接触の件
今日もよろしくお願いいたします!
「本業は海賊だったのですか?」
俺の首には鋭利な剣先が突き付けられている。そう、ディーンが構えているフックのような剣だ。
仕方なく両手を上げる俺。
「いや?まあ、先祖は略奪者と変わりないけどね?人の財産奪って国大きくして来たからね?」
そしてじりじりと俺は部屋の中に押し戻され、後退さるしかない。
お前はフッ〇船長か!?って突っ込み入れたいよ?それ、左手に装着してたら笑えないよね?
あ、後ろ手でドアの鍵閉めやがった。
「何だい?君は女装で寝るのかい?よく出来た胸だな?」
そう言うとディーンは俺の右胸を思いっきり掴んだ。
!!!!!!!
「きゃああああああああああああ!!」
何するんだッ!何するんだッ!何するんだッ!
「あ・・れ?本物?」
ディーンが驚いたその一瞬の隙を見逃さず剣を構えたディーンの右手首を俺は逆手に掴むと思いっきりねじ上げた。
「!!」
そしてディーンの懐に滑り込み一気にディーンの身体を背中に担ぎ上げ、壁に投げつけた。
「なっ?!」
狭い船室の中、ディーンは派手な音を立てて壁にぶち当たる。
と、その下のベットに落ち仰向けに転げる。
目をパチクリさせて驚いている。
「・・・なんだ・・・?女の子なのか・・・?」
「っざけんなっ!!このスケベ野郎!!」
さらに俺はジャンプして上からディーンの鳩尾目掛け、肘鉄炸裂だ!!
「おっと!!」
剣を素早く投げ出したディーンの両腕が降ってきた俺の体を軽々と受け止めたかと思うとギュッと抱きしめた。
「なっ!!」
俺は逃れようと体をむちゃくちゃにもがいて暴れる。
「は、離せ!!この痴漢野郎!!」
「随分な言われようだ。この僕に対してそこまで言うとは。ああ・・・でも、本当に女の子なんだ?うん、柔らかいし、いい匂いだ」
「!!!離せーッ!!嗅ぐな!!この変態野郎!!」
「無礼だな?護身術だけではなく口も立つのか?凄い攻撃技だな?フフッ。本当に『印』があるのに女の子なんだ?何だ、これ?珍しいな?うん、珍しい。その顔、ああ、うん、可愛いいな。うん。このままもらって帰るとしよう」
バンッッ!!
今度はドアが蹴破られた。
「シルフィーヌ!!」
「バルト!!」
剣を構えたバルトが飛び込んで来たのだ。
ディーンは片手で俺の両腕を抑え込むように抱きかかえるともう片方の手で素早く剣を拾いベットから飛び降りた。
「そのお方をおとなしくこちらに渡して貰おうか?まさか、そのお方が誰か分かっての狼藉か?」
バルトの目が光っている。
「ほう?どこぞの国の姫みたいだな?では、正式に貰い受けようか?」
「名乗らずこのままそのお方を置いて立ち去れ。今なら危害は加えない」
「帝国の姫か?なら」
「二人は客人だ。これ以上、事を荒立てるようなら帝国としてお相手するが」
そう言ってバルトの後ろからハルクが入って来た。
「おや?形勢不利だな?『帝国の鬼神』と一戦交えるには狭すぎそうだね?ここは。残念。ただ君は今すぐにでも抱きたいんだけどね?」
そう言うとなぜかディーンは俺の頬にチュッとキスをしたのだ。
!!!!!
「いやぁーッ!!キモい!!キモい!!キモい!!このゲス野郎ッ!!」
「凄く口の悪い姫だよな・・・?でもその可愛い顔とのズレが新鮮だ」
「殺す・・・」
バルトの目が爛々と光り、剣を構える。
「このまま海の藻屑になるか?」
ハルクの目も光り出した。
「悪かったよ?冗談だよ?冗談。ほら降参!ほら、この通り、ね?」
ディーンは剣を落とし、俺を放す。
俺は急いでディーンから離れるとバルトの背中の後ろに隠れる。
「けど本当に僕の后に来ないか?シルフィーヌ姫はどこの国?」
両手を上げてゆっくりバルトとハルクに向かって歩いて来るディーン。
「貴様、今後二人に近づけば容赦なく魚の餌だ」
怖いくらいの覇気を放つハルクがそう言い放つ。
バルトも凄い殺気を醸し出している。
「おお、怖いねぇ?」
しかしその二人の間をディーン王子は薄笑いを浮かべひょうひょうと通り抜ける。
そして開け放たれたドアの手前で止まると
「では、事が済んだら迎えに行くね?シルフィーヌ姫。それに間もなくこの世界の覇者になるのは僕だしね?じゃ!!」
背中を向けたままそう言って手を小さく振ると一瞬で消えた。
直ぐにハルクが部屋を出る。
俺はバルトの上着を掴んだまま足下にへたり込んだ。
ホッとして力が抜けたのだ。
「シルフィーヌ」
そんな俺をバルトが急いで抱き上げる。
俺はバルトの首に手を回し胸に顔をくっつけた。
「怖かった・・・」
凄く自分が震えているのがわかる。
「ああ、もう、大丈夫だ、シルフィーヌ」
「怖かった・・・バルト」
「ああ、シルフィーヌ・・・怖かったな?」
「凄く怖かったの・・・バルト」
俺はギュッとバルトの首にしがみつく。
「ああ、ああ、そうだな?シルフィーヌ。怖い思いをさせてすまなかったな。だがもう俺が付いているから安心しろ。もう一人にはしないから」
「うん・・・バルト・・・」
「だから大丈夫だ。な?」
「ん・・・でも、何か気持ち悪い・・・触られたの、知らない男の人に。触られた・・・嫌だ・・・気持ち悪い・・・」
「シルフィーヌ。大丈夫だ。お前は何も変わってないし、俺が抱き締めてるじゃないか?」
そう言ってバルトは俺を更に抱き込んだ。
「でも、バルト・・・嫌だ、何か、嫌だ・・・自分が気持ち悪い」
「シルフィーヌ。大丈夫だよ?本当にお前は俺の大事なシルフィーヌだ。可愛いい俺の」
バルトがそう言って俺の頭にキスを落とした。
「・・・・・・うん」
バルトがそう言ってこうしてくれると凄く安心した。
俺、凄く怖かったんだ・・・凄く・・・
初めてだ、ハルク以外で少しも抵抗出来なかった奴なんて・・・
あいつ、凄く強い・・・
「バルト・・・?」
「ん?」
「あいつ、強い。ハルクと同じくらいかもしれない・・・?」
「なんだって!?じゃ、ハルク!」
「大丈夫だ。バルト」
部屋の入口にハルクが顔を出した。
「リョウ!大丈夫なの!?」
ハルクがアイリーンを連れて来たのだ。
バルトが俺を降ろすとアイリーンが俺を抱き締め頭を撫でる。
俺もそうされてアイリーンにしがみついた。
次の朝何もなかったように食堂に行くと普通にディーンはいたがオールウエイ国に着くまでお互い一切無視を決め込んだし、夜はバルトが寝ずの番をしてくれた。
ただ、オールウエイ港手前にある俺の領、そう、アントワート港で俺らが船を降りた時に船上からこちらを見ているディーンがニッコリ笑い手を振った。
もちろん、俺は無視をしたが。
懲りない奴・・・
「突然帰ったらびっくりするわね?ルカ!早く会いたい!!」
俺は流行る気持ちが止められない。
まだ、国を出て3ヵ月ちょっとしか経ってないのに随分会ってない気がして凄くソワソワする。
「ああ、そうだな?本当に帰って構わないのか?ハルク?」
「ミシュリーナの手紙はお前の邸宅に届くのだな?亮?それを確認しなければ今のミシュリーナの居場所がわからないのだろう?仕方ないさ。それにダイナマイトの件はアントワート家、シュナイダー家が関わっているからな?なら、まとめて帝国からの内聞で通すさ」
「私達の帰国は公には出来ないって事?じゃあ、やっぱり、王宮には行かない?」
「ああ。皇帝から、国王に要望書が先に届いているはずだ。あくまでダイナマイト見学のお願いだ。学者が来ると思ってるだろうし直でアントワート領、シュナイダー領に赴くと通達しているからな」
「なんだ・・・」
「今回は我慢しろ」
ハルク、バルト、アイリーンが落ち込む俺の頭を撫でる。
レオリオには会えないのか・・・ちょっと・・・いや、凄く残念だな・・・
「おっそーいッ!!」
ん?
「こっちこっち!!」
え?
「バルト・・・私、ショック過ぎて何か幻聴、聞こえるんだけど?」
「ああ、俺も聞こえるから幻聴ではないな?ハルクは聞こえるか?」
「まさか・・・な・・・?」
「アイリーン!!」
「お兄様!!」
アイリーンが走り出す。
アイリーンを両手を広げ抱き締めたのはそう、間違いなくセルフィ。
そして嬉しそうにアイリーンを抱き締めるそのセルフィの横に腕組みをしてどや顔で立ってるのは間違いなくアレンだった。
「「「え・・・?」」」
俺とハルクとバルトは幽霊を見た思いだった。
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