参上!!の件
今日もよろしくお願いいたします!
「兄貴、バルト・・・幽霊見えないか?とうとう二人はあの世とやらに召されたようだ・・・」
「いや、蜃気楼じゃないか?シルフィーヌ。あれはカシューダからの蜃気楼だ、きっと。なあ、ハルク?」
「バルト、シルフィーヌ、あれは違うぞ。あれはドッペルゲンガーだ。生霊だ」
「ちがーうッ!!3人とも不正解だ!アレン様参上だ!!それに何で召されてんだ?俺は!相変わらずバカだな、シルフィーヌは!バルトも同罪だ!」
偉そうに俺らの方にずんずん歩いて来たアレンはそう言って俺とバルトにデコピンをくらわした。
「「ってッ!!」」
「ハルク!会いたかったぞ!それに結婚おめでとうだ!一回しか言わないがな?」
そう言うとアレンはハルクに抱きついた。
「お前・・・本当にアレンだ・・・。なんでだ?いや、どうしてこんなに早くここに居るんだ?」
「なんだよ?一回しか言わない祝いの言葉よりそれかよ?せっかく言ってやったのに・・・」
「本当にアレン?うわ、本当にアレンだわ、バルト!・・・うわ」
「本当だ・・・シルフィーヌ、間違いなくアレンだな・・・うわ」
「お前ら。どさくさに紛れて背中バンバン叩くなよ!それに"うわ"ってなんだ?"うわ"って!もっと俺に会えたことを素直に感動しないか?」
「わーいッ!!リョウ君!!バルト!!」
走って来たセルフィがバルトにエルボー、そして俺の胸に飛び込む。
「「うぇッ!!」」
喉直撃バルトとセルフィに両腕で締め上げられた俺は同時にうめいた。
「待て待て待て、セル!待て!」
って叫びながらアレンが後ろに倒れこむバルトの腕を掴み、セルフィの襟首を掴んで俺からも離してくれた。
「えー?なにするんだよ?アレン!感涙の再会じゃないか!こんなに上手く会えたんだよ!ほら、僕の計画通り!!」
いや、力づくで無理に泣かさないでくれ!セルフィ!
「まさか・・・お前ら、黙って抜けて来たとか言わないよな?」
まだ疑うハルクの言葉にアレンとセルフィが抗議だ。
「何でだよ!んなわけないだろ!?お前らがカシューダ出たすぐ後にカルロス皇帝からセルに命令書が届いたんだよ!フリードが伝書鳥のハヤブサをよく使ってるだろ?あれだ。至急、オールウエイ国に向かえってさ?」
「そう!ダイナマイト?調べろってさ。それで今回はフリードが行けないからアレンがついて来てくれたんだ」
「まさか・・・陸路で逆周り?・・いや、それでも??馬??」
まだ、二人がここにいるのが信じられない俺も考え込む。
「ん?いや?斜めに突っ切っただけだ。初めは陸路で5日、馬、ぶっ飛ばしてあとは貿易船で移動。シルフィーヌの領の船を途中の港で見つけてさ?なぁ?セル?」
「そう!帝国に向かう海路の分を山超えてショートカット!!まあ、馬、6頭くらいは潰したけどね?それに偶然とはいえアントワート港行きの船をサラポワ港で見つけたのは本当にラッキーだったよ!」
「サラポワ・・・?サラポワ港だと!?お前ら、まさか・・・マッキンリーの雪山超えて来たのか!?」
「「超えた!!」」
二人は自慢げにハモる。
「・・・・・・馬鹿だな・・・うん、ほんと、馬鹿だな?おまえら・・・」
ハルクが向かい合うアレンとセルフィの肩に手を掛けると二人を抱き寄せた。
「マッキンリーの雪山って?・・・マジ、アメリカのマッキンレー?ああ、今は名前が変わったからデナリ山か?それと同じ感じだからその名前だとか言うのか?兄貴?」
「アメリカ???」
セルフィが首を捻る。
まさかな・・・?まさか、6000メートル級の山脈だぞ?デナリは・・・!プロの登山家でも危ない。
「ああ、マジ、万年雪と氷河に覆われた標高6300メートルだよ、亮」
・・・・・・・・よく、遭難しなかったな・・・・
「・・・・・・・・アレンが馬鹿だよ、セルフィ様も。無茶しないでよ・・・?二人共」
俺も思わず抱き合う三人に抱きついた。
「ああ、俺の無事を感動してむせび泣くシルフィーヌには悪いがな?俺はお前をハルクみたいに前世の名前で呼ばない。お前はシルフィーヌでハルクはハルクだ!お前ら兄弟の事情なんか俺は知らん!」
「まず、むせび泣いてはないけど・・・ん?あれっ?言ってなかったっけ?アレンには?」
「セルからさぁっぶいッ!!吹雪の雪山の中で寝りそうになりながら登ってる時に突然、暴露された・・!」
「アレン、刺激与えなきゃ氷のオブジェになりそうだったからさ!」
セルフィ・・・一先ず、グッジョブ!
「それにその時カルロスが『アイリーンをハルクにやるが内密だ』って書いてたのが嬉しくてそれも口が滑った!」
・・・・・・・
・・・・・・・・・セルフィ、マジ、鬼畜。
そこで言う?ただでさえ、死にそうになってる人に一番死にたくなるような事、平気で言うか!?セルフィ?!
「え、カルロスお兄様が・・・?え?いつ?いつ?いつの話です?セル兄様?」
アイリーンが青い顔で指を折って日にちを数え、ハルクは頭を抱えた。
「何だ?カシューダの件が済んだらアイリーン様はハルクに嫁ぐ段取りだったんだな?」
バルトが一人笑いをかみ殺した顔でうんうんと頷くとアレンの頭に手を伸ばす。
「大変だったよな?アレン。今晩、いろいろ聞くからさ?」
「頭撫でるな!バルト!!それにそんな同情の目で見るな!!お前もだ、シルフィーヌ!お前も背伸びしてまで頭撫でるなよ!」
「強がり言ってないで今日だけは私の胸貸してあげるから、泣いていいよ?アレン。ほら、おいで?」
「そうだぞ?朝まで話を聞くよ?アレン」
だって、慰め役のダンいないもんな?仕方ないよね?ってバルトと俺は二人でうんうん頷いた。
「いるか!!って、本当にいらん!!」
凄く赤い顔のアレンが叫んだ。
取りあえず、俺、バルト、ハルクにアイリーン、そしてアレンとセルフィを加え、アントワート港で街馬車に乗り込み俺ん家、アントワート邸に向かう事とした。
「シ、シ、シルフィーヌ様ッ?!・・・本当に・・・?本当にシルフィーヌお嬢様?!お嬢様が!!シルフィーヌお嬢様が戻られました!!」
アントワート邸に着いた馬車から俺が最初に下りると出迎えてくれた侍女がそう叫んでエントランスホールの奥に消えたかと思うと一斉に懐かしい顔が俺の名前を叫びながら出て来た。
その先頭に見えるお母様の嬉しそうな顔を見て思わず俺もその胸めがけ駆け出していた。
「ただいま~ッ!!みんなぁッ!!」
って叫びながら。
内密とはいえ、突然の帝国の皇帝兄妹であるセルフィとアイリーンの来訪はアントワート家にとっては顕要な事項の様で知らせを聞いたお父様も公用を投げ出し馬を飛ばして王都から馳せ参じたほどだ。
もちろん、お祖父様、お祖母様も駆けつけ、一族総出でおもてなしだ。
だが、ここにルカはいない。
そう、レオリオ、ルカ、レクサスの3人は俺とバルトが国を出たすぐ後に俺達が戻る一年後に合わせて武者修行の旅に出たそうだ。
今はどこの空の下か、無事、元気にしているのかなどは一緒に着いて行った護衛のマークスにカレブとサルトが定期的に知らせの便りをくれているそうで音信不通だった俺とバルトの方がみんなは凄く心配していたそうだ。
だから帰って来た俺からお祖母様、お母様はもちろん、ミリアにリタ、そしてお祖父様まで離れなかった。
そうか・・・3人に会えるのはやはり1年後なんだな・・・
残念だけど、成長した3人と会えるのは凄く楽しみだから我慢だな・・・
うん!心配なのはお互い様だしな?
それと心配していたアントワート家の皆のハルクへの応対だが、初めは凄くピリピリしていたがハルク自身が礼儀正しくお父様に接していた事や俺とバルトがハルクと和んだ態度でやり取りするを見て徐々に警戒を解き打ち解けて行った。
「イヤッホーイ!!」
俺は思いっきりベットにダイブだ!!
それもひさびさの自分のベットだ!!
ああ、やっぱり、ここが一番だぁ!ここがやっぱり一番落ち着くな~!!ああ、このままずっと眠りたいなぁ・・・ああ、極楽、極楽・・・・って、寝てしまうな・・・・って!いかん、いかん!
俺はラフな部屋着に着替えるとアレンの部屋のドアをノックした。
ちょっと眠そうなアレンが顔を出す。
「ああ?シルフィーヌか?入れよ」
「うん。お邪魔しま~すって、もう、始めてるの?バルト?」
「ああ。でもこれ、一番軽い酒だからな?それも甘い赤ワインをレモン水で割ったやつ。ジュースみたいだからシルフィーヌでも大丈夫そうだ」
「あ、いい。お父様心配させたくないから。蜂蜜レモン水で十分」
そう。これから約束通りのアレンの失恋慰め会だ。
「ふん。お前らが雪山の話聞きたいって言うからだな・・・だから俺は別にだな?もう、アイリーンならいいって思ってたからな?・・・まあ、それはそれでまあ、なんだけどな・・・?」
「あれ?何か・・・もう、酔ってない?アレン・・・バルト?」
「うーん、ほんと、弱いのな?アレンって酒に・・・これ、まだ2杯目なんだが・・・」
「うわぁ・・・ハルク呼んで来るわ」
「ああ、そうするか」
「何で先に飲ますんだ!アレンは酔うと凄い馬鹿力なんだぞッ!ああ、ダメだ!」
ハルクを連れてきたらいきなりアレンは横に座ったハルクの腰にがっちり腕を巻き付けるとハルクの胸にもたれて寝てしまった。
「ああ、ゴメン兄貴。マジ、ごめん・・・・でもさ」
「すまん。ハルク・・・・でもな・・・・?」
「それに・・・アイリーンも・・・止めないか・・・・」
ハルクはアレンの腕をほどきながら背中に抱きつくアイリーンに小さな声で注意する。
「やぁん、カズマ・・・!カズマ、アレンと離れて!・・・・んんっ、カズマぁ、いゃぁぁん」
うわぁ、ダメだ・・・・すんげぇ、色っぽい・・・・アイリーン・・・
そう、一緒に着いて来たアイリーンだが・・・酒、凄く弱いんだ・・・
頬が上気して目がトロンとしたアイリーンがアレンから兄貴を奪回しようと必死で抱きついているのだ。
「わあ、モテモテだね・・?一馬?」
「うるさい、亮。バルトも笑ってないでサッサとアレンの腕、剥がしてくれ!ああ、アイリーン、飲むな、それ以上飲むな!」
「まあ、たまにはいいんじゃないの?アイリーン様とアレンに甘えられても?ね?バルト?」
「ああ、いいんじゃないかな?ちょっと、笑えるが、ククッ」
ああ、何か凄く、目まぐるしい一日だったけど、凄く幸せそうな寝顔なんだよね?アレン・・・
今日も長い話で恐縮です。
お読みいただきありがとうございました!




