリオ王子は微動だもせずに宙を睨みつけたまま同じ言葉を繰り返したんだよ」
「・・・なんでだ?・・・兄貴・・・そこまで!!」
「お前の今の兄ともう一人の部下はとても優秀だよな?王子がその返事を返したところで部屋に飛び込んで来た。まあ?俺達はレオリオ王子の答えが聞けたのだから次の手を考えることにして一先ずその場を切り上げた」
「兄貴の野郎!!」
「怒るなよ?シルフィーヌ。ハルクはレオリオ王子の事を見極めたかったんだ。その時に王子の命まで取る気がなかったのは俺がよくわかってる。だから俺はそんな無茶な事につきあったんだ。ああ、だからな?俺が言いたかったのはお前の夫になるレオリオ王子は死んでもお前を手放さない覚悟だろうって事だよ?髪、切られるなんてのは首取られたのと一緒だろう?」
「・・・・」
俺は下を向いて一馬への怒りを抑えるのに必死だ。
「だから怒るなよ?シルフィーヌ。それくらい、ハルクはお前の置かれている状態を、王子のお前に対する愛情の度合いを知りたかったんだよ?まぁ、俺もセルにお前の『印』の話を聞いて、お前達が兄弟だと知った今だからやっとハルクのした事の意味が解ってきたんだがな?」
「・・・・・」
「なあ?シルフィーヌ、お前を一番思ってるのは間違いなくハルクだよ。俺もアイリーンもお前とハルクの間には入れない。ハルクは必死なんだよ?お前を救う事にな。悔しいけどな・・・」
「俺は・・・俺は、そんな事望んでいない。兄貴を犠牲にする未来なんかいるもんか!」
「何、騒いでるんだ?」
中庭の入口からハルクが頭をタオルで拭き拭き歩いて来た。
「レオリオの髪切ったの、兄貴なのか!」
俺はベンチから立ち上がろうとしたがアレンがそんな俺の肩を押えて立ち上がれない。
「放せよ!アレン!」
「止めろ、シルフィーヌ」
「ああ、いい。アレン。放してやれ。そうだよ?亮。だからどうした?」
「なんでだよ!なんでそんな酷い事するんだよ!いくら一馬だってレオリオに手を出すのは許さないからな!!」
「シルフィーヌ!だからそれは!」
「いい、アレン。亮・・・髪くらい何だ?日本にいた時の俺らはもっと短かかったじゃないか?髪切ったくらいで騒ぐなよ?まあ?アイツが即答しなければ本当に跳ねてやったけどな?首」
「止めろ!ハルク。今のシルフィーヌにその冗談は通じない」
「兄貴、本当にレオリオが邪魔なんだなっ!?」
「ああ、生意気なガキだよなぁ?アイツ。気に入らない。ほんと、気に入らない。ハッキリ言うが今でもお前の伴侶には認めない」
「・・・・ハルク、お前まだシルフィーヌの事・・・」
「アレン、亮は俺の大事な弟なんだよ?所詮、この世界の奴らには理解できないさ。俺達の事も、俺達がこれから潰さなければならないのが何なのかも」
「ハルク・・・お前・・・」
「止めろよ、兄貴。兄貴を信じてここまで着いて来たアレンにそんな事言うな!そうやって・・・そうやって、俺が、アレンが、兄貴を嫌う理由を作って一人でそんな訳のわからない相手に立ち向かおうとするなよ!この世界、一人で終息させようとするな!!兄貴を犠牲にして成り立つ平和なんて俺は要らない!兄貴のいないこの世界なんてくそくらえだ!!」
「・・・・・まったく、お前は・・・その顔でそんな言葉使いはするな。レオリオ王子が引くぞ?」
ククッっとハルクが笑う。
「亮もアレンも。怒るなよ?ああ、悪かったよ?本当にな。これから相手するヤツは生半可な事では太刀打ち出来ないんだ、アレン。亮も言っただろうけどな?本当に俺達でも先が読めない。だから・・・正直この世界の誰も巻き込みたくないんだよ、俺は・・・出来れば俺だけで終わらせたい・・・」
「今更遅いし!何度言えばわかるんだよ?一馬は!!めんどくさっ!!決めたんだろうがっ!アイリーンと生きるって!?俺もそうだし!この世界でもがくんだよ!!」
「ああ、お前の気持ちは解ってる。でもな?亮、アレンはもう使命を終えたんだ。連れては行けない」
「なっ!何だよ!?ハルク!ここまで来てそんな事言うな!!俺は着いて行くからな!」
「ああ、ミシュリーナの件が済んだら国に帰れ、アレン。アイリーンと一緒に。アイリーンを無事、連れて帰って欲しい。俺からのお願いだよ。アレン」
「嫌だ、一馬。俺はアレンが必要なんだ」
「亮・・・アレンはこの世界で俺をずっと信じて支えて来てくれた。もう十分なんだよ」
「なんでだよ?兄貴にはアイリーンが必要なようにアレンも必要なんだ。俺だって、アレンの力も借りなきゃ無理なんだよ!!」
兄貴がベンチに座る俺達の正面に立つと俺の頭とアレンの頭を抑えながら笑う。
「それ以上言うなよ?亮。アレンも。帰って帝国をカルロスをフリードとダンと守ってくれ。アイリーンも頼むな?」
するとアレンはそんなハルクの手を振り払い、立ち上がると叫んだ。
「勝手に決めるなッ!!ハルク!!俺はお前の為に生きてるんだよ!!今更切り捨てるなよ!!それならいっそ、この場で切り捨てろよ?!何のために、何のために、俺は、この俺がここまで来たと思ってるんだよ!!お前を守る為だろう!?お前とシルフィーヌが無事、帝国に戻る為だろう?!いい加減、俺を頼れよ!俺の気持ち解れってんだよっ!!この大バカ野郎!!俺は、お前の、ハルクの、相棒なんだよ!側にさえいられればそれでいいんだよ!!ほんと、めんどくさい!!」
あ、アレンにも言われてやんの・・・一馬。
うわぁ、世間はゴールデンウィーク突入なんですね?
もう鯉のぼりで柏餅で半袖なんですね?
ひやぁ~!!今年中には完結させたい!!
いつもお付き合い下さり本当にありがとうございます!!




